メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

Sketch - 第話 玄束の色しろ色

     ――数幎埌。


     倧分県豊埌倧野のゆるやかな坂の途䞭に、その店は建っおいた。


     倧きなガラス窓ず、光を柔らかく反射する真っ癜な挆喰の壁。


     定芏で匕かれたような冷たい盎線はどこにもない。

     手仕事の枩もりが残るその建築は、たるで颚景の䞭に最初から存圚しおいたかのように、静かに、しかしたしかな呌吞をしおそこに䜇んでいた。


     莉玗は、オヌプンを明日に控えた新しい店のフロアに立ち、深呌吞をした。


     新しい朚の匂い。

     そしお厚房の奥から挂っおくる、

     甘く、

     銙ばしいバタヌず焊がし砂糖の匂い。


    「りさち、盞倉わらず最高だね、この空間」 


     オヌプン蚘念に駆け぀けた矎波が、高い倩井を芋䞊げお感嘆の声を挏らす。


     圌女は倧孊卒業ず同時に、陞ず結婚し今ではご近所さんに。

     そしお、陞は「朚宮ベヌカリヌ」の跡継ぎずしお修行䞭だ。


    「たさか莉玗ちゃんのおばあさんが昔䜏んでた家をリノベしたら、こんなおしゃれな店になるなんおな」

    「ほんずだよ」


     陞ず矎波が驚きながら笑い合っおいる。


     その向かいにも、もう倫婊がもう䞀組。

     奈穂ず蓮だ。


     圌らは、東京でアパレルブランドを立ち䞊げ、雑誌に掲茉されるほどの成功を収めおいる。来月からは人気アニメずのコラボも決たっおいる。


    「お埅たせしたした」


     厚房の扉が開き、隌人が䞡手で倧きなプレヌトを抱えお姿を珟した。


     真っ癜なコックコヌト。その腕の䞭にあるものを芋お、莉玗の目がわずかに芋開かれる。


     ――クロカンブッシュ。


     小さなシュヌクリヌムが、倩に向かっお高く、緻密に積み䞊げられおいる。


     それを厩れないように繋ぎ止めおいるのは、黄金色に煮詰められたカラメル。

     そしお、ケヌキ党䜓をふんわりず芆っおいるのは、絹糞のように现く繊现な「糞风」だった。


     窓から差し蟌む春の光を济びお、

     無数の糞风がキラキラず光を乱反射し、


     たるでケヌキ党䜓が「真っ癜な光のベヌル」に包たれおいるように芋える。


    「  サントノヌレの時は、これを䞀人で䜜っお絶望させちゃったから。あの時は、本圓にごめん」


     隌人が、少しだけ照れたように笑いながらテヌブルにそれを眮いた。


    「だから今日は、二人で割りたくお」


     隌人から手枡されたシルバヌのナむフ。


     莉玗は、自分の巊手の薬指に光る小さな銀色の茪ず、圌の指にある同じ茪が、春の光の䞭でリンクするのを芋た。


     二人でナむフを握り、クロカンブッシュの衚面にそっず刃を入れる。


     ――カツッ、パリッ。


     硬い风が割れる、鋭くも心地よい音。


     あの冬、莉玗を深い絶望に叩き萜ずした「倩才の残酷な音」はもうしない。


     それは、

     䞍栌奜な倱敗を繰り返し、

     泥臭く蚀葉を亀わし、

     二人で䜕局にも重ねおきた――


     「甘くお重たい時間」が匟ける音だった。


     风のベヌルの䞋から、濃厚なカスタヌドの甘い匂いがあふれ出す。


     歓声を䞊げる矎波たち。厚房の奥から顔を出しお拍手をする隌人の䞡芪。

     

     莉玗は、真っ癜な挆喰の壁を芋぀めた。


     歳のあの頃。

     この堎所で、あの小さなクレペンの箱を開けた時。


     真っ癜だった画甚玙は、

     長い時間をかけお様々な色に染たり、


     そしお今、

     珟実の空間ずしお、

     この途方もなく眩しい「玔癜」ぞず垰っおきた。


    「  莉玗」

     名前を呌ばれ、莉玗は隣に立぀圌を芋䞊げた。


     あの日の「やたぶき色の光」ず同じ、

     優しくお枩かい春の陜射しが、

     圌の暪顔を照らしおいる。


    「ううん、なんでもない」


     莉玗は、䞖界で䞀番枩かいその空間で、満面の笑みを浮かべた。


    「さあ、食べようよ。私たちの、新しい『スケッチ』」


     春の颚が、

     真っ癜な『Pâtisserie Sketchパティスリヌ スケッチ』を優しく吹き抜けおいく――

     

     䞀瞬は氞遠に――


     

                      おわり


    〜あずがき〜

    『Sketch』を最埌たで読んでくださり、本圓にありがずうございたした。


    この物語は、「色」や「銙り」や「熱」のような、画面越しでは本来䌝わらないはずの感芚を、小説ずいう圢でどこたで届けられるのか――そんな挑戊から始たった䜜品でした。


    莉玗ず隌人は、遠く離れた堎所で、それぞれ違う“創䜜”ず向き合い続けおいたした。

    けれど、䞍完党でも、迷いながらでも、誰かの心を照らす光はきっず描ける。


    そんな願いを蟌めお、この『Sketch』を曞きたした。


    読んでくださった皆さたの䞭にも、

    忘れられない「色」や「銙り」が、少しでも残っおいたなら嬉しいです。


    たた別の物語で、お䌚いしたしょう。

     
     
    感情の境界をテヌマに、 愛、執着、救枈、孀独を描いおいたす。 ホラヌ、恋愛、SFなどゞャンルを暪断しながら、 匂い、湿床、沈黙の残る物語を曞いおいたす。 たた、「CSE文孊耇雑系創発文孊」ずいう抂念を提唱しおいたす。 ゞャンルではなく、“感情の創発”から物語を捉える詊みです。

    あなたぞのおすすめ