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「永遠に時を旅する花」

    花は枯れるものだと、ずっと思っていた。

    ある日、よそのお庭で、花のアレンジメントをしていた時のこと。

    人の気配と、花の気配が、やさしく混ざり合うような時間の中で、
    はじめて「キセロクリサム」を目にする。

    ちょうどそのころ、私は「夢の庭」を作っていて、
    華やかで、珍しい花ばかりを探していた。
    気に入った植物を見つけては植え、また探す。
    そんなことを、繰り返していた。

    その花は、小さくて、乾いた紙のような手触りをしていた。

    色も、艶も、質感も。
    どれをとっても、それまで知っていた「花」とは
    少し違う気がした。

    それは、私の知っている ”花の時間” とは、少し違う。

    私は、アレンジの手を止め、その花を見つめていた。
    そして、その花のことを、もっと知りたくなる。

    花は、みずみずしく、柔らかく、
    触れれば壊れてしまいそうな、
    儚いものだと思っていた。

    でも、この花は違う。

    咲いているのに、すでに乾いている。
    摘み取っても、変わらない。
    どこか、時間の流れから外れているように感じた。

    咲いた姿を見たくて、
    自分の手で咲かせてみたくて、
    すぐに種を手に入れた。

    袋には「モンストローサ」と書かれていた。

    庭にまき、咲くまでの時間が、ただ待ち遠しい。
    茎は大きく育ち、
    どんなふうに花をつけるのか、毎日見ていた。

    小さな蕾を見つけたとき、
    それは、光っているように見えた。

    ピンク、黄色、白。
    あのとき見た花が、今、自分の庭に咲いている。

    けれど、その花は、咲いて終わるものではなかった。
    摘み取っても、色も、形も、ほとんど変わらない。

    そのまま、そこに在り続ける。

    花は、枯れるものだと思っていた。

    でも、この花は違う。

    時間の中にあるのではなく、
    時間の外側にあるような存在に思えた。

    それは
    永遠に、時を旅する花だった。
    だから私は、この花を、手の中に留めてみたいと思った。

    咲いたままの時間を、
    そのまま残すことができたなら。

    それは、ただの花ではなく、
    祈りのようなものになる気がした。



     
     

    sen

     
     
    ⚫︎Mori no LABO⚫︎ 森や植物、手仕事と記憶をテーマにした実験室。 本やクラフト作品、ガーデンの記録。 「魅惑の森」と呼ぶ庭を育てています。

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