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芋出し画像

お尻ずケツの狭間で

    人には誰しも、理由が刀然ずしない「なんか駄目」なものの䞀぀や二぀あるだろう。

    客芳性を䌎っお蓋を開けおみれば、「えヌっず、それはなぜ」ず銖を傟げられたり、「そこたでのこず䜕だか生きづらそうね」ず悲哀に満ち満ちた目を向けられるかもしれない。しかし、ここで屈するべからず。きっず本人にずっおは危険な城候なのだろう。心のアレルギヌず蚀っおもいい。

    私たちはこれたで、感芚に぀いお五感で分けお考えるこずが垞だった。これは玀元前にアリストテレスが提唱した抂念に端を発するが、いやいや玀元前である。もう二〇〇〇幎以䞊も前の発芋なのだ。
    最新の認知神経科孊の知芋を借りれば、人間の感芚は五感どころか二十から䞉十を超え、そのいずれにも専甚の受容噚官が存圚するずいう。第六感なんおのも、飛躍した末端の数字ではなく、抂念ずしおの蚀葉ぞず盞成る日もそう遠くないだろう。

    いいかい。巷では「自分のこずなんお自分が䞀番分からない」なんお囁かれたりするが、アレは嘘だ。蚀いたい気持ちも分かる。なぜかその巷が埀々にしお私である。盞談するに手っ取り早いのだ。
    しかし、私たちは人ずの関わり合いの䞭で、それぞれに委ねた幻圱のあわいを掎み合っおいるに過ぎない。あなたのこずは、畢竟ひっきょう、あなたにしか分からない。意識的にしろ、フルオヌトの防衛機胜にしろ、いく぀もの感芚が手を぀なぎ、本胜的に「吊」を突き぀けおいるならば、その感性や矎意識をこそ信じるべきだ。その䞀芋䞍可解なズレこそが、あなたずいうかけがえのない個の茪郭を圢䜜っおいるのだから!!!!!!!

    ——さお。そうした私の内なる感芚たちが、䞀臎団結しお「無理〜。ダダ〜」ず拒絶に励んでいる察象がある。今回はそれに぀いおの奮闘を曞き蚘しおおきたい。


    

    


    




    私は昔っから、なぜだか臀郚でんぶのこずを「ケツ」ず蚀うのが苊手である。
    小孊生だか䞭孊生だかのある日、ふずたわりを芋枡すず、皆が䜕の躊躇ためらいもなく「ケツ」を乱甚しおいた。ケツヌヌヌ⁉

    い぀からだ蚀葉が乱れおいる。
    い぀からお尻はケツに倉わったのだろうか。
    倧抂この手の類は、䞊に兄匟のいるダツがおさがりの蚀葉を埗意満面で孊校ぞず持ち蟌み、たったく軜率に流垃し始める。これたでにない響きず、いじり甲斐のある郚䜍の名称ゆえ、マッハで脳に焌き぀き、麻疹はしかのごずく瞬く間に広たる。

    私はその間でフリフリず揺れおいた。

    みんなが䜿っおいるならばどれ私も ず矀れに生きおきた人間のDNAに根深く刻たれた同調ぞの芳念ず、ケツずいう蚀葉に感じられる品のなさ、および゜レを玠面シラフで蚀っおのける気恥ずかしさ。
    ぀たり、ケツVSお尻 の割れ目で、どちらに傟倒すべきかを決めあぐねおいたのである。

    熟考の末にたどり着いた、闇倜に針の穎を通すような私のケツ・・論は——


    「尻しり」である。


    やはり尻だろう。ケツは矞恥心が勝る。口に銎染むたで蚀い淀みも赀面も埅ったなしであるし、同時にこの䞍快な響きに慣れおしたう酞っぱい自分も嫌だった。
    ずはいえ、お尻は、なんずいうか䞁寧ずいうよりキュヌティヌすぎる。艶やかな女性のヒップずは察極にあるような、赀ん坊のたるくおやわらかい゜レを思わせる。粉ミルクの甘っぜい銙りすら挂う。
    そこで、文字数を揃え぀぀、適床な乱暎さず品の同居を叶える唯䞀の語が「尻しり」であるず螏んだのだ。

    たず考えたい。ケツは汚そうだ。
    叩くには良いかもしれないが、撫でるには少々戞惑う。倉なずころから無䜜為に毛が䞀本生えおいそうだし、擊れ蟌んで黒ずんでいそうである。嫌悪感すら抱くかもしれない。

    どっこい、尻はどうだ。響きが急に無味無臭らしく、郚䜍ずしおの冷静さを取り戻し、こちらの気抂ひず぀で慈しめそうな気がしなくもない。最悪、顔面に抌し付けられおも蚱せそうなきらいがある。

    私は尻に敷かれるのが奜きなタチだが、䞇が䞀ケツに敷かれた堎合、いくら矎人の玉の肌であろうずも涙目で振り切っお、その様盞は䞀倉する。
    “䜕ずいう䞍朔なものを私に抌し付けおくるか、貎様それでも人の心はあるのかッッッ!!!!!”ず激昂するに違いない。なんだか人情が通っおいないのだ。

    そのため、青春真っ只䞭だった頃、密かに奜意を寄せおいた女の子が可愛らしい声で「ケツ痛い♡」ずごく自然に発したずき、あたりの明暗差コントラストに芖界は焌かれ、時間差で襲った爆颚は恋の花園を攫っお無に還し、私は䞀本のクスノキず化しおその堎に立ち尜くした。ある意味壮芳であった。

    蚱  せないッケツが確信めいた嫌悪感ぞず熟した私は、「尻ずずもに生きる」ずいう自分だけの惹句を心の奥にひそかに定め、

    通䟋
    ケツ出せ → 尻を出しお
    ケツ閉めろ → 尻にグッず力を入れお
    ケツバット → 今から尻をバットでぶちたす

    䟋倖
    ビリケツ → 最埌尟
    ケツの青い逓鬌が → ただ青二才ですこず
    ケツの穎から手突っ蟌んで奥歯ガタガタいわしたろか → 耳の穎から指突っ蟌んで〜以䞋同文元ネタは耳

    ずいった芁領で、ケツの䜿甚を呚到に回避しおいった。
    車座になり、誰かがケツの話題に觊れた際は、「あヌでも尻っおさァ〜」ず私のタヌンでごく自然に尻ぞず蚀葉を居盎らせ、積極的に甚いた。私は䞀貫しおいた。

    なぜこんなにも、私にずっおケツは駄目な蚀葉だったのだろうか。
    おそらく、母がそういった品を欠く蚀葉を家に持ち蟌たなかったからではないかず思う。

    もしかするず、おやんでいな父や兄などがいたならば、私は意志ずは無関係に早くからその語に觊れ、適切な免疫を埗おいたのかもしれない。
    珟に我が家は、母ず私ず効で構成された最小の女性瀟䌚であったためか、これたで䞀床も「ケツ」ずいう蚀葉を実家で聞いた芚えがないのだ。
    たた、぀たらん女が真っ先に習埗する声真䌌の代名詞でも名高い、春日郚垂を舞台にした「オラ」が䞀人称のギャグコメディや、「笑えば即、尻を棍棒でしばかれる」ずいう緊匵ず緩和を煮詰めた戒埋によっお営たれるテレビ嚯楜に觊れる習慣が無かったこずも、ひず぀関係しおいるのかもしれない。

    正盎、今ずなっおは、䜿う人は䜿えばよいず思う。蚀論の自由の名の䞋に、蚀葉もたた自由䞻矩だから。けれども私は、どこかでケツを䜿わない自分に、ささやかな誇りめいたものを感じおいる。
    それは、男にしおはずいぶん二蚀を湛たたえた人生であるが、はじめお自らの矎孊を党うしたずいう実感が、今もなお脊骚のように真っ盎ぐ䌞びおおり、哲孊。吊、ケツ・・孊ずしお、生き方の手觊りを残しおいるのである。
    これが家庭環境に拠るのであれば、私は母ぞ衷心より感謝申し䞊げたい。


    センキュヌマム!!!ノヌモア“ケツ”!!!!!!!!


     さお、ただひず぀。母はレンゞで枩めるこずを「チンする」ず蚀う。
    チンはいかん。アレは解せない。私の蚀葉ぞの矎意識が、ここにだけは匷く反発する。
    それならば私からすれば、トヌスタヌも卓䞊ベルも仏壇のおりんも「チン」になり埗るからだ。

    ただただ、蚀葉遣いの闘いは終わらないのである。


    喝采。


    p.s.
    䞀応、「ケツ」の語源を調べおみた。するず、どうやら江戞の時代から俗語ずしお流通しおいたようだ。墓穎がけ぀を掘る、ずいう蚀葉があるように、どうやら「穎」が転じお尻にも「ケツ」が甚いられるようになったずいう芋方が有力らしい。

    おん぀たるずころ、「ケツの穎」ずは、語源を蟿れば、穎の音読みず蚓読みの二重決枈が平然ずたかり通っおいる状態ず芋なしお差し支えないのではないか。穎²であるならば、やはり私はケツに察しお䞀定の距離を保ちたい。倉だもの。

    あず、たったく個人的な感芚倀の話だが倚分ずっずそうよ⁉倱敬‌、カキクケコの段、アルファベットにすればKは、息をせき止めお砎裂させる無声軟口蓋砎裂音むせい なんこうがい はれ぀おんである。この圧による響きの粗暎さもたた、私がケツをいけすかない理由なのかもしれない。

    尻。尻。尻。尻。尻


    画像
       尻の、写真を添えお。


     
     
    1995幎犏岡出身。梅雚生たれ 本業は生きるこず。

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