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朧姫の恋歌


    #創作大賞2026 #恋愛小説部門

    朧姫の恋歌
    ——時空を超えたスペクタルロマンス——

     あらすじ:
    平安時代、和歌を愛する左大臣家の姫・朧と、新興貴族・高光の恋が静かに芽吹く。二人を結ぶのは和歌だけ――だが父の失脚が、朧の運命を揺るがす。

    そんな二人をそっと見守るのは、夏休みの宿題「他の惑星の実体験レポート」を携えて地球を訪れた、宇宙人の恋人たちアリオとルナ。観察するうちに二人も気づいてしまう。自分たちの気持ちに。

    平安の和歌と宇宙の旅が交差する、時空を超えたラブストーリー。愛は地球にも宇宙にもある――。

    登場人物:
    朧(おぼろ) ―― 左大臣家の姫君。古今和歌集を諳んじる才女。霞のようにふわっとしているが、大切なことはすべてわかっている。不思議な引力で人を惹きつける、天性の愛され力の持ち主。
    高光(たかみつ) ―― 新興貴族の若き男君。知性と品格を兼ね備えたイケメン。宮中随一のモテ男でありながら、目には朧だけ。一途な溺愛ぶりで宮中の姫たちを嘆かせる。
    澄姫(すみひめ) ―― 凛とした美しさを持つ姫君。高光を慕っていたが、朧の前に潔く身を引く。やがて朧の最も信頼できる友となり、自分らしい愛の形を見つけていく。
    アリオ ―― 地球より文明の発達した惑星の17歳。好奇心旺盛で純情。夏休みの宿題レポートのために地球を訪れ、朧現象に感化されて高光より詩的になっていく。
    ルナ ―― アリオの同級生。冷静で観察眼が鋭い。地球旅行記の作成担当。愛の嵐に巻き込まれながら、少しずつ自分の気持ちを受け取る練習をしていく。

    本文:

    第一章 地球という星
    「ねぇ、アリオ、宿題の体験観察実技レポート、どこの星にする?」
    ルナが窓の外を眺めながら言った。窓の向こうには、無数の星々が静かに瞬いている。この惑星では、それが当り前の夜の景色だった。
    「どこでもいいけど……あ、これ見て」
    アリオが学習端末を覗き込んで声を上げた。
    「地球って星、面白そうじゃない?水が表面を覆っていて、生命体が言語を持っていて——しかも、恋愛という概念があるらしい」
    「恋愛?」
    ルナが首を傾けた。
    「互いを愛しむ感情らしいんだけど……僕たちの星の教科書には載っていない概念なんだ」
    二人は顔を見合わせた。
    「行ってみようか」とアリオ
    「行ってみましょう」とルナ
    こうして宇宙の片隅で、地球観察の体験旅行が始まった。

    「ねぇルナ、地球って恋愛がある星なんだね」
    「ええ」
    「僕たちの星には、もうその概念がないじゃない」
    ルナはしばらく考えた。
    「この惑星にも、恋愛は、あったらしいわ。教科書に少しだけ載っていた」
    「どんなの?」
    「好きな相手をどこまでも追いかけたり、手放せなくなったり……それが争いにもつながったと」
    「へえ」アリオは首を傾けた。「じゃあ今の僕たちは、恋愛していないの?」
    ルナはペンを止めた。しばらく黙っていた。
    「……わからない」
    「わからないの?」
    「相手を縛るのが恋愛なら、していない。でも」
    「でも?」
    ルナは窓の外を見た。「あなたのことを考える時、胸が暖かくなる。それが何なのかは——」
    「地球で答えが見つかるかもね」
    ルナは小さく笑った。「そうかもしれない」

    「ねぇ、ルナ」アリオが学習端末を覗き込んだ、「地球では『恋愛は苦しい、助けて』という声がたくさんあるみたい」
    ルナは眉を寄せた。「どれほど?」
    「かなり多い。でも……」アリオは首を傾げた。「苦しいなら、止めればいいのに」
    ルナはしばらく考えた。「やめられないから苦しいのかな?」
    「なんで?」
    「恋愛に憧れているのか、本当に誰かを想っているのか、自分でもわからなくなるから」
    アリオはきょとんとした。「その二つって、違うの?」
    「全然違うわ」ルナは静かに言った。「憧れは自分の中にある夢。でも本当の憧れの誰かを見つけることは——憧れの人を想うことは——」
    「は?」
    「相手の存在が、自分より大切になること。」
    アリオはしばらく黙っていた。やがてぽつりと言った。
    「……それって、かなり難しくない?」
    「ええ」ルナは頷いた。「だから恋愛は、感情が絡むのよ。ハイレベルなのよ」
    二人はしばらく黙って星を眺めた。
    「だから地球へ行って、確かめてみたい」
    ルナは手帳を開いた。
    本物の恋愛とは何か——それがこの旅の、本当のテーマかもしれない。

    「地球に決めた!」
    アリオが勢いよく立ち上がった。さっきまでの毛だるそうな顔はどこへやら、目がきらきらと輝いている。
    「落ち着いて、アリオ」
    ルナは微笑みながら、手帳を取り出した。この惑星では時代遅れとされる紙の手帳を、ルナはお気に入りで持ち歩いていた。
    「どうせ行くなら——」
    ルナはペンを走らせながら言った。
    「詳しい地球観察レポートを作成しましょう。先生もきっと喜ぶわ。地球の恋愛という概念、しっかり観察して記録する」
    「地球観察レポート!いいね!」
    アリオはもう上着を手に取っている。
    「ねぇルナ、早く行こうよ」
    「まだ準備が——」
    「準備なんていつでもできる!」
    ルナはため息をついた。でもその口元は——
    ちゃんと笑っていた。

    「そうだね、ちゃんと調べて、地球観察レポートを作ろう」
    アリオは神妙な顔でそう言ったけれど、足はもうそわそわと動いている。指先も落ち着か投げに学習端末を叩いている。
    ルナはそっと観察した。
    ——まるで子供みたい。
    地球という未知の星の情報を検索しながら、アリオの表情はクルクルと変わる。驚いたり、首を傾げたり、突然「へえ!」と声を上げたり。
    「ルナ、聞いて。地球の日本という場所はね——」
    「知ってる。平安時代でしょう」
    「なんで知っているの?!」
    「あなたが検索する前に、わたしはもう調べ終わっています」
    アリオはぽかんとした顔でルナを見た。
    ルナは手帳を静かに閉じた。表紙には既に小さな文字で書いてある。
    『地球観察レポート——恋愛という概念の観察記録』
    アリオがようやく気づいた。
    「……ルナ、もしかして一番楽しみにしているの、君じゃない?」
    ルナは窓の外を向いた。
    「さあ、出発しましょう」

    宇宙船へ
    「行くよ、ルナ!」
    アリオは走り出した、廊下を抜けて、格納庫へと続く通路を書けていく。
    ルナは静かに後を追いながら、手帳をバッグにしまった。
    格納庫に着くと、そこには小さな宇宙船が静かに待っていた。二人乗りの、こぢんまりとした船だ。特別派手でもなく、特別速くもない。でも二人にとっては——
    世界中のどこへでも連れて行ってくれる、大切な相棒だった。
    「整備は昨日したから大丈夫」
    アリオはもう操縦席に滑り込んでいる。計器を確認する手つきだけは、さっきのそわそわした子供っぽさが嘘のように、しっかりしていた。
    ルナは助手席に座り、シートベルトを締めた。
    「目的地は?」
    「地球、日本、平安時代」
    アリオが静かに入力した。
    窓の外で格納庫のシャッターがゆっくりと開いていく。その向こうには——満天の星空が広がっていた。
    ルナは手帳を開いて、一行目を書いた。
    「地球観察レポート、第一項——出発」

    第二章 朧の姫君
    宇宙船の窓から、青い星が見えてきた。
    「綺麗……」
    ルナが思わず呟いた。手帳を持つ手が止まっている。
    「でしょ!」アリオが嬉しそうに振り返った。「水の惑星なんだって。あの青いところが全部、水なんだよ」
    「信じられない」
    ルナはしばらく黙って地球を見つめていた。やがて静かにペンを走らせた。
    「地球観察レポート第一の観察——地球は青くて美しかった」

    その朝、朧姫は縁側に座って、静かに和歌を諳んじていた。
      春の夜の 夢ばかりなる 手枕に かひなく立たむ 名こそ惜しけれ
    御簾の向こうから、春風がそっと吹きこんでくる。薫物の香りが部屋いっぱいに広がって、朧姫はふわっと目を細めた。
    女房の一人が声をかけた。
    「姫様、高光様からお文が届いております」
    「まあ」
    朧姫はのんびりと振り返った。慌てるでもなく、顔を赤らめるでもなく、ただ——
    「どんな和歌かしら」
    それだけが気になるようだった。
    文を開くと、澄の香りとともに、丁寧な筆跡で一首綴られていた。
      朧夜の 霞をわけて さす光 君がこころに 届かむとすも
    朧姫はしばらく、その歌をじっと見つめた。女房たちがこっそり顔を見合わせている。
    やがて朧姫はしばらく、その歌をじっと見つめた。女房たちがこっそり顔を見合わせている。
    やがて朧姫は静かに微笑んで、硯を引き寄せた。

    その頃——都から少し離れた木立の中に、小さな光がふわりと降り立った。
    「着いた……」ルナが息を吞んだ。
    木々の間から見える空は、信じられないほど澄んでいた。遠くから、微かに管弦の音が聞えてくる。
    「ねぇルナ、あれ見て」アリオが木立の向こうを指差した。
    瓦屋根の美しい邸が、春の霞の中にぼんやりと浮かんでいた。
    「地球観察レポート第二の観察——地球の日本、平安時代。春。どこからか音楽が聞こえる。そして——なんと美しい霞だろう」

    邸に入ると、薫物の香りが濃くなった。
    「この香り、なんだろう」アリオが鼻をひくひくさせた。
    「地球人が鼻や気から作る香りらしいわ。記録済み」ルナは既に手帳に書きこんでいた。
    その時——御簾の向こうから、静かな声が聞えてきた。誰かが和歌を諳んじている。
    二人は思わず足を止めた。
    言葉の意味は分からない。でも——
    その声の持つ、不思議な暖かさは。その旋律のような響きは。
    言葉を越えて、二人の胸にふわりと届いた。
    「ねぇルナ」アリオが珍しく静かな声で言った。「あの声、なんな……胸に響かない?」
    ルナは答えなかった。ただ手帳に、静かにこう書いた。
    「地球観察レポート第二の観察——言語は異なる。しかし声に宿る感情は、どの星でも同じらしい。これは重要な発見である」
    そして少し考えてから、こっそり付け加えた。
    「とても、美しかった」

    御簾の向こうでは——朧姫が書き上げた返歌を、静かに眺めていた。
      さす光 霞はしらず されどなほ 春の夜ごとに またるものを
     (あなたの光に、霞は気づかないふりをしている。それでもやはり、春の夜のたびに、待ってしまうのです)

    木立の陰で——
    ルナが手帳を胸に抱きしめた。アリオがそっとルナの顔を見た。
    「ルナ、顔が赤いよ」
    「……地球は気温が高いのよ」
    「そう?僕は全然暑くないけど」アリオが首を傾げた。
    ルナは手帳で顔を隠した。「続けましょう、観察を」
    「はーい」アリオはにっこりして、また庭を見回した。

    その時、邸の奥から別の気配がした。女房が小走りで廊下を渡っていく。
    「姫様、澄姫様がお越しになりました」
    「まあ、澄姫が。どうぞ」
    しばらくして——凛とした足音が近づいてきた。
    澄姫は朧姫の前に座ると、まっすぐに朧姫を見た。その目は澄んだ水のように透き通っていた。
    「朧の君、少し気になることがございまして」
    「なぁにかしら」朧姫はふわっとした笑顔のまま、澄姫を見た。
    澄姫は一瞬、言葉を止めた。
    ——またこれだ。
    どんな時でも、この方はこうして静かに微笑んでいる。慌てることも、身構えることも、なく。
    ただそこにいるだけで——場がふわりと和んでしまう。
    「都で少し、良くない噂が流れております。朧の君のお父上のことで……」
    澄姫は慎重に言葉を選んだ。
    朧姫はしばらく黙って、庭の霞を眺めた。やがて静かに言った。
    「澄姫、わざわざ知らせに来て下さったの」
    「……はい」
    「ありがとう」
    それだけだった。
    澄姫は胸が締め付けられた。この方を守りたい、と思った。誰かに頼まれたわけでもなく、気づいたら、そう思っていた。

    木立の陰で——ルナが手帳に静かに書き込んだ。
    「地球観察レポート第三の観察——朧という人物について。彼女は何もしていない。ただ存在しているだけなのに、なぜか全員が彼女を中心に動いている。これは地球で最も不思議な現象のひとつである」
    アリオがルナの手帳を覗き込んだ。「ねぇルナ、僕たちも朧に引き寄せられてない?」
    ルナはペンを止めた。「……観察中よ」

    その夕暮れ——高光が邸の近くを通りかかった。偶然だった。本当に、ただ偶然だった。
    木立の向こうに瓦屋根が見えた時——薫物の香りが漂ってきたとき——高光の足が止まった。
    そして御簾の向こうに、霞のような姿が見えた。
    朧姫は夕暮れの庭を眺めながら、静かに和歌を諳んじていた。その横顔に、橙色の夕陽が柔らかく降り注いでいた。
    高光は動けなかった。
    この方は、何故こんなぁにも——

    木立の陰で——アリオがルナの手帳を覗き込んだ。
    「地球観察レポート第四の観察——夕暮れ時、一人の男が偶然この邸の前を通りかかった。彼は足を止めた。朧という人物に見とれている。これが地球人の言う、恋というものに繋がる出逢いなのだろうか」
    アリオが静かに言った。「ねぇルナ、僕たちが初めて会った時、こんな顔してた?」
    ルナはペンを止めた。夕陽が二人の頬を橙色に染めていた。
    「……観察を続けます」ルナは照れているようにも見えた。

    その夜——高光は朧姫に文を送った。
    夕霞 たなびく庭に 立ちどまり 帰るに帰れぬ 我ぞはかなき
    (夕霞たなびくあの庭の前で立ち止まり、帰ることもできず、我ながら情けないことよ)
    宇宙船の中で——アリオとルナは向かい合って座っていた。
    やがてアリオが静かに言った。「ねえ、恋愛って——自分では気づかないうちに始まってるんだね」
    ルナはペンを止めた。窓の外に、春の朧月が静かに浮かんでいた。
    「地球観察レポート第二の観察まとめ——恋愛とは、気づかないうちに始まっているものらしい。これは地球だけの話では、ないかもしれない」
    アリオがルナの横顔を見た。月の光が、ルナの頬を静かに照らしていた。
    アリオは何も言わなかった。ただ、そっと窓の外の朧月を見た。

    第三章 朧姫に忍び寄る影
    春が深まるにつれて——都の空気が少しずつ変わっていった。
    朧姫の邸に出入りする人の数が、気づけば減っていた。女房たちは表向き変わらず働いているが、その目に微かな不安の色が滲んでいた。父、左大臣の顔に、疲れが増していた。
    それでも朧姫は——縁側に座って、静かに和歌を諳んじていた。
    世の中は 夢かうつつか うつつとも 夢とも知らず ありてなければ

    その頃、都の中心では——左大臣への風当たりが強くなっていた。
    政敵たちが動き始めていた。笑顔の裏で言葉の刃を研ぎながら、少しずつ、少しずつ、——左大臣の足元を崩していた。
    高光はその動きを、少し離れた場所から見ていた。新興貴族である高光には、その争いに加わる立場も力もなかった。ただ見ている。それしかできなかった。
    しかし——ある夜のことだった。
    「左大臣家とは、どのようなお付き合いで?」
    振り返ると、宮中で見かけたことのある中納言だった。
    「さほど深いお付き合いでは……」
    「そうですか」中納言は静かに微笑んだ。「左大臣家が傾いた後に、新しい風が必要になります。あなたのような若い力が……役に立つかもしれない」
    高光は答えなかった。男は去っていった。
    闇夜の中に一人残された高光は、しばらく動けなかった。胸の中で何かが軋んでいた。朧姫の横顔が、浮かんで消えた。

    数日後——澄姫が再び朧姫の邸を訪れた。
    「朧の君、都の噂をお聞きになりましたか」
    「どんな噂かしら」
    「お父上のお立場が……かなり難しくなってきているようで」
    しばらく沈黙が続いた。庭では春風が静かに吹いていた。
    やがて朧姫が言った。「澄姫、あなたはなぜいつも知らせに来てくれるの」
    澄姫は少し驚いた顔をした。「それは……」
    言葉は続かなかった。自分でもわからなかった。高光への恋心が朧姫への敵意に変わるはずだったのに。なぜか気づいたら、この邸に足が向いていた。
    朧姫は静かに微笑んだ。「ありがとう、澄姫。あなたがいてくれて、嬉しい」
    澄姫は胸が熱くなった。この方には、敵わない。

    木立の陰で——アリオとルナは並んで座っていた。
    「ねぇルナ、貴族って、華やかに見えるけど……その華やかさ守るために、みんな必死なんだね」
    「そう。この社会では——どんなぁに教養があっても、和歌が美しくても、父親の立場がすべてを左右する」
    「朧には関係ないのに」「そう、朧は何もしていない」
    「地球観察レポート第三の観察——この社会では愛だけでは足りない。身分、権力、後ろ盾……見えない壁が恋人たちを隔てている。しかし朧という人物は、その壁をものともしない不思議な引力を持っている」
    「私たちの惑星では、こんな壁は存在しない。だからこそ——地球の恋愛は、こんなぁにも切なくて、美しいのかもしれない」

    その夜、高光は朧姫に文を送った。
    嵐をば 知らぬ霞の 頼もしく いかなる風も 包みてしかな
     (嵐を知らない霞よ、頼もしいことだ。どんな風も包んでしまうように)
    朧姫は文を読んで、しばらく庭を眺めた。やがて静かに筆を取った。
    霞とて 消ゆるにもあらず 春ごとに またたちかへり たなびくものを
     (霞は消えません。毎年春になれば、またたなびいてみせます)
    文机に筆をおいて、朧姫はふわっと微笑んだ。
    どんな嵐が来ても——わたしはわたしのままでいる。

    第四章 嵐の前夜
    夏が来た。都の空気は重く、湿っていた。
    朧姫の邸では、女房たちの囁き声が増えていた。出入りする人の数はさらに減り、かつて賑やかだった宴の気配は、もうどこにもなかった。
    それでも朧姫は――縁側に座って、静かに和歌を諳んじていた。
    夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづこに 月宿るらむ
    年老いた女房が静かに答えた。
    「姫様はすべてをご存知よ。ただ――あの方はいつだって、嵐の中心で静かに咲いている花のようなお方なの」

    その頃、宮中では――左大臣への包囲網が完成しつつあった。
    政敵たちは巧みに動いた。直接手を下すことなく、噂を流し、文書を操り、少しずつ左大臣の信用を削っていった。表向きはにこやかに挨拶を交わしながら――水面下では容赦なく、確実に。
    高光はその一部始終を、息を呑みながら見ていた。
    ある夜、高光は父に呼ばれた。
    「高光、お前も気づいているだろう。左大臣家が傾いた後、我が氏族に大きな機会が訪れる。これは千載一遇の機会だ。お前はどうする」
    高光はしばらく黙っていた。部屋の隅で燈台の炎が揺れていた。
    「……少し、考えさせてください」
    高光は答えなかった。答えられなかった。

    木立の陰で――アリオは珍しく黙っていた。
    「ねぇルナ、高光って、悪い人じゃないよね」
    「悪い人じゃない。でも――特権階級の中で生きるということは――自分の気持ちだけで動けないということなのよ」
    「それって、苦しいね」
    「地球観察レポート第四の観察その一――特権階級の現実。この社会では個人の感情より、家の利益が優先される。高光は朧を愛しているが、氏族の将来という重荷を背負っている。愛と義務の間で揺れる人間の苦しさ――これは地球特有のものだろうか」

    「だからこそ――この星の恋愛は、こんなぁにも深いのかもしれない」

    数日後――澄姫が朧姫の邸に駆け込んできた。いつもの凛とした足音ではなかった。
    「朧の君!」
    朧姫は静かに振り返った。澄姫の顔が、珍しく青ざめていた。
    「お父上が……左大臣様が、失脚されました。宮中から退くことに……」
    邸の中が静まり返った。女房たちが息を呑んだ。
    朧姫はしばらく、庭の夏木立を眺めていた。蝉の声が、遠くから聞こえていた。
    やがて朧姫が静かに言った。「そう」
    それだけだった。
    澄姫は思わず朧姫の手を握った。「朧の君、入内の話も……これでなくなってしまいます。これからどうなさるおつもりですか」
    朧姫はふわっと微笑んだ。その笑顔を見た瞬間――澄姫の目に、涙が浮かんだ。
    「なぜ……そんなぁに穏やかでいられるのですか」
    朧姫は澄姫の手をそっと握り返した。
    「わたしには、和歌がある。それだけで、十分よ」

    その夜――高光は文机の前に座って、長い時間、硯を眺めていた。
    父の言葉が耳に残っていた。中納言の笑顔が目に浮かんだ。氏族の将来。千載一遇の機会。新しい時代。
    そのすべてが、今夜の高光には――ひどく空虚に聞こえた。
    やがて高光は筆を取った。
    嵐来て 初めて知りぬ 霞こそ 消えぬ命の 強さなりけり
    (嵐が来て初めてわかった。霞こそが消えない命の強さを持っていると)
    今夜こそ、朧姫の邸に文を届けよう。それだけは、誰にも止められない。

    木立の陰で――ルナが手帳を胸に抱きしめた。
    アリオが静かに言った。「ルナ、泣いてる?」
    「泣いていません」「目が光ってるよ」「……月の反射よ」
    アリオはそっとルナの肩に触れた。ルナは手帳を開いて、震える手で書いた。
    「地球観察レポート第四の観察その二――本日、朧姫の父が失脚した。朧姫は泣かなかった。澄姫が泣いた。高光は夜中に文を書いた。そして私は――」
    「私は、この星の人たちが愛おしくなった」
    アリオがルナの手帳を覗き込んだ。今度は何も言わなかった。
    ただ――そっと、ルナの手に自分の手を重ねた。
     
    第五章 朧姫と高光
    秋が来た。朧姫の邸は、すっかり静かになっていた。
    かつて賑やかだった宴の間も、今は風が通り抜けるだけだ。出入りする女房の数も減り、薫物の香りだけが変わらず漂っていた。
    それでも朧姫は――縁側に座って、静かに庭を眺めていた。紅葉が一枚、ひらりと落ちた。
    散るとても またも咲かなむ 秋の花 霞の春を 忘れざるなり

    都では――左大臣の失脚後、権力の地図が大きく塗り替えられていた。
    そんな中――高光の名が、少しずつ宮中で聞かれるようになっていた。
    ただ――偶然だった。本当に、偶然だった。
    左大臣が失脚した混乱の中で、高光がたまたま居合わせた場で、たまたま適切な判断を下した。誰かを蹴落とそうとしたわけでも、誰かに取り入ろうとしたわけでもなかった。ただその場で、正しいと思ったことをしただけだった。
    それが――新しい権力者たちの目に留まった。
    高光は自分の部屋で、一人苦笑した。これが父の言っていた機会というものか。でも自分は何もしていない。ただ朧姫のことを考えながら、日々を過ごしていただけだ。

    そんなある日――高光は朧姫の邸を訪れた。
    御簾の向こうに、朧姫の気配がした。高光は静かに座った。しばらく、二人とも何も言わなかった。秋風が御簾を揺らした。
    やがて高光が口を開いた。「朧の君、わたしは――」
    「高光様」朧姫が静かに遮った。「和歌を、一首聞いてください」
    高光は黙って頷いた。朧姫の声が、静かに響いた。
    嵐にも 消えぬ霞の 頼もしさ 君の光に いまも照らされ
    (嵐にも消えない霞の強さよ。あなたの光に、今もこうして照らされています)
    高光は目を閉じた。胸の奥で、何かが静かに解けていく気がした。やがて高光は筆を取った。その場で、一首詠んだ。
    光とて 霞なければ 照らすもの なし。君ありて 初めて光る
    (光といっても、霞がなければ照らすものがない。あなたがいて初めて、わたしは輝ける)
    御簾越しに、朧姫の微かな笑い声が聞こえた。「まあ、高光様ったら」
    「朧の君」高光は御簾に向かって、静かに言った。「わたしと――ともに生きてください」
    沈黙が続いた。秋風が庭の紅葉を揺らした。
    やがて朧姫が答えた。
    「ええ」
    それだけだった。でもその一言は――
    どんな長い和歌よりも、深く高光の胸に届いた。

    木立の陰で――アリオとルナは並んで座っていた。二人とも、しばらく何も言えなかった。
    やがてアリオが小さく言った。「よかった……」
    ルナは手帳を開こうとして――やめた。今この瞬間は、記録するより感じていたかった。
    「地球観察レポート第五の観察――本日、朧姫と高光が結ばれた。嵐の後に、二人は静かに向き合った。身分も権力も、最後には関係なかった。残ったのは――和歌と、愛だけだった」
    「ねぇルナ、レポート、どんな結論にする?」
    ルナはしばらく考えた。夕暮れの空が、橙色に染まっていた。
    「アリオ、わたしに和歌を教えてくれる?」「え、なんで?」「伝えたいことがあるから」「誰に?」
    ルナはアリオをまっすぐ見た。月明かりのような瞳で。「……あなたに」
    アリオは固まった。頬が、じわじわと赤くなっていった。
    「ぼ、僕は和歌を教えられないけど……」「じゃあ、あなたの言葉で」「ええ」「あなたの言葉で、伝えて」
    アリオはしばらく、ルナの顔を見つめた。夕風が二人の間を静かに吹き抜けた。
    やがてアリオが、ゆっくり口を開いた。「ルナ……僕は、君のことが――」
    その時――朧姫の邸から、静かな管弦の音が流れてきた。まるで二人の背中を押すように。
    「好きだよ」
    ルナは手帳を閉じた。そっと目を閉じた。
    「わたしも」
    夕暮れの空に――星が一つ、静かに瞬いた。

    第六章 朧姫現象、華やぐ
    その日の宮中の宴は、豪華絢爛だった。
    藤原道長の時代、和歌の宴は貴族社会の花形だ。才ある姫たちが最高の衣を纏い、最高の香を焚きしめ、最高の和歌で男君の心を射止めようと虎視眈々としていた。
    特に今夜の標的は――高光だった。
    「高光殿は近頃ますますご出世で」「しかもあのお顔立ち……」「和歌のお上手なこと……」
    姫たちが扇で口元を隠しながら、目だけはきらきらと高光を追っていた。
    高光は確かに、宮中でも際立つ存在だった。知性と品格を兼ね備え、笑えば場が明るくなる。新興貴族でありながら、誰もが一目置く。
    そして今夜――姫その一が満を持して和歌を詠んだ。
    光りさす 君をば仰ぐ 向日葵の 心のうちを 知りたまへかし
    なかなかの出来栄えだった。周りの姫たちがごくりと息を呑んだ。
    高光は――にこやかに微笑んだ。「素晴らしい歌ですね」
    そして視線を御簾の向こうへ向けた。そこには朧姫いた。例によって、ぼうっとしていた。
    高光の目が、吸い寄せられるように朧姫へ向いた。そして一首、静かに詠んだ。
    百の花 競い咲けども 春霞 ただひとところ たなびきて消えず
    (百の花が競い咲いていても、春霞だけはただひとところ、たなびいて消えない)
    御簾の向こうで、朧姫がふわっと顔を上げた。「まあ」それだけ言って、また和歌を諳んじ始めた。

    宴の場が、しんと静まり返った。
    姫その一は扇を握りしめた。姫その二は唇を噛んだ。姫その三は天を仰いだ。
    そしてその三人が、同時に小声で言った。
    「……なぜあの方なの」

    木立の陰で――アリオとルナが固唾を呑んで見ていた。
    「ルナ、今の見た?」「見たわ」「高光、百人いる姫を全員スルーして朧姫だけ見てたよ」「ええ」「しかも朧姫、気づいてなかったよ」「ええ」
    ルナが手帳に書いた。
    「地球観察レポート第の六の観察記録――朧姫現象を目撃した。百人の美しい姫が必死に高光の気を引こうとしていた。しかし高光の目は最初から最後まで朧姫だけを追っていた。朧姫本人は気づいていなかった。これは地球最大の謎である。恋愛の神様というものが実在するとすれば、朧姫に全力でついているに違いない」
    アリオが深刻な顔でルナを見た。
    「ねぇルナ、僕たちの星にも、恋愛の神様っているのかな」
    ルナはペンを止めた。しばらく考えてから、こっそり付け加えた。
    「……悪くない」

    翌日――宮中では昨夜の宴の話題で持ちきりだった。
    「高光殿ったら、また朧の君だけに歌を贈って」「しかも朧の君、気づいていなかったでしょう」「あの方、本当に不思議ですわね」
    やがてぽつりと誰かが言った。「でも、なんだか憎めないのよね、朧の君って」
    「……そうなのよね」「憎もうとするのに、なぜかできない」「この間も廊下でばったりお会いしたら、にっこり笑って『まあ、素敵な御召し物ね』って言われて」「それだけ?」「それだけなの。なのになぜか嬉しくなってしまって」
    姫たちが顔を見合わせた。
    「……朧姫現象だわ」全員が同時に言った。

    その頃、朧姫の邸では――女房が恐る恐る朧姫に聞いた。
    「姫様、高光様からのお文、もう三十七通になりますが……」
    「まあ、そんなぁに」朧姫はのんびりと言った。「どれも素晴らしい和歌ばかりですわ」
    「姫様は……その、高光様のことをどのように」
    朧姫はしばらく庭を眺めた。「そうねえ……和歌がとても上手な方ね」
    女房がずっこけた。「そ、それだけでございますか」
    「まあ、それが一番大切なことではなくて?」「姫様……!」
    朧姫はふわっと微笑んだ。「それに」「それに?」「わたしの返歌をいつも、とても嬉しそうに受け取ってくださるの」
    女房は目を見開いた。「……姫様、気づいていたのですか」
    朧姫はすまして答えた。「何のことかしら」
    女房は天を仰いだ。この姫様には、本当に恋愛の神様がついているに違いない。

    木立の陰では――アリオが興奮気味にルなぁに言った。
    「ルナ、今の聞いた?!」「聞いたわ」「朧姫、気づいてたんだよ!全部!」「そうね」
    「じゃあ、ぼうっとしてるのは……」
    「天然のぼうっとした中に、ちゃんと恋心が宿っているのかもしれない」
    「それって……最強じゃない?」ルナは微笑んだ。
    「地球観察レポートの観察記、朧姫現象、新たな展開――朧姫はすべてをわかっていた。ただそれを表に出さないだけだった。天然と知性と恋心が絶妙に混ざり合った存在。これは地球最強の恋愛生命体である可能性が高い」
    アリオがルナを見た。「ねぇルナ、君も最強の恋愛生命体だと思うよ」
    「……突然何を言い出すの」
    「だって君のこと、三十七回どころか、毎日思ってるから」
    ルナはしばらく固まった。それからゆっくり手帳を拾い上げて、静かに書いた。
    「……悪くない」
     
    第七章 恋愛旋風、宮中を花桜が舞い上がる
    春が満開を迎えたある日――宮中では恒例の花見の宴が開かれた。
    桜の花びらが、風に舞って舞って、どこまでも舞っていた。
    才ある姫たちが最高の衣を纏い、最高の和歌で春を詠んだ。その中心に――高光がいた。
    姫たちの視線が集まる。扇の陰からこっそり見る者。わざと近くを通りかかる者。侍女に頼んで文を届けようとする者。
    しかし高光の目は――最初から、庭の隅をふわふわと歩いている朧姫だけを追っていた。
    朧姫は花見の宴など関係なく、桜の木の下で空を見上げていた。
    花びらが朧姫の髪に、ひらりと降り積もった。朧姫は気づかない。また一枚、降り積もった。まだ気づかない。
    高光は静かに立ち上がった。すっと朧姫の隣に歩み寄り――そっと、朧姫の髪に積もった花びらを払った。
    朧姫がのんびり振り返った。「まあ、高光様」「花びらが」「そうでしたか」
    朧姫はふわっと微笑んだ。「ありがとうございます」
    高光は静かに一首詠んだ。
    散る花の 積もるを知らぬ 君なれど われのみ知りて 払いつくさむ
    (散る花が積もることに気づかないあなただけれど、わたしだけが気づいて、払い続けましょう)
    朧姫はしばらく、その歌を胸の中で繰り返した。やがて静かに返した。
    積もるとも 知らぬが花の 常なれば 払う君こそ 春の光よ
    (気づかないのが花の常だけれど、払ってくださるあなたこそが、わたしの春の光です)
    高光は目を閉じた。胸の中で、何かが静かに満ちていった。

    その場面を遠くから見ていた姫たちが、同時にため息をついた。
    「……また朧姫現象だわ」「花びらを払うだなんて」「しかも和歌まで」「悔しいけれど認めるしかないわ」
    一人の姫がぽつりと言った。「ねえ、あの二人を見ていると――」
    「なぁに?」「なんだか、恋愛って素敵だなって思えてきた」
    「……そうね」「わたしも」「わたしも、誰かにあんな目で見られたい」「諦めるのはやめようかしら」「わたしも」
    そこへ澄姫が通りかかった。姫たちが澄姫を囲んだ。「澄姫様、あの二人を見てどう思いますか」
    澄姫はしばらく朧姫と高光を眺めた。それから静かに微笑んだ。
    「素晴らしいと思います」
    「悔しくないのですか」
    「最初は悔しかった」澄姫は正直に言った。「でも今は――あの二人を見るたびに、愛というものを信じられる気がします」
    姫たちがしんと静まり返った。やがて一人がぽつりと言った。「澄姫様って、かっこいいですね」
    澄姫は少し照れた。「そんなことは――」「かっこいいですわ」「本当に」「わたし、澄姫様みたいになりたい」
    澄姫はしばらく黙っていた。それから笑った。
    「では一緒に、素敵な恋愛をしましょう」

    木立の陰では――アリオとルナが並んで桜を見上げていた。
    花びらが二人の上に、ひらひらと降り注いでいた。
    「ねぇルナ」「なぁに」「花びら、積もってるよ」
    ルナは動かなかった。「知ってる」「払わなくていいの?」「払ってくれるの?」
    アリオは笑った。そっとルナの髪の花びらを払った。ルナは目を閉じた。
    春風が二人の間を、そっと吹き抜けた。
    「地球観察レポート第七の観察 恋愛旋風記録――本日、宮中に愛の旋風が吹いた。朧姫と高光の恋愛が、周りの人たちを次々と巻き込んでいく。悔しがっていた姫たちが、恋愛を信じ始めた。澄姫が誰かの光になった。そして――わたしたちも、この旋風に完全に巻き込まれた。でも――それが、少しも嫌ではない」

    梅雨の頃になっても――宮中の愛の旋風は止まらなかった。
    むしろ勢いを増していた。
    姫その一が、実直な男君との文のやりとりを重ね、気づけば頬を赤らめるようになっていた。
    姫その二は、幼馴染の男君と花見以来、急に言葉数が増えたと女房たちの間で噂になっていた。
    そして澄姫は――ある日、思いがけない出来事に遭遇した。
    「澄姫様、以前から申し上げたいことがございまして」
    振り返ると、誠実そうな目をした、穏やかな男君が立っていた。
    男君は静かに一首詠んだ。
    澄む水の 清けき心 仰ぎみて わが恋心 止む時もなし
    (澄んだ水のように清らかなあなたの心を仰ぎ見て、わたしの恋心は止むことがありません)
    澄姫は固まった。頬に、じわじわと熱が集まってきた。
    「……わたくしに、でございますか」「はい」男君はまっすぐ澄姫を見た。「ずっと前から」
    澄姫はしばらく黙っていた。胸の中で何かがふわりと動いた。
    高光への恋心とは、全く違う感覚だった。もっと静かで、もっと温かくて
    ――もっと自然な何かだった。
    澄姫はゆっくり口を開いた。
    清き水 澄むとも知らで 過ぎし日の 今こそ光 差し込みにけり
    (澄んでいるとも知らずに過ぎてきた日々だけれど、今こそあなたの光が差し込んできました)
    男君の目が、ぱっと輝いた。澄姫は照れ隠しに、すっと顔を背けた。でも口元は――ちゃんと笑っていた。

    その日の夕方――澄姫は真っ先に朧姫の邸へ飛んでいった。いつもの凛とした足音が、今日は少し弾んでいた。
    「朧の君!」朧姫がのんびり振り返った。「まあ、澄姫。どうしたの、そんな顔をして」
    「そんな顔とはどんな顔ですか」「なんだか、春の花みたいな顔よ」
    澄姫は照れたように言った。「朧の君のせいですわ」
    「まあ、わたしの?」
    「朧の君と高光殿を見ていたから」澄姫は笑った。「愛というものを、信じられるようになったから」
    「それだけですか」「まあ、どなたかしら」
    澄姫は名前を言った。朧姫はしばらく考えた。「誠実で、穏やかで、あなたをずっと見ていた方ね」
    「知っていたのですか」
    「だってあなたの近くにいつもいらしたもの」朧姫はのんびり言った。「気づいていなかったのは、澄姫、あなただけよ」
    澄姫は天を仰いだ。「……朧姫現象は、わたくしにも起きていたのですね」
    「そうかもしれないわね」朧姫はくすっと笑った。
    二人は顔を見合わせて、笑った。その笑い声が、夕暮れの庭に響き渡った。

    木立の陰では――アリオとルナが並んで夕空を眺めていた。
    「ルナ、澄姫にも春が来たね」「ええ」「なんか、嬉しいね」「そうね」
    アリオがルナを見た。「ルナはさ、最初から僕のこと、好きだった?」
    ルナはしばらく黙っていた。夕星がひとつ、静かに瞬いた。
    「……最初の観察記録を見せましょうか」「え?」
    ルナは手帳を開いた。最初のページをアリオに見せた。
    そこには旅立ちの日に書かれた一行があった。
    「地球観察レポート最初の観察――恋愛という概念の観察記録」
    その下に、ごく小さな字で書かれていた。
    「アリオと一緒に来られて、嬉しい」
    「……これ、最初から書いてあったの?」「ええ」「ルナ……」
    「恋愛の神様は」ルナは手帳を閉じた。「地球にも宇宙にもいるらしいわ」
    アリオはしばらくルナの横顔を見つめた。やがてアリオが自分の手帳を開いた。
    旅立ちの日のページ。ルなぁに見せた。そこには一行だけ書いてあった。
    「ルナと行く地球、絶対最高の旅になる」
    ルナは手帳を持つ手が、小さく震えた。「……アリオ」「うん」「わたしたち、最初から旋風の中にいたのね」
    アリオはにっこりした。「ずっとね」
    「地球観察レポート愛の嵐、最終考察――愛の旋風とは、外から吹いてくるものではないらしい。気づいた時にはすでに、自分の中から吹いているものなのだ。朧姫も、高光も、澄姫も、そしてわたしたちも――みんな最初から、愛の嵐の中にいた」

     
    第八章 朧姫、小野小町と呼ばれる
    ある日の宮中で――道長の側近の老貴族が、ぽつりと言った。
    「高光殿、朧姫の君はまるで小野小町のようですな」
    高光は微笑んだ。「左様でございますか」
    「いやあ」老貴族は扇を広げた。「あの才と美しさと、あの掴みどころのなさ……小町の再来と言っても過言ではない」
    その言葉が宮中に広まるのに、一日もかからなかった。
    「朧の君が小町の再来だそうよ」「確かに……和歌の才は群を抜いているし」「あの不思議な佇まいも」「男君たちが夢中になるのも」「全部、小町そのものだわ」
    噂はあっという間に都中に広がった。

    当然、朧姫の耳にも届いた。
    女房が興奮気味に報告した。「姫様、宮中で小町の再来と噂されておりますよ!」
    朧姫はのんびりと答えた。「まあ」「嬉しくないのですか」
    「小町様の和歌は素晴らしいわね」「それだけですか!」
    「だってわたしは小町様ではないもの」朧姫はふわっと微笑んだ。「ただの朧よ」
    女房が天を仰いだ。この姫様は本当に――!

    高光はその話を聞いて、静かに微笑んだ。そして一首詠んだ。
    小町とて 及ばぬものを わが霞 あの世にひとつ 朧のみなり
    (小町といえども及ばない。わたしの霞は、この世にただひとつ、朧だけなのだから)
    その歌が宮中に伝わると――姫たちがため息をついた。
    「高光殿ったら……」「小町の再来と言われても、朧の君だけだと言い切るなんて」「朧姫現象、もはや伝説だわ」
    澄姫は静かに微笑んだ。やはりあの二人には、敵わない。

    木立の陰では――アリオとルナが顔を見合わせた。
    「ルナ、小野小町って?」
    「平安時代の歌人よ。絶世の美女で和歌の天才。でも掴みどころがなくて、男たちが夢中になっても本人は飄々としていた」
    「それって――」「ええ」ルナは微笑んだ。「朧そのものね」
    「地球観察レポートの観察記録――本日、朧姫が小野小町の再来と呼ばれた。しかし朧姫本人は『ただの朧』と言った。そこがまた、小町に似ている。自分の価値を知りながら、それに執着しない。これが真の美しさというものかもしれない」
    アリオがルナの横顔を見た。「ねぇルナ」、「なぁに、アリオ」。「ルナも、自分の価値を知らないところが、朧に似てると思う」
    ルナは手帳を落としそうになった。「……突然何を言い出すの」「だって本当のことだから」
    ルナはしばらく黙っていた。夜風が静かに吹いた。
    「……アリオ」「うん」「あなたは朧姫より、高光に似てきたわね」
    アリオはにっこりした。「それって褒め言葉?」
    「追記――アリオが高光に似てきた。まっすぐで、一途で、言葉が温かい。これは地球に来た影響だろうか。それとも――もともと、そういう人だったのだろうか」
     
    第九章 百首の恋歌
    夏の盛りのある日――宮中では少し変わった噂が広まっていた。
    「高光殿が朧の君のために、特別な宴を開くそうよ」「まあ、どんな宴?」「和歌の宴だそうで」「それだけ?」
    「ただの和歌の宴ではないの」
    声を潜めた。「高光殿が自ら、朧の君への和歌を百首詠むそうで」
    どよめきが広がった。「百首!」「しかも全部、朧の君への恋の歌だそうです」
    「百首の恋歌……」姫たちが顔を見合わせた。「朧姫現象、ついに百首になったわ」

    当日――こぢんまりとした、でも温かい宴の場に、朧姫と高光が向かい合って座っていた。
    澄姫と、朧姫の女房たちが遠巻きに見守っている。
    高光は静かに息を整えた。「朧の君、今日はわたしの歌をお聞きください」
    朧姫がのんびり首を傾げた。「百首、でございますか」「聞いていただけますか」「もちろんよ」朧姫はふわっと微笑んだ。「楽しみですわ」
    高光は一首目を詠み始めた。
    春霞 たなびくたびに 思ふかな 君のこころの 行方をぞ知る
    朧姫は静かに目を閉じた。高光は続けた。
    夏の夜の 短き夢の うつつにも 君の面影 消ゆる間もなし
    女房たちが袖で目を押さえ始めた。澄姫は静かに微笑んでいた。
    高光は詠み続けた。三首、十首、二十首――
    一首一首に、朧姫への思いが込められていた。出会った春のこと。御簾越しに交わした和歌のこと。夕暮れに見た横顔のこと。嵐の中でも揺るがなかった霞のこと。
    五十首を過ぎた頃――朧姫の目に、静かに涙が光った。
    女房が息を呑んだ。――姫様が、泣いている。あのぼうっとした姫様が。あの霞のような姫様が。初めて見る涙だった。
    高光は七十首、八十首と詠み続けた。そして九十九首――
    霞とて 消えぬ命の 強さもて 君を包まむ 世の果てまでも
    静寂が場を包んだ。高光はゆっくりと顔を上げた。
    「最後の一首は」静かに言った。「朧の君に詠んでいただきたい」
    朧姫はしばらく黙っていた。袖でそっと目を押さえた。それからゆっくりと筆を取った。
    百の歌 受け取りながら 気づきけり わが心にも 百の花咲く
    (百の歌を受け取りながら気づいた。わたしの心にも、百の花が咲いていたことを)
    宴の場が、しんと静まり返った。やがて澄姫が、そっと手を叩いた。女房たちが続いた。その音が、夏の夜に静かに広がった。
    高光は目を閉じた。これ以上の幸せは、この世にないと思った。

    木立の陰では――アリオとルナが並んで座っていた。二人とも、しばらく何も言えなかった。
    夏の夜の星が、満天に広がっていた。
    やがてアリオが静かに言った。「ルナ」「なぁに、アリオ」「僕も百首詠もうか」
    ルナは少し笑った。「あなたは和歌が詠めないでしょう」「じゃあ百回言う」「何を」
    アリオはルナをまっすぐ見た。「好きだよ」
    ルナは星を見上げた。「一回で十分よ」
    「じゃあ」アリオはにっこりした。「毎日一回、一生言う」
    ルナは手帳を開いた。震える手で書いた。
    「愛の嵐、頂点に達す――本日、高光が朧姫へ百首の恋歌を贈った。朧姫が百の花で答えた。そしてわたしたちも――わたしたちも、愛の嵐の、まっただ中にいる」
     
    最終章 星の果てより、愛を込めて
    秋が終わり、冬が訪れた頃――朧姫と高光の邸では、静かな幸せが満ちていた。
    小さいけれど温かい邸。変わらず漂う薫物の香り。
    朧姫は縁側で和歌を諳んじ、高光は文机で仕事をしている。
    ただそれだけの、穏やかな日常。でもその日常が――世界中の何よりも、二人には宝物だった。

    ある朝、高光が文机から顔を上げた。「朧姫の君」「はい」「今日は何の和歌を?」
    「百人一首の小町様の歌を」
    「どれを?」朧姫は静かに詠んだ。
    花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに
    高光は微笑んだ。「小町様は儚さを詠まれた」「ええ」「でも朧の君は?」
    朧姫はしばらく庭を眺めた。冬の朝の光が、庭をやわらかく照らしていた。やがてふわっと微笑んだ。
    「わたしは儚くないわ」
    高光は笑った。「そうですね」「だって」朧姫は続けた。「高光様がいるもの」
    高光は筆を置いた。朧姫の隣に座った。二人で庭を眺めた。
    冬の光が、霞のように柔らかく広がっていた。高光が静かに一首詠んだ。
    花の色は うつらざりけり 霞なる 君の笑顔は 春も変わらず
    朧姫は少し笑った。「小町様の歌を変えてしまって」「朧の君のための歌ですから」
    朧姫はそっと高光の隣に寄り添った。「高光様」「はい」「わたし、幸せよ」
    高光は朧姫を見た。霞のような、でも確かにそこにある温かい笑顔。
    「わたしもです」

    宮中では――澄姫が誠実な男君と並んで歩いていた。
    「澄姫様、今日はいい天気ですね」「そうね」「こんな日に澄姫様と歩けて、嬉しいです」
    澄姫はくすっと笑った。「あなたは毎日そう言いますね」「毎日本当のことですから」
    澄姫は空を見上げた。澄んだ冬の青空が、どこまでも広がっていた。
    「ねえ」「はい」「わたくしも、嬉しいわ」
    男君の顔が、ぱっと輝いた。澄姫は照れ隠しに歩調を速めた。でもその口元は――しっかりと、笑っていた。

    姫その一は――実直な男君からの文を、今日も嬉しそうに開いていた。
    返歌を書きながら、ふと思った。あの花見の宴の日。高光に恋心を燃やしていた自分。
    それが今は――この文を心待ちにしている。人の心は不思議だ。でも今の方が、ずっと温かい。
    姫その二は――幼馴染の男君と、今日も庭を歩いていた。
    「ねえ、昔からずっと一緒にいたのに」「うん」「こんな気持ちになるなんて、思わなかったわ」
    「僕はずっと思ってたよ」「もっと早く言ってくれれば」「だって君が気づいてくれなくて」
    二人は顔を見合わせて笑った。笑い声が、冬の庭に響き渡った。

    その夜――都の夜空に、満天の星が広がっていた。
    朧姫は縁側から星を見上げた。高光が隣に座った。
    「今夜も星が多いですね」「ええ」朧姫はふわっと微笑んだ。「またあの星が光っているわ」
    「どの星ですか」朧姫は空の一点を指した。「あそこ。いつも温かく光っている星よ」
    「綺麗ですね」「ええ」朧姫は静かに言った。「なんだかね、あの星を見るたびに――」「なんだか?」
    「愛されているような気がするの」
    高光はしばらく黙っていた。それから静かに筆を取った。
    星の数 知らねど空は ひとつなり 君と眺むる この夜のよさよ
    (星の数は知らないけれど、空はひとつだ。あなたと眺めるこの夜の美しさよ)
    朧姫も筆を取った。
    遠き星 近き星とも 同じ空 愛はひとつに 結ばれるもの
    (遠い星も近い星も同じ空の下。愛はひとつに結ばれるもの)
    二人は並んで星を眺めた。
    その空の彼方で――小さな宇宙船が、温かい光を放ちながら故郷の星へ向かっていた。

    宇宙船の中で――アリオとルナは並んで座っていた。
    窓の外に、青い星が遠ざかっていった。
    「ねぇルナ」「なぁに」「帰りたくないな」「でも帰らないといけない」
    「うん」アリオは窓に顔を近づけた。「また来られるかな」「来られるわ」ルナは微笑んだ。「だってわたしたちには宇宙船があるから」
    アリオはにっこりした。「そうだね」
    ルナは手帳を開いた。最後のページ。丁寧に、ゆっくりと書いた。
    「地球観察レポート、最終ページ――」
    「朧姫と高光へ。あなたたちの恋愛が、わたしたちに愛の形を教えてくれた。霞のように柔らかく、でも消えない。光のように温かく、でも眩しすぎない。そんな愛が、この世界にあることを知った。」
    「澄姫へ。あなたの潔さと優しさが、本当の美しさを教えてくれた。」
    「地球のすべての恋人たちへ。愛は時空を超える。これは宇宙の真実だ。」
    「そして――アリオへ。あなたと来た地球は、最高の体験だった。あなたと見た星空は、一生忘れない。あなたと感じた愛の嵐は、わたしたちの宝物だ。帰ってからも、ずっと一緒にいよう。愛を込めて、ルナより」
    アリオはルナの書いた文字を、じっと読んでいた。やがてゆっくり顔を上げた。目が光っていた。
    「ルナ……」「泣いてるの?」「泣いてない」「目が光ってるわ」「……星の反射」
    ルナはくすっと笑った。アリオも笑った。二人の笑い声が、宇宙船の中に広がった。
    やがてアリオが自分の手帳を開いた。最後のページに、一行だけ書いた。
    「ルナ、ずっと一緒にいよう。僕からも、愛を込めて」

    朧姫と高光の朝
    冬の朝、朧姫は縁側に座っていた。
    薄く雪が積もった庭を、ぼんやりと眺めながら。
    「朧の君、冷えませんか」
    高光が温かい茶を持ってきた。
    「まあ」朧姫はふわっと振り返った。「ありがとうございます」
    高光は隣に座った。二人で雪の庭を眺めた。しばらく何も言わなかった。
    でもその沈黙は――かつての御簾越しの緊張した距離とは違う。温かくて、やわらかくて、どこまでも穏やかな沈黙だった。
    やがて朧姫が静かに言った。「高光様」「はい」「雪って、霞に似ていますね」
    「どんなふうに?」高光は少し考えた。
    「ふわっと降りてきて、気づけば積もっている」朧姫はふわっと微笑んだ。「わたしたちの恋愛みたいに」
    「そうですね」高光は目を細めた。「気づいたら、積もっていた」
    高光は静かに筆を取った。
    雪積もる 庭を眺むる 朝ごとに 君との時の 尊さを知る
    朧姫は受け取って、静かに読んだ。それからふわっと微笑んで、筆を取った。
    雪霞 積もるにまかせ 春を待つ 君のぬくもり それだけでよし
    高光は目を閉じた。
    それだけでよし――その一言が、この上なく温かく胸に届いた。
    高光は温かい茶を一口飲んだ。
    「朧の君」「はい」「あなたと過ごす朝が、一番好きです」
    朧姫はしばらく庭を眺めていた。「まあ」
    「なぜ『まあ』なのですか」
    「だって」朧姫はふわっと微笑んだ。「わたしも同じことを思っていたから」
    高光は少し笑った。「同じことを?」
    「ええ」朧姫は静かに続けた。「あなたと並んで、ただ庭を眺めている。それだけで十分だと思って」
    高光は黙っていた。雪が、また一枚ひらりと落ちた。
    これが愛というものか、と高光は静かに思った。
    派手でも華やかでもない。ただそこにある、温かい何かが。
    高光が静かに立ち上がった。「少し寒くなってきましたね」
    朧姫の肩に、そっと上着をかけた。
    朧姫はふわっと高光を見上げた。「ありがとうございます」「どういたしまして」
    また二人の間に、穏やかな沈黙が流れた。
    雪はまだ、静かに降り続けていた。

    帰り道の宇宙船
    宇宙船が星空へ向かっていく。窓の外で、地球がだんだん小さくなっていった。
    アリオはしばらく無言で地球を眺めていた。
    「ねぇルナ」。「なぁに、アリオ」「恋愛ってハイレベルって言ってたじゃない」「ええ」「朧と高光を見て、どう思った?」
    ルナはしばらく考えた。
    「ハイレベルだけど――あの二人を見ていたら、難しいとは思わなかった」
    「なんで?」「難しく考えていなかったから」「どういうこと?」
    「朧は高光を縛ろうとしなかった。高光は朧を変えようとしなかった。ただ――そのままの相手を、そのまま好きでいた」
    アリオはしばらく黙っていた。やがてぽつりと言った。
    「それって、簡単そうで一番難しいね」「ええ」ルナは微笑んだ。「でも一番自然なことでもある」
    二人はしばらく黙って星を眺めた。
    「ねぇルナ」。「なぁに、アリオ」「僕、ルナのこと変えたいと思ったことないよ」
    ルナはペンを止めた。「……そう」「そのままのルナが好きだから」
    ルナはしばらく黙っていた。窓の外に、無数の星が広がっていた。
    やがて静かに手帳に書いた。
    「地球観察レポートの帰り道の記録――恋愛はハイレベルではなかった。ただそのままの相手を、そのまま好きでいること。それだけだった。地球の朧と高光が、宇宙の果てまで届く言葉で教えてくれた」

    宇宙船が星空へ吸い込まれていった。地球がゆっくりと、小さくなっていった。青い星が、宝石のように輝いていた。
    その星の片隅で――
    朧姫と高光が、静かに寄り添っていた。
    澄姫が、温かい恋愛を育んでいた。
    姫その一が、朝露のような恋に頬を赤らめていた。
    姫その二が、幼馴染と笑い合っていた。
    みんなそれぞれの場所で――
    みんなそれぞれの形で――
    愛の中にいた。
    ルナは窓から地球を眺めながら、地球観察レポートの最後の一行を書いた。
    「人は、本当は自由で楽しいんだ。なぜなら、あなたには愛があるから――」

     おわり

     
     

    happy

     
     
    46歳で結婚した元パタンナー 恋愛や結婚よりも仕事にあこがれていました。それでも人生は思い描いた通りではなくても、思いがけない幸せを運んでくれるものです。恋愛や結婚を入り口に、愛すること・幸せに生きること・自分らしく歳を重ねることについて綴っています。

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