
『エルダニア大戦記』第42話「尋問」を更新しました
各サイトにて、第3章 第42話「尋問」を更新しました。
今回は、前話「用水路の夜」の続きです。
東部の畑と用水路を逃げ延びたアズールとカインは、夜明けに帝国側の兵へ捕らえられました。
灰衣ではない。
野盗でもない。
けれど、助けでもない。
二人はそのまま帝国側の前哨へ連れていかれます。
今回の前哨は、砦というほど大きな場所ではありません。
けれど、ただ兵が集まっているだけの場所でもありません。
荷を置く場所。
怪我人を寝かせる場所。
捕らえられた者を座らせる囲い。
水場。
馬をつなぐ杭。
焚き火の跡。
帳面を置いた粗い机。
それぞれが、縄と杭で分けられている。
泣いている者もいる。
呻いている者もいる。
怒鳴っている者もいる。
それでも、すべてが決められた場所に押し込められている。
東部は壊れている。
けれど、ここにはまだ壊れきっていないものがある。
ただし、それは温かさではありません。
順番です。
水を求める老人にも、兵は言います。
順番だ、と。
冷たい。
けれど、誰か一人を面白がって踏みつけているわけではない。
水はある。
順番もある。
ただ、その順番に入れなければ、喉が裂けそうでも待たされる。
このあたりは、東部編で見せたい帝国側の空気でもあります。
乱れてはいる。
けれど、完全には崩れていない。
人を救うためではなく、処理するための秩序がまだ残っている。
アズールは、そこで尋問を受けます。
名は。
家は。
寄り親は。
所属は。
どの軍に随行していた。
証文は。
旗は。
荷は。
帳面は。
アズールは、エスター男爵家の五男です。
ルミナ沿海伯家の寄子であり、エスター男爵家の分遣隊として東部支援に加わっていました。
でも、証文はありません。
旗もありません。
荷車もありません。
ノエルの帳面もありません。
仲間もいません。
名乗ることはできます。
けれど、名乗るだけでは足りない。
カインが護衛であることも、アズールの言葉だけでは証明にならない。
ここで、アズールはかなり無力です。
自分の家名だけでは通らない。
自分の言葉だけではカインを守れない。
証文がなければ、制度の中へ入れない。
そんな状況で助けになるのが、ロイター隊です。
ロイター殿は、負傷しながらも部下を連れて前哨へ到達していました。
十一名。
証文あり。
負傷者三名。
大きな活躍をしたわけではないかもしれません。
でも、この壊れた東部で、隊を隊のまま前哨まで連れてきている。
アズールにとっては、それだけでも大きな意味があります。
ロイター殿は、アズールとカインの身元を証言します。
必要なことだけを、まっすぐに。
そして、ヴェルナー子爵家の証文とロイター殿の証言によって、アズールとカインは捕縛扱いを解かれます。
縄は解かれる。
剣も戻る。
けれど、それはアズールが一人で名を通したからではありません。
エスターの名だけで戻ったわけでもありません。
ヴェルナー子爵家の証文と、ロイター殿の一言があったから、剣は戻った。
ここが今回の大事なところかなと思っています。
アズールの名前は、ようやく帝国の帳面の端に載ります。
けれど、隊はまだ戻っていない。
ガレスも、ブルーノも、ノエルも、エルヴィンも、ニルスも、トマも、オルステッド隊も、まだ分からない。
剣は戻った。
でも、アズールの隊は、まだ戻っていない。
第42話「尋問」は、そんな回になりました。
よければ、各サイトで読んでいただけると嬉しいです。
本編はこちら
・小説家になろう:
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・カクヨム:
https://kakuyomu.jp/works/2912051601294425987
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現在、第3章「灰衣大乱」進行中です。
敗戦と帰郷を越えて、アズールたちはようやく乱世の本流へ入っていきます。