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䞻人公Xぞの逞

    ♱

    芪愛なるX

    あたり人目に぀かぬ僕たちの仕事を、奜意を持っお芋守っおくれる君は、今たでどのような詩によっおも、心から満足したり感動したりしたこずがなかったであろう。
    そしお君はほんの偶然から僕たちの詩を読んでみるこずになったのかもしれない。
    しかしたたたた僕たちの詩が、君の目に觊れる機䌚を持ち、君の粟神の長い遍歎の過皋においお、たずえ䞀時ずはいえ時を借りたずいうこずは単に偶然ではないように思われる。
    僕たちず同じように珟代を荒地ず考えおいる君は、君自身の悩みを持っおいるだろう。
    そしお、その悩みに迎合するどんな蚀葉の甘矎な衚珟よりも、自己の珟実の悩みの方が遥かに未来を孕んでいるこずに気づいおいるはずである。
    芪愛なるX、それだからこそ僕たちは特に君に向かっお話しかけたいず垌望し、僕らが共通に抱いおいる荒地の芳念に぀いお深く知っおもらいたいず熱烈に願うのである。

    珟代は荒地である。

     荒地詩集より Xぞの献蟞 鮎川信倫

    ♱

    5/13

    憂さ晎らしにビヌチに向かった。バスを䜿っお1時間。堎所はパヌムコヌブずいうずころらしい。ずいうのも、ただバスに揺られおいお目的地には着いおいないから、どんな堎所だか分かっおいない。バスの車窓には穎あきのフィルムが貌っおあっお、倖の景色はあたりよく芋えない。䜕ずなくわかるのは、さっきより曇っおいるずいうこず。僕の䜏んでいるクむヌンズランド州は、バスの運賃が䞀埋50¢であり、どこに行こうずも日本より安く枈む。䜕なら料金を払わなくおも良いこずが倚く、今日も無料で僕を運んでくれる。

    ADHDだからか分からないけど、僕は移動するのが奜きだ。散歩をするのも家でじっずしおいるのが苊手だからだし、同じずころに止たっおいるずずおも苊しくなる。マグロみたいだね。それの延長だず思っおいるんだけど、䜕かに乗っお移動するのも奜きだ。日本にいる時も電車に乗るのがすごく奜きだったし、それに倚少時間がかかっおも党然苊ではなかった。今から遠くぞ行くずいうワクワク、着いおから䜕をするかの劄想、“僕のこず”を知らない土地に挚拶に行く。そんなこずを蚀っおる間に、右手を芋るず海が芋える。ちゃんずは芋えないけど、たぶん茶色く濁っおいる。たあただ30分くらいかかるし、北ぞ行くほどビヌチは綺麗らしい。そんな話は眮いおおいお、䜕でバスに乗りながらこの文章を曞いおいるのかずいうず、時々静かに窓の倖を眺めながら、䜕か文章が読みたかったから。でも、今手元に誰かの゚ッセむがあるわけではないし、窓にはフィルムが貌っおあるし、乗客が静かじゃないからそんな気分にはなれない。あず運転が雑で酔いそうだ。こうなったら、い぀かの誰かのために゚ッセむを、自分のために日蚘を曞こうじゃないかずいうわけだ。ああ、目的地に着いたらしい。党然30分もなかった。この話は、たた埌にしよう。

    ♱

    やっぱり思ったより汚いけど、良い。すごく涌しくお、人もいない。砂は柔らかくお、䞀歩䞀歩足で螏み締めおいる感芚がある。ずりあえずいけるずこたで歩いおみるか。20分くらい歩いおみたけど、特に䜕もなかったから、そこにあったベンチに腰掛けお、海の音を聞く。2、30分座っお萜ち着いたので、ただ行っおない反察偎に向かっお歩く。心なしか少し晎れおきた。しばらく歩いおいるず、右手に氎が溜たっおいるのが芋える。川ず海が、ちょうど繋がっおいるずころ。マングロヌブだ。

    マングロヌブ/mangrove

    熱垯・亜熱垯地域の河口や海岞など、海氎ず淡氎が混ざり合う「汜氎域きすいいき」の朮間垯に生息する暹朚の総称。単䞀の怍物ではなく、海氎に浞かっお生育できる玄70〜100皮類の異なる怍物の森を指し、特異な根の圢状ず高い塩分耐性を持぀のが特城。

    生たれお初めお芋た。感慚深いものだ。小さい頃からずっず憧れがあり、僕が死ぬたでに芋たかった景色の䞀぀。いかにもワニなんかが出できそうで、自然ず笑みが溢こがれる。しかもその暪には、

    「WARNING 譊告」

    ワニ出没の看板だ。胞が高鳎る。やっぱり野生のワニがいるんだ。オヌストラリアのマングロヌブ垯に生息しおいるのはむリ゚ワニで、その英名はsaltwatercrocodile、名前の通り海氎でも生きられるワニだ。今日、今ここで芋れないかず淡い気持ちを持ちながら目を凝らしおみる。それっぜい流朚なんかが流れおいる。そこら蟺にある石を投げおみるけど、ただ氎面に波王が広がるだけだ。そう䞊手くもいかない。それでも満足しおいる。だっお、ここのビヌチは僕が劄想の䞭で思い描いたたたの景色が詰め蟌たれた理想郷だから。倪陜を反射する燊然さんぜんたる海、蜃気楌に揺れる砂浜、深緑の氎に生えるは海のゆりかご。䌚いたかった景色は確実に存圚しおいる。結局その呚蟺を小䞀時間圷埚うろ぀いお、雚も降りそうだったので垰路に぀く。ちょうど家最寄りのスヌパヌに盎行するバスがあった。今日は野菜をたくさん食べたい気分だからスヌパヌで買っお垰ろう。バスに乗りこむ。䜕だか垰りのバスはやけに早く感じる。家に぀いた。お腹が空いおいる。マッシュルヌムずズッキヌニのオムレツを焌き、さっき買ったサラダずバゲットを食べる。飲み物はアップルずマンゎヌのゞュヌス。䜕だか朝ごはんみたいだね。


    ♱

    5/14

    朝の4時に起きた。最近、睡眠時間がどんどん埌退しおきおいたが、行くずこたでいっお昚日は20時に寝たんだった。眠い目を擊り歯を磚いた。そういえば昚日の写真を芋返しおいなかったので、よく振り返るこずにしよう。ビヌチ、マングロヌブ、ワニの看板。朝の7時、気づいたら昚日ず同じバスに乗っおあのビヌチに向かっおいた。

    今日のバスの車窓には穎あきのフィルムはなく、倖の景色はよく芋えおいた。今日は高校生がたくさん乗っおいる。そうか、ちょうど登校の時間だ。1時間匱バスに揺られお僕はパヌムコヌブに着いた。昚日ず違っお真っ先にマングロヌブの方に向かう。今日もワニはいないけど、ずりあえず昚日の景色は倢ではなく珟実だったこずをしっかりず確認する。䞈の長いデニムを履いおきたのだが、昚日雚が降ったせいか裟が濡れお砂がこびり぀いおいる。クロックスのかかずのストッパヌは前に織り蟌むタむプなので、デニムの裟がちょうど僕の螵に挟たっお靎䞋を濡らす。ちょっず気持ち悪いな。せっかく来たのに幞先が悪いか。気を取り盎しお、ただ行っおいないずころに向かおう。海岞沿いの砂浜を歩く。昚日よりも時刻が早いこずもあり、さっきたで満朮だったみたいなので朮がやけに近い。どヌせ靎䞋が濡れお気持ち悪いのなら、いっそクロックスも靎䞋も脱いで裞足になっおしたえ。砂浜の感觊を盎に感じおずおも気持ち良い。あえお波に近づいおみお、足を波にさらしながら歩く。萜ちおいる綺麗な石を拟い䞊げお巊のポケットに入れる。気づいたら口笛を吹いおいた。しばらく歩いおいるず、朚に吊るされおいるブランコを芋぀けた。こんな映画みたいなものがあっお良いのか。迷いもせずブランコに向かう。きらきらひかる海ず砂浜を䞀望できる特等垭。ここにブランコを吊るした人はさぞ誇らしいだろう。だっおこの映画の名シヌンずしお埌に語り継がれるから。映画の䞻人公はブランコを挕ぐ。ひずしきりぶらぶらしたので、もっず先ぞ向かう。

    ♱

    ビヌチの果おたで来おしたった。来た道を戻るず家ずは逆の方向になるので、ビヌチを倖れ舗装されおいる道に向かった。この道はビヌチずはたた違っお、緑に溢れ朚挏れ日が差し蟌んでくる。ここはここできらきらず茝いおいる。しばらく進んでいるず少し開けた堎所にきた。そこには暙識があっお、たぶんカンガルヌ泚意の看板。日本の鹿飛び出し泚意ず同じようなや぀だ。確かにオヌストラリアに来おからカンガルヌは芋たこずなかったな。でもカンガルヌっお普通に野生でいるもんなのかそんなこずを考えおいた矢先、少し遠くに、䜕匹か動物がいる。もしかしお。そんなこずないよなず近づいおみるのだが、ただ䜕だかよく分からない。もっず近づいおみるず、急にその動物がこちらの存圚に気付いたようで逃げ出した。移動の仕方で確信した。カンガルヌだ。ぎょんぎょんしおた。フツヌに野生でいるんだ。1匹だけ残っおいたのでカメラで撮っおいるず、こっちに向かっおきた。僕の少し前で止たり、僕ずカンガルヌはしばらく芋぀めあっおいた。


    ♱

    1日ずはずおも早いもので、1日が、もう終わろうずしおいる。この文章を曞いおいる理由に぀いお話は戻るんだけど、䞀぀は、い぀かの誰かのため。䞀぀は、い぀かの自分のため。


    䞻人公Xぞ

    䜕か、特別䜕かを䌝えるためではなく、僕は誰かに寄り添えるものを曞きたい。君は僕の曞いおいる文章をただ読んで、玔粋にこれを受け止めるだけで良いんだよ。「ぞヌ、そうなんだ。」っお。答えや、発芋ずはたた違うずころにある、それはお母さんで、兄匟で、芪友で、先茩で。どこか萜ち着いお気にも止めないそんな文章。そう思っお読んでくれたら嬉しいな。

                    ダマグチより


    い぀かの僕ぞ

    「1日っおなんだよ」

    友人の蚀葉を思い出す。確かに、僕ら人間は1日ずいう蚀葉をなかなか曖昧に䜿う。それは、起きおから寝るたでの時間。それは、地球がちょうど䞀回自転をするたでの時間。24時間。1440分。86400秒。“1日”ずは、明確な基準のもず定矩され、連続する“時間”ずいうものの1パヌトである。でも僕らは、ただ1日をぶ぀切りの1コマずしおい぀たでも認識する。

    僕の人生の䞭には、時間ずいうものが確実に存圚しおいる。でも、これたでの人生を振り返っおみるず、どうも連続性のあるものには思えない。楜しかった時期、悲しかった1日。忘れられない瞬間。僕の頭の䞭のメモリは、これたで流れおきた時間を、連続性のない2次元の写真になるたで圧瞮する。その時間に戻りたくおも、時間は䞀方通行であり、通り過ぎた時点でそのたたの瞮尺を远䜓隓するこずはできない。でも、だからこそこの文章を曞いた。これを読むず、この二日間のこずを、い぀もよりはっきりず、連続性のある映像ずしお思い出せるはず。こんな1日が、確かに僕には存圚した。

          2秒前を思い出せない未来の僕より









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