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矎来来みらいらい

    〈 あらすじ 〉

     ロックバンド『矎来来みらいらい』でボヌカルを務める時蚈草ずけいそうこず矎来みらいは才、圌氏のいないチャヌミングレディヌ。
     矎来の倢はハヌドコアなどで聎く『デス声』を出せるようになるこず。
     ある日矎来は動画サむトで『デス声の出し方を教えくれるずころ』を探しおいた。
     そこで芋぀けたのが、なんずも怪しい『ラミヌの䞀生懞呜』ずいうチャンネル。
     身なりは掟手な遊び人、しゃべるずずヌっおも暗い雰囲気のラミヌ。しかし芋るず登録者数、ご、䞇人

     このラミヌず矎来に䞍可思議な接点が生たれるのだが  。

    •.❥·̩͙˖⋆࿐໋₊✊𓂃•.❀·̩͙˖⋆𓂃•❥·̩͙˖⋆࿐໋₊•.❥·̩͙˖⋆࿐໋₊✊𓂃•.❀·̩͙˖⋆𓂃•❥·̩͙˖⋆₊•.❥·̩͙˖⋆

    『 矎来来みらいらい/ 沙華やや子 』


    「はヌい 埅っお、埅っお埅っお」

     バンドリヌダヌ・ハスタがドラムスティックを振り挔奏をストップさせる。

    「ずけちゃん、たたフラットしおるよ。䞀小節ごずにフレヌズの終わりが特に半音䞋がりがち。もっかい最初から」

    「はい」

    たったく、ハスタっおばい぀も厳しいよな
     たたにめげそうになるボヌカリスト『ずけちゃん』こず『時蚈草』本名、畑矎来はたけみらい才。

     趣味ず蚀えどもハスタはバンド経隓幎以䞊の倩才的なテクニックを持぀ドラマヌだ。才からドラムスティックを握っおいる。センタヌパヌトの黒髪をかき䞊げ぀぀「そこ、意識しお歌っおみおね、ずけちゃん」ず念を抌した。

    「うん」

     スタゞオでは匱音を吐かずのパフォヌマンスをするずけちゃんこず矎来。癜いレヌスのミニスカヌトずポニヌテヌルが今日も飛んだり跳ねたりする。

     スタゞオでの力で緎習をしおおいお、本番のステヌゞでは倚くおもたでの熱量で挔やる。ここ、肝心。
     毎回の緎習をやりたくっおいるから、ラむブハりスでは党力を出さずにリラックスした状態で぀たり、ほがパヌフェクトのステヌゞが魅せられるっおわけ。

     ロックバンド『矎来来みらいらい』はロックンロヌルも挔奏すれば、ゞャゞヌなブルヌズもする。パンキッシュな楜曲やアむドル歌謡のようなフワフワした愛らしい楜曲もある。
     䞃倉化するボヌカリスト・時蚈草なのだ。

     ――――「お疲れ」
     金髪ツンツンヘアヌ、ギタヌの蟰た぀がだるそうに蚀う。機嫌が悪いわけではない。そういう男なのだ。

    「ああ、お疲れさん。蟰の新しいリフ、カッコむむね」ずスタゞオの䌚蚈を枈たせたベヌスの町朚たちき。町朚はフツヌのサラリヌマン颚の男性だが、ひずたびベヌスを奏で始めるず豹倉する。ベヌスの匊を噛み切りそうな勢いだ。

    「そう 培倜しお考えた甲斐があったぜ」

     代は時蚈草だけ。他のみんなは代のお兄さんだ。
     矎来来は瀟䌚人バンド。ず蚀っおも時蚈草こず矎来は只今倱業䞭。先日カフェの仕事を蟞めたばかり。
     店長のセクハラに遭ったのだった。店長は執拗に矎来をお茶に誘い、誘惑を仕掛けおいた。ストヌカヌ行為が発芚し、瀺談亀枉でめいっぱい慰謝料や匕っ越し費甚をぶん取ったのだ。だが、䞇円ずいう額はたくさんのようでいおそうでもない。未来はのんびり屋の自分を知っおいるので、早く仕事芋぀けなくちゃ、ず焊っおいる。

    「じゃあ、たた次の土曜日な」
     リヌダヌ・ハスタの蚀葉が解散の合図だ。

     バンド緎習は毎週土曜日の午埌時から時間だ。

     みなそれぞれバラバラにスタゞオ前で手を振り去っお行く。

     ――――矎来にはちょっずした憧れがある。それは  いわゆる『デス声』を出すこずだ。そう、ハヌドコアパンクなどで、䞻に男の人が叫ぶ「ぶうぅぉおおおおおヌ」ずいった野倪い声、ちょっぎりしゃがれたような。
     矎来の声はずおも柄んでいお高音だ。

     その日矎来は匁圓店で、唐揚げず目玉焌きずハンバヌグず焌き肉の入った『スンゎクすたみな匁圓』を買い垰宅した。
    あたし、瘊せ過ぎなのかな。それでぶっずい声が出ないのだろうか
     矎来はなんずしおも掟手に䞀䞁デス声を蜟かせたく、よく食べる。そしお隔日で行う自宅筋トレも欠かさない。

     お匁圓を食べ終え、お颚呂に入りスッキリ。ロリヌタチックなネグリゞェ颚のピンクの郚屋着に着替え、矎来はパ゜コンの前に座った。

    動画サむトで  [デス声のレクチャヌ]ずかないかな
     キヌボヌドを叩き怜玢。

    「ム ムムム」
     芋぀けたのだ、未来は。怪しげだが『デス声出したい人、集たれ』ずのタむトルの動画を。

     アカりントにカヌ゜ルを持っお行くず『ラミヌの䞀生懞呜』ず曞いおある。『ラミヌ』恐らくアカりント䞻のハンドルネヌムだろう。

     なによりも目に付いたのはサムネむルだ。党然䞀生懞呜じゃなさそうな男性がこちらを芋぀めおいる、ずいうもの。ピンク色にヘアカラヌされたりルフカット。錻ピアス。魚の死んだような目。目の茝きに生呜力を感じさせないが、匕き締たった身䜓付きの色男だ。幎の頃は自分ず同じぐらいかな ず矎来は思った。

    なになに、どれどれ
     瞳を茝かせ再生ボタンをクリックする矎来。
     サムネむルの男性がしゃべり始めた。

    「こんにちは」

     暗い声だ。どこが『䞀生懞呜』なのだろうか。

    「ここに君がやっお来たずいうこずは、そこの君」
     サッず画面のこちら偎に人差し指をさす華麗な姿がムカ぀く。

    「生きおんじゃん、この魚。キャハ」
     シニカルに笑う矎来。

    「私がこれから君の欲するデス声を披露する」

    「あ」
     矎来は聎き逃すものかず姿勢を正した。

    「ぶ――――うおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ」

    「す、凄い  」
     矎来は唖然ずする。さっきたでこの男、艶やかなアナりンサヌのような声だったのに。

    「以䞊だ。最埌に私から話がある。君はバンドをやっおいるカワむ子ちゃんかもしれないね」

    「ぞ なに、この男、気持ち悪」
     ラミヌずかいう動画の䞻のオリゞナリティヌが匷すぎお、さっきから独り蚀が止たらぬ矎来。

    「それずも倉声期前の男子かな」

    「良いから、早くデス声をええ塩梅に出す方法を教えおよ」
     突っ蟌む矎来。

    「諊めろ」

    「ハ」

    「君は、デス声が出ないからこの動画に蟿り着いたんだろう。出ないものは出ない。以䞊だ」

     ラミヌが締めくくるず、楜し気な音楜が鳎り始めた。女性のファルセットで「ラ、ラミ。ラミはい぀も䞀生懞呜。フッフフヌ」ミドルテンポの明るい曲調。
     ラミヌはクルッず画面に背を向け歩き始める。
     少しず぀画面から離れお行くラミヌ。おろ

    「䞊䞋毛玉だらけの黒いスりェットじゃん アハハハ」
     矎来はりケる。

     小さくなっお行くラミヌ。自分の郚屋なのだろうか。ドアの所たで行くず振り返ったラミヌ。
    「グッドラック」
     ボ゜ッず、ずおも良いこずがこの先起こりそうにない、芇気なき声で口にし、右手を䞊げおバむバむのポヌズを取った。

    「あほくさ」
     倧爆笑しながら、ふずパ゜コン画面『ラミヌの䞀生懞呜』プロフィヌル写真近くの数字に目をやり、矎来はおったたげた。

    「ヒ ず、登録者数、ご、䞇人  ンンン」

     こんなただの倉態男になんで  。しかし二ッチな需芁もあるずいうこずだろう。

    それにしおも、た、蚀い埗お劙かもね
     矎来は動画を消し、思った。
    デス声を出せたら良いなず思ったけど、のどの構造ずかあるのかなあ。出来そうにないこずにこだわり続けるよりも、埗意な所を䌞ばせばいっか


     ――――たさか、この日を境に自分が『ラミヌ沌』にハマっお行くなんお、思いも぀かない矎来であった。

    

    「ずけちゃん、新しい歌詞できた」ずハスタが蚊く。

     たた週間が過ぎ、今日も楜しくもあり、緊匵感もありのバンド緎習だ。

    「あ、ごめんなさい なんか良い詞、浮かばなくお」

    「珍しいじゃん、ずけちゃんにしおは」
     ゚フェクタヌを繋げおいたベヌスの町朚が蚀う。

    「最近バタバタしおんだよね」ず矎来。

    「就職掻動かな」ずおっ立おた金髪ヘアヌを敎え぀぀、ギタヌストラップを銖から既にぶら䞋げおいる蟰が蚀う。

    「ンたあ、そういったずころね」

    「あヌい。じゃあい぀もの順番で通すよ」
     ハスタのスティックの音が鳎り、曲のメドレヌから始める。


    ――――「お疲れ様」ちょっず゜ワ゜ワしおいる矎来。
    毎週土曜日なんだよね『ラミヌの䞀生懞呜』動画のさ、曎新曜日

    「来週は曞いお来およ、ずけちゃん。蟰の新曲にバッチリ合う歌詞」
     ハスタに念を抌される矎来。

    「うん、任せずいお じゃ」
     䞀番乗りでスタゞオを跡にした。

     タタタタタず駈け駅に向かい電車に乗る。
    電車、速く行け―
     いや、矎来。速く行ったらアりトだから、電車。危ないし。

     矎来は『ラミヌの䞀生懞呜』をリラックスしお芳るために、入济やお肌ず髪のお手入れをずっずず枈たせ萜ち着きたいのだ。
     鑑賞䞭のお䟛は極䞊のドリップコヌヒヌだ。


     ――――「さあ、始たるぞ」
     お祈りするみたいに巊右の指同士を亀差させた手を、ちょいず右に傟け、乙女チックな氎色のネグリゞェで、たるで人埅ち顔の矎来。


     倜時半に必ず新しい動画がUPされるこずを矎来が知ったのは、䟋のデス声動画を芳た次の週の曞き蟌みからだった。
     その日はなんずなくたたあの混沌ずしたデス声動画を今䞀床芳たくなり、ラミヌの所ぞ飛んで行ったのだ。

    『ラミヌさん、い぀芋おも䞀生懞呜脱力しおおかっこいい♡ byサトミ』
    『ラミヌさんぞ。今床ゆで卵のカラを䞊手にむく方法を䞀生懞呜教えおください byシゲル』
    『みんなヌ、あ、特にラミヌさんのこずをあんたり知らない方ぞ。新しい動画は毎週土曜日の時半にアップだぜ。 by芪衛隊長』

    およ そうなんだず矎来は思った。

     ちなみにその日は、ラミヌファンの曞き蟌みに察しラミヌが答えるずいう回だった。

     癜いA甚玙を数枚持ったラミヌが出お来た。
    「こんばんは」ボ゜ッ。
     今倜も暗い。東京䞭の街の灯を党お抹殺しおしたうほどの嚁力があるネクラっぷり。

    「今日は君たちの質問に答える。その。『ラミヌさんにはしっぜの痕がありたすか』」
     ラミヌは俯き腕を組んだ。なにやら考え蟌んでいる。

     そしお断蚀した。
    「痕じゃなくしっぜそのものがある」
     真顔だ。クヌルな瞳ではなくクヌラヌボックスに閉じ蟌められた、やはり魚の目だ。もう死んでいる。

    「なっに、それ、なんにも可笑しくないし」
     ちっ、぀たんなヌいず蚀わんばかりの醒めた気分の矎来はもうこんなの芳るの、やめようかな。たたたた芳たデス声の回は衝撃だったけどずパ゜コン画面をスクロヌルし、カヌ゜ルをバツの所に持っお行きペヌゞを閉じようずした。が、次の瞬間息を飲んだ。

    「わわわわっ、お尻出し始めたじゃん この兄ちゃんラミヌ」
     画面には肌色の郚分にモザむクがかけられおいた。

    「やっぱなんかわざずらしくお奜きじゃない」

     でもやはり気になる。

     真顔のたたのラミヌは、毛玉だらけの黒いスりェットパンツを履き、䜕事もなかったかのように次の質問を読むため、カサカサ ず音を立おA甚玙を再び手にした。

    「『ラミヌさん、あたし、䞀生懞呜働いおんのに、党然お絊料が䞊がらないの。なんだかさ、自分で“䞀生懞呜”っおなんだろうっおさ、わかんなくなっお来るよ』  ふむ」

     どう答えるのかなず矎来は興味が湧き、動画にくぎ付けになった。

    「私も『䞀生懞呜』っおなんだかわかんない」

    「プ」
     矎来は吹いおしたった。じゃあなんで『ラミヌの䞀生懞呜』ずいうチャンネル名なのか。

     続けおラミヌが話した。
    「わかる必芁ないし、䌚瀟倉われば」

     矎来は、なるほど、ずしっくり来た。
     嫌なこずは基本的にやらない矎来である。奜きなこずを達成させるためのちょっず嫌なこずなら頑匵るけど、わかんないずいうたで気持ちがも぀れるず、面倒なので蟞めるのだ。

     次の質問は『ラミヌさんの趣味はなんなんでしょうね』だった。

    「私はロックが奜きだ。特に幎代パンク」

    「あ フツヌに答えた」
     自分ず趣味が䞀緒だなずいうこずよりも、このニヒリストのような偏屈男が、ちょっぎり枩もりのある己を語った姿勢に察し、矎来は心が動いたのだ。

     その日の締めくくりももちろん「ラヌ、ラミ、ラミ。ラミはい぀も䞀生懞呜。フッフフヌ」番組に䌌合わないハッピヌな曲調。

     そしおラミヌのチャンネルが癖になった週目から半幎経過した今も、矎来は動画を芳続けおいる。


     ――――今日はどんな『䞀生懞呜』だろ りフフ
     定刻の時半。パゞャマに着替え光の茪を湛えおいる黒髪を梳かし、今か今かず動画のUPを埅぀矎来。

     始たった。

    「こんばんは」

     暗い 月の宵の薄暗さなど明るい、明るい。そんなものでは远い付かない深淵だ。ミッドナむトブルヌ。なんおおどろおどろしい挚拶だろう。これなら黙っお本線を始めたほうがマシなのに。

    「『ラミヌの䞀生懞呜』をご芖聎くださりありがずう」
     棒読みだ。なんで。

     あ それもそのはずか。より䞀局暗さを増しおいる理由は、今日の動画タむトルに曞いおあるこれが原因ね。

    『ラミヌは䞀生懞呜、掻動䌑止したす』

    「  お、え」

     芖聎者が皆䞀斉にコメントを曞き始める。
    『蟞めないで ラミヌさん』
    『なんでだよぉ』
    『俺の土曜日オワタ』

     さすが登録者数䞇人。皆心を痛めおいる。コメントは次から次ぞず綎られお行く。いったいラミヌになにがあったずいうのか。

    「うむ。今日のタむトルを芋おさぞや君たち、驚くこずだろう。察しは぀く」

     驚いおいるうちの人、矎来は目を䞞くしお耳をそばだおパ゜コン画面ずにらめっこだ。

    「私はマッチングアプリに登録しようず思う。いっぺんにたくさんのこずは出来ないので、さらばじゃ」
     ブチッ。
     たるで、喧嘩の電話で䞀方的に盞手から電話を切られるみたいに動画は突劂ずしお終わった。
     い぀もの「ラヌ、ラミ、ラミ。ラミはい぀も䞀生懞呜。フッフフヌ」の゚ンディングテヌマはなかった。

    「あヌあ  」
     毎週土曜日の矎来のお楜しみが儚くもたった今、消えおしたった。

    

     今日はスタゞオ緎習。そう、土曜日 ラミヌがいなくなった土曜日
     ――――「どしたの、ずけちゃん、今日は螊んないの 元気ないぞ」
     ロックバンド・矎来来のリヌダヌであるハスタが、曲挔奏したずころで心配そうに声を掛けお来た。

    「あ、ああ。ごめんね、心配掛けお。ちょっず、熱っぜいかな」

    「え そうなの、ずけちゃん。無理しないほうが良いぜ」ずギタヌの蟰。

    「病院に行ったほうが良いんじゃないの ずけちゃん、ラむブたでただ時間があるし、なによりも身䜓が資本だよ」
     ベヌシストの町朚が蚀う。

    「そうね。ハスタ、良いかな。あたし今日は垰っちゃっお」

    「ああ、健康が䞀番倧事だよ、ずけちゃん。無理しないで」

    「ありがずう」

     時蚈草こず矎来はスタゞオを出た埌泣きそうになった。
     本圓は熱なんかない。

    ラミヌの動画、面癜かったな。もう芳られないなんお淋し過ぎる  。でも、ラミヌは今から幞せを掎むんだよね。圌の幞せを祈るしかない

     もう、もう矎来の気持ちはいわゆる『掚し』を軜く飛び越え『本気』かもしれない。本人は気づいおいないらしいが。

    気晎らしに幎代ゞャパニヌズコアのアナログ盀でも買っおかえろっず
     矎来はい぀もの䞭叀レコヌドショップぞ立ち寄った。

     倧切にレコヌドゞャケットを掻き分け宝物探し。

    わ 超レアもの発芋っずゞャケットに手を䌞ばした時、矎来ず同時にそのレコヌドを掎んだ男性の手が。
     ハッずし「すみたせん」ず顔を䞊げた矎来。

    「どっひゃあ――――」
     驚いお䞡掌が前面を向いた。

    「な、なんですか」
     ピンク色のりルフカット、錻ピアス、魚の死んだような目。

     ラミヌじゃん

     矎来が感動に打ち震えおいるず、ラミヌは矎来にすぐ「あ、レコヌド良いっすよ。どぞ」ず手に取り差し出しお来た。

    「あ、ありがずうござい、いえ。え、ず  ラミヌさんだよね」

    「あ」
     男性はバツが悪そうな顔をした。

    そうだよなずその時矎来は思った。
    䞇人から求められる人気者だもの。ゎシップ厳犁だよね。あたし、女性だし

    「すみたせんでした 倱瀌したす」
     矎来は立ち去ろうずした。

    「あ、埅っお」

     フツヌじゃん、ラミヌ。フツヌの人。意倖。

    「え  」
     矎来はずどたり、瞳を芋た。ラミヌがなにを望んでいるのかわからないから。
    魚の死んでるような目じゃない。でもこの人、ラミヌよね

    「わかっおいたす。動画サむトず珟実の僕のギャップがあり過ぎお驚いおいるのでしょう」

    「は、はい」
     蚀い圓おられ、なんずなく逃げたいような気分に陥る矎来。

    「あの、僕のサむトを芖聎しおくださっおいた方ですね」

    「はい」
     矎来はなんずなく恥ずかしい。なんで
    あたしっおもしかしお

    「ちょっず埅っおお」
     レコヌドを持ちレゞに向かうラミヌ。

    「え、はい」

     すぐに矎来の所に戻っお来た。

    「店内は静かなので、店先で、良いですか」

    「はい」
     矎来が質問する間たなく店を出お行こうずするラミヌ。慌おお远いかける。

     店先の楠くすのきの朚陰の䞋もず、自分ぞ远い぀いた矎来ぞレコヌドを差し出し「どうぞ」ずラミヌが蚀う。

    「あ、え ええ 初察面の方にそんなこずしおいただくなんお、わたし、困りたす」
     戞惑いを隠せない矎来。

     ラミヌもそうであるらしい。
    「あの、僕、女性にあたり接したこずがないので、今、倉なこずをしおいるのでしょうね。すみたせん  」

     ギャ、ギャップよ。どうよ。なにゆえ

    「いえ。あのぅ  本圓にラミヌさんですよね。芖聎者に向かっお『君』ず呌んでいた  」

    「はい。僕は俳優を目指しおいるのです」

    「あ」
     それでお芝居が䞊手なわけか、ず矎来は玍埗した。

    でもあんなに旚く挔技出来るなんお、今のラミヌも挔技だったりしお
     矎来の劄想が尜きぬ䞭、朚陰に立ったたたの二人。

    「あの、僕が動画サむトを䌑止した理由は本圓です。恋人を探そうず考えたした。でもなんだか、マッチングアプリに登録するのも恥ずかしくお。自己玹介を曞くずか、苊手なんです」

     ずおも『ラミヌ』ずは思えない、目の前の男。『ラミヌラミヌ詐欺』 そんなのないか。
     身なりはド掟手、どこから芋おも遊び人。けれど玔情䞀盎線のこの男。自己玹介を始めた。

    「僕は、博倚園之はかたそのゆきず蚀いたす。才で、さっきも蚀ったけど俳優を目指し぀぀、時々チョむ圹なんかでドラマや映画に出぀぀、今の本業は土朚䜜業員をしおいたす」

     矎来は、ラミヌこず園之を悪い人じゃなさそうだなず感じたので自分も自己玹介をした。
    「あたしは畑矎来ず申したす。才。パンク、奜きですよ なんでも聎きたす」
     先皋、園之ず同じレコヌドに手を䌞ばしたこずを思いそう告げた。

    「ああ、僕はパンクやハヌドコア䞀蟺倒です。あ、なんだか長話で匕き留めちゃいたしたね。すみたせん、矎来さん。本圓に、僕、アナログ盀をいっぱい持っおいるのですよ。ちなみにこのアルバムは既にCDを持っおるんです。だから矎来さんにプレれントさせおください」

    「あ、でもやっぱり初察面の方に、それも有名人のラミヌさんに莈り物をいただくなんお、あたし  気が匕けたす」

    「僕、有名人ですか 有名人なら䞻圹が回っお来おも良さそうなんだけどな、ハハハ」
     淋し気な笑いにほだされ「わかりたした。ではラミヌ、あ、園之さんのご厚意に甘えさせおいただきたす」ず矎来は激レアオムニバスアルバムをGetしちゃった。園之に申し蚳ないなず思うけど、玠盎に嬉しい。

    「あ、あの  矎来さん」

    「はい、なあに」

    「お、お友達になっおいただけたせんか」

    くヌ やっぱナンパかヌい
     䞡手に倧切に抱えたレコヌドを突き返す矎来。
    「あたし、恋人は芁りたせん。音楜が恋人です 倱瀌したす」

    「あ  」

     しょんがりするラミヌを挔じおいた園之に背を向け、その堎を去った矎来。
    園之さんのこずだっお、やはり挔じおいたかもしれないわ。いきなり[お友達になっおください]だなんお

     しかし  なんだか園之のこずが気になり、圌が豆粒ほど小さくなったであろう頃、矎来は振り返った。
     園之は楠の䞋にずっず぀っ立っおいた。俯いおいるようだ。
     なんだか可哀盞。
    この暑さの䞭

     矎来は慌おお園之の所たで早歩きで戻った

    「園之さん」

    「あ、矎来さん」

    「お友達になっおも良いわよ。恋人じゃなく、お友達ね」
     矎来はなぜか照れおしたい目が若干泳いでいる。

    「ありがずう 矎来さん。友達っおどうやっおなるんですか」

     ガク――――。お、倩然 吊、これたで孀独だったのかな。

     矎来はスマホを取り出した。
    「ROUL連絡アプリ亀換したしょ」

    「はい」
     園之は矎来に埓い、矎来の連絡先を登録した。

    「じゃあ、あっ぀いしあたし、垰りたす。バむバヌむ」

    「バ、バむバヌむ」
     ぎこちない『バむバむ』だ。『バむバむ』の䌌合わない男だ。

    

     垰宅し、䜕床も頭をひねる矎来。にわかに信じがたい。あのラミヌの内偎はああだったのか。お芝居だったら譊察に蚎えおやる。あ、この堎合民事なのか わからんわい。

     プレれントしおもらったレコヌドを聎く気にもなれずに、矎来は園之の恥ずかしそうにする衚情や、笑っちゃいそうなほどの玔情さを想い起こしおいた。

     ――――お颚呂を䞊がり、牛乳を䞀気飲みした盎埌、矎来のスマホが鳎った。
     芋るず早速園之からのROULだ。

    『矎来さん、友達になっおくれおありがずう。嬉しいな。今床お茶でもしたせんか   “玠敵な女性の口説き方”ずいう本を今日買っお垰ったの。そこに䞊蚘のように蚀う、ず曞いおありたした』

     なんだかなあ  ここたで倩然じゃあ、俳優やっお行けないのでは、登堎人物の想いに寄り添えないのでは、ず心配する矎来だ。
     そんな想いも盞たっお、矎来は園之をなにやら攟っおおけない。

    『うん、良いですよ。お茶したしょう。こちらこそ、レコヌドをありがずう』

    『僕の土朚の仕事の䌑みは日曜日です。急なんだけど、明日はいかがですか 矎来さん』

     ドキリ 急なお誘いで、慌おるし、䞍思議な胞の高鳎りを感じる矎来。

    『うん、良いよ』

    『じゃあ、僕ね、玠敵な喫茶店を知っおいるんです。今日のレコヌドショップの䞁床裏偎の“喫茶マドラヌ”どうですか   ずいった塩梅に女性をリヌドするのがスマヌトだず、䟋のハりツヌ本に曞いおありたした』

     ガクヌ いちいちそれ、説明しなくお良いから。矎来は園之の぀぀のぶきっちょさに呆れながらもなんだか嬉しくなっお来る。だっおおもろいやん。可愛いし
     矎来は、いちいちツッコミを入れるのがめんどくさいので“説明しなくお良いよ”ずの説明を端折り『うんうん、そこ行っおみたいな』ずだけ返信した。

    『ありがずう。じゃあ、明日のランチタむムはどうですか』

     その文面ず返信の速さから、これはハりツヌ本に頌っおいない園之の蚀葉なんだな、ず感じた。

     そうしお二人は明日の時半に『喫茶マドラヌ』でランチを共にする運びずなった。埅ち合わせは盎接お店でする。

    

    でも  [ラミヌさん]っお超有名人じゃないのかな あたし、テレビも流行り物の動画サむトも党然芳ないからわかんないなヌ。スクヌプずかされちゃわないのかな 倉装しお来るんだろうか、園之さん

     あれこれず思いを巡らせながらドレッサヌ前の矎来。
     お化粧が嬉しい。凄く嬉しい  。
    あたしっお 園之さんのこず、奜きになっちゃったのかな ラミヌはもち掚しおいたけど、あくたでラミヌぞの想いだったし、恋ではなかった  
     手にした、動きの止たっおいたパフで再びファンデヌションを塗る。

     掋服ぱレガントなベヌゞュのプリヌツスカヌトず菫色のブラりスを遞んだ。今日は矎来のトレヌドマヌクのポニヌテヌルを䞋ろしおいる。
     フェミニンな黒のレヌスアップサンダルを玠足に履いた。

     先週ぐらいから鳎き始めた蝉の声が空の青をさらにくっきりずさせる。

     ――――こんな所にこヌんな可愛い䜇たいのお店があったんだ
     癜いログハりスだ。

     カランコロヌン。ドアベルが愛らしい音を立おた。

     園之は  倉装しおいなかった。シンプルな黒いポロシャツを着、ブルヌのスリムデニムを履いおいる。

     どこからどう芋おも、掟手・掟手の『ラミヌさん』の顔のたんた、頭のたんた。サングラスを掛けもしなければ付け髭など着けおいない。
     マニアックな人の間でだけ有名人なのだな、たぶん。知らんけど。

     奥の人掛けテヌブルで既に埅っおいた園之が立ち䞊がり手を振っお芋せた。
     あの『ラミヌの䞀生懞呜』で醞されおいた暗さが芋圓たらない。恥ずかしそうにしおいるが嬉しそう。

    「ごめんなさい、埅ちたした」

    「あ、ちょっず埅っおね、矎来さん  」
     ゎ゜ゎ゜ゎ゜。園之はなにかをテヌブルの䞋で隠したあず答えた「今来たずころだよ」

     嘘臭い。

     矎来はテヌブル䞋に目をやり、園之が手にしおいる物を芋た。『玠敵な女性の口説き方』ずいう本だった。

    「園之さん そんな物芁らないよ。恋はお芝居じゃないの。ハッ」
     頬を真っ赀に染める矎来。
    あたし、今[恋]っお蚀ったよねヌ。マゞか。そうなんか。そうなんや――――
     矎来は、自分は園之を奜きず気づいた。

    「あ  え、ず。うん。わかったよ」

    「園之さん、リアルの䞖界で台本をなくしたらきっず売れっ子の俳優になれるよ」
    あたし、超良いこず蚀ったね、ネネネネネ 今ずお調子に乗り぀぀も、園之の出䞖を本気で祈る矎来。

    「ありがずう。い぀も倱敗したらどうしようっお、オレっお本圓は気が小さいんだよ」

     園之が「オレ」ず蚀ったこずに自分で気づいおいないのはリラックスしお来たからだろうず、矎来は喜んでいる。だから敢えお觊れない。

    「そんな颚で、よくも『ラミヌの䞀生懞呜』をやっおいたしたね。たるで別人  」

    「うん。なんかね、頭のボルトがぶっ飛ぶ時があるの」

    え、怖い

     青くなった矎来の顔を芋おすぐさた付け加える園之。
    「ああ、倧䞈倫。アヌティスティックにずいう意味」

    お尻出すこずがアヌトなんだ
     矎来は、芖聎者からの質問『しっぜの痕の有無』に぀いお思い出した。

    「う、うん。それにしおも園之さん、登録者数䞇人っお凄いですね あたし、びっくりしちゃた。あたしは䞖間に察しおモグリなので。あ、園之さん、この間もだったけど、あたしなんかず䞀緒にいるずころが芋぀かったら、マスコミに远いかけられないの」

    「远いかけられたいよ  」
     哀しげな園之。ラミヌ、降臚か。

    「そ、そか」

     ラミヌは登録者数が凄いけど、有名じゃないらしい。小説だからそういうこずで蚱しおほしい。

    「あ、矎来ちゃん、メニュヌ芋ようよ」
    チャンお蚀っおくれた
     園之ずいう男はそこらぞんが鈍感なのか。自分がい぀の間にか蚀っおいるこずに気づいおいない様子。
     矎来は䜕気にずきめいおいる。

    「うん」

    「あ、オレ、ハンバヌグ食べたいな。ハンバヌグず゚ビピラフ。アむスコヌヒヌにしよう」

    「ンヌ、あたしはねヌ  魚介のバゞリコパスタずミックスゞュヌスにする」

    「うん」

    「お願いしたす」
     園之がリヌドしなさそうなので、右手を䞊げ店員に声を掛け泚文する矎来。

     その様子を芋お園之は「あ」ずひず蚀蚀い、リュックをゎ゜ゎ゜し始めたが、すぐに思い盎したようにその動きを止めた。

     口角をキュッず䞊げ、䞋がり気味の眉で矎来は蚀う。
    「だから『玠敵な女性の口説き方』はもう芋ない オケむ」

    「オケ」
     真っ盎ぐな線のような園之の「オケ」は颚呂桶みたいだ。

    「あたしは趣味のバンドで歌っおいたす」
     自分のこずを知っお欲しくお矎来が話題を振った。

    「あ そうなんだ」
     人間らしい血の通った返事が返っお来た。パンク䞀筋、音楜人間の園之、趣味の話題で嬉しいのだろう。

    「うん。オリゞナルの曲を挔やっおいたす」

    「ぞ。矎来ちゃんが䜜っおいるの」

    「はい。歌詞ず歌メロはね。䜜曲はギタヌの人です」

    「凄いですね」

     園之の暗い掞窟に䞀筋の光が届いたようだ。それを圌のラミヌ、吊、ミラヌで跳ね返しおいるかのように攟ち始めた明るさ。

    「でもさ、園之さんも『ラミヌの䞀生懞呜』で発信し続けおいたでしょう。凄いよ あたしはいわゆる叀参ファンではなかったけど、すぐに虜になっちゃっお半幎欠かさず動画を芳おいたした。だから最終回はショックだったのよ」

     たんざらでもなさそうな園之。

    「ンヌ。なんか衚珟したくっお。オレ、俳優の端くれなのに仕事が回っお来ない。なにかこう、オレのオレを出したかったの」

    「うん、うん」

     園之ず矎来ず、沙華やや子にしか意味がわからないかもしれないが、矎来には通じたのだ、その時園之のラミヌ語が。
     でもこれは小説だから、読者がわかるように曞くべきなんじゃないか ず悩む沙華やや子。――――圌女のこずは眮いずいお、今䞀床二人のデヌトを芗いおみようじゃあないか。

     ――――そこぞごはんがやっお来た。

    「うわっほぉヌい、矎味しそうなパスタ 蛞ずホタテの量が凄い」

    「あは。矎来ちゃん  矎来ちゃん、矎来ちゃん」

    「ハむ」

     園之がなにか蚀いたそうだ。
    「か、かかかか、可愛い、ね」
     やっず蚀えた。

     ポッ。
     パスタの䞭、魚介ず䞀緒に入っおいるトマトよりも頬を真っ赀にする矎来。
    「ありがずう」

     園之の前には鉄板ハンバヌグがゞュヌゞュヌ蚀っおいる。

    「た、食べよっか、矎来ちゃん」
     気を取り盎すかのように園之がナむフずフォヌクを持った。

    「そうね、うん」

     矎来は、パスタを堪胜しおいる途䞭でゞュヌスを飲む時にやっず、店内の様子を萜ち着いお芋るこずが出来た。だっお乙女だもん やっぱ園之さん、超むケメンなんだもん。
     矎来にずっお園之は『ラミヌ』ずしおパ゜コンで芋るよりも、実物がはるかにセクシヌオヌラを攟っおいるのだ。
     だけど話し始めるず頓珍挢。たたらぬギャップだ。
     店内はアンティヌクドヌルやテディヌベアに、ロマンチックな装食のオルゎヌルが所狭しず食られたメルヘンチックなムヌド。かわゆい物が倧奜きな矎来のツボを぀いお来る。

    [玠敵な女性の口説き方]にはたさか、お店たでは茉っおいないわよねヌ。あたしのために  。嬉しいな

    「うた うった。このハンバヌグ。倧正解、このお店」
     叫ぶ園之。たるで初めお食べた人であるかのようだ。

    「そうなのね。ハンバヌグは初䜓隓だったんだあ、園之さん」

    「あ、だっお初めお来るお店だもん」

    「え」

    「あ  『玠敵の女性の口説き方』でね、このお店が良いよず茉っおいたの。぀いでに知ったかぶりをしろ、っお」

     矎来はフォヌクずスプヌンをナフキンに眮いた。
    「嘘぀き 園之さんなんか倧っ嫌い」

     そう蚀い残し、店を飛び出した。自分はこんなに速く走れたのかずいう皋のスピヌドだ。涙が千切れお埌ろぞ流れ行く。
    「ノ、ノ、ノノッノヲりオオオオオォ――――ッ」

     デス声、出た。
     街䞭であろうずも、なりふり構わず、奜きな人の裏切りに泣く女の雄たけび。

    デス声なんか芁らん 芁らん、芁らん、芁らんよっ。あたしは園之さんが
    「ノりォォオオオオオ――――」
     ずめどなく溢れ出る愛情たっぷりのデスボむス。

     駅近くの小さな公園たで蟿り着いた。この胞の痛みず疲劎を癒やしたく、ブランコに揺られる矎来。

     ブランコを回ぐらいこいだ頃、珟れたるは汗だくの園之。矎来をみずめた園之は、公園の入り口で䞀床膝に䞡手をやった。肩で息をしおいる。
     そしお顔を䞊げた園之ず、園之をじっず芋぀める矎来の目が合った。
     ひずたびおさたっおいた矎来の涙が再び溢れ出す。りルりルした瞳にぞの字口。

    「聎こえおいたよ、矎来ちゃん。立掟なデス声だ」

    「この期に及んでなに蚀っおんの 園之さん」

    「  」
     なにも蚀えない園之。

    「あたし、垰る」

    「埅っお」

    「埅たない。園之さんのこず嫌いになった。嬉しかったのに。玠敵なお店に連れお行っおくれお、本圓に嬉しかったのに うっ、う、ううう」
     矎来はさっきみたいに䞊手にデス声が出ないように気を付けお泣いた。今芁らんから。今じゃないから。

    「オレ、恋の仕方がわからないけど、矎来ちゃんを喜ばせたい気持ちは本物だ」
     キッパリず園之が蚀い切った。

    「そう」
     今、矎来は遠い目だ。デスボむスを出し切った疲れもある。

    「あのさ、未䟆ちゃんのバンドはなんずいうの」

    「矎来来よ」

    「ラむブい぀」

    「ちょうどか月埌の月」

    「チケットもう買える」

    「ただ」

    「そか」

    「ラむブは月日の時から。『ラむブハりス・オヌルラむト』であるの」

     その時鳩のフンが園之の頭に萜ちた。
    「あ あっ、やられた」

    「じゃあね、バむバむ」
     あんたがク゜男だからそんなこずになるのよ、ず心の片隅で思わなくもない矎来が陜炎の䞭に消えお行った。

     ピンクの髪の毛にくっ぀いたフンをティッシュで拭い぀぀、淋し気な顔の園之は矎来の背䞭を芋送った。

    

     今幎の倏は猛暑だずいうけど、矎来の胞の䞭には、䞀足お先に朚枯らしが吹き荒むようだ。

     あれから䜕床も園之から連絡があった。メヌルには『矎来ちゃん、オレが悪かったよ。物を知らなくおすみたせん。気が利かない男でごめんなさい』『矎来ちゃんに逢いたいです』
     でも矎来は、差し迫っお来おいるラむブのために集䞭したかった。穏やかな恋ならバンド掻動の心の支えにもなるが、園之の独特な蚀動にはどうしおも振り回されおしたう。だから矎来は䞀切返事をしなかった。

    

    「だいぶん仕䞊がっお来たよね。ずけちゃん、良い感じじゃん よし、ラむブで挔る曲もっかい流そ」
     ハスタがカりントを取り挔奏がスタゞオで始たる。

     今日は土曜日。い぀も通り、矎来来のバンド緎習の日だ。

     ひず通り挔奏し終わったタむミングでベヌスの町朚が蚀う。
    「新曲の詞も歌メロも良いよね。こういう、ロマンチックな雰囲気の歌っお初めお䜜ったよね、ずけちゃん」

    「そうだよ、俺のむメヌゞしおた通りに䜜ったね、ずけちゃん」ず続けおギタヌの蟰。

     それはハッピヌ゚ンドを歌ったラブ゜ングだ。実は園之ずのデヌトの前日に、突劂ず沞き起こった詞ずメロディヌだった。

    倧奜きだったのにな、あたし、ラミヌのこずも園之さんのこずも
     密やかなため息にバンドメンバヌは気づかなかった。そうしおみっちり時間、本気のスタゞオ緎習は続けられた。


     ――――いよいよ迎えたラむブ圓日。
     今回のラむブはワンマンではなく、矎来来を含めバンド出る。矎来来はトリを食る。

     本日はかなりの入りだ。お客さん、スタンディングで人は入っおいるだろう。『ラむブハりス・オヌルラむト』満員だ。

     自分達より先に挔奏するバンドを客垭で芳おも良いんだけれど、今倜はなぜかそんな気分になれず、矎来は控え宀にいた。他のメンバヌは客垭に行き、自分たち以倖のバンドを芳に行っおいる。

     ボンテヌゞファッションに身を包みツむンテヌルにしおいる今日の矎来。線み䞊げロングブヌツを履いおいる。

     番床目の䞭盀蟺りで、ハスタ、蟰、町朚が控え宀に垰っお来た。

    「楜しもうぜ」ずハスタ。


     ――――出番だ

     お気に入りのミュヌゞシャンのSEが流れ、照明の萜ずされたステヌゞに、矎来来䞀人䞀人のメンバヌが入っお行く。

     時蚈草こず矎来がマむクスタンドの前に立぀ずどよめきが起こり、パッずラむトアップされ、すぐにロックンロヌルが始たった。

     癜熱するステヌゞ。グむグむ客垭から䌝っお来る感觊。メンバヌそれぞれの名を呌ぶファンたち。

     曲終わった埌MCをする。
    「えヌ、ああ 今日はこんなにお越しくださりありがずう みんな喜んでいたす」
     そこで矎来はメンバヌ人の顔を芋枡した。人はうんうん、ず頷いた。

    「じゃあ、次は激し目な奎」ず投げキッス。

     ゎッリゎリのギタヌサりンドの䞭、ハヌドコアナンバヌが始たる。矎来来の人気ナンバヌだ。
     この曲のために時蚈草矎来はデス声が出せたら良いのになヌ、ず思っおいたのである。

     挔奏が始たるや吊や、鋲の付いたラむダヌスゞャケットで皮のピタパンを履いたブヌツ姿の男性が前に躍り出お来た。
     ピンクの髪がツンツンしおいる。

     園之だ

     泣けお来た。あらゆる意味で矎来は泣けお来た。久しぶりに逢う、やっぱり忘れられない奜きな人が今目の前にいる喜びだけじゃなく、気が散るから今盎ぐどこかぞ行っお欲しいず焊る気持ちで泣きそう。

     それでも必死で歌う時蚈草こず矎来。

     園之はノリノリでヘッドバンキングしおいる。ひ 頭取れるよッ
     間奏の所でステヌゞに䞊がる園之。

     拳を掲げる園之に合わせ「うおぉぉ――」ず䌚堎の皆も拳を䞊げる。叫ぶ。「同志よ」っおな感じで。
     そしお園之が客の枊ぞずダむブした

    危ない
    「ノゥッゥゥッォォォオオオオ――――」すんごいデス声、時蚈草から出た。泣きながら出た。マむクは䜙さず時蚈草の叫びを拟い『ラむブハりス・オヌルラむト』䞭に響き枡らせた。

     ハヌドコアナンバヌを歌い切った。なんずか涙を止め、汗に芋せかけタオルで拭い次の曲ぞず移る矎来。
     次は䟋の新曲だ。
     矎来が園之を愛し始めた頃に曞いた歌詞。

    「♪あなたはあたしの王子様。たぶん違あう星から、やっお来たヌ。スキスキスキよ、本圓は。蚀えないあたしを蚱しおね。こんなあたしでも、姫に䌌合うかしら。初めおのデヌトが、楜しみよ。おしゃべりしたしょ。楠、笑っおくれるかなあ  」

     時蚈草の真ん前で、鋲ゞャン男が時蚈草を芋䞊げ聎き入っおいる。募配のあんたりない『オヌルラむト』の構造䞊、パンキッシュ過ぎるりニ頭は埌ろに立っおいる人にずっおは迷惑極たりない。ステヌゞが芋えないもん。でも芋た目が怖いし、さっきこの人ダむブしおたよな、ずみんな思うから園之に「どけお」ず蚀わない。黙っおいる。

     メロディアスなアルペゞオギタヌのミドルテンポの曲。そよ颚が吹いお来そうなラブな曲。

     ステヌゞからはお客さんの衚情が良く芋えるんだ。
     目を合わせないようにしおいた園之の顔を、時蚈草は勇気を出しお歌いながら芋おみた。
     園之の頬に涙がこがれおいた。

    な、泣くんだ――――
     奜きな人が自分の想いを受け取り感銘を受けおくれおいる、ずいう感情よりも『園之が泣くこずぞの驚き』が先に立぀矎来。

     その曲の埌は、ブルヌゞヌな曲を挔り、最埌は骚倪なロックナンバヌで締めくくった。

     時蚈草こず矎来にずっお、戞惑いだらけの倧倉なステヌゞだった。

     ――――「お疲れ」
    「お疲れっす」
     控え宀は安堵感に包たれおいる。
    「いやヌ、さすがですね 矎来来さん。察バンありがずうございたした。超クヌルでしたよ」

     番目に挔奏したガヌルズバンドの女の子がハスタに声を掛けおいる。

    「こちらこそ、サンキュヌ。うちはボヌカルが芁だからさ」

     するずガヌルズバンドの女子が「時蚈草さん、衣装もセクシヌだし、なにより歌がうたい 感動したした」ず握手を求めお来た。

    「ありがずう」
     萜ち着かない様子ではあるがニコッず笑い握手に応える矎来。

     ギタヌの蟰が着替え終わり矎来に蚀った。
    「いや ずけちゃんのデス声初めお聎いたわ。今たで隠しおた」

    「ううん。プラむベヌトで急に出るようになったの」

     キョトンずする蟰。
    「プラむベヌトで」

    「あ、ちが。䞍意に出たの」ず蚀い盎す矎来。

    「そうなんだヌ。かっちょ良かったぜ」
     町朚も隣で頷いおいる。

    「うん、サンキュヌ」

    「どうする ずけちゃん、方向䞀緒だから車で送ろうか」ずハスタ。

    「うん、そうね。倜も遅いし、よろしく」
     話しながらラむブハりスを出るず、園之がラむブハりスの壁にもたれタバコを吞っおいた。どうやら矎来には気づいおいない。

     立ち止たる矎来。

    「どしたの ずけちゃん、知り合い あそこにいる男の人」
     園之ず矎来はぐらい離れおいた。

    「う、うん。あたしやっぱ電車で垰る」

    「あ、そうなの。気を付けお垰るんだよ」

    「ありがず、ハスタ。じゃあ」

     カ月ぶりに逢った園之のもずぞず駈けお行く矎来。
     園之は慌おおいる。
    「あ、ああ、矎䟆ちゃん」

    「うん。今倜、来おくれたのね。ありがずう、園之さん」

     園之は携垯灰皿にタバコをもみ消し、灰皿をポッケに仕舞った。
    「オレは、矎来ちゃんが喜ぶ顔が芋たいんだ。それだけだよ」

     矎来の䞭で、も぀れおいたなにかがほどけた。
    「あたしは恋に恋しおいたわ」

    「え」

    「園之さんのこずを芋おいなかった。あたしね、やっぱり、そのたんたの園之さんが奜きです。嘘぀きなんかじゃない。やっぱり園之さんっお『䞀生懞呜なラミヌ』です」

    「嬉しい。嬉しいよ、矎来ちゃん。今日の曲目  」

    「そうよ、園之さんのために曞いたの」

     しばらく二人の間に心地よい沈黙が流れた。

    「あ、オレ、車で来おるの。もちろん呑んでないよ。矎来ちゃんさえ良ければ送りたしょうか」

    「うん お願いしたす」
    キャ――――♡あんなこずぉ、そんなこずぉ、ダバいこずぉ
     䞀気に矎来の䞭を桃色の劄想が駆け抜ける。
    園之さん、未経隓なのかな そんな感じがするなずか思う。

     そういえば二人は互いの䜏所は知らなかった、

    「あたしのお家は〇〇区の〇〇町です」
    「ああ、オレずけっこう近いですね。同じ区だったなんお。オレは〇〇町」

     ――――園之が運転する車䞭で二人は互いを前より知った。

     園之は東京生たれ東京育ち。矎来は自分が倧阪生たれの京郜育ちであるこずを教えた。

    「関西匁っお可愛いよね 今でもしゃべれたすか」

    「あったりたえやん。バリバリの関西匁やっちゅうねん」
     園之のリク゚ストに軜快に応える矎来。

     楜しく語らっおいる間に未来の自宅近所に近づいお来た。
    「あ、そこの角を曲がるず早いです」

    「はい、わかりたした。ネヌ、矎来ちゃん、今床䞀緒に動画出挔しない」

    「ン」

    「もうオレはマッチングアプリに登録する必芁はなくなった。そう想っちゃダメですか」

     矎来は玠盎に答えた。
    「  そうです 園之さんはもうマッチングアプリに登録する必芁がありたせん。登録しちゃダメ 登録しちゃ嫌です。あたしがいるんだから」
     やっずはっきり告癜できた。

     ハンドルを握っおいる園之の暪顔を芋るず耳たで赀くしおいる。
     そしおなぜか、おもむろに車を停めハザヌドランプを灯らせた。
     矎来ぞず身䜓を向けた。

    「矎䟆ちゃん、愛しおいたす」

     柄んだ瞳に芋぀められる矎来。幞せ  。

    「園之  くん」

    「うん」

    「あ、さっき蚀っおいた動画っお あたし、顔出しするの」

    「う  ん。もしも矎来ちゃんさせ嫌でなければ。でももちろん無理匷いはしたせん。パッず思い぀いちゃっただけ。『ラミヌずミラヌの䞀生懞呜』なんおね」

     話を聎いお、矎来は楜しそうだな、ず感じおいる。これたでの『ラミヌの䞀生懞呜』はいわゆるフリヌスタむルだった。なにか決たったコヌナヌがあるわけでもなく、ラミヌの気の向くたたにやっおいた感じ。
     倉わらなかったこずず蚀えば『ラミヌが出挔しおいるずいう点』それず『䟋のふざけた゚ンディングテヌマ』だ。

     ミステリアスな園之だ。ここたで曞いおいお䜜者は、矎来ちゃんのこずをちょっぎり心配しおいる。ただのスケベ野郎だったら蚱さねヌ。

     ――――「あたし、動画出挔、興味があるな。ドりガヌデビュヌなんおカッコいいじゃない 園之くんず䞀緒に色んなこず発信しおみたいな」

    「そう 嬉しいな。あ、あの  オレはたた『ラミヌ』に倉身するけど、嫌いにならない、オレのこずを、矎来ちゃん」

    「なに蚀っおるのヌ。あたしはラミヌ沌にハマっおいた女だよ。りフフ。ラミヌず園之くんの『差』も奜きなの」
     矎来は『あたしだけが知っおいるラミヌ』を宝物のように抱いおいる。どっちも奜き。

    「オレ、郚屋着、毛玉の付いたスりェットしか持っおないけど、嫌いにならない」

    「そヌんなの最初から知っおる」
     ケラケラず笑う矎来。あ、ちょっず笑い過ぎたかなず、耇雑な衚情の園之の顔を芋た時我に返った。

    「なら良かった」
     園之は怒りもせず、玍埗した様子だ。
    「じゃあ、車を出すね。ごめんね、長話ししお遅くなっちゃったね、矎来ちゃん」

    「ううん。いっぱいお話し出来おあたし凄く嬉しいのよ、園之くん」

    「うん。じゃあ垰ろうね、矎来ちゃん」

    「はい」

     ハンドルを右に切り、車を発車させる園之の腕は、身䜓がスマヌトなわりにはたくたしい。ドキドキ。

    「あ、あのマンションよ」
     指さす矎来。

    「うん。ぜひ、矎䟆ちゃんのアむディアを聎きたいな。い぀でもROUL頂戎ね」

    「はヌい」

     マンションに到着し、車を降りた。車を芋送る気なので、゚ントランスに入っお行かない矎来を芋かね「もう倜遅いから、矎来ちゃんお郚屋に行っおください」ず助手垭の窓を開け園之が蚀う。

    「うん、わかりたした。お垰り気を付けおね 園之くん」

    「はい。おやすみなさい」

    「おやすみなさい」

     矎来が゚ントランスに入り、゚レベヌタヌに乗った埌、園之は垰路を蟿った。

    

     ――――『ラミヌの䞀生懞呜がリニュヌアルオヌプンするっお本圓』ず銘打たれた動画が、月初めの土曜日時半にUPされ、ラミヌファンがざわ぀いた。

     嬉しそうに矎来も動画を芳おいる。

     動画スタヌトずずもにすっごいコメントの数だ。

    『ラミヌさん、おかえり』
    『ラミヌさん、婚掻旚く行かなかったのかな でもここがあるから良いじゃん 俺たちがいるよ』
    『どんな颚にリニュするのかな』など次々ず綎られるコメント。

     ――――「こんばんは。ラミヌです」

     暗さは倉わらない。そのこずに皆䞀皮の安心感を憶えおいる。ネクラを取ったらラミヌがラミヌじゃなくなる。

    「うむ。今倜銘打ったタむトル内容は事実だ。私は君たちを裏切らない。リニュヌアルする。その前に、君たちが䞀番気になっおいるであろう事に぀いお蚀及しおおく」

     園之ず矎来は、ただ動画撮圱をしおいない。アむディアに぀いおも怜蚎䞭だ。よっお、今日の動画がどんなものか、矎来にも知らされおいない。

    「こういうこずだ。コホン、ンン、ン」
     のどの調子を敎え改たる園之。


    「時蚈草ちゃん、私ず結婚しおください」


    「え  」

     矎来はすぐさた園之に電話したい気持ちを抌し留めた。最埌たで動画を芳おから電話しよう。
     ちなみに䜜者が蚀い忘れおいたけど、この動画は生配信ではない。収録動画だ。曞き盎したほうが良いかな

     もずい。

    『時蚈草ちゃんっお誰』
    『やっぱマッチングアプリしたんだヌ、ラミヌさん』
    『驚愕』
    『ラミヌさんに結婚ずいう二文字、䌌合わなさ過ぎ』
    『おめでずう』
     コメントの反応は色々。

     ラむブがあった月の再䌚から正匏にお付き合いを始めた矎来ず園之だが、キスどころか。手を觊れたこずさえないのだ
     たるで倧昔の儀匏みたいじゃん。それで結婚するなんお。

     矎来は正盎蚀っお戞惑った。
     これたで亀際した圌氏が過去に䜕人かいる矎来。
     さすがに、生粋のプラトニックラブから結婚、ずなるず気が匕ける。

     戞惑いながらパ゜コンのラミヌを芋぀めおいる矎来。
    「ラヌ、ラミ、ラミ。ラミはい぀も䞀生懞呜。フッフフヌ」
     なんず ゚ンディングテヌマが流れるず投げキッスを画面に向け送ったラミヌ。本圓に園之が蚀っおいるのか 混乱気味の矎来。

    

     即座に園之に電話をする矎来。

    『ああ、矎来ちゃん、芳おくれたんだね』

    「うん  あんな倧事なこずを『園之くん』で蚀わずに『ラミヌ』に蚀わせるなんお、あたし、なんだか倉な気持ちよ」

    『あ、あああ』
     園之は矎来を傷぀けおしたったのだず気づき、蚀葉を倱っおいる。

    「それに  あたし達、お付き合いしおいるけど、そのぉ  園之くん、チュヌすらしおくれないじゃん あたし、淋しい。深い仲でもないのに、結婚っお考えにくいです」

    『うん。ごめんなさい、軜はずみなこずをしお  オレ。謝っお枈むこずじゃないけど、本圓に反省しおいたす』

     すれ違っちゃう二人だ。
     でも、なにも盞手が園之じゃなくおも、自分が矎来じゃなくおも。人ず人っおそういうものかもな、ずも矎来は思った。

     奜きな人が自分の望むように動かないのは圓たり前のこず。だっお、別々の人間だから。

    「良いよ。園之くん。あたしも未熟なのね、きっず。ただ、結婚に぀いおは考えさせおください」

    『うん、わかったよ』

    「あ、園之くん、明日お䌑み、予定はあるの」

    『ううん、特に』

    「りチに遊びに来たせんか」

    『え 良いんですか』

    「うん。お家デヌトしたしょ」

    『わかった』
     園之が子どものように喜んでいる。

    「じゃあ、時はどう」

    『うん、わかった。時に行くよ』

     電話を切った埌、動画のアむディアもバンドで歌う新しい歌詞のこずも、就職のこずも、考えられない。
    『園之の“ダミヌ”ならぬ“ラミヌ”を䜿ったプロポヌズ』のこずで頭がいっぱいの矎来。
    やっぱりただ、お受けするのは早いわ。もっず知り合っおから  そう感じる。

    

     ――――お家デヌト圓日。矎来はフリルがあしらわれたピンク色のパフスリヌブのミニスカワンピを着た。矎しく赀いネむルを塗っお。艶々の髪をポニヌテヌルにし、氎色のリボンで結んだ。

     時分。ピンポヌン。玄関チャむムが鳎った。
     むンタヌホンのモニタヌに園之が映っおいる。
     いそいそず矎来はドアを開けた。うっずりさせるナむスガむが立っおいた。
    あたしにプロポヌズをしおくれた人
     たっ癜なロンTにストレヌトのデニムパンツがカッコいい園之。

    「どうぞ」

    「うん」

     園之が靎䞋のたた䞊がっお来たので、矎来は園之のために準備しおおいた黒いモコモコスリッパを勧めた。

    「ああ、ありがずう、矎来ちゃん」

     今幎は月になっおも暑い日が倚い。゚アコンを皋良く効かせおいる宀内。
    「゜ファヌに座っお、園之くん」ず蚀い矎来は、アむスコヌヒヌを淹れた。

    「綺麗にしおいるね、お郚屋、矎来ちゃん」

    「そう 園之くんのために䞀生懞呜お掃陀したわ」
     そう蚀いながら、園之のお隣にさりげなく矎来は座っちゃった。

    なにか、しお欲しい

     奜きだから觊れ合いたい、自然なこずさ。がんばれ 園之。もしくは矎来ちゃん。

    「あの、改めお、動画のこずを謝りたす。矎来ちゃん、嫌な気持ちにさせおしたっおすみたせん」
     矎来のほうに身䜓を向け、園之は頭を䞋げた。

     矎来ずお付き合いを始めおから、園之はちょっずず぀人ずのコミュニケヌションが䞊手になっお来たみたい。

    「いいえ。もう良いよ、園之くん。これからもっずもっず知っお行きたいの、園之くんのこずを、あたし」

    「ゎクリ」
     その盎埌、園之ののどは酷く倧きな音を立おアむスコヌヒヌを飲み蟌んだ。そしお「オ、オレも、矎来ちゃんのこずを深く知りたい」

    「深くぅ」

     ギュ
     矎来は思い切っお園之の倧きな手を握った。
     そしお、長いた぀げをパチンず回䌏せた埌䞊げ、䞊目遣いで園之の切れ長の瞳を、芗き蟌んだよ。やるじゃん、矎来

     ガバ

     ずっおも、ずヌっおもぎこちなく、園之は矎来を抱きしめた。
     二人ずもわずかに震えおいる。スりィヌトな熱さに幞せなめたいを起こしおいる。

    「キス、しお良い 矎来ちゃん」

     矎来はゞッず園之の瞳を芋぀め、コクリず頷いた。そしお目を閉じ顎を䞊げた。

     チュ  。

     蕩けお行く二人。矎来はメリヌゎヌランドに乗っおいるかのような高揚感を憶えた。
     二人は、心身共に結ばれた。

    

    ――――『プロポヌズ倱敗』からお䌑みしおいた『ラミヌの䞀生懞呜』が月䞋旬に埩掻した。
     アカりント名が倉わったぞ

    『ラミヌずミラヌの䞀生懞呜』

     わお 矎来ず園之は月䞭旬には電撃結婚を果たしちゃったのである。

    ――――「こんばんは、ラミヌです」
     前より声のワット数が䞊がっおいる。
    「こんばんは。新劻の時蚈草こずミラヌです」

     動画には二人が仲良く゜ファヌに䞊んでいる姿。

     コメントは倧隒ぎだ
    『ギャヌ、぀いに倧奜きなラミヌさんが結婚 ハンカチ嚙む』
    『ご結婚、おめでずうございたヌす』
    『えヌず、お二人の出逢いっおマッチングアプリですか 俺もトラむすっかな』


     ――――矎来の京郜の家族、園之の家族、矎来来のバンドメンバヌも二人の結婚をたいそう祝犏しおくれた。

     あの時『デス声』を倢芋およかった。デス声を出したくお怪しいラミヌに出逢えたんだ。その実、䞍噚甚で誠実な玳士だった。

     倢は芋おみるもんだね。

    #創䜜倧賞2026 #恋愛小説郚門

     
     
    こんにちは!沙華やや子です。物曞きになる倢を持ちたす。note初、䞍手際などがあったら埡免なさい。この床初めおコンテストに応募いたしたす!受かったら嬉しいけど、䜕よりも曞く事が楜しい。それず、読んで䞋さった方がHappyになったらなお嬉しい。特にどん底のひずのカタルシスに...

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