メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

鮮やかな傘 - 雚の日の傘掌線小説

     ホテルを出たずきには、雚が降り出しおいた。雚暡様を芋䞊げるあたしに、「傘持っおるよ」ず隣にいるおっさんが折りたたみ傘を取り出す。
    「  いい。このたた垰る」
    「たた呌んでいい」
    「勝手にすれば」
     おっさんには䞀瞥もくれず、あたしは制服のたた雚の䞭に螏み出した。
     小雚だけど、ひんやりした秋の雚だった。䌑憩や宿泊の看板がけばけばしいホテル街を、濡れながら歩いおいく。
     たた客を取る歓楜街に行ったら、補導されるかもしれない。家に連絡が行ったら、父芪が怒鳎る。それはうざいなず思い、雚に霞むネオンサむンをがんやりず眺める。
     優しかったおかあさんは、もういない。あたしが小孊六幎生のずき、子宮に悪性の腫瘍が芋぀かっおあっずいう間に亡くなった。お芋舞いに行きたかった。手術の日は付き添いたかった。しかし、父芪はおかあさんの病状に無頓着で、小孊生のあたしは車を出しおもらえなくお病院ぞの足がなく、おかあさんの最期も看取れなかった。
     おかあさんの死を、病院は家電で知らせおくれた。父芪は連れ蟌んだ女ずベッドをきしたせおいた。あの日、あたしの心からは圩床が消えた。
     䞭孊のずきの担任が、あたしに軆を売るこずを教えた。正確には、手を出しおきたので人に話すず脅しお金を芁求した。貯たった金を頌りに、高校生になったあたしはたずもに家に垰らず、繁華街や歓楜街で過ごすようになった。
    「智花ずもか、たたパパんずこ」
     こういうずころには、萜ちこがれたクズが溜たる堎所が䜕ずなくある。そこを居堎所ず思っおいるわけでもないけれど、家に垰るよりはそういう堎所の段ボヌルで雚をしのぐ。
     今日もそこに行き着き、段ボヌルを雑に組み立おおいるず、同い幎ず聞いおいる䞀実ひずみずいう男の子が声をかけおきた。
    「そんなずこ」
    「長門ながずからの玹介」
    「うん」
    「気を぀けろよ。長門の仕事で、消えた奎いるらしいから」
     あたしはダンボヌルハりスにもぐっお膝を抱えた。勝手に隣に腰を䞋ろす䞀実を暪目でちらりずする。
    「䞀実、こんなずこいおいいの」
    「䜕で。ここしかないのに」
    「嘘ばっかり  」
    「䜕だよ。モモのこず蚀っおる」
     あたしは黙り蟌んだ。
    「モモ」のこずは知っおいた。知りながら、あたしは少し前に䞀実ず寝おしたった。安いラブホで、モモからの着信が続く䞭、薬に浮かされながらあたしず䞀実は求めあった。
     終わったあずに、䞀実はスマホに応答しお「ごめんね、モモ」ず聞いたこずもない優しい声で蚀っおいた。少し猫背の骚ばった背䞭を芋぀めながら、圌はあたしず違うんだず気づいた。
     匷くなる雚を芋䞊げながら、䞀実は煙草に火を぀けた。「ちょうだい」ず蚀うず䞀実は䞀本くれお、あたしたちは自然ずシガヌキスをする。
    「雚やたねえな」
    「そだね」
    「寒いし、どっか行く」
     䞀実を芋お、口を開きかけたずきだった。
    「䞀実くん」
     䞀実は、はっず声のしたほうぞず顔を䞊げた。こんな界隈にはそぐわないクラシカルコヌデの䞭孊生くらいの女の子が、傘をさしおこちらに駆けおきおいる。
     芋たこずがないわけじゃない。だから、その子がモモなのはすぐ分かった。
    「モモ。ここには来るなっお蚀っおるだろ」
    「私が迎えに行かないず、本圓に垰っおこないじゃない」
    「俺は、」
    「こんな日たで垰らないのはダメ。颚邪匕いちゃうよ」
     モモは抱えおいたバッグから、折りたたみ傘を取り出しお䞀実に差し出す。
       そう、だから、䞀実はあたしずは違うんだ。あたしには、こんな冷たい雚の倜、傘を持っおきお迎えに来おくれる人はいない。
    「垰んなよ」
     そう蚀っお、あたしは煙草を぀ぶすず立ち䞊がった。
    「垰る堎所があるくせに、仲間面されんのうざい」
    「智花」
    「お前のほうこそ、ここには来んな」
     あたしは段ボヌルを乱暎にたたみ、さっさずその堎を離れた。
     雚は降り続けおいる。ひずりだけど、ホテルに行こう。ベッドに閉じこもりたい。さっきのおっさんがよこした金があるし、足りなくなれば長門に連絡しおたた皌げばいい。
     あたしの心は無圩色だ。䞀実を芋぀めながら頬を薔薇色にしおいたモモは、きっずあい぀の心にも傘をさす。雚に燻るあたしより、圌女のほうが鮮やかな色圩になっお䞀実を救える。
     バカみたい。救われおほしいなんお、あたしは䞀実が奜きだったのかな。
     そんなこずを考えお、䜕だか自分を嗀いながら、あたしは䜓枩を奪うような雚の䞭に玛れ蟌んでいった。

     FIN


    お題をお借りしたした。
    ありがずうございたす。


     
     
    日陰の小説家。傷痕を撫でたり、匕っかいたり、掻きむしったりする物語を曞きたす。