
Canvaに仕事を奪われ、専門職ではなくなった現実と向き合う
前職を辞める少し前、データ持ち込みによる印刷の依頼が来た。Canvaで作ったそうだ。
デザインも出来ていて、あとは印刷するだけの状態。これを見て思った。
「あれ、私のやってる仕事、いらなくない?」
私は印刷会社の制作として、名刺・チラシ・パンフレットなど、主に紙媒体の印刷物のデザインと制作に携わっていた。
まがりなりにも専門職という気持ちは多少あった。
それがどうだ。
今は自分の好みのテンプレートをダウンロードして内容を変えれば出来上がり。もうスマホ一つであっという間に作れてしまう時代となった。
ああ、AIに仕事を奪われるってこういうことだな。今まで私が何年も必死にやっていたことがこんな簡単に持っていかれるなんて。
結構前から印刷業界は斜陽と言われる分野だった。昨今の物価高になるずっと前から、紙とインクの値上がりが止まらない。
材料費がどんどん上がるので、当然利益は少なくなる。会社としては経営が苦しくなる。
少し前にも、同人誌の印刷を請け負っていた、その界隈では有名な会社が廃業していた。
パソコンの操作に慣れてる人も増え、ちょっとしたものなら自分たちで作れるようになった。そうなると、わざわざ業者に頼らなくても良くなる。
私がいた会社でも、今まで継続して請け負っていた仕事がいくつもなくなった。予算の関係で自分たちで作ることにした、とのことだ。
その結果、おそらくWordかExcelで作ったんだろうなって感じの、明らかに素人が作った何とも残念な作りのチラシが新聞折り込みで入っていた。
ああ、内容がわかりさえすれば、質なんて二の次三の次なんだな。いいのかこんなんで?
そんな現実にガッカリさせられたこともあった。
でも、これはユーザーの意思が反映された時代の流れだと思う。
なるべくお金をかけたくない、できるなら自分でパパっと作りたい。それが本音だろう。
コロナ禍で仕事も少なくなったし、長く働いてるのに給料も新卒レベルから一向に上がらない。もう将来が見込めないと思っていたので、結婚を機に辞めた時は正直ホッとした。
早いもので仕事を辞めて1年が過ぎた。
専門職だと思ってたのが、気がつけば誰でもできることになった。
何か持っていた気がするのに、もう今は何も残っていない。
前職と同じ仕事をやることはたぶんもうない。大変な割に給料も安いし、自分の能力では限界を感じていたし。
じゃあ次に何をやるのかと聞かれると、うまく答えられない。
これからどう生きていけばいいのか。そんなことばかり考えて、次の一歩が踏み出せないでいる。