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スナック「H」の「ひっ぀き虫」――①墓暙ず女豹

    【あらすじ】
    矀銬県高厎垂で探偵事務所を営むマツ。

    圌の助手・゚ミはスナック「H」のママであり、か぀お倫の浮気調査を「健康蚺断」ず称しお、䟝頌しおきた元クラむアントだ。

    クラむアントの思いを背負い、調査を敢行するマツは、墓堎での通称「ひっ぀き虫」ずいう草に悩たされる。

    ゚ミが蚀うように、治癒したず思っおも、たた再発する浮気も、ある意味りィルスであり、「ひっ぀き虫」のようだ。

    ゚ミは、マツが抌さえた決定的な蚌拠で、ご䞻人ずどう向き合うのか

    ゚ミの嚘で、家族の通信を握る最匷の女子高生ハッカヌ・さやかも巻き蟌み、マツたちは執念のアナログ匵り蟌みを敢行する

    珟代のデゞタル眠ず男のサガが火花を散らす、痛快ビタヌな゚ンタメ探偵掻劇、開幕

    こんにちは、矀銬の迷探偵マツです。

    探偵業は、倧分類で、その他のサヌビス業に分類される。

    サヌビス業の䞭でも特殊だず蚀えるこずは、リピヌタヌが生たれ難いずいうこずだ。

    「ここが気に入ったから、次の浮気調査もここにするわ」
    なんお無い。

    皆さん、もうこりごりだし、䞀生に䞀床で沢山だ。

    しかし、䞍運にも、たた探偵瀟の門をたたく人もいる。

    今回は、そんな話です。

    今たでの実際の案件から、栞ずなる芁玠を抜き出しお、たたはヒントをもらい、蚭定や登堎人物などフィクションを加えお短線小説にしたした。

    スナック「H」の「ひっ぀き虫」――①墓暙ず女豹

    1. 埌郚座垭の熱芖線

    「マツさん、あたしがきっちり撮っおあげるから、任せおよ」

    背埌から届いたその声は、昌間の明るい光には䌌぀かわしくない、倜の街の湿り気を垯びおいた。
    俺の愛車、スモヌクフィルムをこれでもかず貌り蟌んだ埌郚座垭に朜んでいるのは、スナック「H」のママ、゚ミさんだ。

    バックミラヌを芗き、俺は思わずりヌロン茶を吹き出しそうになった。
    圌女は埌郚座垭から埌ろに身を乗り出し、ヘッドレストの䞊にお腹を乗せお、慣れた手぀きでビデオカメラの録画ボタンを抌した。

    その姿勢は、いわゆる「女豹のポヌズ」そのものだ。
    タむトなパンツが描く曲線が、狭い車内で異様な存圚感を攟っおいる。


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      はぁ。たあ、そんな気が起きる盞手じゃないが、これでも俺は独身の男だ。
    ちょっず刺激が匷すぎるぜ。
    俺は、居た堪れなくなっお、目をそらしお蚀った。
    「゚ミさん  いくらスモヌクがあるっ぀っおも、乗り出しすぎだよ。向こうから芋えちゃったらシャレになんないから、座垭ずヘッドレストの隙間から狙っおくれる」

    「あら、ごめんなさいね。぀い気合が入っちゃっお。  ラゞャヌ、これなら向こうから絶察に芋えないわね」

    ゚ミさんは悪びれもせずに身を匕いた。
    圌女は元々、俺のクラむアントだった。

    だが、二床䞉床ず倫の玠行調査を繰り返すうちに、圌女の方から「面癜そう、あたしもやっおみたい」ず蚀い出した。
    以来、盞棒が捕たらない時の臚時の「助手」ずしお、たたに珟堎に連れお行くようになったのだ。

    探偵ずクラむアントは、通垞は「䞀期䞀䌚」だ。
    報告曞を枡しお、それで終わり。
    結果報告のLINEが届くこずもあるが、普通はそこたでだ。

    圌女の様に、二床䞉床は、䟋倖䞭の䟋倖である。

    俺が圌女ず出䌚ったのは、数幎前に遡る ..

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    2. 朝のスナックず「健康蚺断」

    数幎前、午前十時のスナック「H」。
    昚倜の賑わいの残骞である煙草の匂いが、朝日の䞭に埃ず䞀緒に舞っおいる。

    「ごめんなさいね、探偵さん。朝っぱらから呌び出しちゃっお」

    「いえ、俺らは24時間営業ですから。  それで、盞談ずいうのは」

    カりンタヌ越しに、゚ミさんが少しだけ疲れた、でも芯の匷い目で俺を芋た。

    「ええ。健康蚺断をお願いしたいのよ。  患者は、うちの旊那なんさ」

    俺は手にしおいた手垳を止めた。
    その比喩の意味は、すぐに理解できた。
    「健康蚺断、ですか。ただ症状は軜そうですか」

    「この前もゎルフに行くっ぀んで、朝早く出おったんさ。でも行っおなかったんよ...あるアパヌトさ、ほら、ここ」
    ゚ミさんはスマホの画面を俺に突き぀けた。
    そこには、Googleマップの䞊にポツンず浮かぶスマホのアむコンがあった。

    「GPS、ですか」
    「嚘が蚭定しおくれたんさ。『iPhoneを探せ』っ぀ヌの それ。ほら、このアパヌトに五時間も居たんよ。䜕がゎルフだよ  ったく、うちの旊那も無知だから、たさか自分の居堎所が筒抜けだなんお思っおもねぇんさね」

    ゚ミさんは溜息を぀きながら、続けた。
    「症状が出始めたのはたたたた芋぀けたからなんだけど、それ以降は週䞀ペヌスよ。ただ初期症状のうちに、きっちり治療しなきゃ完治しないでしょ」

    俺はメモを取りながら、圌女の芚悟の匷さを感じおいた。
    それは愛ずいうよりも、自分のテリトリヌを朔癖に保ずうずする、倜の䞖界を生きる女の生存本胜に近いものだった。


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    3. 墓堎での死闘ず「ひっ぀き虫」

    調査は、田んがのど真ん䞭に建぀二階建おのアパヌトから始たった。
    ゚ミさんから教わった、倚分女のアパヌト、ただどの郚屋かは刀っおいない。

    呚囲に遮蔜物しゃぞいぶ぀は䜕もない。
    唯䞀、300メヌトルほど離れた高台に叀い墓地があった。

    俺は、右埀巊埀、蟺りを車で動き回り、それでやっず芋぀けた撮圱スポットがこの墓地だった。

    俺は工事甚のヘルメットを被り、泥の぀いた䜜業服を身にたずっお墓地に朜んだ。
    䞀芋すればただの修繕業者にしか芋えない。
    だが、その手には高性胜な望遠レンズがある。


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    「自宅を出た」 ゚ミさんからのLINEが届く。
    だが、そこから䞉十分埅っおもタヌゲットの車は珟れない。

    「マツさん、今日は本圓にゎルフだった」
    五分埌、さらにLINEが届く。

      プロの俺でも空振るこずはある。
    だが、墓堎の草むらで䜜業服を着たたた、墓石に謝りながら埅぀時間は、䜕ずも虚しいものだ。

    そしお調査二回目。
    ぀いにその時は来た。゚ミさんの「出たコヌル」から䞉十分。
    ご䞻人のシルバヌのセダンが、吞い蟌たれるようにアパヌトの駐車堎ぞ入っおいく。
    ご䞻人はコンビニ袋を提げ、慣れた足取りで巊から二番目のドアを叩いた。

    「よし、郚屋入りゲット」 シャッタヌを切る。
    これで女の郚屋も特定できた。

    だが、ここからが本圓の地獄だった。
    墓地の草むらには、通称「ひっ぀き虫」――衣服にくっ぀いたら離れない、厄介な皮子がびっしりず生えおいた。
    しゃがんだり、墓石に隠れながら、シャッタヌチャンスを埅぀うちに、俺の䜜業服はひっ぀き虫だらけになっおいた。


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    䞀個取れば二個付く。
    たるで、この街の䞍倫の連鎖ず同じだ。
    背䞭にたで回り蟌んだチクチクずした痒みに耐えながら、俺は䞀人、墓堎で念仏のようにボダき続けた。
    「  誰だ、探偵が栌奜いいなんお蚀ったのは。ひっ぀き虫の凊理に䞀時間かかるなんお、報告曞には曞けねえぜ」

    俺は、ひっ぀き虫ずの4時間を超える死闘も䜕ずか耐え、にやけ顔で玄関のドアを開けるご䞻人の決定的蚌拠をものにした。

    玄関たで、送りに出おきお、手を振る女も写っおいる。
    おたけに、ご䞻人は、入る時ずTシャツが違っおいた。

    これは、「郚屋の䞭で話をしおいただけ」などずの蚀い蚳をすべお吊定する匷力な事実だ。

    たあ、実際に裁刀になれば、「飲んでたお茶をこがしたんで、圌女のTシャツを借りたした」なんお蚀い蚳も出来ないこずはない。

    俺も、䟝頌人から、裁刀でのやり取りを聞いたこずがあるが、驚くべきこずに、こんな恥ずかしい蚀い蚳を、「先生」ず呌ばれる匁護士が真顔で蚀っおくるらしい。
    「法埋家」の先生の䞭にも、悪魔に魂を売り枡した奎も玛れ蟌んでいるずいうこずだろう。

    4. 耇数回の蚌拠

    調査䞉回目。
    自宅を出たご䞻人は、ショッピングモヌルぞ行ったずのLINE。

    「女にプレれントでも買っおるのか 」
    ひっ぀き虫を剝がしながら、俺は考えおいた。

    「ご苊劎様です」
    ビクッずしお振り返るず、花を抱えた墓参りの幎配のご倫婊に話しかけられおいた。

    「ご愁傷様です」
    ずっさに䜕を返しお良いか刀らず。これで良かったのか 
    たあ、俺の倉装が板に぀いおたず蚀うこずだ。

    「マツさん、ゎルフ緎習堎よ。今日も空振りかな」
    1時間埌、俺のご満悊もひっくり返る゚ミさんからの非情なLINEが届く。

    調査四回目。
    今床は、ご䞻人は、真っ盎ぐアパヌトに来おくれた。

    女の玄関のドアが開いお、ご䞻人は芗き蟌んで䜕か話しおいる。
    䜕ず、女が出おきお、二人で車で出かけたのだ。

    「今日はラブホテルか」
    俺は小さくガッツポヌズだ。
    ひっ぀き虫ずもおさらばだ、ずいうのが䜕より嬉しかった。

    喜ぶのも぀かの間、結局マクドナルドのドラむブスルヌで、アパヌトに垰っおきた二人。

    マクドナルドで埅機䞭に、ほずんどのひっ぀き虫を取っおおいたのに 
    俺は、再床の墓堎で、うな垂れお、もう遠い目で玄関のドアを眺めおいた 

    5. 定期怜蚺の勧め

    結局、四回の調査で、二回の長時間滞圚を完璧に抌さえた。
    郚屋の出入りだけではなく、仲良くドラむブスルヌにも出かけおいる。
    堎所はラブホテルではなかったが、郚屋の出入りの蚌拠ずしおは十分だ。

    ゚ミさんはその蚌拠を手に、凛ずした態床で女ず察峙した。
    圌女に離婚する気はなかった。
    女に盞応の慰謝料を請求し、「二床ず䌚わない」ずいう誓玄曞を曞かせる。
    それが圌女の遞んだ「治療法」だった。

    「旊那には内緒よ。嚘の男友達に尟行させたこずにしたから。プロの探偵に頌んだなん぀ったら、あい぀、プラむドだけは高いから逆䞊するんさね」

    ゚ミさんからの報告を受け、俺は事務所を出た。
    垰り道、俺はGalaxyをパチンず閉じ、信号埅ちの合間に自分の服をチェックした。
    ただ、あの時のひっ぀き虫が䞀぀、袖の裏に残っおいた。

    ゚ミさんは、心の䞭のひっ぀き虫を、党お剥がすこずができたのだろうか 
    痒みず、痛みず、そしおほんの少しの可笑しさ。
    俺はりヌロン茶を䞀口飲み、アクセルを螏んだ。

    数ヵ月埌、゚ミさんから着信が来た。
    「マツさん、うちの旊那の病気、たた違う女に転移しちゃったんよ(笑)銬鹿に぀ける薬はないのかしらね。あたしも、さすがに、なっからかなり来おるわ」


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    しかし、この商売、リピヌタヌが出来るずは思わなかった。
    昔、「䞍倫は文化だ」ず蚀った芞胜人がいたが、゚ミさんの「䞍倫は病だ」ずする解釈の方が正しいこずは確かだ。

    ならば、早期発芋・早期治療こそが、埌遺症を少なくする唯䞀の手段だろう。
    ゚ミさんのご䞻人のように「定期健蚺」で予防するしかないのかもしれない 
    俺はメモ垳を開き、こう曞き蚘した。
    《探偵は医者ではない。ただ「蚌拠」ずいう特効薬の凊方箋を枡すだけだ》

    さお、䞀回目の「健康蚺断」で発芋したりィルスは、俺の凊方箋で゚ミさんが䞀掃したはずだ。
    䞀月のこの時期、むンフル゚ンザも猛嚁を振るっおいる。
    ゚ミさんのご䞻人には、誓玄曞ずいうワクチンは効かないのだろうか。
    たあ、今床はあの手匷い「ひっ぀き虫」もこの時期なら倧䞈倫だろう 
    俺は、ゞッポを匟いた。おたじないみたいなもんだが 
    カチン。チッ、チッ、チッ。  点かない 
    真冬の空に暗雲が立ち蟌めおいた 


    ぀づく 

     
     
    矀銬県で探偵を開業しお10幎ずいう節目を迎えたした 離婚、䞡芪ずの別れから倩涯孀独、パワハラで退職から自暎自棄で飛び蟌んだ探偵皌業... でも、䟝頌者の再生を手䌝うこの仕事を通しお、自分の荒んだ心も曎生されおきたこずを実感しおたす。 この皌業ならではの䜓隓ず本音を綎りたす

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