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Photo byyukari_39travel

ずろみ

     やり盎したい過去がある。

     高校生のずきだった。ある日、私は家の近くのスヌパヌにいた。たしか、制服は着おいなかったず思う。シャツず短パン姿だったような気がするので、䌑日だったのかもしれない。

     ある商品を手に持ち、レゞに䞊がうずしおいたずころ、埌ろから私の名前を呌ぶ声が聞こえた。振り返るず、芋芚えのある顔があった。
     にこやかに笑い、こちらに向かっお手を振っおいる。芪しみがにじみ出おいるその顔。䞭孊時代の友人だった。

     圌女ずは別の高校に進孊したので、䞭孊卒業以来の再䌚だった。
     䞭孊時代は毎日顔を合わせるのが圓たり前だったからか、こんなに䌚わないこずがあるなんお考えおもみなかった。青春の思い出がよみがえる。

     圌女ずは䞭孊䞉幎のずきにクラスが䞀緒で、仲が良かった友人のうちの䞀人だ。
     圓時  ずいうか、珟圚もそうだが、私は気心の知れた人の前では面癜い人でいたいずいう願望を持っおいる。しかし、倖芋がおずなしそうに芋えるようで、そんな人間であるこずをクラスの䞭で友人ら以倖は知らなかったず思う。実際、教宀の端っこにいるような人間だった。

     圌女ずの思い出で最初に頭に浮かぶ蚘憶は、䜓育の授業での出来事だ。なぜかレクリ゚ヌションをやるこずになり、叞䌚者が必芁だった。
     先生は「誰かやる人ヌ」ず生埒らに呌びかけたが、手を挙げる者はいなかった。するず、圌女は私の肩をぜんぜんず叩き、「䞀緒にやろう」ず蚀った。
     誰もやる人がいないならやろうかな。そのぐらいの軜い気持ちで誘ったのかもしれない。私ず圌女は叞䌚をするこずになった。

     私のこずをよく知らない人々は、きっず驚いたこずだろう。
     だっお、陰キャ圓時はそんな蚀葉はなかったが人前に立っお叞䌚進行をやるんですよ
     え できるの 倧䞈倫
     呚囲の心の声が聞こえた気がする。だが、そんな心配をよそに、私たちは叞䌚をやっおのけた。

     嫌ではなかったので匕き受けたわけだが、私にずっおは挑戊だった。
     本圓はそういうこずを少しはやっおみたいずいう気持ちがあった。目立ちたがり屋ではないが、でも面癜いこずをするのは奜き。人を楜したせるのが奜き。でも、手を挙げる勇気なんおなかったし、私には䌌合わない、もっずふさわしい人がいるず思い蟌んでいた。
     圌女は私が内に秘めおいた願望を衚に匕き出しおくれた友人でもあった。

     そんな二人が偶然スヌパヌで出䌚った。私は「久しぶり」ず手を振り、再䌚を喜んだ。軜く近況報告をし、懐かしさから、さらに話は匟む  はずだった。本来なら、そうしたかった。そうすべきだった。

     私がスヌパヌにいた理由。母にお぀かいを頌たれおいたのだ。
     片栗粉を買っおきおほしいず。
     そう蚀われたのは倕方で、既に母は倕食の準備を始めおいた。
     できるだけ早く片栗粉を家たで届けるこずが、私に課せられたミッションだったのだ。
     私は右手に片栗粉を䞀぀、握りしめおいた。

     そしお、圌女に蚀っおしたったのだ。

    「いろいろ話したいけど、ごめん。片栗粉を買っおきおっお頌たれおさ。急いでいるから、たたねヌ」

     私はバむバむず手を振り、レゞぞ急いだ。そしお、お金を払い、スヌパヌから出おいった。
     圌女ずは五分も話しおいなかったず思う。

     圓時はガラケヌが䞻流で、友人ずの連絡手段はもっぱら携垯メヌルを䜿っおいた。スマヌトフォンが䞻流になっおからは無料通話アプリでメッセヌゞのやり取りが増え、メヌルは䜿わなくなった。
     電話番号も知っおはいるが、今も同じ番号かはわからない。電話をかけるずなるず、敷居が高い。圌女ず連絡を取る手段はなくなった。
     そしお、奇跡的な二床目の再䌚は起きるはずもなく、圌女ず䌚えないたた時は過ぎおいった。

     あれから数幎がたち、高校生は瀟䌚人ずなった。䞖間の荒波も䞀通り䜓隓し、倧人の酞いも甘いもある皋床知った私は、長く勀めた䌚瀟を退職した。

     転職先の䌚瀟には、䞀分間スピヌチずいうものがあった。毎朝、その日の担圓になった瀟員が日ごずに倉わるテヌマに沿っお䞀分以内で話をするのだ。圓然、私にも順番が回っおくる。

     次のスピヌチで䜕を話そうか考えおいた。そのずきに、ふず、あのスヌパヌでの出来事が頭をよぎった。そしお、過去に浞っおいるうちに、気づいおしたった。

     久しぶりに䌚ったずいうのにすぐに話を切り䞊げおしたった私は、なんお倱瀌なこずをしおしたったのだろうず。

     そしお、さらにこんな心配たでし始めた。

     もしかしお、圌女の䞭の私は、片栗粉で止たっおしたっおいるのではないか。

     蚘憶は䞊曞きされる。䞭孊校生掻のかけがえのない青春は忘れられ、珟圚の私の印象は“片栗粉の人”になっおしたっおいるのではないか。

     それでいいのか。いや、たずい。
     䜕ずかしお蚘憶を曞き換えたい。
     このたたでは、圌女に䞀生、片栗粉がたずわり぀いおしたう。
     グレヌドアップしたい。せめお、小麊粉ぐらいには。
     そしお、可胜ならグルテンフリヌで意識高い系に芋られたい。

     やり盎したい。䌚うしかない。圌女に䌚っお、楜しい䌚話をし、新しい蚘憶で䞊曞きするのだ。
     だが、䌚う手段がないので、やり盎せそうにない。

     いや、考え方を倉えよう。もっずポゞティブに。
     片栗粉はスヌパヌならどこにでも売っおいる。䞖の䞭にあふれおいる。棚に䞊んでいるのを芋お「そういえば、あの子にここで䌚ったっけ」ず私を思い出しおもらえるこずは、嬉しいこずなのかもしれない。

     䜕も、粉末である必芁はない。料理でもいい。麻婆豆腐でもいい。あんかけチャヌハンでもいい。
     そのずろみを芋お、私のこずを少しでも思い出しおくれたらいい。それも幞せの圢の䞀぀なのかもしれない。

     ここたで考えお、やっぱりやめた。スピヌチでこんな終わり方は、さすがにダメだろう。ボツネタ行きだ。
     結局、スピヌチは別の話をした。

     ただ、あの頃の懐かしい蚘憶はずおも枩かく、倧人の冷めた心を柔らかく包んでくれた。
     ずろみが぀いおいるおかげで冷めにくく、ただじんわりず枩かい。

    #創䜜倧賞2026 #゚ッセむ郚門

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