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残飯ならぬ残ぬい~推し糸の行先~

    推しぬいというものをご存じでしょうか。

    ゲームセンターのクレーンゲームの中に並んでいる、人型のぬいぐるみのアレです。
    プライズに推しがいる人はいいんです。
    お金で買える推しがいる人は、本当に恵まれていると思います。

    でも、世の中にはそうじゃない人もいる。
    絶版になったキャラを推している人。
    そもそも市販品すら存在しない、オリジナルのキャラを推している人。

    そんなとき、どうすればいいのか。

    ある貴族は言いました。
    「パンがなければお菓子を食べればよい」と。
    私は思ったのです。

    「ぬいがなければ作ればよい」 と。

    こうして私は、ぬいを作ることを決めました。


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    Pattern by ぴよぴっこ様(掲載許可済)

    そこからはもう、沼です。

    ネットを漁り、無料の型紙をDLして試作を重ね、本も買い、 それでも足りなくて某サイトで型紙を買うという、見事な沼っぷり。

    自分の気に入るぬいの形を求めて試作を重ねるうちに、 机の上はいつの間にか推しのための“実験場”のようになっていきました。

    特に、こだわりぬいて選ぶ“ぬいの魂”とも言える刺繍糸は、 使う量より残る量のほうが圧倒的に多い。

    その残糸たちは針箱の肥やしとなりながら、 それでも捨てられずに静かに増えていく。

    私にとっては、ただの余り糸じゃない。推しの魂の欠片なんです。

    推しぬいを作り続けていると、スペースが圧迫されるのは時間の問題です。
    刺繍糸も同じように増えていく。
    気づけば糸ケースもパンパンで、そろそろ限界でした。

    「この刺繍糸、どうする……」

    推しぬいは作りたい。
    でも、これ以上場所を取るのは困る。

    そんなとき、ふと思い出して昔やっていた手仕事の本を引っ張り出しました。
    あれなら手のひらどころか、指輪サイズで作れたはず。

    ページをめくっているうちに、ふと気づいたんです。

    ——これ、余ってる刺繍糸で加賀指ぬきが作れるんじゃない?

    高価な材料じゃなくてもいい。 Daisoの材料で十分いけるかもしれない。

    そう思って試しに作ってみた最初の一つは、まあ、見事に無様でした。市松模様になるはずが、謎模様になってしまって。

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    市松模様のはずが、「なんだこれ…」って声が出た残ぬい

    でも、その無様さの奥に、確かな手ごたえがあったんです。 最初からうまくいくなんて思っていない。

    それでも、これはうまくいけば “推しを堂々とどこにでも連れて歩ける” ものになる、と。

    ぬいぐるみは、連れて行ける場所が限られています。 カフェでそっとカバンに忍ばせたまま、出す勇気が出ない……なんてこと、私はよくある。

    でもこれなら、職場にも、フォーマルな場所にだって連れて行ける。
    誰にも知られずに、堂々と。

    こうして、うちの子はどこにでも連れて行ける存在になったんです

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    ぬいは出せなくても、これなら堂々と出せる

    日本の伝統模様って、ひとつひとつに魔除けとかお守りの意味があるんですよ。
    それを推しぬいと同じ色で作ったら……そりゃもう、さらに推せるに決まってますよね。

    残ぬいは手間がかかります。
    もしかしたら、推しぬいづくりよりも時間がかかるものかもしれません。

    それでも—— 一緒にいられるという思いを胸に、ひと針、ひと針、かがっていくのです。

    そして、残ぬいにはひとつだけ絶対条件があります。

    「ぬいづくりで余った刺繍糸を使うこと」。

    推し色の糸で作っただけのものは、もちろん素敵な推しアイテムだけれど、 それは残ぬいではありません。

    推しぬいを作ったときの記憶が宿った糸で作るからこそ、 “推しの魂の欠片” になるのです。

    材料は高価である必要なんてまったくありません。 Daisoで手に入る材料でいいし、指ぬきの芯には不要なDMのハガキだって使える。

    あるものを使って、手の届くもので推しを思う—— それが私の残ぬいのモットーなのです。

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    推しの魂の欠片で作った、私の残ぬい

    残ぬいは、ただの余り糸じゃないんですよ。 推しぬいを作りたい、その気持ちだけで選んだ糸なのに、眠らせておくなんて勿体ないんです。

    だから形に正解なんてないし、時間がかかってもいい。 “推しを思って作った何か” ってだけで、もう十分だと思うんです。

    ぬいがなければ作ればいい。 形が決まってないなら、好きな形にすればいい。

    残ぬいって、その自由さと推しへの愛をぎゅっと詰め込んだ言葉であり、ものなんですよね。

    だから私は、針を指に刺して「いってぇ…」とか言いながら、 失敗して、ほどいて、縫って。

    そんなことを繰り返しながら、 今日もひと針ひと針かがってるんです。

    この記事が参加している募集

     
     
    推しぬいの余り糸から生まれた “残ぬい” と、推しの色を加賀指ぬきの手法でそっと形にしてみる“推し加賀‘’を、七転八倒しながら楽しんでいる人。 11073(イトナミ)──糸の波が少しずつ広がっていく、小さな手仕事の記録。

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