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Photo byminokiroku

【音声放送ピックアップ記事☁️】〜真夏のアイシューモ〜

    こちらの記事はstand.fmにて、あらたに放送としてリニューアルしております。
    ぜひお聞きください♪👇👇👇

    真夏のアイシューモ


    8月の強烈な暑さを写しとったように
    痛くなるほどあざやかな紺碧が目の前に広がる

    セルリアンブルーをベースに
    プルシャンブルーを薄く混ぜて塗り上げた空

    どうぞと差し出されているかのように
    両手で簡単にすくえてしまえそうな
    立体的でもくもくとした入道雲が一つ浮かぶ


    夏休みだったのかしら
    休日午前中も早い時間

    カラッとした乾いた空気
    じっとりと汗が流れるような暑さは
    お寝坊しているようだった

    父の運転する車に乗せられて
    初めて父の職場に行った

    何か重要な書類でも忘れ取りに行ったのか
    すぐに用事を済ませた父はたばこ屋に寄り
    珍しくアイスを買ってくれた

    アイス?
    これ、わたしの知っているアイスじゃない


    初めて見るモノさわるモノ
    さっき見た雲をすくい取ったように
    フワフワと、ひんやり両手におさまった

    小さな口で噛みちぎり雲を頬張る

    口の中で一瞬にして溶け切ると
    冷たさの後に遅れてやってきた甘さが
    しつこくなく、優しく広がって

    ふんわり消えていった


    きっとあまりの美味しさに
    わたしはこの時の空を
    鮮明にまで焼きつけたのね


    のちに
    この不思議なアイスの味は
    本当に雲の味だと知ったの


    今のわたしを取り巻く人と人との関わりは
    まるでこのアイシューモのようだと
    感じずにはいられない


    SNSで交わすちょっとしたコメントや
    車同士で道を譲る際のアイコンタクトや
    店員さんのちょっとした気遣いに触れたとき

    あの時の雲の甘さがよみがえる

    わたしがわたしとして発信した行動に
    興味を持って想いを伝え返してくれる

    一瞬だけれども
    よくは知らないどこかのあなたの優しさが
    ふわっと心に響き広がる

    全くしつこくない
    その甘さはまもなくして
    すぅーっと、後腐れなく消えてゆくの


    より確実に
    時間に追われ生き急ぐ
    人間関係の中で

    ゆっくり立ち止まり
    空を見上げ雲を眺めて
    アイスやさしさを味わう機会は
    極端に減ってしまったの


    流れめぐる時の中で
    一瞬にでもすれ違うあなたに
    忘れられない味を伝えられたのなら

    わたしにも同じ味がよみがえる

    あっと言う間に溶け切ってしまう優しさ
    だからこそ
    鮮明に記憶に留まることもあるのでしょう


    儚く消える想いを
    味わってもらうことの

    何をためらう
    必要があるのかしら


    ぜひあなたにも知ってもらいたい
    真夏に食べるアイシューモ




    ”ありがとう”




    「真夏のアイシューモ」


    ~END


    ※アイシューモ
    「ほんと、アイシューモみたい。」
    モモちゃんも、くもをちぎって、なめながらいいました。
    「おいしいよ。おいしいよ。」
    ぼうっと、あんずいろにひかっているくもは、あまくって、すこしつめたくって、アイスクリームとシュークリームの、あいのこみたいです。
    「ちいさいモモちゃん」より(松谷みよ子作)


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