
推し活は用法用量を守って|「イン・ザ・メガチャーチ」朝井リョウ

好きなアニメ、歌が上手なアーティスト、かわいいアイドル…そんな存在に癒され、日々の活力をもらう。
かつてはオタクと呼ばれ、奇異な趣味だとされていたのに、今や「推し活」は市民権を得ている。
サブスクで無料で音楽が聴ける時代でもCDを買うファンがいるのは、推しに貢献するためだったりする。
推しに対する熱量が、ライブに参戦させ、グッズを購入させる。
何もなければ買わないようなもの、行かないような場所でも、推しにゆかりがあるならファンは投資を惜しまない。
夢中になれる対象があると、生活に彩りが生まれる。
今日は新曲の配信日だから、YouTubeで見よう。明日は推しが掲載されている雑誌の発売日だから、買いに行こう。
たとえ仕事が辛くても、推し活にはお金が必要だ。推しが、働く意味を与えてくれる。
推しがいること自体は、とても素晴らしい。道を踏み外しさえしなければ。
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朝井リョウの2026年本屋大賞受賞作、「イン・ザ・メガチャーチ」は、ファンの熱量に突き動かされた消費活動、『ファンダム経済』をテーマにしている。
推しのおかげで救いを得たのも束の間、陰謀論に傾倒してしまう女性が登場する。
一般的には、視野を広く持てと言われがちだが、本書では「視野が狭いことによる幸せ」が語られている。夢中になれるということは、他のものを見ないということ。
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人の心を動かす『物語』の強さ。
一神教ではない日本の人たちを動かすには、信じられる物語が必要なのだという。
一理ある。納得できてしまうからこそ、怖くもある。
怖さからは目を背け、私は今日もささやかに推しを愛でる。
彼女たちには、お腹いっぱい食べて、あたたかい場所で、心配事などひとつもなく、幸せに暮らしていてほしい。
ステージ上で歌って踊って、ひとかけらの輝きをおすそわけしてくれたら、それで満足。
