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Photo bysora_to_ame

【エッセイ】コーヒーとパンと

     朝起きてアイフォンの時計を見る。まだ早いので二度寝を試みる。簡単にはあの世界には戻れないが、目を閉じるだけでも効果はあると自分に言い聞かせる。もう充分かと、またデジタル時計を見るとまだ三十分しか経っていない。しょぼつく目を擦りながら、一階へ降りる。

     気持ち程度の朝の身支度をしつつ、コーヒーを淹れる為のお湯を沸かす。水がぐつぐつになる前に、台所でラップに包まれた全粒粉の丸パンをトースターに入れる。かつての水が沸き立つ前に、瓶の蓋を開け、コーヒーの空気を胸いっぱいに吸い込む。焦茶色の香りが肺中を埋め尽くしてくれる。休日なのも相まって、豆の香りを嗅ぐこの瞬間が大好きだ。

     ペーパードリップする為の道具をセットし、銀のじょうろから、盛り上がった黒土にお湯を流し込む。一回目はしばらく待ってから、二回目以降を注ぐと良いらしい。この間にトースターからの「チンッ」という合図を受け取ると、次はパンに向き合う時間だ。まだ皮膚がびっくりするくらいの熱を持ったパンを、トースターから取り出す。これまた手作りのマスタードを、小さめのスプーンに乗せ、真っ二つになったパンの片面に塗りたくる。ここにスライスチーズを挟めば完璧だ。良い頃合いのホットコーヒーと共にお盆に乗せる。

     口下手で不器用だけど、底知れぬ深い愛を持った父の、心地良い香りのするコーヒーと、繊細で怒りっぽいけど、誰よりも広い優しさを持った母の、白い湯気をまとったパンとを、二人に重ねる。見事な朝食セットを食べながら、録画してあるバラエティをテレビで鑑賞する。一口目のコーヒーを口にする前に、ミニカップに二つ掬い、お供えするのを忘れてはいけない。マッチに火を灯し、おりんを二度鳴らして、朝の挨拶と一日の平穏を祈る。今日も妹は僕らに微笑みかける。

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