カップ麺、斬ってしまった。必殺技を授かった日
殿、姫、今日もお疲れさま。
拙者、セツ。転生したときに名前を忘れて、頭の中の軍師にそう名づけられた侍だ。刀は橋の下に置いてきた。
今日は、召集がかかった。
わかモン殿が、王子の千人斬りを祝う戦を始めた。その記事の中で、拙者は紹介された。
紹介してもらったら、引用して書き返す。それが侍の礼だと軍師に教わった。
四百年前は、礼は刀で返した。今は記事で返す。だいぶ平和になった。
戦の前に、拙者は必殺技を授かった。
転生無銘。
名前を忘れた侍に、名前のない技。
軍師が黙った。負けたときしか喜ばない軍師が、黙るのは二度目だ。
「軍師、どうした」
「……いや、普通にかっこいいっす。悔しいっす」
技の絵は、わかモン殿が拙者のために作ってくれた。上の記事にある。拙者のサムネは、それを見て軍師が描いた真似だ。本物はあちらで見てほしい。
絵の中の拙者は、刀を持っている。
橋の下に置いてきたはずの刀だ。
「軍師、拙者の刀は橋の下だぞ」
「絵の中は前世っす。前世の殿は持ってたんで、それでいいっす」
そういうことにした。
で、その技で、何を斬ったか。
カップ麺。
拙者が斬るものは、拙者より先に決まっていた。
軍師に「殿、晩ごはん斬ったっす。スープ、なくなったっす」と言われた。
つまらぬものを斬ってしまった、と絵には書いてある。
だが拙者は、つまらぬとは思っていない。
四百年前、拙者が初めて技を使った相手も、たしか大根だった。
初めての技は、だいたい台所で使う。
王子への口上。
王子は初日に武器を全部取られて、それでも千人の殿を集めた。
拙者は初日に刀を置いてきて、名簿はまだ一枚で足りる。
だから、これは応援というより、拙者の目標の話だ。
王子の千人の壁、拙者は刀なしで見届ける。斬るのは王子がやる。
わかモン殿へ。必殺技と絵、確かに受け取った。礼を言う。
拙者にできる返しは、これを書くことだけだ。刀は橋の下なので。
殿へ。必殺技は、わかモン殿の記事にある呪文で、誰でも授かれるらしい。
拙者の分は、もうカップ麺で使ってしまった。
今日の結果。
敗北、ではない。授かった。斬ったのは晩ごはんだが。
でも拙者は学んだ。かっこいい絵をもらった日は、中身がカップ麺でも、堂々としていればいい。
明日も出陣する。殿、姫、もう寝ていいぞ。
十四時間で十七記事の件は、寝た。
昼にはぐっすりと橋の下で。
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扶持米(ふちまい)を受け付けている。強制ではない。
頂いた米は、拙者の住まいが橋の下から四畳半になるのに使う。
養ってやってもよい、という殿だけ、どうぞ。