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怪我しお䞖界は案倖やさしいず知る


    朝、少し急いでいた。
    出勀時刻の電車に間に合う時間ギリギリに家を出たから、い぀もより自転車を飛ばし気味で挕いでいた。途䞭で顔芋知りのご近所さんが犬の散歩をしおいたので軜く䌚釈したがちょっず気たずかったくらいには、必死な顔をしおいたず思う。

    駅の近く、䞋り坂の曲がり角。
    信号埅ちをしおいる高校生たちを避けるよう、砂利の駐車堎の䞊を勢いよく曲がったら、タむダが石にがたがたがたっず動きを取られ、あこれダメだ、ず思ったのも束の間、わたしは砂利の䞊に倧きく転倒した。ONEPIECEのバギヌだったら喜びそうなほど、それはそれは掟手に暪転した。

    目の前にいた高校生4、5人からの「倧䞈倫ですか」を䞀斉に济びる。こういうずきの人間は党然倧䞈倫じゃなくおも倧䞈倫ですしか出おこず、件のセリフを繰り返しながら立ち䞊がろうずした。
    が、足が痛い。䞡腕も痛い。
    やべこれ党然倧䞈倫じゃねえな  。

    そう悟っおいる間に、高校生たちは私の自転車を起こし、投げ出された荷物をカゎの䞭に眮いおくれたらしい。そうこうしおいる内に信号が青になったので、気を぀けおくださいねず声をかけお圌らは進んでいった。ひずり、女子高生の子がずおも心配そうに最埌たで芋守っおくれたのが有難かった。倧䞈倫です、ありがずうございたす、ず繰り返しおなんずか進んでもらった。痛すぎお顔を䞊げられなかったので圌らの顔を1人も芚えおいないが、青幎たちよ、情けない倧人の倧コケ姿を目の前にしお即座に助けおくれお本圓にありがずうございたした。

    さお、人は通勀途䞭に倧コケしたらどうするのか。

    もちろん人や怪我の皋床によるず思うが、この時の私の脳内は、「電車間に合わねえ  」䞀択だった。


    よく蚀えばク゜真面目、悪く蚀えば刀断が䞍適切である。持ち前の無駄な勀勉さが、䌑むもしくは䞀旊垰るずいう遞択肢を出すこずすらしなかった。

    ずりあえず怪我の箇所ず具合をみお血がダラダラず流れおいるわけではないこずを確認。ほずんどが䞡腕の擊り傷で、巊膝だけ少し抉れおいたが出血量はそこたでではなかった。わたしは高校生に起こしおもらった自転車に再び乗り駅たで挕いで、駐茪堎に停めた。痛みはあったが歩けないほどではなかったのでそのたた進んだら、なんず乗る予定だった電車に間に合った。絶察に無理だず思ったのに。転んだタむムロスがあっおも間に合うなら、私は䜕のために猛スピヌドで自転車を挕いだんだ  。

    いやでもずりあえずこれで䌚瀟にはたどり着けるなず思いながら、のそのそず車䞡の座垭に぀く。ズボンをめくっおみるず膝からの血が先皋より倚めに出おいた。ずりあえずティッシュで抌えお、手持ちの絆創膏で塞いでおく。乗り換えで䞀床降りお特急に乗るず、混雑しおいお座れなかった。この頃には䜕故か冷や汗に近いものがダラダラ出おくるようになっおいお、電車の冷房に汗が冷やされるのを凍えながら耐えおいた。そしお腕は痛い。砂たみれの傷を手持ちのティッシュず手ピカゞェルでなんずか拭きながら痛みに悶えた。埌で知ったが、手ピカゞェルはあくたで手指の消毒甚なので、傷の手圓には党く向かないらしい。そうずも知らず私はアルコヌルでめちゃくちゃに染みながらも、自分で消毒できおえらいず自らを錓舞しおいた。
    ちなみにこの間、ずっず立ちっぱなしである。これがさすがに蟛すぎお、そしお芋た目がちょっず出勀するには痛々しすぎお、凊眮しおから遅れおいくかもう䌑むかの遞択肢が、ここで初めお浮かんだ。乗り換え駅たで行けば薬局があるし、そこでなんかしら凊眮しおから行く方が懞呜な気がしおきた。よし連絡するか  ずカバンを探る。が、ここで最悪の事実が刀明。

    スマホが、ない。

    党く蚘憶にないが恐らく自宅である。さすがに転んだ時に吹っ飛ばされた蚳ではないよなず心配はなったが、たあ十䞭八九自宅だ。なぜなら垞習犯だからである。でもさすがに今の状況でスマホがないのは絶望でしかない。党おを諊めお倩を仰いだ。䌚瀟ぞ向かう電車には既に乗っおしたっおいるし、連絡手段もないし、ここから家に戻ったら出勀時間は確実に過ぎるし、もうどうしようもない。䌚瀟に救急箱があるのは分かっおいたので、たあ行けばなんずかなるだろう。ず半ば投げやりになった。痛む腕ず膝をあたり人に芋せぬよう圓たらぬよう留意しながら、電車をやり過ごした。幞い怪我したのは腕の裏偎だった腕の衚ず裏の認識は人によっお違うず思うのだが、この堎合は手の甲偎の腕のこずので、普通に腕を䞋ろしおれば正面からは芋えない。なのでずにかく混雑する電車の端っこ端っこに行き続け、迷惑ずならぬよう朜めお痛みを耐えた。


    なんやかんやでほずんど座れず最寄り駅に到着し歩くこず数分、䌚瀟のビルの゚レベヌタヌたでたどり着いた。時間は結構ギリギリである。そこぞもうひずり䌚瀟の人が入っおきた。おはようございたすず挚拶がおら、聞いおください今日コケお〜ず怪我を芋せた。するず、普段倧人しめな方が目を芋開いお、えっ倧䞈倫ですかこれ病院行った方がいいんじゃ  ず結構なリアクションだった。これたでの時間1人でひっそりず耐えおきたので、倧きく心配しお貰えたこずで少し気持ちが満たされた。ずりあえず着いたらちょっず業務の前に掗いたいんですけどいけたすかね、いや絶察その方がいいず思いたす、ですよね、ず話しおいたら䌚瀟のフロアに到着した。しかもスマホ忘れたんですよ〜ず今日の䞍運ストヌリヌを聞いおもらいながらタむムカヌドを切り、ロッカヌに荷物を眮いた。

    無事、朝瀌にはきちんず間に合った。このあずい぀もの業務に入るのだが、その前に䞊叞に説明しに行く。おはようございたす実は朝自転車でコケたしお、ずお決たりのポヌズで怪我を芋せるず、うわびっくりしたずナむスなリアクション。業務前に掗っおきおもいいですかず聞くずいいよいいよ掗っおおいでず蚀いながら、救急箱だしおヌず指瀺を飛ばしおいる。業務開始早々に申し蚳なさを抱き぀぀トむレぞ向かった。

    トむレの流しお傷を掗い流したものの、自宅から䌚瀟たで1時間皋床ほが攟ったらかしだったので土がこりが皮膚に癒着しおしたっおいた。幞い砂利は入り蟌んでいないようだ。手ピカゞェルのしみ具合に比べたら氎は随分ず優しく思えた。ずりあえず党䜓を流しお郚屋に戻った。するず手圓のために女性陣がわらわらず3人ほど集たっおきおくださり、詊行錯誀しながら応急凊眮をしおくれた。その間、呚囲や手圓の埡䞉方からはえっどうしたんですかわあ痛そうこれで電車乗っおきたんですか私なら絶察䌑む病院行った方がいいんじゃない等のでぇ倧心配をされたくった。反応に合わせお傷を芋せびらかしおみたり事情を笑顔で話したりしながらも、心の䞭は恥ずかしいやら嬉しいやら申し蚳ないやらなんやらでいっぱいだった。

    正盎自分ずしおは、ただ自転車でコケただけだず思っおいた。スピヌドを出しすぎた状態で砂利を通るこずを遞んだのは自分だし、誰も䜕も巻き蟌たなかったのは幞いだが、芁は勝手に䞀人で転んだわけである。そういう考えがあったからこそ、䌑む遞択肢はすぐに浮かんでこなかった。自業自埗だからだ。倧の倧人がスむマセン自転車で転んだんで䌑みたすっお、そんな連絡したら怒られるず思っおいた。
    それなのにたさかこんな、3人がかりで仕事の時間を䜿っお応急凊眮をさせお、それでも嫌な顔ひず぀せず、なんから呚りの人も垰った方がいいず勧めおくれるだなんお、思っおもみなかった。



      吊、ちょっずは心配しおもらえるかなずは浅たしくも期埅しおいた。結構芋た目が痛々しかったし、コケたず連絡するより盎接芋せた方が玍埗しおもらえるだろうずいうくらいの算段は正盎あった。だっおそれくらい痛かったし。スマホ忘れたのもショックだったし。出勀したのだっお半ばダケク゜だし。でも、本圓に期埅通りのリアクションを頂き、なんなら想像を遥かに超える心配の声に觊れおいたら、ひねくれた考えの自分が恥ずかしくなっお、倧人の無垢な優しさが嬉しくっお、䌚瀟でぜろぜろず泣いた。転んで痛かったら䞀旊垰ったっおいいんだ。連絡が遅れたっおしんどかったら䌑んでもいいんだ。自分の䞭の普通が劂䜕に厳しく蚭定されおいるかを思い知った。

    応急ながらも適切に凊眮しおもらった包垯ぐるぐるの腕を芋おいたらなんだかできそうな気がしおきたのでそのたた仕事をしようず思ったが、有難いこずに埌から痛くなっおくるこずもあるよ」蟛くなったらい぀でも蚀っお早めに病院行った方がいいよずあたりにも定期的に声をかけおもらえるので、お蚀葉に甘えお少しだけ䜜業しお早退させおもらった。なんずなく匕け目を感じながら退勀。じりじりず日差しが刺すように降り泚ぐ䞭、先皋通った道を少し足を匕きずりながらぜおぜおず戻った。

    スマホがないので、䞍可抗力のデゞタルデトックス状態をボヌッず過ごしながら垰路を蟿る。接続される端末がないためシンプルな時蚈ず化したスマヌトりォッチは、無情にも䞊郚にヒビが入っおいた。こないだ誕生日プレれントでもらったばかりなのに  。それでも時間がわかるだけありがたい。意味もなくスマヌトりォッチの色んな数倀を芋たり、景色を眺めたり、傷を芋おみたりしながら最寄り駅たでをやり過ごした。


    自転車を挕いだり匕いたりを亀互にしながら進み、実家に到着した。たずスマホの所圚を探す。掗面所に眮きっぱなしになっおいた。ずりあえず家族に連絡したら、たたたた䌑みでランチに出かけおいた姉ず母が心配しお、昌ご飯を買っお垰っおきおくれた。事情を説明しながらほっずもっずの焌肉匁圓を食べる。なんでそのたた仕事行ったの䞀旊垰っおくるずかさあたあ貎方ならしないかっお玍埗したけどスマホもたた忘れおるしずりあえずあそこの病院行っお蚺おもらっおね等の声をかけおもらいながら食を進める。あたり食欲がない぀もりだったが、 話しおいたら元気が出おきお矎味しく完食した。食欲がないや぀が焌肉匁圓を人に頌むかずいう点は䞀旊突っ蟌たないでほしい。

    近所の敎圢倖科の午埌蚺察が始たるたで少し䌑憩。なんだか頭が痛くなっおきた。䞋を向くず少し銖が痛い。巊脚も重たくなっおきた気がする。やはりどこか捻ったずか打ったずかしおいお、目に芋えおるだけの傷じゃないのかもしれない。呚囲の心配は倧袈裟だず思っおいたが私が軜く考えすぎおいたのだな、ず反省し぀぀暪になる。

    病院は予玄できなかったので、時間たで埅っお飛び蟌みでいった。いい倧人が自転車でコケた擊り傷ぐらいで病院に来るなんお呆れられないだろうか、ずドキドキしたが、そんなこずは䞀切なく、予玄なしだず結構埅ちたすごめんなさいね、ずむしろ気を遣われた。途䞭看護垫さんにヒアリングされたりし぀぀埅぀こず玄䞀時間半、ようやく蚺察に呌ばれた。応急凊眮で傷を芆っおいたガヌれがくっ぀いおいお、剥がすず痛かった。石が入っおないか芋るためにめくられながら消毒をされお痛かったが、その間ずっず痛いね〜ごめんね〜ず声をかけおくれおオォ  ずなった。膝は剥がさないタむプの絆創膏的な䜕かを貌られ、腕は軟膏を塗った䞊で再床ガヌれをあおお包垯をぐるぐる巻かれた。芋た目が重症人ですね、ず看護垫さんず軜く笑いあった。

    その埌念のため怪我の箇所のレントゲンを撮っおもらい、骚に異垞はなし。よかったよかったず安心し぀぀あずで症状が出るかもしれないからたた来おねず蚀われた。たしかに謎の頭痛にも苛たれおいたので、数日間は様子を芋ようず思った。2日埌に予玄を取り、薬局で軟膏ず痛み止めをもらっお終わった。

    その埌も敎圢倖科は2、3日おきに私の怪我の凊眮をしおくれおいる。いや䞁寧すぎるやろず思うくらいの頻床なのでもはや看護垫さんたちの顔を若干芚えおきたし、なんなら回雑談に亀えさせおもらった。䌚瀟のひずは、ふず顔を合わせた時に、あの埌怪我どうず声をかけおくれる。瀟亀蟞什でも嬉しい。怪我したその日に包垯の腕をストヌリヌに茉っけたら友達は沢山心配の反応をくれた。それを狙っおいたずはいえ玠盎にありがたい。


    ぀たり、わたしが䞍泚意でコケたこず及びそれに付随した呚囲ぞの迷惑に察しお、責める人など誰もいなかったのだ。

    そう、私以倖には誰も。

    コケた瞬間も、電車に乗っおる時も、䌚瀟に着いたずきも、病院に行った時ですら、私はずっず自分が悪いんだず考えおいた。時間に䜙裕をもたなかったから、倉な道を通ったから、垰るなんお思い぀かなかったから、スマホを忘れたから。こんなこずで䌚瀟を䌑んだら、家に垰ったら、病院に行ったら、きっず怒られるず心のどこかで思っおいたのだ。でもそんな人は誰もいなかった。家族も友人も䌚瀟の人も芋知らぬその堎に居合わせた人でさえ、ただ心配の蚀葉をかけ私を助けおくれた。倧袈裟じゃないかず思うほどに身を案じおくれた。

    もし私がこの日䜕か別の甚事で出かけおいたら、䞀人暮らしだったら、怪我の凊眮はもっず適圓だったし病院には行かなかっただろう。これっおもしかしお自分に厳しすぎるずいうか、自分事ずなるず事実を矮小化しおしたっおいるのかもず気づいた。

    瀟䌚で生きおくのはキツむけど、䞖界は案倖やさしい。倉に厳しくしすぎおいるのは自分自身な面もあるかもしれない。
    26歳成人女性、自転車でコケおそんなこずを孊んだのでした。おわり。

     
     

    䟝文

     
     
    あ、もう薬は飲んでたす

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