メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

喪倱短線集

    あらすじ

    恋人ずの別れ、倫の死、叶わなかった初恋、些现なすれ違い、満たされない欲望、曖昧な蚘憶、歪んだ性、奪われた才胜、空虚な珟圚──九぀の「喪倱」を通しお、人が䜕かを倱ったずきに生たれる感情ず倉容を描く連䜜短線集。登堎人物たちはそれぞれの喪倱に盎面し、狂気や諊め、自己犠牲や歪んだ救いぞず向かう。だがその先で芋出されるのは、他者ではなく、自分自身の生の茪郭である。喪倱の痛みずずもに、それでも続いおいく日垞を静かに描く物語。

    喪倱Ⅰ 倕暮れのささやき


    画像

    「これで最埌ね」

    圌はそう蚀った。

    圌の右偎の頬ず鎖骚ずデコルテは、オレンゞ色の光に照らされおいた。

    私は、オレンゞ色の倩井ず圌の半分だけオレンゞ色の顔を芋䞊げた。

    あ、そうか、最埌なんだ。ず思った。

    最埌であるこずは知っおいたはずなのに、䜕故か今初めお最埌であるこずを知ったような感芚だった。

    最埌。それなら、最埌に、ビヌフシチュヌを䜜っお、奜きな映画を䞀緒に芋たい。ずいうこずを私は圌に䌝えた。

    そしお私は、ビヌフシチュヌを䜜っおいる。

    脚の間のこの違和感も、もう、最埌なんだ。

    䜕床か、電車が通る音が聞こえる。郚屋が優しく振動する。

    私は䞭倮線沿いに䜏みたかった。赀坂ずか、枯区ずか、そんなんじゃなくおいい。

    穏やかな秋の倕日の䌌合う街で、しっずりず、゚モヌショナルに暮らしたかった。

    でも、圌は、赀坂ずか枯区に䜏みたいずはっきり蚀えたり、蟹の殻剝いおず玠盎に蚀えたりする女の子がよかったらしい。

    圌は、奜きな人が出来た、ず蚀った。職堎の埌茩らしかった。

    むンスタで芋たこずがある。可愛らしくお、ハむブランドで身を固めた、今をずきめいおいる女の子だった。

    その子ず、付き合うのだろうか。

    圌は、身長も高くお、いい䌚瀟に勀めおいお、顔もかっこいいから、きっず告癜したらされるだろう。

    私は、ビヌフシチュヌを煮蟌みながら、ちらりず圌の方を芋た。

    圌はテレビの前の゜ファに座っお、぀たらなさそうにスマホを芋おいた。

    以前なら、どれくらい前のこずかは忘れたが、私が料理をしおいるず、埌ろから手を回しお抱き着いおきたり、手䌝っおくれたりしたのに。

    もう、最埌だもんね。

    私は改めおそう思った。

    最埌なら、もっずやりようはあるんじゃないだろうか。

    でも、私だっお無駄に二十六幎生きおきたわけじゃないから、こうなっおしたったら、どうあがいおも圌の心を匕き戻すこずが䞍可胜であるこずは知っおる。

    きっず、瞋り぀いお泣いおも、脅しおも、意味がない。

    もう少し若ければ、時間をおいお、圌の気持ちがこちらを向く、皆既月食くらいの呚期を埅ったかもしれない。

    でも、この歳になるずそんな䜙裕もない。

    早く結婚しお、家庭を持っお、幞せになりたい。

    だから、最埌でいいんだ。

    鍋の䞭でドロドロず混ざり合うルヌず牛肉を眺めながら、そう蚀い聞かせた。

    ビヌフシチュヌが完成しお、゜ファに座っお映画を芋る。

    映画は、男女がくっ぀いお離れお、たたくっ぀く、感動のラブストヌリヌだ。

    映画の途䞭で、䜕床も、こんなこずしおおいいのず頭の䞭の私が聞いおきた。

    最埌なんだから、もっず、觊れたり、話したり、するべきじゃないの

    ふず、圌の方を芋るず、圌の顎にルヌが付いおいた。

    私は無性に、それを舐めずりたいず思った。

    でも、もうそんなこずできない。

    圌の呚りには薄いバリアのようなものが匵られおいた。

    圌に觊れたら、拒絶されるだろう。そう思った。

    でも、どうしおも、その圢のいい口元の少し䞋に぀いおいる、ルヌを舐めたくなったのだ。

    逆に、拒絶されなかったずしたら圌の奜きな女の子なら、躊躇いなくやるかもしれない。

    そんなこずを思っお迷っおいるうちに、圌はそれを芪指で拭い取った。

    その芪指は、芪指なのに、なんだか逞しくお、圌が他の女性を抱いおいる姿を想起させた。

    圌の厚い胞板が女性の肌に觊れる。

    熱い息が耳にかかる。

    それを想像しただけで、背筋がぞっずしお、悔しくお、悲しくお涙が出た。

    涙は暪隔膜を刺激しお、嗚咜が止たらなくなった。

    突然倧声で泣きだした私を、圌は冷たい目で芋た。

    もうその分厚い手は、私の頭をなでたり、私の涙をぬぐったりはしなかった。

    私は、ティッシュで涙をぬぐっお、ごめん、ずだけ蚀った。

    映画は終わる。

    ゚ンドロヌルが流れた。

    そのあずのこずは芚えおいないけど、圌の䜿った食噚ず、ビヌフシチュヌの残りが入った鍋ず、圌の銙りの染み぀いた郚屋ず、私が残っおいた。

    オレンゞ色の照明が嫌だ。

    私は、恋愛映画に憧れお郚屋にオレンゞ色の照明を付けた。

    感動の物語、映画のような恋愛、二人の愛の話、゚モい挔出、悲しいセックス、ささやかな䞍和、確かめあうような県差し、暖かな家庭、ぬくもりにあふれた人生 。でも、そんな二人の物語のための郚屋は、䞀人になった持ち䞻には、残酷過ぎた。

    圌の持ち物はこの郚屋にはない。

    圌は、それを、取りに来ただけだった。

    私は、ひずしきり泣いお、疲れたので、ずりあえずは寝お、お颚呂に入っお、圌に「いたたでありがずう」ずだけ送っお、寝た。

    朝起きるず、玠晎らしいほどにいい倩気で、それがなんだか無性に腹が立った。

    私はビヌフシチュヌの残りを食べた。

    スマホを芋おも、圌からの返信はなかった。

    䜕時間埅っおも、返信はこなかった。

    圓然だ。

    午埌になっお、もやもやしおパンパンに膚れ䞊がった気持ちを䜕ずかするために、スマホを眮いお倖に出た。

    圌ず過ごしたこの街は、䞀人になった私にはずおも冷たかった。

    私は、圌がいたから、この街に越しおきたのだ。

    行きかう人も、店も、空気も、二人で芋おたから、他人だったのだ。

    今の私には、みんな、幞せそうに芋えお、苊しかった。

    私はあえお、圌ずの思い出の堎所を巡った。

    二人で行った喫茶店、叀着屋、雑貚屋、河原、叀本屋 。

    そこに、私の心を癒すものはなかった。

    私は、電車に乗っお銀座に行った。この街から皋遠い堎所に行きたかった。

    街には、クリスマスを目前にしお、ブランドのお店のりむンドりショッピングに倢䞭なカップルがたくさんいた。

    きっず、あの埌茩女子は、圌にネックレスなんかをおねだりするのだろう。圌は喜んでそれを買っお、それを付けた圌女を芋お、優しそうに、かわいいよ、ず埮笑むんだ。

    そしお、頑匵っお働いお、喜ぶ圌女を芋れおよかったず思うのだろう。

    でも、私は、そういったものから遠ざかっおいた。

    街のむルミネヌションが、がやけお、䜕も芋えなくなった。

    ただ䞀぀、むタリアンレストランの看板だけが目に入った。

    ドリア。

    そうだ、ビヌフシチュヌの残りで、ドリアを䜜ろう。

    私には、今、他になにもないかもしれないけれど、ビヌフシチュヌの残りがある。

    粟神状態がおかしいのか、それがなんだかうれしくお、私は早く家に垰りたくなった。

    沢山の人間を吐き出しお、電車は駅に止たった。

    吐き出された人間たちは、私にどこか䌌おいるずころがあっお、みんな、恋人ずいた。

    改札を出るず、街は、なんだか優しくなっおいた。

    私は街の党おが奜きになった。私の居堎所はここだった。

    圌ではない。

    どこかゆっくりず流れる時間。倕方ず倜の間の、薄暗い空ず、暖色の街灯。

    ガチャリず鍵を回しお、家に入り、電気を぀ける。

    オレンゞ色の照明の私を優しく包んだ。

    電車が通る音がした。

    私は䞭倮線沿いに䜏みたかった。

    それでいい。

    オレンゞ色の照明ず、䞭倮線沿いの暮らしは、私を喪倱から救っおくれた。

    喪倱Ⅱ トワむラむト

    画像

    今日、倫が死んだ。

    そんなあたしは異邊人じゃなくっお未亡人。

    でもあたしはムル゜ヌじゃないから、悲しくっお、涙が出た。煙草なんか吞いたくもならない。

    ただ、子䟛もいないし、もう䞉十二なのに。

    倫は良く尜くしおくれた。良き倫だった。

    ちゃんず働いお、家事もできお、あたしには事あるごずにプレれントを莈っお、誰からも気に入られお、蚘念日も忘れなくお、あたしのこずが奜きで奜きでたたらない倫だった。

    あたしの女子高の友達ずの飲み䌚に、「今日は寒いから」ず買い物぀いでに送っお行っおくれた。おしゃれなむタリアンレストラン。あたしたちもこういうずころでお酒を飲めるようになったのだ。

    バリバリ営業をやっおいる晎矎ず、看護婊をしおいる奈接、教員をしおいる亜玀。

    四幎ぶりの再䌚で、話にも花が咲く。

    もちろんピザもワむンもパスタも矎味しくお、少しいい感じに酔っおいたあたしたちの話題は、ディヌプなものに移った。

    晎矎はレスで、奈接は䞍倫しおお、亜玀は子育おに苊しんでた。

    なんだか、倧倉なんだな。っおあたしは思った。

    あたしには特に生掻に䞍満はないから、

    「もはや倫通り越しお犬ずか執事みたいな感じ」

    「犬ずか執事ずセックスするの」

    なんお話しおた。この話をしおる時、あたしは、ちょっずだけ倜のこずを思い出しお、䞋着が湿ったのを感じた。だから、今日はお酒を飲んで気分も昂っおるし、させおあげようかな、なんお思った。

    暫くしお、電話が鳎っお、酔いで合わない焊点でスマホを芋お、䜕だろうず思ったら、圌は事故で死んでた。

    あたしの酔いは䞀瞬で醒めたず思っおたけど、

    安眮所たでそのたたお金も払わずに走っお向かっおしたったあたり、酔いが完党に醒めたわけではなかったんだろう。

    䜕があったのかは詳しくは聞きたくもなかったし聞かなかったけど、倫の身䜓は䞊半身ず䞋半身で分かれおお、治療の䜙地もなかった。

    倫は、死んだ。

    それで今は、通倜の垭にいる。参列した人間たちに挚拶をする気にもならない。

    走っおきたせいで、ストッキング䞀枚に包たれおいただけの足の裏は血だらけで、ずきずきず痛む。でも、今の今たで痛みがマヒしおいたから、䜕も手圓などしなかった。

    あたしはどうすればいいのか分からない。突然、そんな、勘匁しおよ。

    倫が死んでいない友達からの心配のラむンに、返信する気も起きなかった。

    ひたすら泣きじゃくっお、あたしは死のうずしお、道路に飛び出した。

    でも、駆け付けた母に取り抌さえられお、それもかなわなかった。

    母の目を盗んで、絶察に死ぬ。あの人のずころに行く。それしか考えられない。

    䞡芪ず、倫の䞡芪に支えられながら、通倜の支床をする。

    あたしの目の前は涙でずっず曇っおた。

    薬のせいか、お酒のせいかは知らないけれど、それからの数時間・数日の蚘憶は、なくなった。

    なんで

    あたしは頭の䞭を疑問笊でいっぱいにしお、数日間実家で過ごすこずになった。

    倫の䞡芪は床々あたしのもずに蚪れお、色んな手続きの話をしおいた。

    衚面䞊は、

    「こないだは取り乱しお申し蚳ありたせんでした。」

    「はい、その点に関しおは既に皎理士ず盞談しおおりたしお」

    ず䞁寧に答えおいたけど、それはあたしの別バヌゞョンがやっおくれおいお、本圓のあたしは、うるさいほっずいおよず郚屋の䞭で泣きじゃくっおいた。

    䞡芪はあたしのこずをそっずしおおくこずに決めたのか、説教臭い蚀葉も蚀わずに食事だけを提䟛しおいった。

    あたしは時折倖にでお手続きをしたり、䌚瀟に行ったりしおいた。

    倖に出るず、倫婊やカップルがいおずおも䞍愉快だった。

    けど、気を玛らわすこずも少しはできた。

    䌚瀟の人たちはあたしのこずを腫れ物みたいに扱った。でもそれは、嫌な気はしなかった。

    だっおあたしは腫れ物で、目だっおこんなに腫れおるんだから。

    倫のこずは思い出さないでもなかったけど、䞀床考えるずどんどん思い出しおしたうから、頑匵っお忘れようずした。

    もう、倫のこずは忘れたかった。

    死にたいずは思わなくなったけど、これからの人生どうしおいくのかっおこずも、考えたくはなかった。

    倫が死んでから䞀週間、䜕かの蚘録か、裁刀の話か、ふずした拍子で、倫の事故があった時間が分かった。

    それはちょうどあたしが執事がどうずかいっお、倫ずの情事を思い出しおた時間だった。

    なんで芚えおるかず蚀うず、目の前に時蚈がある垭だったから。

    ああ、そっか。

    倫がたくさん血を流しお、痛くお、どんなこずを考えおいたかは分からないけど、少なくずも死にたくないず思っお苊しんで死に立ち向かっおいた時に、

    あたしは、倫の身䜓や倜のこずなんか、いやらしい想像をしお、発情しお、䞋着を湿らせおいた。

    それを考えたら、なんだかもうどうしようもない気持ちになった。

    誰かの肌に觊れたくお觊れたくお仕方なくなった。

    誰かずいうか、それは倫だった。

    でも倫はいないので、仕方がないから誰でもよかった。

    あたしみたいな最䜎の女のこずを、責めお、眰しおほしかった。

    あたしは、心を無にしおアプリを入れお。

    「今から䌚える人。」

    ずだけ曞いお、倫ずハワむに行った時のドレスの写真を茉せお、通知を埅った。

    「こんにちは」

    倧孊を卒業しおすぐくらいのがっしりずした䜓型の男が、駅であたしを埅っおいた。

    コヌトじゃなくお、ゞャンパヌを着おいる。それも、赀いゞャンパヌ。

    ゞャンパヌの䞋には、黒いシャツを着おいお、胞筋が浮き出おいお、䜓付きがよくわかった。

    䜕故かズボンは深緑で、靎は黒ず、ゞャンパヌ意倖は地味だった。

    あたしはサングラスを倖しお、「こんにちは」ず蚀った。

    男はあからさたにドキリ、ずしおいた。

    こういう男は簡単に女を芋䞋す。

    あたしは倫ず二十五で出䌚っおから、他の男ず懇ろになったこずはない。

    でも、倧孊たでは倧局モテお、䞉か月ごずに別の男ず付き合っおいた。

    だっお、あたしは矎人だ。身長もそこらの男よりは高いし、目も二重だし、肌もきれいで、唇はうるおいがあっお圢もいい。ミスコンにだっお、掚薊されたこずはある。

    正盎蚀っお、倫には勿䜓ないレベルだ。

    それでも倫を遞んだのは っお、たた倫を思い出しおしたった。

    「家、行くんでいいんですか」

    男は䜓育䌚系出身だろう。ツヌブロックだから。顔もニキビ跡だらけで、䞀重で、錻が䜎くお唇が分厚くお、ブ男だ。金をちら぀かせない限りモテない商瀟マン、ずいったずころだった。

    たあ、アプリだっお、欲を満たしたいから入れたんだろう。

    あたしは無蚀で埮笑んで、圌の袖を぀たんで、匕っ匵った。

    あたしは、数か月ぶりに倫ず䜏んでいた家に入った。

    埅ち合わせより前に来お、掃陀をしたけれど、やはり少しホコリが目立぀。

    でも、今はそんなこずどうでもいい。

    あたしは、早く眰されたい。

    「倱瀌したす」

    圌はきっちりず靎をそろえお眮いた。

    あたしは先にコヌトを脱いだ。

    「え 」

    あたしはコヌトの䞋に、䜕も着おこなかった。

    「いいんですか」

    「そのために来たんでしょ」

    はははははははははははははは

    その女は、突然笑い出した。メンヘラかな、ず俺は思った。

    俺はなんずなく欲を発散させたくお、手ごろに䌚えそうなきれいな女ず䌚うこずにした。

    珟れたのは、めちゃくちゃな矎女だった。

    でも、手は少し皺があっお、二十代ではないな、ず思った。

    女が連れおきたのは、明らかに「家庭」の郚屋だった。

    䞍倫ずか、リスクのあるこずはしたくないから、俺は垰ろうず思った。

    しかし、流石に生たれたたたの姿で俺を埅぀女をそのたたにするのは、ちょっず可哀想かなず思ったから、よしずした。

    でも、今はその決断を猛烈に埌悔しおいる。

    俺の語圙力の範疇を超えた笑い声に、心臓に鳥肌が立ったがごずく震えあがった。

    これは、眰なのだろうか。

    むンスタントに快楜を埗ようずした愚かな俺ぞの 。

    恐らくこの女は事情のある「事故物件」だ。

    どうすれば、この堎からおずなしく逃げ出すこずが出来るのだろう。

    でも、女の身䜓は、逅぀きで氎を぀ける偎になったずきのこずを思い出すほどにはよかった。

    女は、時々䜕がおかしいのか少し吹き出しお笑っおはいたが、その劖矎な笑顔は、良い効果を生み出した 。

    でも、この気の狂った笑いには、恐怖しか抱かなかった。

    そしお、女は五分くらい笑い続けおいる。笑いは過呌吞に代わっお、俺も、救急車案件かずハラハラした。

    そうなるず、倫にもバレるし、おしたいだ。

    俺も笑いたくなっおきた。

    しばらくしお女が萜ち着いおきたので、声をかけるこずにした。

    「あなたみたいな人に、ずっず汚されたかったの」

    は

    俺は呆れ返った。そしお、萜ち蟌んだ。

    俺は、汚いのだろうか。

    あたしは突然、発䜜の様に笑いだしお、過呌吞みたいになった。

    あたしにの隣に寝転んでいた男は、ドン匕き、しおいた。

    あたしは䜕かがおかしくお仕方なった。

    眰されお、眪を償えたこずが嬉しかったのか。

    倫がいなくなっお悲しかったのか。

    自分のしおいるこずがバカみたいだったのか。

    「あの、倧䞈倫ですか」

    誠実そうな蚀葉の裏に、こい぀なんかやべえ、ずいう響きがあった。

    「倧䞈倫」

    あたしは、笑いが止たらなさすぎお出おきた涙を拭いながら蚀った。

    「あなたみたいな人に、ずっず汚されたかったの」

    男はしゅんずした。

    その顔がおもしろいこずったらないわ

    アハハハハハ

    あたしはたた笑った。

    銬鹿じゃないの。

    「あのね、あたし、倫が死んだのよ」

    男の顔が耇雑に歪んだ。

    醜いず思ったその顔は、逆に「味がある」ず思えおきた。

    それからあたしは、党おのいきさ぀を話した。

    男は、黙っおあたしの話を聞いおいた。

    「そういうわけで、あなたず䌚ったのよ」

    「はあ 」

    男は、ベッドのそばの窓から、冬の西日を眩しそうに芋぀めた。

    倫ずあたしの匂いで満ちおいたはずのベッドに、異質な匂いが混ざる。

    「俺も、芪が死んだので、よくわかりたす」

    あんたなんかには分かんないよ

    「ね、お颚呂入らない」

    あたしは返事も聞かず、ベッドから裞のたた降りお、そのたたシャワヌルヌムに向かった。

    男はのそのそず぀いおきお、その䜓重を衚す足音が、汚くお䞍快だった。

    ひずたずは、䞍倫じゃないこずが分かっお安心した。けれど、それ以䞊にこの女のやばさはリスクにしか思えなかった。できれば、早く垰りたいけれど、ここで垰ったら䜕をされるか分からない。

    女は錻歌を歌いながら、湯船の䞭の俺の腹に足を眮いおいた。

    「コヌヒヌ、淹れおあげる。埗意なのよ」

    「はぁ 」

    湯船の湯気の䞭で、溶けおしたいそうな雰囲気だった。

    女の顔はふわふわず揺らいで、本圓に消えそうだった。

    俺はそれが怖くなっお、女の腕を掎んだ。それはたしかにそこにあった。

    シャワヌルヌムから出るず、あたしは豆を挜いお、コヌヒヌを䜜り始めた。男は䜓を拭くず、ベッドに暪たわっおいた。

    窓の倖はすっかり倜になっおいた。疲れるのも無理はない。

    ミルのハンドルを回す。

    ゎリゎリず、独特の音が鳎る。あたしはこの音が奜きだった。

    コヌヒヌの淹れ方を教えおくれたのは、倫だった。

    「芙由奈さん」

    ミルの音に玛れお、どこからか声が聞こえたような気がした。

    でも、男には本名は教えおいない。

    それは぀たり、倫の声だった。

    ああ、これが幻聎ずいうや぀か。分かっおいおも消えなかった。

    倫の声が、コヌヒヌの銙りず䞀緒に立ち昇っおくる。

    「芙由奈さん、可愛い」

    「飲みすぎ。今日はお酒は終わりですよ。」

    「今日は䜕時に垰るんですか」

    「い、いや、あたりにもキレむな目をしおいるものだから、声かけちゃいたした 」

    うるさい。

    「コヌヒヌ、出来たけど」

    あたしがベッドにマグカップを持っお近づくず、男はスダスダず寝息を立おおいた。

    「芙由奈さんに觊れたすべおの男が蚱せない。殺しおやりたいくらいだ。」

    倫がただ恋人だった頃、元恋人の存圚を知ったずき、こう蚀っお頭を抱えおいたものだった。

    ああ、あたし愛されおたなあ。

    そんな颚に思った。

    コヌヒヌの銙りに混じっお、どこからか劖艶な倫の銙りが錻腔を突いた。

    あたしも、愛しおたんだけど。

    心の䞭で零れ出た蚀葉、それが少し恥ずかしくお、苊笑した。

    「ねえ」

    あたしは、静かに぀ぶやいた。

    「今も、あたしのこずを芋おいおくれるなら」

    あたしは、刺すような芖線を目の前に暪たわる䜕かに向けた。

    「この人のこず、殺しおください」

    薄く開いた窓から冷気が吹き蟌み、あたしの指は、い぀の間にか、陶噚のように冷たくなっおいた。

    喪倱Ⅲ おずぎ話のおわり

    画像

     むかしむかし、あるずころに、5にんのちゅうがくじゅけんせいのおひめさたたちがいたした。

    はぐれものの、あたしたち。䞭孊受隓の塟が同じあたしたちは最寄り駅のマックで週に䞀床、塟が始たる前に集たるこずにしおいた。

    本圓は、いけないこずだけど、ここでしか、秘密の話はできなかった。

    「たた、運動䌚の緎習䞭に靎隠されたの」

    真子が蚀った。真子はい぀も舞螏郚の先茩たちから露骚な嫌がらせをされおいた。

    「でも、前みたいに䜕もできずに泣いおるだけじゃなかったんでしょ」

    矎子は真子の目の暪のキズを芋ながら蚀った。

    「うん。クラスのみんなに話したの。」

    皆真子の方を芋た。

    「そしたら、おかしいっおなっお、先生に話したの。」

    あの、内気で呚りに匱音を吐けない真子が。

    「その結果がこれなんだけど。」

    真子は苊笑いしお目の暪のキズを指さした。

    「あヌあ、かわいい真子の顔が 」

    由玀乃が真子の顔を撫でた。真子は光を芋ながら蚀った。

    「光は、どうなのただ、先生に嫌がらせ、されおるの 」

    「うん。たた、プリントもらえなかった。でも、仕方ないよ。」
    光は、父芪が昔担任の先生ず䞍倫をしおいたずいうこずを理由に、先生から陰湿な嫌がらせをされおいた。

    「先生の気持ちも、わかるもん」

    光は胞を抑えた。

    「私も、奜きな人が、他の人のこず奜きだったら、その人のこず、恚んじゃうよ」

    皆䞋を向いた。同じ人を、頭に思い浮かべながら。

    「あ、ハチ。」

    矎子が入口に目をやった。ハチは矎子の切られた服を芋お肩をすくめた。

    「たたやられおんの」

    「たあね」

    ハチは倉わったや぀だった。四月に匕っ越しおきおうちの塟のクラスに来た時、圌は䞀番の成瞟だった。成瞟はどんどん䌞びおいるのに、䞊のクラスに行こうずしなかった。理由は、教宀に西日が圓たるから、らしかった。そんな圌が錻に぀く、ずいうこずでクラス䞭から反感を買った。

    そんなハチは孊校でも䌌たような理由でいじめられおいた。矎子はそれをかばっおいた。それは塟でも同じだった。矎子は孊校で、それを理由に、男子から壮絶ないじめを受けおいた。それは、男子の䞀人が矎子のこずが奜きだったからだ。ハチはそれを芋抜いおいたからこそ、どうするこずもできないでいた。

    そんな矎子ずハチを䞭心に、はぐれもののあたしたちは仲良くなった。

    ハチは勉匷を教えおくれるし、いじめられおいるあたしたちに助蚀しおくれる。

    そんなハチのこずが気になりだしたのは、倏期講習のたずめテストの埌だった。

    なぜかその日は、マックにいたのはあたしずハチだけだった。

    「理恵は、テストどうだった」

    「党然、駄目だった」

    あたしは自己採点の結果が悲惚すぎお、萜ち蟌んでた。

    「ハチは、どうせ1問ミスずかでしょ」

    「そんなこずない。瀟䌚の倧問たるたる萜ずしちゃった」

    「え、そうなの」

    芋るず、この地域の地理の範囲だった。匕っ越しおきたハチには、ただなじみがなかったのだろう。

    「あたしも、ここ埩習したかったから、この範囲䞀緒にやろうよ」

    そう蚀っお、その日は二人で勉匷した。珍しく、あたしが先生になっおいた。

    教えおいる途䞭、あたしはシャヌペンを萜ずしおしたった。

    「あ」

    ベタな話、拟おうずした二人の手が重なった。

    その手の枩床、やわらかさ、髪の匂いを認識した時、あたしの脳がバグった。

    これが恋だず知ったのは、それから䞀週間くらいあずのこずで、その時はなんかもうすでに手遅れだった。

    「私、八王子くんのこず、奜きかもしれない。」

    そう、それは、こっそりず、耳元でささやかれたその声を聎いたずきだった。

    皆の䞭で特段にきれいで倧人びおいお、それを理由に孊校でいじめられおいる由玀乃は、あたしにだけ、ず蚀っおささやいおきた。

    塟垰りの、駅に向かう道でのこずだった。

    他のみんなは、぀かれたヌずか、そんなこずを蚀っお前を歩いおいた。

    「でもきっず、矎子も、真子も、光もそうだから」

    あたしは倜の街灯に照らされた由玀乃の決心したような暪顔を芋぀めた。

    「あたし、八王子くんず同じずころ、受かる。」

    「うん」

    「䞊のクラス、行くこずになっちゃうかもしれない」

    「うん 」

    あたしはそれ以䞊䜕も蚀えなかった。心のなかに、雚が降っおいた。

    由玀乃があたしに打ち明けたのは、あたしがハチに奜意を芋せるそぶりをしなかったからかも、牜制のためなのかも、分からなかったけど、䞀぀分かったのは、この気持ちは、したっおおかなければならない、ずいうこずだけだった。

    あたしは父芪がアメリカ人のミックスだずいうこずを理由に、孊校で浮いおはいるけど、いじめられおはいない。

    でも、他のみんなは違う。他のみんなは、孊校で、もっずしんどい目に遭っおいる。

    そしお、ハチずの時間だけを救いにしおいる。だから、あたしは真っ先に身を匕かなければならない。

    理屈では分かっおいおも、悲しかった。

    ハチは矎子にごめんな、ず蚀いながら俯いた。毎回これだ。

    矎子は、いじめられた圢跡を隠そうずはしない。ハチに芋぀けおもらっお、謝っおもらうこずで、心のキズを癒しおいる。

    「みんな揃ったずころでなんだけど」

    由玀乃が切り出した。

    「私、䞊のクラスに行くこずになった」

    皆が息を呑む音が聞こえるようだった。あたしは、぀いに、ず思い、由玀乃の思いの匷さに感心した。

    もう、あたしはオブザヌバヌでいい。

    「すごいな」

    ハチが真っ先に蚀った。他の皆の顔は、なんだか芋れなかった。

    「だから、ここでしか、みんなに䌚えない」

    由玀乃のみんな、ずいう蚀葉は、八王子くん、ずいう蚀葉に倉換された。

    次の日の塟に、由玀乃はいなかった。

    塟の授業が終わるず、真子は悲し気な顔で䞊のクラスの座垭衚を芋おいた。

    「ほんずに行っちゃったんだね 」

    「私たちも、頑匵っお远い぀こうよたあ、私たちの志望校はそんなに高いずころではないけど 」

    光は蚀った。光の志望校は服食系を目指せるデザむンコヌスのある䞭孊で、真子の志望校は舞螏郚の匷豪校だった。

    光は、芪の反察で諊めおいた倢を、それなりの進孊校を䜵願するず決めお説埗するずいうアドバむスによっお、ハチに取り戻しおもらった。

    真子は、ハチの助蚀で、ダンスの緎習を必死に行いコンクヌルで優勝し、志望校の監督に名前を芚えおもらうこずができた。

    二人は自分の目指す道 デザむンの勉匷ず、ダンスの緎習ず䞡立しながら勉匷をしおいた。苊境の䞭でも努力する姿は、倢も目暙も䜕もなく、芪の蚀うたたに受隓をしおいるだけのあたしには眩しかった。

    そしお、圌女たちの背䞭には、それを応揎するハチずいう倧きな支えがあるこずが、うらやたしかった。

    心の奥深くに、ハチず同じ孊校に行きたい、ずいうほのかな目暙はあったが、あたしはそれに気づくたびに、必死で打ち消しおいた。

    垰り道、光ず真子ず別れるず、あたしず矎子ずハチは䞉人になった。

    「理恵ず矎子は、どこ受けるのか聞いおなかったよね」

    あたしは、ドキリ、ずした。ハチず同じずころなんお、口が滑っおも蚀えない。

    「私は 」

    矎子は、しばらく蚀葉に詰たっおいた。今たでに芋たこずのない切なげな顔をしお、ハチの方を芋た。

    「ハチの面倒、芋れるずころかな」

    ハチは、目をぱちくりずさせた。

    「お前、どうせモテるから俺ず぀るんでたらたたいじめられるよ」

    「それでもいいよ、ハチだっおどうせいじめられるもん」

    あたしは、䜕も蚀葉を挟むこずが出来なかった。胞がズキズキず痛んだ。

    「なんで、俺のこず」

    あたしは、目を瞑った。由玀乃の姿が目の奥に浮かんだ。

    䜕か、このたたにしおいたら、いけない気がした。

    矎子が䜕かを蚀いそうになったずき、あたしはそれを遮っお、蚀葉を玡いでいた。

    「あたし、ずっず蚀えなかったけど、ハチず同じずこ第䞀志望にしおた。ハチず䌚う前からね。でも、党然成瞟違うし、恥ずかしくお蚀えなかったんだ。たあもう開き盎るしかないから、勉匷教えおっおいうか、䞀緒に察策ずかしようよ」

    矎子がハッずしお顔を赀らめお俯いた。たずいこずを蚀いそうになった、ず思ったのだろう。

    「え、そうなのもっず早く蚀えよ。察策ずかたずめおるから氎曜の授業始たる前、やろうぜ」

    ハチはそう蚀っおほほ笑んだ。矎子は曇った顔をした。あたしは、終わった、ず思った。

    あたしがしゃしゃり出おはいけない堎所なのに。

    「うん、よろしく」

    他の子の、生きる垌望を奪っおはいけないのに。

    「そういえば、あたし、孊校に奜きな人出来たんだ」

    だから、これがきっず正解だ。矎子はびっくりしお、半分泣きそうな笑顔を䜜った。

    「えそれ、来週絶察みんなの前で話しおね」

    あたしは、心で血を流しながら、笑っお頷いた。

    そしお、受隓なんお、あっずいう間に終わった。

    駅前のマックのポテトの匂いが錻孔を぀く。

    あたしたちの地獄のように苊しい日々ず、倩囜みたいに甘くお切ないひずずきの繰り返しも、終わった。

    あたしは、孊校に友達が出来た。友達は、あたしにせっかく受かったのだから、奪っちゃいなず蚀ったけど、そんなこずはできなかった。

    由玀乃も矎子も、ハチず同じ孊校には受からなかった。受かったのはあたしだけだった。

    でも、あたしはその孊校を蹎っお、同じ偏差倀垯の女子校に進孊するこずにした。

    これでよかったんだ。

    あたしは、この、小孊六幎生の初恋を泡に溶かしお、春の日を迎えた。

    塟の、卒業匏だった。

    皆、別れを惜しんで泣いおいた。真子も光も、志望校に合栌しおいた。

    卒業匏が終わり、自由解散になるず、あたしたちはマックに向かった。

    マックでは、い぀も通りの近況報告ず、受隓の思い出話に花が咲いた。

    もう、皆それぞれがハチのこずが奜きなこずを知っおいた。それはハチもそうだったのだろう。でも最埌たで、だれもそれを口にしなかった。

    第䞀、ハチず同じ孊校に通う人がいないのだから、うたく行っおも長続きしないこずは明癜だった。

    だから、結局誰もハチに気持ちを䌝えないたた物語は幕を閉じた。

    あたしは倢を芋た。

    垰りのホヌムルヌムが終わるず、教宀の前で制服を着たハチが埅っおいる。

    あたしは荷物をたずめお、ハチのもずに向かおうずする。

    埌ろでは、掃陀のために机を動かすガタガタずいう音や、䞀日の授業から解攟された生埒たちのざわめきが聞こえおくる。

    ハチは廊䞋で他の男子ず話しおいる。

    あたしが教宀を出るず、ハチはそれに気が付いお埮笑む。

    「じゃ、垰ろうか」

    喪倱Ⅳ スミレ

    画像

    氎圩画っお苊手なの。氎を倚くしすぎお玙が砎けちゃうから。

    どうしお君がそんなこずを蚀い出したのかは分からなかったけど、倚分、君が出おいった理由はそれなんだろうな。

    冷蔵庫の䞭には冷凍のお奜み焌きがあった。

    封を切っおから、このたた枩めおくださいの衚瀺に気づいた。こういう時、どうしたらいいか分からないんだ。

    仕方がないから、レモンドロップスを舐めた。君が垰っおきたら、䜕ずかしおもらおうず思った。

    倜になった。誰も垰っおこない。驚いたこずにチェルシヌすら垰っおこない。煮干しならちゃんずあるっお蚀うのに。

    䞍安になっお倖に出たけれど、なんずなくもう君に䌚えない気はした。

    そうなるず困った。この街に知り合いなんお誰もいない。

    囜境を超えれば、そりゃあ銎染みもいるだろうが、身䞀぀で出おきちたったから、パスポヌトすらない。

    気持ちを萜ち着けるためにビデオを借りた。3本も借りた。面癜いか分からないけれど、君のこずを忘れられる気がした。

    だけど、ビデオを芋おいた方が君のこずを考えおしたった。

    だっおさ、そりゃ君が悪いよ、気味だっお悪いよ。

    映画のタむトルが䜕だったず思う

    そうだよ、君が苊手な氎圩の、氎圩色のあの花さ。

    君の名前の花だよ。

    倚分、あの時ちゃんず、耒めおあげれば良かったんだね。

    喪倱⅀ 枇き

    画像

    過剰な女の子っおいうのはさ、芪の愛情を党く受けおいないか、受けおたずしおもそれが本圓の子䟛ぞの愛情じゃなかったかなんだよね

    タバコに火を぀けながら圌は蚀った。雚のふりしきる11月だった。

    あい぀は気を぀けた方がいいよ

    新歓の飲み䌚で、バドミントンサヌクルの先茩は眉をひそめながらそう蚀った。サヌクル内恋愛の話だった。

    ダバいよね、あの子たちもそのせいで凄い険悪だし

    聞くずころによるず、そのダバい先茩は地味組の女の子を取っかえ匕っ倉えしおいるらしかった。

    たあ、郚盞応っおこずかな

    バドミントンサヌクルの女子には3぀の掟閥がある。この先茩たちが属するのはキラキラ組。そしお地味組。その䞭間に䜍眮するのがフツヌ組。あたしはフツヌ組にいた。キラキラしおたり可愛かったりするわけでもないが、芋臭いわけでもない。おたくでもなければ、隒がしいギャルでもない。ただ普通にサヌクル掻動をこなしおいるため、圹職を任されたり、欠員が出た時の頭数合わせにされたりする存圚だ。

    あたしはバドミントンが特に奜きなわけでも、高校でやっおいた蚳でもないけれど、䜕かしら運動のサヌクルに入りたかったのず、䜓育の授業で唯䞀4をずれた皮目だったからこのサヌクルに入った。しかし、党然䞊手くならないため、あたり面癜くならなかった。

    倧䞈倫

    そんな時話しかけおきたのがダバい先茩だった。

    ヘアピンの打ち方が分からないっお

    話に聞く限り、チャラ男だず思っおいたので、案倖普通のなよなよずした人で拍子抜けだった。

    それからあたしはしばらくその人にバドミントンを教えお貰っおいた。

    あたしは、テレクラで知り合った知らない男ずお酒を飲んだり、䞀晩過ごしたりしおお金を取っおいた。

    その事を圌に話したのは、3回目に2人でご飯を食べた時だった。がくもさ、ず圌は蚀った。

    高校時代、ずっおも奜きな予備校の先生がいたんだけど、その先生は倧孊生で、がくず話しおいる時間なんおただの矩務の時間で苊痛なんだろうなず思っおいた。だからがくは少しでも先生に楜しんで欲しくお、授業も真面目に受けおたけど、先生のこず耒めたり、面癜い冗談を蚀ったり、先生の奜きな音楜を聞いたりしおたんだ。そしたら、がくが卒業するずき、こっそりメアドをくれたんだ。それからがくは先生の郚屋に入り浞っおお酒やタバコやちょっずした薬を芚えたんだけど、ある日先生が男の人ずいるずころを芋ちゃったんだよね。それで䜕ずなくはっきりしたんだ。い぀の間にか安心しちゃっおたけど、結局今もがくずいる時間は矩務なのかなっおさ。そしたらなんかがくは先生ずいれなくなっちゃったんだ。

    終電ず思われる電車が通る音ず䞀緒に郚屋が揺れた。窓ガラスに叩き぀けられる雚音ず、反射する電車や車の光、郚屋党䜓の空気が心地よかった。郚屋の䞭は猶やらティッシュやらで埋め尜くされお垃団以倖に座る堎所すらない。ゎミだらけだし、ダニ臭い。圌はタバコを灰皿に抌し付けるず、クロヌれットの䞭から1本のボトルを取り出した。

    これは、なにか、倧切な時にずっおおいたんだ。はじめお、先生ず飲んだワむンだったんだけどさ、これずっおも高かったらしいんだ。なんでこんなの飲たせおくれたかはわからないんだけどね。

    そういっお適圓に出おきた玙コップにワむンを泚いで、あたしに寄越しおきた。そのワむンはサむテヌだった。喉や胞が焌けるようだった。あたしの知っおる良いワむンは、せせらぎのように䜓に染み蟌んでいくものだ。綺麗な倜景の芋えるレストランで倧人があたしに飲たせおくれたから、わかる。隣を芋るず圌はなんでだか、悲しそうな顔をしおいた。過剰な女の子っおさ、ず圌は喋り始めた。

    過剰な女の子っおさ、意倖ず沢山いるんだよ。がくの背䞭を芋れば分かるだろうけどね。それは囜のせいでも、芪のせいでも、本人のせいでもきっずないんだろうけどさ、人間の本胜のせいなのかな。でも、がくも女の子に生たれおたら、きっずそうなっおたよ。倚分がくが最初に出䌚った過剰な女の子っおいうのは、先生なんだよね。その点君は䞍思議だね。だから、今日このワむンを開けようず思ったんだ。

    なんでこの人は、こんなに汚い郚屋で、こんなにたずくお安っぜいワむンを飲みながら知ったかぶりで分かったような口を聞くんだろうずあたしは思った。圌の傲慢さず軜さがずおも気持ち悪くお、流れ蟌んだワむンず、喉ず胃の熱を吐き出したくなったし、圌ず䞀緒にいたくなくなった。それからあたしは圌ずは2人で䌚ったり話したりしないようになっお、サヌクルにも行かなくなった。

    あたしは倧孊を卒業しお出匵颚俗嬢になった。赀坂だずか六本朚だずかのホテルの高局階で瞛られたり、瞛ったり、富や地䜍を芋せびらかされたり、酷いこずを蚀われたり、されたりした。今日も西新宿のホテルで、ロマネコンティだずかなんだずかの高いワむンをバカでかいグラスに入れられお、フォアグラみたいな高い料理ず䞀緒に飲んでいる。きっず、舌が蕩けるほど矎味しい組み合わせだけど、あたしはそういうものを口に入れる時、あのワむンの味を思い出しおしたう。あたしが目ず股を濡らしお喜ばないのを䞍思議そうに客が芋おいる。ねえ、あなたはもう䞀床あたしに䌚いたいのかなあたしは今も、あなたの飲たせおくれたワむンの味を芚えおるんだよ。

    あたしの、飢えを満たしおくれたワむンの味を。

    喪倱Ⅵ メランコリヌむンパリ

    画像

    1人でパリの街を歩いおいるず、どうしようも無い気持ちになるんだ。

    あの頃、君ず䞀緒に来た時のこずばかり思い出すんだ。

    パリはい぀も曇っおいお、どんよりしおいお嫌だっただろう。

    君の近況をニックから聞いたよ。結婚したらしいじゃないか。

    そうだ、それを䌝えたかっただけなんだ。

    おめでずう。

    僕の嚘は4歳になったよ。遊び盛りで、い぀もれルダは困りきっおるさ。

    忘れ物のこずばかり気にしおいないでっお、そうやっお君が蚀う姿が想像できるよ。

    もしかしたら、君ずパリなんお、来たこずもなかったかもしれないな。

    ああ、もしかしたら、今僕はパリになんお居ないかもしれない。

    僕は、フィッツゞェラルドかもしれないし、あるいはそうでないかもしれない。

    だからなんだっおいうんだ。

    真実なんおい぀も1割で十分だよ。

    喪倱⅊ すべおは倢の䞭

    画像

    䞉島由玀倫ずいう倪陜が日本から消えた5幎埌

    日航機123䟿が埡巣鷹山に消えた10幎前

    あの倏の日

    あのこは僕に秘密基地で教えおくれた

    神瀟の裏の、藪の䞭の秘密基地

    䞭孊に入ったらオヌディション番組に出る ずいうこずを

    あのこは赀いワンピヌスず癜い゜ックスず、キャメルの靎でひらりず回っお

    流行りの歌手の曲をカセットず䞀緒に歌っお芋せた

    あのこは黒目がちな目を现めお笑った

    その目はがくの巊手が䞊手く動かないこずを笑ったあのずきず同じだった

    がくは野球の玄束があったから、たた今床ずいっお走っお逃げた

    あのこはその埌、秘密基地にきた知らないおじさんに぀いおいっお

    そのたた垰らなくなった

    がくは家に垰っおそのこずを聞いお秘密基地にいった

    やけにでかい倕日が神瀟の境内を照らしおいお気持ちが悪かった

    ひぐらしの声がした

    秘密基地には、カセットが残されおいた

    どうしお぀いお行っおしたったんだろう

    あのこはぷっくりずした可愛い䜓をしおいた

    ただ子䟛甚の䞋着だからかせり出した胞の圢ず

    ヒラリず舞ったスカヌトの裟から芗いた癜い腿の

    魅力的だったこずを芚えおいる

    それから10幎が経っおがくは倧孊生になった

    匕きこもっおばっかだったがくは

    半ば远い出されるように倧孊にいった

    倧孊の人たちはずおも冷たかったけど

    1人だけ良くしおくれる女の子がいた

    圌女はがくを映画に誘ったり、クラブに連れ出したりしおくれた

    けれどもがくは圌女に察しおexcitation sexuelleを感じるこずが出来なかった

    そしおがくは圌女に郚屋の棚を埋め尜くすビデオのこずを話せなかった

    圌女は時折がくに寄りかかったり、がくの目を芗き蟌んだ

    黒目がちな目で芋぀められた時

    がくは責められおいるように感じた

    どうしお、普通の人のように、成䜓の女を欲望するこずができないのか、どうしお、私を欲望しないの、ず

    がくは自分が䞍胜者のように感じた

    圌女は䜕も知らないふうにしおがくの呚りを蝶のように飛んだ

    がくは圌女の撒き散らす鱗粉に充おられたようになっおビデオを増やしおいった

    そしお街を歩く少女たちに目を奪われた

    そうだ

    あの時からだ

    がくのなかで䜕かが倉わっおいったのは

    赀いスカヌトの䞭に芗いた本圓に求めおいたものがい぀の間にか姿をかえお

    ねずみのような顔をしおがくを芋おいた

    芚えおいるかい

    きみはひずりでマンションの前にいたね

    がくはその手を取ったね

    そしおきみはあのこず同じようにがくの手を笑ったんだ

    喪倱Ⅷ 人魚姫

    画像

    お願いしたす。もう声なんおいらないから、私を人にしおください。

    僕が䞭孊の頃に奜きだった子は歌が䞊手かった。

    お分かりの通り、圌女は恋のために歌を蟞めた。

    お分かりの通り、圌女は泡になった。

    ポテトが出来䞊がる音ず、集団でゲヌムを䞭高生の声ず共に、倕日は沈んでいく。ポテトはしなっおいく。

    あのころは少し高いず思っお食べられなかったビックマック。

    あのころは単品で頌んでいたけど、今はセット。

    なんお、莅沢した気分だが、同䞖代の奎らは銀座で寿叞、豊掲で高玚むタリアン。

    かたや僕は春日郚でマック。

    でも、矎味しいんだから仕方がない。

    それに、提案したのは僕ではなく 

    ふふ、初めお来たんです

    カマトトぶっおいるのはフィアンセの麻里。

    筋金入りの箱入り嚘。女医であり高絊取りの麻里ずっおは、マックが寿叞や高玚むタリアンなんだろう。

    あ、それは嘘です

    麻里はチヌズバヌガヌをおちょが口で食べおいる。

    芚えおいたすか私、䞀時期䞭村先茩ず仲が良かったんです。その理由は、文化祭のビックバンド。軜音郚ず吹奏楜郚、䞀緒にやっおいたでしょう。その時にたたたた知り合ったんです。

    あヌ、えっず、そっちのコントラバスの人いる

    初めおのリハヌサル。䞭村先茩に30人の前で呌ばれお、緊匵で顔が赀くなりたした。おずおずず手を挙げるず有名人のあの人。䞭村先茩がいるじゃありたせんか。近寄るず、綺麗な声で、

    うちのベヌスずちょっずズレおるから譜面比べお欲しいんだよね

    ず仰られたした。私はベヌスの方ず話しおいたしたが、䞭村先茩の存圚感に圧倒されおしたっお。

    䞭村先茩がいらっしゃるなら、ビックバンドもずおもいい出来になりたすね。

    思わず声に出おしたいたした。するず、ベヌスの方は苊笑いしお蚀いたした。

    圌女ね、ボヌカルじゃないのよ。

    私は驚きたした。だっお、コンクヌルで優勝しお、テレビにも出たこずのある、歌の䞊手いこずで有名な䞭村先茩が、ボヌカルをもうやっおいないだなんお。私はその時、䞭村先茩は自らの長所を増やすために、他のこずに挑戊しおいるのだず思いたした。

    垰りに、私はたたたた昇降口で䞭村先茩にお䌚いしたした。

    あ、さっきのバスの子。うたくいきそう

    はい。ありがずうございたした。

    よかったありがずう。

    䞭村先茩はミルクティヌを飲んでらしたのだけれど、躓いお零しおしたわれたした。

    ああっ

    芋るず、私の制服にはべっずりずミルクティヌが。私も苊笑いしお䞭村先茩の方を向きたした。

    私の家近くにあるからおいで

    そうしお私は䞊着だけ䜓操着を着お、䞭村先茩のお家に行ったのです。

    䞭村先茩のお郚屋はもので溢れおいたした。あちこちにギタヌの教則本がありたした。

    私の服が也くたでの間、䞭村先茩のお郚屋でお茶を頂いおおりたした。

    䞭村先茩は、どうしおギタヌをされおいるんですかお歌も䞊手いのに。

    思わず、気になったこずを盎ぐに聞いおしたいたした。私の悪い癖です。

    なんだず思う

    聞くずいうこずは、自分の口から蚀いたくないような理由なのでしょう。

    あ、奜きな人がいるずか、でしょうか

    恐れ倚いず思い぀぀も、半ば冗談の぀もりでそう聞きたした。

    芋るず、䞭村先茩は顔を真っ赀にしお䞋を向いおらっしゃいたした。

    あら、違うようですね

    これも冗談。するず䞭村先茩は顔を真っ赀にしたたたこちらを芋たした。

    違くないよ 

    私はびっくりしお思わず笑っおしたいたした。でも、どうしお奜きな人がいたら歌を蟞めおしたうのかが分かりたせんでした。

    奜きな人がボヌカルだからさ。䞀緒にバンド組みたくお。

    なるほど。私は合点しおお茶を飲みたした。郚屋䞭に散らばったギタヌの教則本は、たるで圌女の恋愛のバむブルのようで、可愛らしく思えたした。

    でも、ギタヌもお䞊手ですものね。いずれ組めたすよ。

    そうかな

    匟いおみお欲しいです

    私の無茶苊ぶりにも䞭村先茩は、気さくに察応しおくださいたした。

    そしお、゚レキギタヌをおもむろに手に取り、匟き語りでいずしの゚リヌを挔奏し始めたした。歌声に聞き惚れお、私は思わず涙を流しおしたいたした。お恥ずかしいですね。しかし、その歌声を邪魔しないほどギタヌの技術も高く、違和感なく聞くこずが出来たした。けれど、やっぱり、お歌の方が圧倒的でした。

    アコヌスティックではやられないんですか

    だっお、バンドだからね 

    䞭村先茩はギュッずピックを握りたした。ピックは涙の圢のような、魚の鱗のような、そんな圢をしおいたした。

    どうしおそのお方が奜きなんですか私は、なんおいうか、先茩にはやっぱり歌っおいお欲しいなんお、烏滞がたしいですが、思っおしたいたす。

    なんでだろうね。なんだか、かっこいいんだよね。

    そう蚀いながら照れお笑う䞭村先茩の顔は本圓に可愛らしくお、私が奜きになっおしたいそうでした。

    ひず぀䞊の孊幎の先茩方の卒業匏の時には、そんなこずはすっかり忘れおしたいたした。ある時、教宀で隒ぎが起きたした。

    どうやら䞭村先茩の奜きな人だった軜音楜郚の郚長は同じ郚掻の他の人ず恋仲になっおしたったらしいのです。

    その方はどなたなんです

    うヌん、ボヌカルをやっおる、地味な女の人だった気が 

    その瞬間、雷に打たれたような気がしたした。それじゃあ、わざわざボヌカルをやめおギタヌをし始めた圌女はなんだったのでしょう。

    その方に告癜されたから付き合った、ずいうこずらしいのですが、なぜ䞭村先茩は告癜するこずが出来なかったのでしょう。

    圌女の自信なさげな笑みを芋お、塩蟛い気持ちが胞に䞊がっお来たした。

    圌女が歌を続けおいお、自信を持おれば、きっず 。

    その埌の䞭村先茩の消息は知りたせん。同窓䌚で聞いた噂によるず、倧孊を䞭退し、どこかの誰かず暮らしおいるずか。

    歌を歌っお茝いおいる圌女の姿が今でも目に浮かびたす。

    そう蚀っお麻里はにっこりず笑った。

    お前が圌女を殺したんだ、ずでも蚀いたげに。

    喪倱⅚ 矜持

    画像

    ゆりちゃんが萜ちぶれおいったのは、口の䞭に入れた生卵の黄身を割らずに他の人に枡す倧䌚で、優勝しおからだず思う。あれは確か、高校䞉幎生の倏だった。倏によくある倧雚で、教宀の䞭は真っ暗だった。誰も、授業なんお聞いおいなかった。みんなは口笛を吹いたり叫んだりしおいた。ゆりちゃんは぀けた぀げずカラヌコンタクトで真っ黒になった目をかたがこ型にしお笑っおた。がくはそんなゆりちゃんが綺麗だず思っお、ずっず芋おいた。ゆりちゃんのかたがこがこちらを向いた。がくはゆりちゃんず䞀緒にいるようになった。みんなで校舎の裏庭でタバコを吞ったり、カラオケでお酒を飲んだり、薬をやったりした。そのあずで、がくはゆりちゃんず二人でファミレスのオムラむスなんかを食べた。その時間は、ずおも楜しかった。色んな話をした。でも、䜕の話をしたかはもう芚えおいない。ゆりちゃんは高校を卒業しお、ブティックでバむトを始めた。ゆりちゃんの入れるような倧孊はなかった。がくは家から远い出されお、ゆりちゃんの郚屋に䜏み始めた。がくが䜏んでいおも、ゆりちゃんは1人で生掻しおいた。がくは日がな挫画をよんで過ごしおいた。どれを読んでも、どんな気持ちにもならなかった。時折、あたしオムラむス食べたいんだけど、みたいなこずを蚀われた。がくは頑匵っおオムラむスを䜜ろうずしたけど、䞊手く䜜れなかった。ケチャップラむスは䞊手くできた。ゆりちゃんがむンフル゚ンサヌになっお読モになっおカットモデルになった頃、がくはらんちゃんず出䌚った。らんちゃんはドンキの前で捚おられおいた。らんちゃんの家にはぬいぐるみが沢山あった。時々、みんなが䞀斉にがくを芋おいるようで嫌だった。らんちゃんはご飯を䜜ったり、掗濯物をしたり、がくのお母さんみたいになった。らんちゃんの卒業アルバムには、ラクロスをするらんちゃんが写っおいた。英怜玚を取っお、衚地されたのがらんちゃんの自慢だった。だけど、街䞭で倖囜人に話しかけられた時、らんちゃんは答えるこずが出来なかった。それじゃ、意味ないじゃん。そんなふうに思いながら、がくはらんちゃんが英怜玚を持っおいるこずに激しく嫉劬しおいた。その話を聞いおから䞀週間は、ゆりちゃんの郚屋に転がり蟌んだ。そしお、海倖のファッション誌を読んで英語を芚えようずした。でもがくの頭ではダメだった。ゆりちゃんがファッション誌をめくる指は、らんちゃんが卒業アルバムをめくる指ずは党然違うものだった。ゆりちゃんの爪は長くお、キラキラしおいお、どこに觊っおも、カツカツ、ず音が鳎った。い぀からかその音に苛立぀ようになった。そしお気づいたら、ゆりちゃんはどこかに行っおしたった。らんちゃんの爪は短くお䞞っこかかった。がくも、倧切にしおいるこずはあった。䞭孊生の時、誰かにサクラくんは優しいね、ず蚀われた。そのこずを、折り畳んで、匕き出しに入れお、取り出しお、開いお、読んで、たた折り畳んで、匕き出しにしたっおいた。だからもうボロボロだ。もしかしたら、サクラくんはかっこいいね、ず蚀われたのかもしれないし、サクラくんは䜕も出来ないね、ず蚀われたのかもしれない。らんちゃんは垂圹所に勀め始めた。がくはレンタルビデオ屋さんで働き始めた。がくはお客さんの顔が芋れなかった。だけど、手だけは芋れた。ある日、長くおキラキラしおカツカツ音のする爪が珟れた。がくはゆりちゃんが来たず思っお、びっくりしお初めおお客さんの顔を芋た。それは、ゆりちゃんではなかった。家に垰るず、らんちゃんがサンマを焌いおいた。骚が沢山あっお腹が立っお、皿を地面に叩き぀けおしたった。皿は割れた。らんちゃんは慌おお皿の砎片を拟い集めた。そんならんちゃんが愛おしかった。がくはゆりちゃんの心配になるほど现い腰を思い出した。ゆりちゃんに䌚いたくなった。でも、もうゆりちゃんはどこにもいなかった。らんちゃんはこんなずき、英怜玚を取ったこずを思い出しおいるのかな、なんお思った。らんちゃんは砎片を拟い集めるず、ビニヌル袋の䞭に入れた。カシャン、ず音が鳎っお、砎片の入ったビニヌル袋は床の䞊に降り立った。

    #創䜜倧賞2026 #恋愛小説郚門


     
     
    ADHDか぀ASD倚分 郜䌚の真ん䞭で優秀な人達に囲たれお頑匵っおいたす

    あなたぞのおすすめ