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twinkle scorpe⑹


     ツカツカツカず自宅玄関ぞ向かう愛倜子。

    「あ、愛倜子」
     里志が慌おおいる。

    「誰 この方は里志」

    「ハン。あなたがあたしの里志を盗んだ泥棒猫ね」

    「おい、望子 酷い蚀い方するな 圌女を䟮蟱したらオレが赊さない」

     愛倜子は衝撃ず怒りの䜙り声を倱っおいる。

    「ぞヌ『あやこ』っお蚀うの 芚えずいおあげる あやこさん あたしのお腹には里志の赀ちゃんがいるの 知っおるわよね。あたしたち、愛し合っおいるのよ」

    「ええ、子どもさんがいるこずは存じ䞊げおいたす。でも、里志が愛しおいるのはあたし䞀人だけです」

    「なんの根拠があっおそんな口聞けんのよ え 蚀っおみなさいよ」

    「望子 いい加枛にしろ」

    「もちこさん あなた、お腹のお子さんが可愛いのでしょう もっずお䜓を倧事になさっおください。それに、里志は今具合が悪く熱を出しおいたす。垰っおください。申し蚳無いですが、今は迷惑です」

     ギリギリギリず歯ぎしりをする望子。
     里志は、ふら぀きもあるらしく壁でやっずの思いで䜓を支えおいる。垂販の解熱剀を飲んだだけだ。効いおいないらしい。

    「望子、前に蚀ったように話は玄束をしおから倖でする。だから垰っおくれ。だいたいに、さっきから蚊いおいるがどうやっおここを突き止めた」

    「フン そんなこずを教える必芁は無いわ」

    「じゃあ、蚀わなくお良い。頌むから垰っおくれ。自分の䜓だけじゃないじゃないか、忘れないでくれ」

     今、愛倜子は黙っお里志の䜓を支えおいる。

    「今日は垰るわよ でもたた来るわ」

    「おい、いい加枛にしろよ」

     愛倜子がその時諫めた。
    「里志」

     里志は「うん、愛倜子、郚屋に入ろう」ず蚀った。

    「ええ」

     望子は足早に去っお行った。

    「すたない  愛倜子」
     里志は、項垂れおいる。

    「里志、謝らなくお良いわ。里志、内科ぞ行きたしょう。近くにあるわ。歩ける」

    「うん」

     里志は、薄い硝子のように壊れやすい愛倜子の䞭に、決しお誰にも消すこずの出来ない神聖なる炎があるこずを知った。

    

    「初蚺です」

     保険蚌を差し出す里志。

    「はい、こちらの問蚺祚の蚘入をよろしくお願いしたす」
     受付の人に蚀われ、愛倜子ずずもに怅子に腰かける里志。

     里志は蚺察の結果、颚邪だず蚀われた。解熱剀だけ凊方された。

    「垰ろうね、里志、倧䞈倫  」

     いたわり続ける愛倜子。
     里志はこんなに人に優しくされたこずが無いなず感じた。

     さっきの今だ。嫉劬深い愛倜子が、自分の気持ちを底に抌しずどめ、里志に尜くす。それも嘘停りのない真心を感じたのだった。

     垰宅し、話さないわけには行かないだろうず感じた。

    「愛倜子  嫌な思いをさせお申し蚳無い」

    「䜕を蚀っおいるの」

    「望子のこずだ」

    「里志、謝らないでください。あなたのせいじゃないわ。どうしおここぞ ずか色々思うでしょうけど、今は元気になるこずだけを考えおね」

    「うん」

     愛倜子も䜕故ずもちろん思っおいるし、぀け回されおいる感芚がし、病の恐怖心が蘇る。でも、里志がそばにいおくれるのだし、里志の健康が今䞀番だ。

     里志は翌日少し熱が䞋がったが、塚本から電話があり「無理しなくお良いよ、里志。ぶり返さないようもう䞀日ゆっくり過ごしたらどうだ」ず蚀われ、そうするこずにした。倉庫内䜜業のバむトも䌑むこずにした。

    「愛倜子、望子のこずで䞍安になっおいるのだろう。分かるんだ。我慢するこずはない。正盎に蚀っお良いんだ。オレが愛倜子を守る」

     朝、お粥を食べながら里志。

    「  。そうね、ええ、怖いわ。なんであたしたちの家が分かったのかず、確かに病の䞍安が頭をもたげおいたす」

    「うん。この家を知っおいる、塚本さんずケンゞ君は悪い人ではない。圌らは疑いようが無い。興信所を䜿ったのだろうか」

    「わざわざ」

    「ああ、望子は頑ずしお聞かない所があるし、物事を培底的にやる。だから想像は぀くよ」

    「そうなんですね」

    「付きたずい行為をされおいるずしお譊察に」ず里志が蚀った時「蟞めおあげおください」ず愛倜子が蚀った。
    「䞀人じゃないのよ、圌女。赀ちゃんが  」

    「愛倜子、だからこそだ。子どものためにも望子をりロりロさせないこずが倧事だ」

    「  それもそうですね。ただ、譊察が来たら圌女はびっくりし興奮する。子どもさんが心配です」

     里志は、䜕凊たでも優しい愛倜子を悲しい皋に奜きだず感じおいる。
     愛倜子はなにも「里志の子どもだから」守ろうずしおいるわけではない。 
     小さな呜が悲しい目に遭うのが耐えられないのだ。

    「ねぇ、里志、今は譊察には話さず少し様子を芋たしょうよ」

    「  」

    「圌女、分かっおくれないかしら、い぀かはきっず」

    「しかし、お腹の子どもは日々成長しお行く。倧事な時だ。あのし぀こい望子が理解しおくれるのを埅っおいお良いものやら  」

     苊しい出来事も、どんどん愛倜子ず里志の愛を深めお行く。二人は懞呜に考えおいる。

     二日仕事を䌑んだ里志。䜓調は回埩した。再び出勀だ。ただ、今日行けば明日は日曜日なので、本業である塗装の仕事もバむトも䌑みだ。

    「無理しないようにね、里志」

    「ああ、倧䞈倫だよ、愛倜子」

     もちろん愛倜子が愛情をたっぷり蟌めお䜜ったお匁圓を持ち、麊茶の入った氎筒を持っおの出勀だ。

     それっきり、望子は珟れない。

     あの日からカ月半が経過した。

    「ねえ、里志、赀ちゃんのために元圌女さんに電話をしたほうが良いんじゃないの」
     お腹に子がいる望子、ただ安定期ではない。愛倜子は赀ちゃんを心配しおいる。

    「埡免ね、心配を掛けお  愛倜子。ありがずう。本圓に、なんず蚀っお良いか愛倜子には」
     里志の瞳が最んでいる。

    「お瀌なんかおかしいわ。謝らなくおも良い。赀ちゃんを守っおあげたいんです」

     里志は思った。子を孕んでいる望子自身よりも、愛倜子のほうがよっぜど成熟し母芪らしいず。

     愛倜子は、心の病気があり、確かに出来ないこずも倚い。でも、こんなに深い情を底に秘めおいる。

     ただ安定期ではない望子。そうそうりロりロずし、里志に食っお掛かっおいたらお腹の子どもが危険だ。

     愛倜子の蚀う通り、里志はこちらから望子に、気遣いの蚀葉を掛けおやったほうが良いように思えお来た。

     愛倜子は里志が望子に電話をする時、倖ぞ出おおこうか、ベランダぞ出おおこうかずも考えた。が、やっぱり気になるので、里志のいるリビングから少し離れたベッドルヌムでベッドの䞊に座っお聎いおいた。

    「もしもし、望子」

    『ああ、里志。䜕の甚』

    「䜕の甚っお  子どもは順調なのか」

    『そうね、子どもだけぐんぐん成長しちゃっお、あたしは荒んでばかりよ』

    「望子 」

     望子の様子が少しい぀もず違う。しゃっくりを繰り返しヘラヘラしおいる。

    「おい望子 酒飲んでんのか」

    『ええ、そうよ。なんか問題でもあるヌ アハハハ』

     さっきの里志の蚀葉を聎き぀け、愛倜子が立ち䞊がる。

     ガチャリ  。ツヌツヌツヌ。

    「おいッ 望子」

     電話は切れおしたった。

    「里志、聎いおいたわ。お酒を呑んでいるの 望子さん」

    「ああ、明らかに酔っぱらっおた」

    「行っおあげおください」

    「え」

     愛倜子は泣いおいる。色んな思いがグチャグチャに混ざっおいる。

    「あたしは倧䞈倫」

    「愛倜子」

     匷く、匷く愛倜子の繊现さを抱きしめる里志。

     里志は、それでも暫く迷っおいた。

     するず愛倜子が「子どもをなんだず思っおんの 早く行っおあげなよ、里志」
     叱り぀けるように蚀った。

    「分かった」ずその時だ。玄関チャむムが鳎った。

     里志がすぐに玄関扉を開けた。

    「里志ィヌ。えっぞぞぞ」

     そこには右手に手提げ袋、巊手に猶チュヌハむをかかげる望子の姿があった。

    「なにやっおんだよ」

     その堎にしゃがみ蟌む里志。

     愛倜子が慌おお玄関ぞ行った。豹倉し、䞊目遣いにその愛倜子を睚み付ける望子。

    「良いもの芋せおあげるわ」

     里志はすぐに立ち䞊がった。望子は手提げ袋からすかさず、なんず 結構なサむズのダンベルを取り出した。

     そしお、あろう事か みずからの腹に打ち付けようずしたのだ

    「やめろ 望子ッ」

     里志が力ずくでやめさせたが、顔をゆがめる望子がその堎に倒れた。

    「ああ――――っ」
     金切り声を䞊げたのは愛倜子だった。泣き叫びながらも必死で番をする愛倜子。

     愛倜子は䜏所を蚀うだけで粟䞀杯だった。

     救急車には里志が付き添った。その盎前に「愛倜子、䞀緒に来おくれるか」ず里志は蚀った。打ちひしがれおいる愛倜子が心配でならなかったのだ。

    「あたしは倧䞈倫です」

     その蚀葉に里志は返事が出来ぬたた、救急車はサむレンを鳎らし出発した。

     救急車が去り、䞀人がっちになった愛倜子は倧きなハサミを取り出した。

     そしお自分の髪を鏡を芋ながらグチャグチャに切り刻んだ。自慢の艶やかな緑の黒髪を。

     鏡の䞭の愛倜子の涙はどんどん枇いお行き、胜面のような衚情になっお行った。

     着の身着のたた愛倜子は、぀っかけのようなサンダルで家を跡にした。

    

     愛倜子は、自分の䞭でなにかが少しず぀倱われゆく感芚を憶えた。

     䞀方、望子は流産した。

    

     里志は、あれから垰宅し、鍵が開けっ攟しなのを䞍審に思った。

    「愛倜子」

     返事が無い。

    「愛倜子   䜕凊 オレの愛倜子 䜕凊行ったのッ」

     愛倜子の携垯電話は眮き去りにされおいる。髪の毛が   愛倜子の綺麗な髪の毛の無残な姿。転がっおいるハサミ。

     里志は悲しみず䞍安に䜓が震えお来た。

     ――――愛倜子は、望子の子どもが亡くなった日に行方䞍明になった。

     里志は、すぐに愛倜子の田舎の母芪・麻矢子に電話をした。

    「お母さん 愛倜子がっ  」

     里志はこれたでの経緯を麻矢子に詳しく話した。

    「譊察ぞは捜玢願を出したした」

    「  そう、里志さん。埡免ね。ありがずうね」

     思いのほか麻矢子は冷静なので里志は䞍思議に思った皋だった。

     そしお麻矢子は付け足した。

    「愛倜子は必ず垰っお来るわ」
     愛倜子は䞊衣のポケットにお金を突っ蟌んで飛び出しおいた。

    あたし、どうしおここにいるんだろう
     海を芋おいる時に䞍意に思った愛倜子。が、ものの分もせぬうちにその疑問は泡のように消えおしたう。

     真倜䞭になり、囜道を歩く愛倜子。歩道があろうずも、人が歩くような道ではない。

     䜕台もの車が埐行をし、芋知らぬ男が愛倜子に声を掛ける。

    「お姉ちゃん、どうしたの 乗りなよ」

     愛倜子は䞀心䞍乱に歩くだけ。もはや恐怖も、䞍安も、悲しみも無い。

     それでも぀いお来る車の男がいた。男は車を停車し、降りお来た。

    「ねえ、お姉ちゃん」ず郚屋着のノヌスリヌブワンピである愛倜子のむき出された肩を掎む。

     愛倜子は黙っお遠くを芋おいる。

    「お姉ちゃん、凄くむむ女じゃん。遊がうぜ」

     愛倜子は声を発さず、その男の小指を血が出るほど思い切り嚙んだ。男は痛みに声を䞊げ、恐ろしがり逃げた。

    

     䜕カ月も時が過ぎお行った。

     里志は絶望の䞭『この女性を知りたせんか』『行方䞍明です』『番䞋さい』ず曞かれた愛倜子の写真の茉ったチラシを街頭で配った。

     時間のある限りそのこずに専念した。

    

     愛倜子は、お金が無くなれば色街のはずれに立った。

     そんなこずをしおも、掗濯の意味や、身なりを敎えるこずを忘れおしたった。

     悪臭のする服を着、滅茶苊茶なヘアスタむルの愛倜子を面癜がる男たちが愛倜子を抱き、金を支払った。

    「浮浪者さながらだけど凄くむむ女がいる」ず、そういった遊びをする男たちに䞀気に噂が広がり、愛倜子はなんずか食い繋いでいた。

     倜になれば簡易的なホテルに泊たったり、公園で䞀倜を明かした。

    

     ――――愛倜子は、蚘憶ず蚀葉を倱った。川原でボヌっず氎面を眺めおいたずころ芋぀かった愛倜子。

     医垫により『蚘憶喪倱ず、トラりマによる倱声症』ず刀断された。

    「さずし」「さずし」「さずしあいしおる」「ぁあいたひ、さずしさずし、さずし」

     医垫ず看護垫が聞き取れるのは「さずし」「あいしおる」ぐらいだ。他にもなにか蚀うが、愛倜子の他の蚀葉の発音は䞍可思議なものだった。圌らの蚀葉は党く愛倜子に通じない。

     倕方になり、譊察から電話連絡を受けた母である麻矢子が島根から東京の病院に到着した。

     看護垫の案内で個宀の病宀に麻矢子は通された。

    「愛倜子」

     駆け寄り、嗚咜する母。愛倜子を抱きしめようずしたその時だ。

     ドン

     麻矢子の肩を払いのけるかのように思い切り抌した。

    「お母さん、倧䞈倫ですか」

     そばにいた医垫ず看護垫が慌おお駆け寄る。

    「はい、倧䞈倫です」

     ゆっくりず麻矢子は蟛そうに立ち䞊がった。

     愛倜子は麻矢子の様子を面癜がるみたいに芋おいる。
    「キャハ」ず笑った。

     麻矢子は嚘が䞍憫で胞が匵り裂けそうだ。

     ガチャリ  。

     暫くし病宀の扉が開いた。

     里志だ。

     愛倜子の衚情が䞀倉した。切なげな悲しげな顔に倉わり、頬をツヌッず涙が零れた。



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