
他人事だからとやかく言えるんだよ。 【漂着日記】
2026-03-03 19:07
学校で新学期の履修相談をしてきた。
学食がやってなかったので、ラウンジの屋台で売っている麻婆豆腐のお弁当を買って、いつものフリールームで食べた。うちの大学は、一年前くらいから保健系の支援に力を入れているらしく、出入り自由の静かな部屋が用意されている。窓際カウンター席の観葉植物が新しくなって、花瓶に枝物が生けてある。オフィス臭の中に土と草の匂いが混ざっていた。
私はこの部屋に置かれたノートに、同志たちが書き込んだ一言やイラストを見るのが好きだ。誰かがちいかわのイラストを描いていたので、隣にハチワレを描いた。なんだろう、ニセモノ感……。ガリガリと空回りするボールペン、ここでインクが終わった。
学校に住み着いている猫は、寝ているところを起こされたからか、今日は妙にそっけなかった。コンクリートの地面にウェットフードが置かれていた。どんどん贅沢になるな、お前。
猫ベットの中でにゃむにゃむ言っている。
こいつ、使わないくせにあと二つもベッドを持っているんだ。山中の一角に積み重なったベッド、銀の器、ロープのおもちゃ、まさに猫神社。
時間があったので、図書館で本を読んだ。
『乙女の本棚』シリーズの『夜叉ヶ池』。立東舎の本シリーズは、文豪の名作と人気イラストレーターの世界観を同時に楽しむことができる。
今回、泉鏡花を初めて読んだ。恋に盲目で大暴れの白雪はティーンエイジャー感があって可愛らしい。人間たちは大傲慢で、男社会なのも見えて、それに目を逸らさずに悪役として描写しているのが愛おしい。
それから、眷属たちがわちゃわちゃしていて可愛い。メインの神だけでなく、彼らにスポットが当たっているのが愛おしい。唐突に現れた喋るカニに理解が追いつかず、何かの暗喩なのかと思ったが、絵本であるおかげでメルヘン脳にスムーズに移行できた。
絵で補うことで失うものもあるが、『夜叉ヶ池』ではメリットを得られたようだ。同シリーズにある太宰治の『猿ヶ島』は、イラストがない方がいいような気がしている。まだ読んでないが、予想外に翻弄されることを期待している。
そして醍醐味の、身を滅ぼす程、世界を滅ぼす程の純粋な愛と情景描写。
恋愛ものの映画とかドラマは苦手だけど、文字だと愛してしまうのは何故だろうか。ラストは綺麗にハッピーエンド?になっているのが良い。池や川底、小石が輝くのを「鱗」と表現しているのが綺麗で言い得て妙なのだ。今日以降、私は水辺の風景に、じっと潜む巨大な主を想像するのだろうな。オーバーライド。
エドワード・ゴーリーの『不幸な子供』も読んだ。
ラストをぼかすところに愛を感じて、ニマニマしていた。「 お父様が生きていた背景に、誰かに助けてもらった事実と、それに恩を感じて命を尊ぶ人格があれば、シャーロット・ソフィアの命が助かる未来があるのでは?」と。運命を用いてこんなにも彼女を痛めつけておきながら、彼女が完全に死んだことを描かないのは、人間に対する希望なのだろうか。それとも、悲惨すぎるその結末に文字を与えることすらできなかったのだろうか。
ずるいずるい。残酷だと評判なのに、未来は決まっていなかったのだ。
でも実際、彼女と同じ立場に置かれたら、私はかなり序盤で死んでいると思う。
他人事だから希望を感じてしまうんだね。
でもそれに乗っかるのも悪くないんじゃないかな。