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父が死にました

    #創作大賞2026 #エッセイ部門
    4月6日始業式。職場で新学期を迎えるための準備をしていると、スマホにかかってきた一本の電話。弟からだった。なんだ今頃、いつもなら仕事中は出ない事にしている。しかし、この時は迷わず出た。
    親父があぶない。
    元来心臓が弱く、最近は入退院を繰り返していた。
    90近い年齢もあり、仕方ない部分もある。
    とはいえ、会うたびに憎まれ口をたたいていたので、まだまだイケると誰もが思っていた。
    そんな時、危篤の知らせ。
    すぐに職場を出ても30分はかかる。すぐに車を走らせた。病院に着くと案内されたのが、いつもと違う病棟。
    ベッドに横たわる父は、すでに屍状態。命の営みを感じる事はまるでできなかった。弟は少し前に着き、私の到着を待って、担当の医師は、ゆっくりと時刻を告げた。12時21分、御臨終です。
    涙は出なかった。何故ならたった今、死を宣告された目の前の人は、私の知る父とは別人であり、知らない老人に見えた。
    死を宣告されると、すぐにさまざまな手続きが始まる。葬儀社の手配をし、その間に父の身体が清められ、ストレッチャーに乗せられ、裏口から搬出。葬儀社の車に乗せられた。
    命がこと切れると、人は物になる。
    葬儀社につくと、父は台にのせられ、
    とりあえずの線香。そして、これから行われる様々な祭り事の打ち合わせとなった。葬式のスタイル。派手にやるか地味にすますか。棺、骨壷のランク等、次々にそろばんが弾かれていく。先程あげた線香の煙に包まれている父の存在は、もう消えてしまい、
    単なる商品となっていた。
    打ち合わせの結果、通夜、告別式を一度ですます、一日葬で家族だけで送る家族葬となった。
    父の出荷先が決まった瞬間だった。
    葬式は4日後、その間は葬儀社の冷蔵庫に入っている。マグロ状態。

    葬式当日
    式が始まる少し前に、次女がトイレへ。
    相変わらずギリギリで動く。
    戻ってくるや、遅くなった、お父さんが呼んでたので、慌てて戻ってきたとの事。俺は呼んでないよ、と夫。では、兄貴が?俺も呼んでない。
    本日の主役の爺様が、心配して声をかけたらしい。
    はっきりと次女の名前を言ったと。
    爺様に呼ばれ、着席。

    葬式スタート。
    読経が始まった。静かに目を閉じて、じっと聞いていた、はずだった。

    お経はテンポよくすすんでいく。
    しかし、私の脳内で流れているものは、
    金魚〜金魚、いい金魚ーではじまる落語の一節、黄金餅。中学生の頃にハマりまくった、志ん生落語。
    友達はみんな好きな歌手に夢中だったが、私一人は、落語三昧。時間さえあれば、毎日のように聞いていた。この頃の記憶は今もしっかり、くっきり。
    坊さんのお経と同時に落語お経が始まってしまった。
    ダメだ、まるで気持ちが入らん。
    金魚と戦っている私の横では、次女がとなりの長女に何か言っている様子。
    お経の途中でお坊さんが、手をあげ何やら空で動かしている。
    それを見て、坊さんが結界を張り出した。何か出てくるのか?カメハメハー?妙鉢が鳴ると、シンバルがなったぜ、吹奏楽みたい。マーチングはやらんよ。
    さっきからずっと坊さんが言っているのは、何かの呪文か?ハリーポッター、魔法じゃございません。などと小声でやり取りしていたらしい。
    聞かされた長女は、肩を振るわせて笑いをぐっとこらえまくっていたとの事。
    早く終わってくれ。
    と。手を合わせた。母と娘。

    そして、最後のお別れの時がきた。

    納棺。
    焼きすぎたししゃものような父の周りに、お花や好きだったもの入れていく。
    お顔周りには、沢山お花をとの進行役の方の助言にならい、皆、お花を飾っている。顔の周りぐるっと一周した花。
    試しにポンポンと頭の所に派手な花を置いてみた。熊のプーさんになった。
    餓死寸前のプーさんは、こんな感じか。
    と私一人が笑ってしまった。
    父が好きなピーナッツいり煎餅、キャラメル等も入れた。はちみつはない。

    花に囲まれた父。
    それを見て、ディズニープリンセスと小さく言ったのは、またしても次女。
    そばで聞いていた長女、涙が出るほど爆笑。必死にマスクで隠し堪えたらしい。
    白雪姫じゃないから、森の小鳥も小人達もやってこないし。
    イッツァスモールワールド。ララランランら、ララランランら、頭の中で踊る、船は進む。
    母と娘が、夢の国へ飛び立った瞬間だった。

    父、閉棺。そして焼き場へGO。
    葬儀場と斎場は隣なので、あっという間に着いた。

    係の人の誘導で焼き場へ。
    父が収まった棺がゆっくりと入っていく。焼き上がるまで約1時間と少し。その間に昼食。
    定番の御膳で厄落とし。父の前にも用意されていた。
    ここで一緒に飯を食っているとなると
    今焼かれているのは誰だとなる。
    肉体と魂。
    蝉の抜け殻。しっかり焼いてスッキリ納めたい。
    時間となった。再び焼きがま前に集められた。テーブルには骨となった父が並んでいる。
    ホーンテッドマンションだな。今、この場所には色々なものが浮遊しているのだろう。
    骨を箸でつまんで、骨壷へイン。
    二人で箸を使い、落とさないように入れていく、この不器用人種には過酷な行いを誰が決めて、始めた事なのか。別に焼き上がった骨なんか、みんなでつまむ必要なんてある?
    いわば火葬の焼き残りだから、さっさと片付けてしまえばいいのに。
    父のための最後の共同作業。
    色々意味がある行いなのだろうが、ダジャレみたいな理由で神妙な面持ちでやるべき事なのか。葬儀の中でもこの行いが一番不可解だと感じているのは、私だけなのか。どんなに丁寧につかんで、骨壷へ入れても、最後はスタッフさんが、上からぎゅーっと押し込んで蓋をするので、結局、粉々。
    押し込んだ骨を壺へ入れたら、終了。
    後は、自宅へ戻る。
    骨壷を抱いた長女に、足元に気をつけろ、今転んでぶちまけたら、骨も石もわからなくなる。テキトーに回収したら骨壷重くなるし、石で。
    まじウケる、とまたしても次女。
    悪魔が来たりて、骨を持つ。
    慎重に車まで運んだ、長女。

    無事到着。

    実家にて。
    葬儀社の方が、簡易祭壇を作成。
    センター骨壷、父の写真、両隣に花。
    手前に、これから49日までお供えする御膳スペースと線香たて一式。
    座布団を置いて、できあがり。
    センターの父の写真が、大変好評で、
    自然な感じ、柔らかな雰囲気、それはそうだ、10年も前の写真だから。
    若々しいはずだ。詐欺。
    ししゃもだったのに。盛ったな。
    そして
    今晩から、父の御膳供養が始まるのであった。

    私の日課は、仕事前に実家へ寄り、
    猫達のご飯。
    家にいる猫一匹と地域猫四匹。
    カリカリとパウチと飲み水。
    彼らの飯は、待った無し。
    その後、父の御膳。
    本日は、ご飯、味噌汁、野菜の煮物、香の物。
    これぞ成仏御膳。
    と、並べたのは、初日だけ。

    次の日からは、父の日常飯。
    朝、トースト、ハムエッグ、フルーツ、コーヒー。
    夜、焼きそば、ノンアルコール。
    今日もよく頑張った私にご褒美、
    ウメッシュ。
    父とグラスで、乾杯。

    夕飯は、仕事帰りに買い物、そのまま実家へ。そして猫飯、ジジ飯。
    これを毎日毎日。休日も無し。
    当然、掃除も毎日。
    休日は、この他に与作。
    伸び放題の庭木を片っ端からノコギリで切り倒す。手動で。
    父と、祖父が夢見て作ろうとした紅葉山。あたり構わず、紅葉が植えられていた。そして、植えっぱなしで二人共フェイドアウト。
    後始末は私。
    いー加減にしなさいよ。絡んだツタや笹、はるか昔にやっていた盆栽も、根っこが伸びて地植え。
    心が折れる無人島生活。考えるより先に切り倒していった。
    台無し私の休日。 

    父の整理を始める

    とにかく、片付けができない。買い物は大好き。元教員のため、やたら本が好きだった。入院中もアレコレと指示され、本の名前が書かれたメモを預かり、ネットで検索。小説の類いならいいのだが、数学の本。ベッドで、ひがないちにち、ひたすら問題を解く。
    これがいいそうだ。理解不能。

    入院生活半年過ぎ。
    だんだん眠っている事が多くなる

    入院半年前は、アレ買ってこい、アレが食べたいと、どこぞのCEOかと思わせる程のわがままぶり。カツ丼を持ってこいと、病院中響き渡る声で文句を言っていたクソジジイ。
    それがだんだんと寝ている事が多くなっていった。大好きなお茶を入れて持っていくも、寝ている。声かけても返事もしなくなってしまった。
    枕元のメモ帳に、メッセージ。
    また、来るね。欲しい物あれば書いておいてください。

    メモ帳に書くのは、私だけで、父からの返事は書かれなくなった。

    その数ヶ月後。
    父は、黙って逝ってしまった。

    父が死にました。

    そして、今
    和室の祭壇で、満面の笑みで鎮座ましましておるのが、父。

    朝、夕、病院食に閉口していたので、ここぞとばかりの好きな物フェア御膳。
    49日までは、仕方ない、なんでも作りますよ。とりあえず、巻き寿司。
    意識ある時に、ずっと言っていた巻き寿司食べたい。
    ハイハイ、まずは巻き寿司からスタートですね。茶碗蒸しも、銀杏いれましたよ。しじみの味噌汁でいいのか?
    ジジ御膳を作りながら、お伺いしながらのセット。
    台所で、一人飼い猫と一緒にジジ御膳を頂く。味付けはどう?巻き寿司の具材はそれでよかったのか?等まるで見習いが一番シェフに味見してもらっているようだ。
    ゆっくり、しみじみと食すなんて、ないない。
    ひと当たりすませて、片付けをし、猫と父に、おやすみなさいませと言って、帰宅。私の本日の任務が終わる。
    また、翌日、朝食を準備して、掃除を済ませて、出勤。
    父、猫、いってまいります。
    そして、また夕食。
    この神も仏ない、殺人的任務が、49日まで続く。
    あー、私が成仏したい。

    人は言います。
    そんなに、きっちりやらなくても大丈夫なのでは?と。
    ええ、普通は大丈夫なんだと思います。
    普通の死人は。

    父、復活。

    話によると、人は死んだ後、どんな大病で亡くなったとしても、一番いい時に戻れるとの事。祭壇の写真は、ニッコニコで、さて今までやれなかった事、思いっきりやらせて頂きます。やる気まんまんが滲み出ていた。

    ここから、始まった、あなたの知らな い世界。ティラリラ、ティラリラ。

    とにかく生まれてこの方、全く、何も、まるっきり霊感無しの私。
    心がピュアじゃないと見えないとか、なんとか。うるせー、どーせ私は、よく深き煩悩てんこ盛りで生きてますよ。

    父のお世話を始めてまもなく、実家にセットしてある猫見守りカメラが、写し出しました。
    祭壇前に、何やら、わけのわからない、説明のつかない光。これは、いったい。
    白いものが、いる。光の反射ではない。
    はっきり、くっきり写っている。
    そう、まるで、これは、間違いない、
    雪見だいふく。
    まんまるな餅みたいなものが、でんと座っている。
    どこから見ても、雪見だいふく。
    初めての遭遇が、大福ジジイ。
    父よ、許せ、大爆笑してしまった。

    その数日後から、ほぼ毎日、大福が飛び回るようになった。
    最初は、和室で、ミラーボールしていたが、台所訪問。多分、私が作った御膳に不満があるのだろう。自分で作るのでしたら、どーぞ。
    飯の後は、仕事場へ。
    愛用のパソコン前で、作業。
    とにかく、あっちこっちでご活躍。

    私が、帰り際、必ず言うのは、ほどほどにしてくださいよ。
    また、明日来ますので、早めに寝るように、よろしく。

    私、帰路につく。
    車を運転しながら思う、いったい、誰が死んだのだ?
    私が毎日やっている、一連のやり取りは、前と同じ、何も変わらず。
    大福、ジジイ。恐るべし。

    負けない父。

    ことある事に大福ジジイ、大福爺様と言っていたら、本日、
    なんと、デカくなって降臨。
    台所のテーブルの上に、大きなかたまり。
    ついに、進化をした。
    そして、父は、
    めでたくも、のし餅となった。

    やる時はやる。
    ブラボー。

    さらなる進化を期待しております。

    仕事好き。

    とにかく、調べたり、学んだりと日々勉強を欠かさない父であった。
    机の上には、パソコン2台、プリンター、横の棚には資料がどっさり。趣味のカメラ関係もどっさり。近年熱心に学んでいた古典、枕草子、源氏物語、に始まり、片っ端から学習。今更古典なんて、自分が古典状態なのに。
    ネットの講座も熱心に録音までして、頑張っていた。
    最後の方は、録音が仕事みたいになっていたけど。録音しただけでは、身についておりませんぜ。録音されたCDMDUSB
    本棚にぎっしり。眺めていては、ご満悦。熱心な記録員となっていた。

    これらは、全く関心を示さない私によって、少しずつ廃棄されてゆくのだが。

    分別も一苦労、わかれよ父。

    整理整頓。

    勉強熱心だが、片付けは皆無。
    資料山積み、机の上から周り、足元、棚の上はもちろん、隙間があればとりあえず、差し込む。出窓の所も積み上げる。
    初めて父が短期入院した時、私は、手当たり次第に片付けてしまった。45リットル袋、20以上はあった。それでも半分位。一時保管のため、物置へ。

    退院後、こっぴどく怒られたが、孫娘がやった事と伝えて、その場は丸くおさめた。
    後で、長女から文句を言われたが。
    私がやったとなると、めんどくさいので。とりあえず。
    自分の保身のためには、娘も売る、ひどい母だと。
    知るか。

    父、亡き今、文句を言われる事もないので、気が向くと、色々片付けをしている。

    御膳をあげて、一通り終了すると、
    挨拶をして帰宅。

    その数十分後、カメラがチェック。
    机の所で、勉強している、白きもの。

    片付けるな、まだ使っている。
    ということでしょうか。

    承知。
    しばらくは、このままにしておきます。

    色々めんどくさい。

    でも。
    毎日毎日、朝、夕と休みなく実家管理をしていると、たまには、ヘコタれる
    事もある。仕事が忙しく、ヘトヘトの時などは、もー限界、無理、やってらんねー、の愚痴、愚痴、愚痴。
    私は、いつまで、この生活をし続けなければいけないのか。考えても、考えても、答えが出ない。一人残された飼い猫のために、なんとしても頑張って面倒はみてあげたい。
    しかし、
    やりたい気持ち、限界になる体力、希望が見つからない現状。

    わからないよ。この気持ち。
    誰にも。
    と、なってしまう、暗闇スパイラル。
    その時。
    トイレの棚に飾ってあるカレンダー付きデジタル時計が、点滅。
    よく見ると、カレンダーが点滅している。
    そろそろ電池交換かな。
    さらに、見ると、カレンダー全体が点滅しているのではない。
    数字の一部が点滅している。
    3.9.....
    これはっ!間違いないっ!
    すぐにトイレを出て、メモ帳とペン。
    点滅数字が消えてしまわないうちに、メモをとった。

    ありがとう父!
    その数字を手に、すぐに向かった。
    宝くじ売り場。

    買えた。買えた。買えましたよ。
    父!これで資金は大丈夫!
    あとは、任せろ。全て私が責任を持って、管理していくから。
    安心しろ。
    金にはとことん縁のない父だったが、
    ここへきて、可愛い娘のために、力だしてくれたのだね。
    さすが、大福ジジイ。
    あっぱれ!サンキュー!

    翌日の抽選日。
    箸にも棒にも引っかからない、数字に
    呆然。
    金に縁無し。クソジジイ。

    この無意味な数字はいったいなんだったのか。
    この事をその界隈に詳しい友人に話たら、それは父からのメッセージとの事。
    あらためてメモした数字を見せた。
    3.9ありがとう
    続いて父と母の誕生日
    25笑って見てるから
    と解説された。

    数学教師の父らしいメッセージの贈り方。
    回りくどいやり方するから、私は勘違いしたし、宝くじの当選番号の方がやっぱり良かった。
    そんな話を友人と笑いながらした。
    だけど
    その晩は、泣いてしまった。

    心配してくれてありがとう。

    父からのメッセージはさらに続いた。

    ぶっ散らかし放題の仕事机、気がついた所を片っ端から片付けていく。
    とにかく、家をカラにする。
    物を出す。千個のゴミも一個から。
    昨日より今日は一つ片付いている。
    家丸ごとカラにするには、一体どの位かかるのか。
    金無しジジイの片付けは、ジミにやり続けるしかない。
    一人ぶつぶつ言いながらお片付け。
    あれっ?これ何?封筒を開けてみたら、
    お車代 三千円
    確かに文句言いながらやっている。
    この作業をプロに任せたらいくらかかると思う?私、タダでやってるし、少しは出してくれてもいいよね、父よ。

    そして、出てきたお車代

    なんだこれは?
    死んだ父から頂いた、お車代。
    笑っちまった。

    でもありがとう。

    別の日。
    書類整理をしていたら、終わりの所に、
    挟まれていたのが、
    お礼 二千円

    おいおい、この宝探し風、父からの
    お小遣い制度は、なんなんだ?

    絶妙なタイミングにチョロッと出してくるのが面白い。

    片付けも、悪くないと思いながら、
    また今日もやる。

    でも、金塊や札束は現れない。

    小銭ジジイ。

    父からの小遣いが出た時には、祭壇にあらためてお礼を言った。

    お心遣いありがとうございます。

    欲はかきません。
    しかし、できれば札束希望。
    無理は承知。独り言です。

    今日、お礼を兼ねてユリの花を買ってきました。
    まだつぼみばかりです。
    一つ咲いてくれると華やかになるのだけどね。
    明日も仕事だから、今日はこれで帰るね。
    また明日来ます。
    おやすみなさい。

    翌日。
    朝の訪問。
    ユリの花が咲いていた。
    しかも、私が指定したつぼみが、
    見事に開花。

    すげー、父。

    この日から、花咲ジジイと命名した。

    それからも花咲ジジイは力だしてます。

    花は咲けども、金は無い。
    仕方なしと諦めるか。

    そんな毎日を送っていたら
    49日となった。

    今日納骨となる。
    墓入り前に、お寺で読経。 
    そのあと、父、墓へ。

    墓入りした爺さん。

    お疲れ様でした。
    手を合わせて帰宅。
    当然、
    父も一緒。

    意味がない。
    墓になんか納まっていない。
    そこに私はいません、眠ってなんかいません。
    と、聞こえてくるようでした。

    納骨が済むと、父の祭壇は葬儀社が全て片付けてしまった。
    残ったのは、呑気な父の写真のみ。
    父の居場所がない。
    その辺に転がしておくわけにもいかず。
    向かった先は
    ホームセンターと100円ショップ。
    テレビ台として使っていたミニ本棚の上に、呑気な父の写真を飾る。
    その手前に、ダンボール箱、その上に板を乗せ、御前用棚完成。

    うむ、我ながら傑作。

    庭に咲いていた花を飾り、
    コーヒーを淹れた。
    今日から、ここが父のベースキャンプ。

    そしてまた、御膳日課が始まる。
    シーズン2突入。
    出勤前に御膳と猫飯、掃除をして
    行ってきます。
    夕飯御膳と猫飯。
    1日の報告をしながら、猫と父と食事会。
    何も変わらない日常。
    父との会話も以前と同じ。

    ただ、テーブルついて食事をしているのは、私一人。
    膝に乗っている猫の温もりを感じながら、一人おしゃべり。
    今日の出来事や、明日の予定とか、
    色々話す。
    ゆっくりとお茶を飲み、片付けを終えれば、また明日と玄関を閉める。

    別に問題もないし、心配事もない。
    寂しい事もない。
    いつでも、父はそばにいてくれる。
    いつでも、私の話を聞いてくれる。
    いつでも、いつまでも。

    寂しくなんかない。
    私は、大丈夫。
    今まで通り、元気にやっている。
    大丈夫、大丈夫。
    心配ない。
    休みの日は、庭の草刈りだって、やるし、家の片付けもやる。
    腹立たしい程忙しい。
    クヨクヨしてる時間もない。
    大丈夫、大丈夫。

    あっ、お願いがある。

    もし、一回だけ願い事を聞いてくれるなら、

    もう一度、このテーブルで
    ご飯を食べたい。
    一緒に。
    私の下手くそな料理を囲んで。

    また文句の一つも言いながら。

    なんてね、
    こんな日もあったりする。

    大丈夫。
    明日になればまた元通りになっているから。

    あなたの娘はタフです。

    おやすみなさい。
    また、明日。
    猫のチャクロ頼んます。

    その晩、白玉ジジイ降臨。
    久しぶりのご登場。
    究極にヘコタレると、現れてくる。
    だけど
    寝ているチャクロの邪魔だけはしないように。

    ウロチョロしてると、かじられるから
    お気をつけなはれ。

    今後ともよろしくお願い致します。

    それじゃぁ、また明日ね。











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