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Photo bykigurumi64

<ショートショート>ミツバチ(仮)と転生チート

    地球ではない惑星のどこか。
    オレには生まれたときから、前世の記憶があった。

    残念ながら、今のオレは人間じゃない。
    ミツバチに似た姿形をしているが、正式名称はわからないので、自分のことは「ミツバチ(仮)」と呼んでいる。

    オレには、いわゆる特殊スキルは、備わっていない。
    だが、特に問題はない。

    「前世の知識」という転生チートで、ミツバチ(仮)界の頂点をめざすんだ。

    初めて巣から外に出る日。
    オレはふんすと息巻いていた。

    前世の社蓄時代に培った「チームプレー」のノウハウを仲間に伝えて、群れのQOLを爆上げ。
    異例の速さで、ミツバチ(仮)係長に昇進してやるんだ。

    しかし、外に出たオレは、驚くべき光景を目にする。

    仲間たちは「花を探す役割」「蜜を集める役割」「集めた蜜を巣に運ぶ役割」・・・など、すでに見事な連携プレーを確立していた。

    なんてこった。
    オレの転生チートが、「昆虫の本能」に敗北した瞬間だった。

    それならば、と気を取り直したオレは、巣の最奥に目を向ける。
    巣の最奥には、女王蜂がドーンと鎮座していた。

    よし。
    前世のラノベから得た知識を駆使して、「王女様」ならぬ女王蜂の婚約者候補として成り上がり、ミツバチ(仮)令息として華麗な昆虫ライフを満喫してやるんだ。

    しかし、巣の奥に足を踏み入れたオレは、驚くべき光景を目にする。

    女王蜂の周りには、オレの一回りも二回りも大きい、屈強なオスのミツバチ(仮)たちが、大きな羽音を響かせながら、無数にうごめいているのだった。

    なんてこった。
    オレの転生チートが、「弱肉強食の理(ことわり)」に敗北した瞬間だった。

    業を煮やしたオレは、ついに群れを飛び出した。

    オレの活躍の場は、きっと、ここにはないんだ。
    そうだ、人間のところへ行こう。

    もしかしたら、転生チートで、人間の言葉が話せる特殊スキルとかが発動して、ミツバチ(仮)アイドルとして成功できるかもしれない。
    アイドルグループ「MTB (ミツバチ)48」を結成するのも、悪くないな・・・

    妄想による興奮で、ぶんぶんと羽をはためかせながら、人間の家の窓に近寄った、その時。
    突然窓が開き、見覚えのあるスプレー缶が突き出された。

    おぉ、オレはこいつを知っているぜ!
    前世でよく見かけた、害虫を駆除する「殺虫スプレー」ってやつだ!

    ついに、転生チート「前世の知識」が生かされる場面に遭遇し、喜びに打ち震えるオレ。
    缶から吹き出した白い煙は、まるでゲームの主人公の登場を演出する、舞台装置のようだ。

    ・・・

    ・・・

    ポトリ。

    その日、名もなき小さな昆虫が、0年5ヶ月の短い生涯を閉じた。
    転生チートの喜びを胸に抱えたまま。

    【完】

    もう書かないかもと言っていたのに、2日連続のショートショートです笑
    昨日の勢いのままに、もう1本書いてみました。

    異世界転生もののラノベを読みすぎて、変な妄想が膨らみました。
    こんな異世界転生はいやだ~!

     
     
    本好きさんとつながりたい|「短い読書記録」や「日記のようなもの」が中心です|超絶インドア派人間|音楽もこよなく愛しています|(2026.5~)以前挫折したnoteを再開しました

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