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ときめきトゥーシューズ(#毎週ショートショートnote)

    まさ せいこう

    それは、まるで生きているような靴だった。
    舞台裏の暗がりに、真紅のサテンがひとりでに光る。
    見た者は、なぜか息を呑み、手を伸ばしてしまう。
    その瞬間、トゥーシューズは選ぶ!

    玲奈は、誰より踊ることが好きだった。
    ある夜、稽古場の鏡の前で、その靴に出会った。
    足を入れた瞬間、体中に甘い電流が走った。
    胸が高鳴る。呼吸が浅くなる。
    音もない稽古場で、彼女は舞いはじめた。

    トン、トン、トン
    その音は心臓の鼓動。
    やがて速く、もっと速く・・・
    指が砕けても、脚が裂けても、止まらない。
    血が飛び散るたび、笑い声がこぼれる。
    「うれしい、こんなにときめくなんて!」

    朝、静まり返った稽古場。
    床には一足のトゥーシューズ。
    内側のサテンが、新たに真紅に染まっている。

    その夜、別の少女が通りかかった。
    暗闇の中で、紅色に何かがふわりと灯る。
    靴はひとりでにリボンをほどき、少女の足首に巻きついた。

    「さあ、踊ろう。死ぬまで、ときめいて。」

    そしてまた、夜の舞台にリズムが響く。
    トン、トン、トン。
    幸福に狂ったステップの音。

    文字数:434文字

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    カエルの森創作研究所で、小説・エッセイ・写真などの創作活動をしています。Kindleで「超ショート・ショートの不思議な世界」「ちょっと気になる不思議な世界」などのシリーズを出版していますので、よろしくお願いします。

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