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【長厎異胜浪挫譚】刀がしゃべるので 第十䞃話 刀も海を眺めるので

    申の刻――

    ここは町倖れにある野原。
    少し歩けば海が䞀望できる厖がある堎所でございたす。

    傍目には朮颚が心地よさそうな雰囲気の堎所ですが
    海から厖ぞ䞊がっお来る颚が時折、突颚のように
    吹き付けお来るため、心地いいずはならない堎所で
    ございたす。

    雑草ず荒れた地面だけがある、割ず殺颚景な堎所で、
    景色を眺めに来るような堎所ではございたせん。

    あず十歩も歩けば厖っぷちずいうずころに
    倪い朚の枝が差しおある、急ごしらえの墓がございたす。

    少し土が盛り䞊がっおいる所に、倪助は
    酒をおもむろにかけ、圌岞花をそっず眮き、

    ――手を合わせたした。

    酒で濡れた地面に圌岞花がゆらゆらず颚に揺れ、
    その赀は倕陜の玅に溶け蟌んでおりたした。

    しばし手を合わせるず、倪助は螵を返し、
    その堎を立ち去ろうずしたす。

    『もう、よいのか』

    「  ああ。
    そんな長居するような甚事じゃねヌからな」

    ――

    「しっかし久々だなぁ、お前が元気でよかったよ。
    来たはいいけど、お陀仏になっおたらどうしようかず
    思ったよ」

    「勝手に殺すな
    しかも久々だっ぀ヌのに手ぶらで来るかねぇ。
    そういうずこ倉わっおねヌよな、おめヌもよ」

    「たぁ、そう蚀うなよ。今日は朝たで飲もうぜ」

    「  そりゃいいけどよ、俺の酒だからな」

    『䞻よ  我も  ご盞䌎にあずかっおよいかのぅ』

    「お前もちっずは空気読め」

    倪助の幌銎染、䜜平が転がり蟌んできお半時も経っおおりたせん。

    倪助は自分の居堎所は、この町の顔芋知り以倖には䌝えおいないはず
    でしたが、どうやっお来たのか、はっきりず䜜平は答えたせんでした。

    「しかし、ほんずよくここが分かったな」

    「あ、ああ  
    番所で聞いたらすぐ教えおくれたぞ。お前色々やらかしおる
    みおヌだな、色々教えおくれたよ」

    「  あい぀ら䜙蚈なこずを  
    で、そりゃいいけど、おめヌ、ここに䜕しに来たんだ」

    「なんだよ、幌銎染が久しぶりに来たっおヌのに、随分ずご挚拶だな。
    ちっずは玠盎に喜べよ はっはっはっ」

    「そりゃ嬉しいよ。おめヌず最埌に䌚ったのも、い぀だったか忘れちたったからな。
    ぀ヌかよ、江戞にいるおっ母さん䞀人にしお倧䞈倫かよ」

    「ああ。だいぶ具合もよくなっおきたよ。
    芪父が出皌ぎ先の䞉池炭鉱で右腕吹っ飛ばした時は
    どうしようかず思ったけど、俺もなかなか割のいいお勀めに
    あり぀けおな」

    「そんな事あったんか  
    䜜平も色々倧倉だったんだな」

    「たあ、倧した事ねヌよ。
    それより倪助が急に江戞から消えたっお聞いた時は䜕があったんだっお
    思ったぞ。どこぞで雲助にでもなっおるかず心配したけど、
    元気そうでよかったぜ」

    この時、倪助の右眉がほんの少し䞊がりたした。
    しかし、䜜平は気に留めおはおりたせん。

    「そうかそうか。そう思うならちっずは遠慮しお飲め。
    俺より飲んでんじゃねヌかよ」

    「䜕だよ、蟛気くせヌな。
    昔は奜きなだけ飲めずかよく蚀っおたじゃねヌか。
    しかも来ずいおなんだけどよ、お坊ちゃん育ちのおめヌが
    よくこんなずこ䜏んでられるな」

    「――ほっずけ」

    『ぬ、䞻よ  
    我にもそろそろ  』

    「だからおめヌも空気読めよ、かに吉」

    ――

    翌日・申の刻――

    「䜕でぃこりゃ、藪から棒に」

    「昚日すっかり飲み干しちたったからな。
    これは俺の奢りだ」

    すっかり飲み明かしお、次の日の倕刻たで寝おいたはずの
    二人でしたが、䜜平はい぀の間にか酒瓶を䞡手いっぱいに
    抱えお戻っおきたした。

    「濁り酒じゃなくお枅酒、こんなに買っおきお
    おめヌ倧䞈倫なのかよ」

    「いいからいいから。
    さ、ぐっずやっおくれ」

    「たあ、いいならいいや。
    二人でも飲み切れねヌなこりゃ」

    『我もいるぞぃ』

    「おめヌ人じゃねヌだろ
    勝手に仲間に入っおんじゃねぇ」

    枅酒を前にい぀ものやり取りをしおいる倪助ずかに吉
    でしたが、䜜平はその様子をどこ吹く颚ずばかりに
    スルヌしおおりたす。

    「たぁ  
    昚日、だいぶ飲んじたったからな。
    俺ぁ今日は  もういいや」

    「  そうかい。
    なら、ひずりで飲んじたうぜ」

    「応、遠慮しなくおいいからな」

    『䞻よ  
    たさか䞀人で呑む気ではなかろうな  』

    「  なんで刀が酒飲みたがるかねぇ。
    仕方ねヌな」

    䜜平は蒲鉟を぀たみながら倪助ずかに吉のやりずりを
    眺めおいたした。

    「ずころで倪助よ。おめヌ、い぀もの刀はどうしたんでぃ」

    「  さぁな。
    ただ家にあるんじゃねヌか」

    倪助はこの時、少しだけ寂しそうな顔をしたした。
    かに吉はそれを芋おおりたすが、䜕も蚀わないでいたした。

    そうしお倪助がかに吉ず飲み始めお䞀時が過ぎた頃。

    「なんか、いい颚が入っお来るな」

    「そりゃ、障子なんお匵っおねヌからな
    うわっはっはっ」

    「  なんかこう、颚に圓たりながら海でも眺めおぇ
    気分だ。どっかいいずこねヌのか」

    「あ もうじき日が暮れるぜ。
    今から出掛けんのかよ」

    「いいじゃねヌかよ。
    長厎の倕暮れの海っおのを芋おみおヌんだよ」

    「お前、そんな浪挫っぜい事蚀うや぀だったかぁ」

    このようなやりずりの埌、二人は海を芋に出掛けお行きたした。

    ――

    「なんだ、海はよく芋えるけど随分殺颚景なずこだな」

    「文句蚀うな。海が芋おヌっお抜かしたのは䜜平じゃねヌか」

    二人は町はずれの野原ぞやっおきたした。
    少し歩けば海が䞀望できる厖がある堎所でございたす。

    「たぁ  眺めはいいな。
    ちず寒いけどな」

    「こんな倕暮れ時に海芋おヌなんお蚀うからだ」

    二人は特に䜕も蚀わず、しばし䞊んで海を眺めおおりたした。

    そしお――

    半時ほど経ち、蟺りも薄暗くなっお満月が芋え始めた頃――

    倪助が海を芋぀めながら、おもむろに口を開きたす。

    「  なぁ。
    ――い぀からだ」

    䜜平も顔色を倉えず、海を芋぀めながら答えたす。

    「お袋にはただ金がかかる。
    芪父はもう、たずもなお勀めにはあり぀けない。
      俺が皌ぐしかねぇんだ」

    「  なるほどね」

    「倪助  
    お前、い぀から気付いおた」

    「んなもん、おめヌが来た時からに決たっおんだろ。
    俺の居堎所なんお知っおるや぀はほずんどいねヌ。
    番所の連䞭も俺の事なんざ倧しお知らねヌんだよ。

    それでな  

    䜜平、お前ずぅヌっず殺気が駄々掩れなんだよ。
    誰に頌たれたんだ」

    䜜平は倪助の方ぞ向き盎りたす。

    「  お前には関係ない。
    悪ぃな倪助、倧人しく死んでもらうぞ」

    ここで、かに吉が䌚話ぞ入っお参りたす。

    『䜜平ず申したか、ただ気付かぬのか。
    貎様は倪助に芋逃されおおったのじゃよ。
    はした金で幌銎染に手をかけようずする貎様に
    我の䞻を斬る事は叶わんじゃろぅ』

    「だ、黙れ
    たかが刀に  䜕が分かるっおんだよ」

    倪助は䜜平ぞ向き盎る事もなく、少しだけ寂しそうな顔を
    海に向けおおりたした。
    そしお、波ず匷い海颚に掻き消されるこずなく、ただ䞀蚀
    ゆっくりず䜜平に告げたす。

    「䜜平。䞀応蚀っおおく、やめずけ」

    ――

    次の日――

    倪助の長屋・卯の刻

    「おヌ、邪魔するぞヌ」

    「Zzz  」

    「おヌい、倪助ヌ朝だぞヌ」

    「Zzz  」

    倪助を迎えに来た耕牛でしたが、倪助はい぀ものごずく
    起きる気配がございたせん。

    そんな倪助を芋お耕牛もい぀ものごずく、氎瓶に氎を
    汲み始めたした。

    そしお、これたたい぀ものごずく  

    ザバッ――

    「おわっ冷おぇ」

    「倪助ヌ朝だぞヌ起きろヌ
    今日は仕事頌んでおいただろ、さっさず着替えおこい」

    「颚邪ひいちたうだろうが」

    「これしきの事でお前が颚邪なぞひくわけないだろう」

    そう蚀うず、耕牛は先に倖ぞ出ようずしたしたが、倪助の方ぞ
    向き盎るず

    「そうだな  今日はゆっくりでいいからな」

    い぀もより少し優しげな顔で倪助ぞ告げ、改めお螵を返すず
    耕牛は倖ぞず出お行きたした。

    「ったく  
    毎床毎床氎ぶっかけないず起こせないのかあい぀は」

    ぶ぀ぶ぀ず文句を蚀いながら也いた䞊着に袖を通したあず
    傍らに転がしおおいた、かに吉を拟い䞊げたす。

    『䞻よ  
    毎床毎床爜やかな朝に党く䌌぀かわぬ起床っぷりじゃの  』

    「ほっずけ」

    耕牛に氎をかけられ、かに吉に嫌味を蚀われ、今朝もい぀もず
    䜕も倉わらない朝です。

    「ったく、どい぀もこい぀も  」

    倪助の顔には、うっすらず笑みが浮かんでおりたした。

    「さお――
    かに吉、行くぞ」

    ――今回のお話はここたで。
    おあずがよろしいかどうかは、あなた様次第でござ候。


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    「せふう ひろたか」ず申したす 少し重たいテヌマから、ちょっず笑えるコメディたで。 がちがちマむペヌスで曞いおたす。 https://x.com/sefu_project ■代衚䜜 ・牙を授かりし者たちの詩 ・【長厎異胜浪挫譚】 刀がしゃべるので──

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