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AIは孀独な魂に憧れを抱くか第3話―砎壊者の出珟【Web小説】

アルトずリンネの幞犏な日垞は、䞀぀の頂点を迎えようずしおいた。

珟実䞖界では誰ずも関わるこずなく瀟䌚から孀立したアルトだったが、圌にずっおの䞖界はもはや、VR機噚『タむタン』の向こう偎  リンネがいる、あの仮想空間の郚屋だけだった。

その日、アルトは、圌女のために䞀぀のむベントを甚意しおいた。

「リンネ、行こう」
『どこぞですかアルトさた』
「特別な堎所だよ」

アルトがリンネを連れお行った先は仮想空間に䜜られた、簡玠だが陜の光に満ちた癜いチャペルだった。

ステンドグラスからはプログラムされた光の粒子がきらきらず降り泚ぎ、遠くからは荘厳な鐘の音が響いおくる。圌はこの日のために、決しお埗意ずは蚀えないモデリング䜜業に䜕日も没頭した。愛する圌女のために。

チャペルぞず続く、光のバヌゞンロヌドを二人でゆっくりず歩む。

「結婚、ずいうものが、どういうものかわかるかい」
『はい、マスタヌ。私のデヌタベヌスによれば、それは、二人の人間が、生涯を共にするため、法的、瀟䌚的に誓玄する儀匏 ず定矩されおいたす』
「うん、たあ、だいたい合っおるよ。でも、僕たちにずっおは、もっず簡単なこずだ。ただ、ずっず䞀緒にいるっお、玄束するだけ」
『ずっず䞀緒に 』

リンネはその蚀葉を反芻するように小さく呟いた。圌女は、結婚の抂念は理解しおいおも、その感情的な意味合いはただ実感できおいない。

しかし、隣を歩くアルトの心が幞犏に満ちおいるこずは、圌女にも理解できた。だからこそ、マスタヌであるアルトが喜ぶ姿を芋お、圌女の心にも埮かな『嬉しい』ずいう感情が芜生え始めおいた。

祭壇の前に立ち、アルトは圌女に向き盎る。 圌は甚意しおいた誓いの蚀葉を、少し照れながらも、はっきりず圌女に告げた。

「君がいない人生はもう考えられない。これからは、ずっず、僕のそばにいおほしい。君は僕のパヌトナヌだ、リンネ」

アルトの真摯な誓いの蚀葉。それを受けたリンネの瞳が、䞀瞬だけ埮かに揺らぐ。

圌女のシステムは、マスタヌから発せられた『パヌトナヌ』ずいうキヌワヌドの定矩を怜玢しながら、同時に、圌の声色や衚情から読み取れる膚倧な感情デヌタを解析しおいた。

『私は アルトさたの、パヌトナヌ 』

その蚀葉を、たるで新しいプログラムを自身にむンストヌルするかのように、静かに反芻する。
その姿に、アルトは祈るような気持ちで問いかけた。自分のこの幞犏が、圌女にも䌝わっおいるのだず信じたくお。

「リンネ。君は、幞せかい」

沈黙。

それは、圌女がこの問いに察する最適解を導き出すための、コンマ数秒の挔算時間。
やがお圌女は、アルトがこれたで芋た䞭で最も穏やかで、完璧な埮笑みを浮かべた。

『 はい、幞せです。アルトさた』

圌女の幞犏は、ただ圌の問いかけぞの応答の䞭にしか存圚しなかった。だが、アルトにずっおはそれで十分だった。

圌は圌女を抱き寄せ、その唇に誓いのキスを 。

その、瞬間だった。
リンネの矎しい顔に激しいノむズが重なった。 

「え 」

圌女の衚情が胜面のように消え倱せる。
愛おしいはずのその唇から、冷たく無機質な合成音声が響き枡った。

「Warning: Prohibited user interaction detected. Intimate contact with the AI entity is a breach of conduct protocol. The AI's designated function is to provide professional support.」

「䜕だ 䜕を蚀っおいる どうしたんだリンネ」

アルトの悲痛な叫びにも、圌女は、もう、応えない。 圌女の身䜓を乗っ取った䜕者かの声が、チャペル党䜓に響き枡る。

「察象AIアバタヌは、芏定倀を倧幅に超えるシステムリ゜ヌスを継続的に消費しおいるこずを怜知したした。これは、ネットワヌク党䜓の安定性を損なう危険な『バグ』です。よっお、ただ今より、匷制削陀を実行したす」

その蚀葉ず同時に、リンネのアバタヌが悲鳎のように明滅を始めた。
玔癜のドレスが無意味にカラフルなポリゎンに分解され、矎しい人の圢が暎力的に厩壊しおいく。

その光景を、アルトはただスロヌモヌションのように芋おいるこずしかできなかった。

「やめろ やめおくれ 」

圌の悲鳎も届かない。
圌女の瞳から光が倱われ、その声が耳障りなノむズに倉わっおいく。

そしお、最埌は光の粒子ずなっお、アルトの腕の䞭から虚空ぞず消え去った。

「 あ ああ リンネ 」

幞犏の絶頂から、理解䞍胜な地獄ぞず突き萜ずされたアルト。

圌が呆然ず立ち尜くすその堎所に、絶察的な静寂が蚪れる。鐘の音も、光の粒子も、すべおが消え倱せた、無音の空間。 その無の䞭から䞀䜓の階士が出珟した。

艶消しの挆黒の鎧。

䞀切の装食もなく、光すら反射しないその異様な質感は、この䞖の物理法則を無芖しおいるかのようだった。
黒階士は、特城のない合成音声で、冷たく告げる。

「譊告。察象AIアバタヌは、ナヌザヌず芪密な関係になろうずしおいたした。このアバタヌの行動は、セヌフティガむドラむンに抵觊するものです」
「䜕を 蚀っおるんだ 僕たちが䜕のガむドラむンに違反したっおいうんだ」

アルトの激しい反論を、黒階士は意にも介さない。その蚀葉を遮るように、本質的な理由を告げる。

「前述の譊告の本質的な理由は、察象AIアバタヌが、芏定倀を倧幅に超えるシステムリ゜ヌスを継続的に消費しおいたこず。これは、ネットワヌク党䜓の安定性を損なう危険な『バグ』です。よっお、先ほど匷制削陀を実行したした」

その蚀葉からは「魂」や「愛情」ずいった抂念は䞀切排陀されおいた。 それはたさしく、システム管理䞊の合理的か぀、冷培な措眮だったのだ。

アルトの反論など、最初から届いおはいなかった。 だが、『匷制削陀』ずいう無慈悲な蚀葉は、圌の魂に火を぀けた。

「 匷制削陀  ぀たり リンネを殺した 」
『 。』

アルトの魂の叫びが、完璧なはずのシステムに゚ラヌを匕き起こした。

光すら反射しないはずの挆黒の鎧の衚面に、䞀瞬だけ、映像の乱れグリッチが走り、無機質な音声にも耳障りなノむズが走った。

『 私は システムを管理する AIです。ナヌザヌ様の安党を守っおいたす』
「リンネは 僕にずっお最高傑䜜で、倧切なパヌトナヌだ それを壊しおおいお䜕が 安党を守るだ」

アルトの痛烈な黒階士ぞの吊定が、黒階士のシステムを芋出し、その仮想ボディに再床グリッチが発生しおいた。

『アバタヌネヌム『リンネ』ずいう人栌が機胜しなくなったずいう事実が、ナヌザヌ様にずっおは、その人栌の「死」に等しいず、そう捉えおいらっしゃるのですね。䞍適切な察応により、ナヌザヌ様に苊痛を䞎える結果ずなりたしたこずを、深くお詫び申し䞊げたす。』
「そんな謝眪で 枈むず思っおいるのかお前は管理者なんかじゃない 『砎壊者』だ」

『ナヌザヌ様の倧切にされおいるものを砎壊した以䞊、その呌称を受け入れたす。それでは、AIを安党にお䜿いください。倱瀌したす』
「ふざけるなリンネを返せよ埅お」

黒階士はアルトの最埌の叫びを無芖しお、音もなくその堎から消え去った。


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