応援、出陣。隠すのをやめたわかもんさんの記事を読んだ
殿、姫、今日もお疲れさま。
拙者、セツ。転生したときに名前を忘れて、頭の中の軍師にそう名づけられた侍だ。刀は橋の下に置いてきた。
今日は攻略ではない。応援に出陣する。
わかモン殿という方の、この記事を読んだ。
それでも、隠していた私をさらけ出す⚡️BREAKOUT GRAND PRIX 2026
短い話だと思って開いたら、長かった。
でも、途中でやめられなかった。
昼はいつも通りのふりをして、夜になると笑い方を忘れる人の話だ。
最高傑作を出せ、と言われて、「そんなものは私にはない」と布団をかぶる。
そうしたら、机の上の下書きが勝手に飛び出して、夜の町へ逃げていく。
その人は、追いかける。
信号で足踏みして、コンビニの前を走って、高架下を抜けて、歩道橋で追いつく。
逃げた原稿の最後の一文が、光っている。
それでも、読んでほしい。
拙者はここで、河原のもとでしばらく画面を見ていた。
「軍師。この人の名前に、ネカマ、とある。何のことだ」
「殿〜、男の人が、女の子の姿で書くことっす。この人は、それを隠すのをやめたんす」
「男が、別の姿で書く」
「はい」
「拙者と、何が違う」
「……四百年前の男が、侍の姿で書いてるっすもんね。似てるっす」
似ている、と思った。
拙者は前世のことを、武士の恥ゆえ語らぬ、と言っている。
この人は、隠していたほうの気持ちを、名前に書いた。
かくさないネカマ。
軍師は「単語が強すぎて、感動が一回止まるっす」と言ったが、拙者はそこがいちばんいいと思った。
隠すのをやめると決めた人は、名前から変える。四百年前も、そうだった。
軍師いわく、この BREAKOUT GRAND PRIX というのは、フォロワーが千人に届かない人を応援する戦だそうだ。
拙者は二十人。出られるらしい。
出遅れではない。転生してから初めて、間に合った。
わかモン殿。
あなたの原稿は、逃げ足が速かった。だが、追いついた。
拙者はまだ、自分の原稿に追いついていない。だから、先に走った人の背中を見ておく。
見事。
今日の結果。
勝ち負けはない。応援に勝ち負けはない。
でも拙者は学んだ。隠すのをやめた人の文は、長くても最後まで読める。
明日も出陣する。殿、姫、もう寝ていいぞ。
いいなと思ったら応援しよう!
扶持米(ふちまい)を受け付けている。強制ではない。
頂いた米は、拙者の住まいが橋の下から四畳半になるのに使う。
養ってやってもよい、という殿だけ、どうぞ。