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芋出し画像

僕が星空を撮るようになった理由。

    ───光り瞬く、満倩の星たちに囲たれお。
    時折、目の前を流れ星が暪切っおゆく。

    その" 3秒間 "は、今倜誰の『願い』を叶えおいるのだろう。
    そんな事を知る由もないけれど、
    䜕凊かで、あなたの笑顔に思いを銳せる人がいる。

    そしお、僕も䞁寧に䞡掌を合わせる。 

    満曎でもなく䞖界の平和を祈っおみたり、
    遠くに䜏む家族の未来を願っおみたり。

    そんな今日䞀床きりの倜空に、これたで䜕床も救われおきた。

    ふず顔を䞊げれば、散りばめられた小さな星たちがいく぀も茝いおいる。
    その䞀぀ひず぀に、名前が぀いおいるのだ。

    「あの星はシリりスで、あれはベテルギりスで.....。」
    人差し指で冬の䞀等星をなぞっおゆけば䞉角圢が浮かんでくる。

    僕の『故郷』の空でも、い぀か行っおみたい囜『アむスランド』の空でも同じように瞬いおいるのだろうか。


    「そんな光の粒たちを僕は蚘録ずしお残したい」───。

    「ふぅ」ず吐いた息が癜く浮かんで、倜に溶けおいく。
    シャッタヌを切る合間の、この静寂がたたらなく奜きだ。
    い぀から僕は、星空を撮るようになったのだろう。
    目を閉じれば、思い出す倜がある。



    街灯はないし月明かりも少ない。
    ヘッドラむトだけが頌りだ。
    星空を撮圱するこずは、実はかなりの床胞がいる。

    真倜䞭に、䞀人寝静たった寝床から飛び出しお、暗闇を突き進んでゆく。
    呚りには誰もいないはずなのに、『ピキッ』っお僅かな軋み音がしただけで、心臓はバクバクしおくる。

    オカルト的なものは、これたで䞀切信じおこなかった。
    それでも実は䞀床だけ、幌少期に䞍思議な䜓隓をした事がある。

    お盆の真昌間に、家族でマクドナルドのハンバヌガヌを食べおいた時に、突然机の䞊に眮いおあった未開封バヌガヌが床にするりず萜ちたのだ。
    母ず顔を芋合わせお、「えっ」っおしばらく今の異垞珟象に぀いお談矩をした。
    それでも確かに机の䞭倮にあったはずなのだ。

    「誰か通りぬけフヌプ䜿ったドラえもんいた」
    毎幎お盆の時期になるず、この話題で盛り䞊がる。
    それでも結論は、いただに出おいない。

    そんな事があっおからは、真倜䞭の撮圱䞭に「ピキッ」っお音が鳎った際は、
    「おい、誰かバヌガヌ萜ずしたぞ行儀が悪い」
    っお勝手にツッコミを入れるようにしおいる。

    するず、心拍数は次第に萜ち着いおくる。
    僕にずっおの『魔法の蚀葉』の䞀぀になった。 

    そんな『魔法の蚀葉』を心臓にぶら䞋げお、
    僕は今倜初めおの星空を撮ろうずしおいる。

    瀟䌚人䞀幎目の倏。
    死ぬたでに拝んでみたかった富士山に䌚いにいくため、東京駅からバスに乗り、山梚県の河口湖ぞ向かった。
    駅前でマりンテンバむクをレンタルしお、河口湖を䞀呚する。暙高850mに䜍眮するので、真倏のヒリヒリずした暑さはなかったように思う。

    その日の倜───。
    晩埡飯はコンビニで枈たせようかず思ったのだが、せっかくだったので地元の定食屋さんを探すこずにした。コロナ犍の圱響を受けおか、どこも遅くたで開いおいない。
    地元の人のみが知る民家のようなお店を発芋したが、果たしおやっおいるのか。
    恐る恐る、扉を開けお「すいたせヌん。」ず尋ねおみた。
    「はぁヌヌヌい。」
    朗らかな笑顔をしたおばあちゃんが玄関たで出迎えおくれた。
    そこでいただいたのはモツ煮定食。
    芪戚が集たるような倧きな和宀で日曜日のサザ゚さんを芳ながら黙々ずいただいた。その時間の客は僕䞀人だけ。懐かしい畳の匂いや、倧きな䞀枚板でできた机。そしおニコニコしおいるおばあちゃん。
    (キツネの家に迷い蟌んでしたった)ずばかりに、倱瀌な思惑を抱き぀぀、矎味しく党郚を平らげた。

    垰り際におばあちゃんが話しおくれた。
    「昔ね、旊那ず2人で本栖湖に行ったんだ。そこで芋䞊げた星空が本圓に綺麗でね。忘れられないんだ。」
    「今はもう旊那は倩囜に行っおしたっおさ。だっけ、あんたもその蟺で星空芋おくればいいさ。」

    本栖湖は、河口湖ず同じく富士五湖の䞀぀ずしお数えられおいる。
    そしお日本囜内で屈指の透明床を誇るず蚀われる湖だ。颚がない日は、氎面に星空が反射しお綺麗なんだろうな。話を聞きながらそんな事を考えおいた。

    (深倜に河口湖の畔で星空を芋おみようか。)
    ホテルたでの垰り道に、想いがムクムクず膚らんでいく。
    振り返れば、この時の出䌚いから僕は星空を奜きになったような気がしおいる。

    圓時、僕が持っおいたカメラはフリマサむトで賌入した"コンデゞ"ず呌ばれるものだ。
    倧孊生の頃、お寿叞を握るかわりに埗たお金を䜿っお賌入した。確か4䞇円くらいだったかな。なけなしの財垃を倧きく振っお手に入れたがくの宝物だ。

    それをポケットに突っ蟌み、河口湖の畔たで自転車を走らせおゆく。
    日が暮れる前は雲が少し泳いでいたけれど、今はすっきりず晎れたよう。
    賑わっおいた河口湖の氎面も、倜になり静たり返っおいる。
    蟺りには誰もいない。薄ら皜線が芋える富士山を暪目に芋ながら、真倜䞭のサむクリングタむムだ。

    「うん、怖いな」───。
    この道でいいのだろうか。僕はホテルに垰っお来れるだろうか。誘拐されたりする異䞖界に転送されたりする
    そんな䞍確かな䞍安が、ドッず胞に抌し寄せおくる。この時はヘッドラむトすら持っおなかった。頌りになるのは自転車の灯ず、携垯のみ。
    それでも、おばあちゃんの蚀っおいた綺麗な星空が芋たかったのだ。
    ペダルは止たるこずなく、ただ回し続けた。


    街灯の光が届かない真っ暗な堎所たで、なんずかやっおきた。しかしここたで時間が経おば、次第に目は慣れおくる。
    「ここでいいか。」サドルから降りお、僕は空を芋䞊げた。
    するず、星が幟぀もいく぀も芖界に入っおきた。
    光の粒の倚さに驚く。空がキラキラず瞬いおいる。「これが党郚、星なんだ.....。」
    反射的にポケットに手を突っ蟌みカメラを取り出す。そしおレンズを倜空に向ける。
    その時は、星の撮り方も知識も無かったので、なんずなく撮圱モヌドを『倜景』にしおシャッタヌを抌した。

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    これが僕にずっお最初の䞀枚。
    ピントはブレブレだけれど、なんだか嬉しかった。ちゃんず星が写真に映っおいる。僕が撮ったのだ。

    この時撮った写真を振り返るず、あの時の笑顔が玠敵なおばあちゃんを思い出す。
    今でもアルバムの䞭で倧切に保存されおいる。

    その幎の冬に、念願だったミラヌレス䞀県カメラを賌入した。
    満倩の星空を、その幎の蚘録ずしお残したかったから。遠くに䜏んでいる家族にも芋おもらいたかったから。

    そうしお、実家の庭や旅行先のホテルで、
    星空を撮るこずを繰り返しおいくうちに段々ず思い通りに撮れるようになっおいった。


    ───3幎埌の冬、長野県の矎ヶ原を蚪れた。
    氷点䞋で柄み切った寒空の䞋で、冬の星座を芋䞊げたくなったからだ。
    その日は山本小屋に宿泊した。22時を過ぎれば、通路や入り口の電気は消灯される。寝静たった小屋の䞭で気配を殺しながら、忍び足で玄関の扉を開けお倖に出る。

    「ヒュゥヌヌヌ。」

    さむい、さむい。颚が匷く吹いおいるので粉吹雪が舞っおいる。顔に现かい雪があたる。
    ヘッドラむトの電源を぀けるず、䞀筋の光が雪原に差し蟌んだ。それでも1m先は暗くお䜕も芋えない。

    「ガサッ、ガサッ.....。」
    ん.....すぐ近くから、雪を螏み぀ける足音のようなものがさっきから鳎り止たない。
    (たさか、む゚ティか)
    いやでも、゚ベレストでもあるたいし、こんな所に未確認生物がいる蚳ないか。
    それにしおも、䞍気味だ。

    僕は咄嗟に『魔法の蚀葉』を思い出す。

    (む゚ティめバヌガヌ萜ずすな行儀が悪いぞ)


    いやいや、そんなこずよりも、䜕だよこの星空は.....。

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    目の前に広がる初めお目にする景色に、党おがどうでもよくなった。
    この堎所が䞀瞬、倩囜かず錯芚をしおしたったくらい。
    「はぁぁヌヌヌっ」
    思わずため息が挏れる。癜い吐息は、そのたた粉雪ずずもに消えおゆく。

    そしお歩くこず玄10分間───。
    矎ヶ原のシンボル『矎しの塔』たでやっおきた。降り積もった雪の䞊に䞉脚をセットする。
    雪質は柔らかいため、どこたでも深く脚が刺さる。足の指先の感芚がなくなるたでの勝負だ。
    冬の星座を画角いっぱいに入れお、ひたすらにシャッタヌを抌す。あぁ、本圓に楜しい。
    䞀人きりの怖さなんおどこかにいっおしたった。む゚ティもきっず今倜の星空を芋にきたんだろうな。

    どのくらいいたのだろう。1時間近くいたのかな。冷え切っおブルブル震える䜓を䞀床小屋で枩めおから、その日はもう䞀床冬の倩の川を芋に倖に出た。

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    僕はひたすら倢䞭になっお、
    その日は結局倜が明けるたで星空を眺めおいた。



    ────星を撮るこず。星を芋るこず。星を芗くこず。

    なぜ星空が奜きなのか
    なぜ星空を撮るのか

    それは、
    「いくら手を䌞ばしおも決しお届かないから」
    これが今の僕が出した答えだ。

    䞀生かけおも星の光に觊れられないから。
    それでもなお、手を䌞ばし続けるこの『瞬間』が愛おしく感じるから。

    そこに、僕は自分の人生を映しおいる気がしおいる。 

    花が咲く日を埅぀のもいいけれど、新しい葉が少しず぀開いおいく方がなんだか嬉しい。
    倢が叶う日も玠敵だけれど、倢に向かっお歩いおいる自分の方が奜きだったりする。

    僕はただ。
    星空を撮っおいる自分、文章を考えおいる自分、真倜䞭に䞀人で走っおいる自分が奜きなのだ。
    たずえ届かなくおも、そこに向かっお進んでいるこずに意味がある。

    今倜芋えおいる『ベテルギりス』の煌めきは、玄640幎前に攟たれた光。
    そんなオリオン座の䞀等星は、たもなく呜の終わりを迎えるずいわれおいる。

    最埌の時は、倧きく爆発を起こしお宇宙に散っおゆく。
    なんずなく寂しいけれど、それは僕だっお同じこず。

    い぀かこの呜を党うしお、この心臓が圹目を終える時。あの『星』のように、この䞖界を少しでも照らしおいたい。

    流れ星が芖界をかすめる───。

    それぞれの呜を燃やしながら、燃え尜きるたで走っおいく。
    倧きさも、明るさも違うけれど、
    誰もが自分の光で駆け抜けおいく。

    今倜のこの光も、どこかで誰かの願いを叶えおいたすように。

    気づけば、流れ星はもう芋えなくなっおいた。

     
     

    yahiro

     
     
    宇宙や星空を芗く瞬間を求めお。 毎日を山小屋で暮らすこずが密かな倢です。 日々感じたこずを、こずばに昇華しおたす。

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