
未練配達員 ❷
配達員同士で飲み会をしようと決まった。「なぜこの仕事をしているの」隣合わせた相手に話を振ってみる。
「初めてのバイトが配達でね、暑い日も重いビールケースを抱えてエレベーターのないマンションの最上階まで運ぶわけ。三度目の留守。泣きながら荷物を持って階段を下りた。車に戻って躊躇わずにダンボールをバリバリむしり一本取ってぬるい液体を一気に飲み干したのさ。飲酒運転と横領でクビになったがね。気づくとこの仕事に戻ってしまうのさ。未練というか」
隣のテーブルの爺さんの話はこうだ。
「ウチは親がアル中でね、勝手にビールをカートンでポチるわけ。置き配とかない時代でね、とにかくピンポンが怖かった。電源を切ってトイレに隠れたものさ。恐ろしいことに何度も来るんだ。幸い親は肝硬変で他界してくれたが、ピンポンに怯えて過ごした日々の辛い記憶は消えない。誰かに同じ思いをさせてやりたい、とまでは言わんがね」
最後に全員揃って『みれん酒』を熱唱した。
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