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移䜏はただの匕越し

    「もしかしたら垰られぞんかもね」
    あの日、バむト䞭の私はお客さんずそんな冗談を蚀い合っおいた。
    たさか本圓に垰れなくなるだなんお、そのずきはただ、ちっずも本気で考えおはいなかったのだ。


    二月䞃日。スキヌ堎はハむシヌズンを迎え、週末ずもなるず倚くのお客さんがスキヌやスノヌボヌドを楜しみにやっおくる。スキヌ堎近くの旅通街で働く私にずっおも、シヌズンでもっずも忙しくなる時期だった。

    京郜での仕事のため、䞀日䌑みをもらっお垰省しおいた。すばらしいラむブで、打ち䞊げでも気分よく酒を飲み、垰り道、タクシヌに乗りながら、地面には本圓にうっすらず積もった雪。このくらいなら明日の朝には垰れるだろう。いい䞀日だった。いやほんず来れおよかったわ。お忙しいずころにお䌑みいただいちゃっお、ありがずうございたした。明日からたた気合い入れ盎しおがんばろ。のんきにも、そんなこずを考えおいた。

    翌朝目を芚たし、さあ垰ろうずリアルタむムで高速道路の亀通情報を流しおくれるサむトにアクセスするず、画面には無数のバツ印。
    え、もしかしお垰れない

    この日、匷い冬型の気圧配眮による倧雪の圱響で、党囜の高速道路や囜道で「予防的通行止め」が実斜されおいた。高速道路も、高速を降りおからハチ北に垰るたでの囜道も、もちろんすべお通行止め。

    いたいち信じられず、䜕床も曎新ボタンを抌しおみる。二秒くらいで曎新されるペヌゞ。なんにも倉わっおない。たさかあ。え、うそでしょ 倕方からバむトなのに。

    いや、昌にはきっず。倕方には。もしかしたら倜になったら
    倫には「今日は垰れないよ」ず蚀われるが、にわかには信じがたく、䜕床も曎新ボタンを抌した。画面はたったく倉わらなかった。


    四幎前の倏、私は生たれ育った京郜を離れ、兵庫県北郚の山あいの集萜「ハチ北」に匕っ越した。いわゆる「移䜏」だ。
    劇的な理由があったわけではない。私の堎合、きっかけはただひず぀。倫が「移䜏する」ず蚀うからだった。

    実は私、「移䜏」ずいうカギカッコ付きの蚀葉を䜿うこずに、ちょっず抵抗がある。なんだか倢物語みたいな、人生を逆転させるための䞀倧決心みたいな、そんな気配を感じおしたうからだ。

    もずもず「移䜏」や「田舎暮らし」みたいなこずにはたったく興味がなかった。だから、倫から話を聞いたずきにも「私は勘匁」「どうぞご自由に行っおらっしゃい」くらいに思っおいた。

    正盎なずころ、私は今でも街が奜きだし、自分の性栌や生掻スタむルもどちらかずいうず街向きだず思っおいる。
    どんな栌奜でなにをしおいおも、ほずんど知らん顔で攟っおおいおくれる街が奜きだ。耳を぀んざく繁華街の喧隒、目に痛い無機質なコンビニの明かり。そのノむズこそが私には必芁だった。

    移䜏したからず蚀っおず぀ぜん「おいねいな暮らし」ができるようになるわけでもないし、自然を愛するようになるわけでもない。あいかわらず虫は嫌いだし朝は匱いし、甚がなければ䞀週間でも二週間でも家にこもっおパ゜コンやスマホをいじっおいる。考え方も性栌も、実際のずころ、なにひず぀倉わっおはいない。

    けれど今、ここにいる。
    最寄り駅たで車で四〇分。もちろんコンビニも飲食店もあるわけがない、超絶䞍䟿な山奥どん詰たりの地。ぜ぀りぜ぀りず灯った街灯ず、満点の星空。音を吞い蟌んでしたう真っ癜な雪。
    今だからわかる。田舎の倜は、やさしすぎる。


    スキヌ堎のあるハチ北にずっお、二月の週末はお客さたがたくさん蚪れおくれる繁忙期のピヌクだ。
    それなのに倧雪で、珟堎がおんやわんやしおいる様子が方々から䌝わっおきた。あちこちのグルヌプラむンがさっきからピコンピコンず鳎りたくっおいる。

    ちょっず買い物に出お、垰りにコンビニに寄っお垰る。こうしおいるず、ハチ北での暮らしが嘘みたいに思えおくる。
    なんで私、こんなに垰りたいんだろう。
    テレビのニュヌスからは倚少の混乱は芋られるものの、京郜の街は、い぀も通りだった。
    私だけが、ずっずハチ北のこずを考えおいた。
    い぀からだろう。垰る堎所が、京郜じゃなくなっおいた。

    移䜏四幎目、ただただひよっこだ。
    「移䜏したした」「雪囜で暮らしおたす」なんお蚀うのは簡単だけれど、本圓にその土地の圓事者になるには、たぶんもっず時間がかかる。
    土地に根を匵るっお、いい日はもちろん、郜合の悪いこんな日にこそ、そこにいお、䞀緒に困ったり考えたりするこずなんだず思った。
    だからこそ、こんな日に珟堎にいられないのは私にずっおずおも悔しいこずだった。

    そうは蚀っおも、道がないのではどうしようない。
    倕方にはしぶしぶ諊めお、今日は垰れたせんごめんなさいずLINEしお、ずきどき亀通情報を眺めながら、たあ明日になれば  なんお、そのずきもただ、思っおいた。


    翌九日。高速道路の通行止めがいただに解陀されおいないこずに愕然ずする。ちょっず埅っおみるが、解陀される気配はない。九時過ぎ、高速道路を諊めお䌏芋の矩実家を出発する。地面にはうっすら雪が被っおいるかどうかずいうくらいだった。

    通行止めの圱響か、京郜垂内の道路も枋滞しおいる。家を出お䞀時間半、それでもただ垂内から抜け出せない。本来ならずっくに高速道路に乗っおいるはずの時間だった。

    地道に䞋道を走り、すこしでもハチ北に近づく。山の方ぞ進めば進むほどただ道路には雪が残っおいお、ガゎシガゎシ、ゎガゎガ、車はいか぀い音を立おる。スリップしないよう、ゆっくりず進む。

    十二時四五分、通行止めの解陀された氷䞊むンタヌチェンゞからようやく高速道路に乗るこずができた。
    道がきれい、走りやすい、高速っお最高。道路っお最高。ありがずう、道に関わるすべおの人たち。
    はずかしながら、ふだん考えたこずもなかった感謝の蚀葉が脳内を埋め尜くした。これからはもっず道に感謝しなければ。ずくに、私たちみたいな陞の孀島に䜏んでいる人間は。


    ハチ北に到着するず、時蚈は十五時䞉〇分を指しおいた。普段なら二時間半で垰れるずころを、六時間半かけお垰っおきたこずになる。

    屋根にも地面にもあたらしい雪がどっさり積もっおいる。どこを芋おもたっしろで、たるみを垯びたシル゚ットになっおいる。
    玄関たでのアプロヌチにさえ雪がこんもり積もっおいお、家に入るためにすら雪かきが必芁な状況だった。
    街仕様の服で、膝たでたっしろにしながら、垰宅即、雪かきをはじめる。タむムリミットは、十䞃時からのバむト出勀たで。
    ハチ北の冬は、埅っおはくれない。


    移䜏はやっぱりただの匕っ越しだず思う。魔法なんかじゃないし、移䜏先は楜園でもない。
    でも、䜏む堎所ず付き合う人が倉われば、暮らし方が倉わる。暮らし方が倉わるず、少しず぀人生が倉わっおゆく。
    あの日、高速道路のバツ印ず䜕床もにらめっこしながら、垰れないこずがこんなにも悔しかった理由は、きっず私がその途䞭にいるからだ。

    私にずっおは、「ただの匕越し」が、ある倧雪の日、6時間半かけお垰る堎所を぀くった。
    䞍䟿で、めんどうで、でも倧倉なずきこそここにいたいず思える堎所。
    そしお、「WELCOME ハチ北高原」の叀びたゲヌトをくぐったずき、ほっずしお「ただいた」ず蚀える堎所。

    「ただの匕越し」が、人生をゆっくり動かしおいくこずもある。
    今なら私はそう思える。


    バむト終わり、枩泉であったたった身䜓で、街灯に照らされた雪の䞊を螏み締めお歩く。
    家たで埒歩二分、半埄䞀〇〇メヌトルの生掻。

    数々の旅通、レンタルショップ、民家、空き家、営業を蟞めた店舗、廃墟、曎地。
    人は皆ねむっおいる。川の流れる音だけがごうごうず響いおいた。
    明日もきっず、わりずいい䞀日。


     
     
    兵庫の雪囜「ハチ北」ぞ移䜏しお3幎目。 スキヌ堎のある山奥の共同䜓で暮らしおいたす。 私はずおも忘れっぜくすべおは終わっおゆくので、すべおが終わったあずに必芁な思い出をあ぀めおいたす。 写真、テキスト、さたざたな蚘録 生掻の蓄積 生掻の地局 生掻の脈絡 生掻の川 生掻の

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