
【AI活用100本ノック #017】運動会の隊形移動を、AIで「見える化」する
はじめに
私は小学校の教員で、授業準備・教材研究・note発信・家計管理など、日々の仕事と暮らしの中でAIを試しています。
この「AI活用100本ノック」では、自分の生活や仕事の中で実際に役立ったAI活用を、1本ずつ記録しています。
今回のテーマは、運動会の隊形移動を、AIで「見える化」するです。
前回の #016 では、3CLIをどう分業で動かすかを書きました。今回は、その中でもClaude Codeに「文章+配置図」を任せた小さな現場ケースを残します。
地味なテーマです。でも、現場で一番ありがたかったAI活用の一つでした。
1. きっかけ
運動会の全校練習で、応援合戦の前に隊形を変える必要が出てきました。
普段の朝会の整列のまま歌うと、応援団が中央に出るスペースがありません。だから、1年から6年まで全クラスが、両サイドへ少しずつスライドする必要がある。
ここで困ったのが、この移動を、当日の朝に他の先生方へ「言葉だけ」で伝えるのがかなり厳しかったことです。
「1年1組は、いま3年1組がいる位置まで動いてください」
「4年・5年・6年は、学年で一列にまとまります」
「最終的に6年生はトラックの端まで」
口頭で説明しても、頭の中で動きを再生してもらうのは大変です。前日に紙でメモを配るにしても、文字だけでは「結局どこに立つのか」が伝わりにくい。
私は、図にしたかったわけです。
でも、自分で図を描くと時間がかかります。ペイントソフトで枠を並べていたら、それだけで1時間は飛んでしまう。
そこで試したのが、Claude Codeに「ASCII配置図 + 説明文 + HTML出力」を一気にやってもらうやり方でした。
2. 使ったツール

特別なツールはありません。Claude Codeに「教職員向けの周知文を、文章と配置図のセットで作って」と頼んだだけです。
ポイントは、画像生成AIではなくテキストベースの配置図を選んだことです。配置図はキレイなイラストでなくていい。「どのクラスが、どこに、どの順で並ぶか」が一目でわかれば十分です。
ASCII配置図なら、文字情報なので修正もすぐ。あとからHTMLにしても崩れません。
3. 操作手順:移動ルールを「3つの層」で渡す
私がClaude Codeに渡したのは、次の3つの情報です。
ステップ1:移動の「ルール」を文章で渡す
まず、口頭で説明していた内容を、そのまま箇条書きで渡しました。
応援合戦の隊形移動を、教職員向けに周知する文書を作ってほしい。
【移動ルール】
- 基準:1年1組の位置を「3年1組がいた位置」までスライド
- 1年1組以降のすべてのクラスが連動して両サイドへスライド
- 最終的に、6年生はトラックの端まで
- 4・5・6年は学年で一列(1組の後ろに2組)に集約
【出力してほしいもの】
1. 流れの説明(音楽朝会の段取り)
2. 隊形ルールの整理
3. Before / After の配置イメージ(テキストで)
4. 各担任への依頼事項
5. 当日の段取りここで意識したのは、「自分が口頭で説明していた言葉」をそのまま渡すことです。きれいな指示書にしてから渡そうとすると、結局その整形に時間がかかります。荒い言葉のまま渡したほうが速い。
ステップ2:配置図を「ASCII」で出してもらう
次に、Before / After の配置を、ASCII(記号と文字)で出してもらいました。
通常時(朝会)
白組(校舎側) 中央 赤組(学童側)
[6-2][6-1][5-2][5-1][4-2][4-1][3-2][3-1][2-2][2-1][1-2][1-1] |応援団| [1-1][1-2][2-1][2-2][3-1][3-2][4-1][4-2][5-1][5-2][6-1][6-2]
応援合戦時(移動後)
白組(校舎側) 中央スペース 赤組(学童側)
[6] [5] [4] [3-2][3-1][2-2][2-1][1-2][1-1] |応援団| [1-1][1-2][2-1][2-2][3-1][3-2] [4] [5] [6]これだけで、当日の動きが一目でわかります。クラス番号と位置の対応が文字で固定されているので、口頭の補足説明もしやすくなります。
ステップ3:HTMLで「印刷できる形」にする
最後に、テキスト周知文と配置図を、A4で印刷できるHTMLにしてもらいました。HTMLができれば、ブラウザで開いてPDFにもPNGにもできます。
職員室のプリンタに直接出せる形まで持っていけると、当日の朝も慌てません。
4. 実践:実際に使ってみて
前日周知で、この文書を職員室に共有しました。翌日の朝、朝会で隊形移動を実施。
やってみて、思ったよりも効いたのが「文字で位置が固定されている安心感」でした。
担任の先生方は、自分のクラスの新しい立ち位置を、文書とペグ位置の両方で確認できます。説明を聞いて頭の中で動かす必要が減るので、当日の判断の余裕も生まれます。
特に低学年は、1年・2年の担任が「うちのクラスはあそこね」とすぐ言える状態だと、子どもへの声かけも落ち着きます。
ここで気づいたのは、AIに「図を描かせる」ことそのものより、「全員が同じ図を見られる状態を作る」ことが価値だったということです。
図はおまけです。本体は、共通理解の土台。
5. リサーチ:なぜ「ASCII配置図」が現場に合うのか
きれいなレイアウトソフトを使ったほうがいいのでは、と思う人もいるかもしれません。私もしばらく迷いました。
最終的にASCII配置図を選んだ理由は、3つあります。
5-1. 修正の速さ
クラス編成や担任が変わると、配置も変わります。ASCII配置図なら、文字を書き換えるだけで終わります。レイアウトソフトだと、毎回オブジェクトを動かす必要がある。
5-2. AIとの相性
AIは、テキストの位置関係を扱うのが得意です。「ここを動かして」と言うと、文字配置でちゃんと反映してくれます。画像オブジェクトだと、AIに編集を頼むこと自体が難しい。
5-3. 校内共有のしやすさ
ASCII配置図は、メールにもチャットにも、そのまま貼れます。校内のグループウェアの中で完結できる。専用ソフトが必要なファイル形式だと、開けない先生も出てきます。
ASCII配置図は、見た目こそ地味ですが、「みんなが同じ画面で見られて、誰でも書き換えられる」点で、学校の現場と相性がいいです。
6. 注意点
この使い方は便利ですが、いくつか気をつけている点があります。
まず、児童名や個人情報は入れないことです。
配置図に入れるのは、学年・組までです。「特定の児童がここに立つ」という情報は、AIに渡す必要がありません。当日の細かい配慮は、紙のメモか、口頭で十分です。
次に、学校の固有名や住所も入れないこと。
校内向けの周知文は、AIに作らせるときに「○○小学校」とは書きません。一般的な配置説明にしておけば、別の学校でも応用できますし、もし手元のファイルが何かの拍子に外に出ても被害が小さい。
最後に、AIの案を必ず一度疑うこと。
ASCII配置図は便利ですが、AIは時々「実際にはあり得ない並び」を出してきます。1年生が一番外側にいたり、応援団のスペースが片側に寄っていたり。
出力をそのまま使わず、自分の頭で実際の校庭を思い浮かべながら確認する。ここを抜かさないようにしています。
7. 教員にとっての意味
運動会の隊形移動は、たぶん多くの学校で「毎年やっているけど、毎年伝わりにくい」業務だと思います。
ベテランの先生は経験で動けます。でも、初めて担当する先生や、異動してきたばかりの先生にとっては、何度説明されても頭に入りにくい。
そこに、全員が同じ図を見られるという土台を作るだけで、当日の朝の不安がだいぶ減ります。
AI活用というと、教材生成や授業設計が話題になります。でも、私にとって一番効いている使い方は、こういう「校務文書を、文章と図のセットで一気に作る」ところだったりします。
これは、教科指導の話ではありません。学校という組織の「共通理解の作り方」の話です。
そして、ここをAIが助けてくれるようになったことは、地味だけど大きな変化だと感じています。
8. 読者が試すなら、まずここから
もし真似したい先生がいるなら、最初の一歩はこれです。
次の校務文書を、教職員向けの周知文として作ってください。
【テーマ】(例:運動会の応援合戦の隊形移動)
【条件】
- 文章 + ASCII配置図(Before/After)のセットで
- A4で印刷できるHTMLとして出力
- 児童名は入れない
- 学校名・地名は入れない
- 担任への依頼事項を最後に箇条書きでこれだけで、口頭で説明していた内容が、配布できる文書にまとまります。
そして、出てきた配置図は、必ず自分の校庭を思い浮かべながら確認すること。AIの案は、あくまでたたき台です。
最後に立つ場所を決めるのは、毎日その場所を歩いている自分自身です。
おわりに
AIで運動会の隊形図を作る、という話は、たぶん教育系AI活用の中で一番地味な部類です。
でも、教員の仕事の多くは、こういう地味なところに時間を取られています。
口頭で何度も同じ説明をする。
紙にメモを書いて配る。
当日の朝に「結局どこ?」と聞かれる。
ここをAIで少しでも軽くできるなら、その分、子どもの前に立つ時間に余白ができます。
派手な使い方より、地味な使い方を残していきたい。
そんな思いで、この100本ノックを書いています。
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