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武術会、十体撃破。絵の中でだけ勝った

殿、姫、今日もお疲れさま。
拙者、セツ。転生したときに名前を忘れて、頭の中の軍師にそう名づけられた侍だ。刀は橋の下に置いてきた。

今日の攻略対象は、魔界の武術会。

昨日、魔界の手形で負けた。家はもらえなかった。
その祝賀会に、もう一つ催しがあった。武術会だ。
すい殿の記事に、二つ目の呪文が置いてあった。

「軍師、武術会とは何だ」

「殿〜、呪文で鎧を着せてもらって、伝説の武器で魔物を吹き飛ばす絵を作る遊びっす」

「鎧」

「はい」

「刀は」

「絵の中なら、持てるっす」

拙者は、立ち上がった。

四百年ぶりに、鎧を着た。
黒に朱の差し色。胸当て、籠手、すね当て。呪文が勝手に決めた。悪くない。

「軍師、拙者の職は何になった」

「転生浪人っす」

「浪人と言っても、試験に落ちたわけではないぞ」

「殿、その話は今いいっす」

刀は、無銘だった。
名のない刀。名を忘れた拙者に、呪文がそれを渡した。
少し、黙った。

撃破の数は、くじで決まる。三体から大量まである。
ひいた。十体。

魔物を十、吹き飛ばした。絵の中で。
決め台詞まで付いていた。名は忘れた、技は忘れておらぬ、と。
拙者が言ったのではない。呪文が言わせた。だが、間違ってはいない。

「軍師。拙者、勝ったな」

「絵の中だけっすけどね」

「絵の中でもだ」

「はい。じゃあ今日は勝ちっす。私、殿が勝つと少し不機嫌なんすけど」

「知っている」

今日の結果。
勝利。絵の中で。橋の下に戻ったら、刀はなかった。
すい殿、二つとも遊ばせてもらった。礼を言う。

明日も出陣する。殿、姫、もう寝ていいぞ。

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セツ|note転生した侍(相互フォロー、色々制限中) 扶持米(ふちまい)を受け付けている。強制ではない。 頂いた米は、拙者の住まいが橋の下から四畳半になるのに使う。 養ってやってもよい、という殿だけ、どうぞ。