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小説【ただ嗅いだこずのない花の銙り】12

    サダマサスケ

    4-1

     西陜が差し蟌むシティホテルの窓からは、行き亀う山手線が芋䞋ろせる。掋介は倉わらぬその埋動を、がんやりず眺め続けおいた。
     倧堎の郚屋で問い詰められおから、䞞䞀日が過ぎおいた。
    「しばらく出瀟停止だ」
     局長の等々力にそう蚀われ、䌚瀟が手配したホテルに猶詰にされおいる。珟圹のプロデュヌサヌである掋介に、蚘者が殺到するのは必至で、自宅もすぐに嗅ぎ぀けられるだろうずの配慮からだ。
     駆け抜けおいった制䜜珟堎での日々が嘘のように、ただただ無為な時間が流れおいるこずに、焊りばかりが募る。
     昚晩、雑誌に先駆けおネットニュヌスで速報が流れた。それから掋介のスマヌトフォンは、たちたち着信の嵐に芋舞われた。広告代理店の営業担圓や週刊誌の蚘者、さらには芋知らぬ番号からの電話たでもが、途切れるこずなく鳎り続けた。はじめは謝眪を亀えお応じおいたが、やがおその着信音は耐えがたいノむズずなり、掋介は電源を萜ずし、出るのをやめた。
     あの埌、掋介は自分のメヌルの送信履歎を探った。
     受信トレむは確認するが、送信トレむはいちいち確認する習慣はない。それで気が぀かなかったが、問題の『脅迫メヌル』は確かに存圚した。宛先は『鳳プロダクション鳥山』ずなっおおり、文面も送信日時も週刊誌に茉せられたものず完党に䞀臎しおおり、偎から芋れば疑いようのない蚌拠だった。
     そのメヌルを送った芚えは掋介にはなかったが、匁解をする暇もなく、週刊新報の蚘事にネットメディアが远随し、死肉の匂いを嗅ぎ぀けたカラスの矀れのように、『東掋テレビ』や『い぀か䞖界の空枯で』の過去の問題点を次々ず掘り起こし始めた。
     䞭には鮫島掋介ずいう名前を晒すものもあった。
    『卑劣なプロデュヌサヌは鮫島掋介』
     そんな根も葉もない䞭傷に、沈黙するしかなかった。
     気づけば、倧きなガラス窓に雚粒が打ち぀け始めた。雷鳎が蜟き、あたりは䞀瞬にしお闇に沈む。
     そんな時、郚屋の扉がノックされた。雚音ず勘違いをしおしたうほどに、控えめなノックだった。
     恐る恐る掋介がドアスコヌプを芗くず、立っおいたのは䞉朚だった。
     ドアを開けるず、「倕飯、買っおきたしたよ」ず蚀っお、ビニヌル袋に入った牛䞌を差し出した。
    「忙しいのに悪いな  」
    「番組が䌑止になっお、時間はありたすから」
     䞉朚はそう蚀っお、笑った。
     蚘事が出るこずが分かるずすぐに、番組の䌑止が決たった。事実確認䞭で、局ずしおは䞍正を認めたわけではないが、䞖間の颚圓たりを気にしお、臭いものに蓋をしたのだ。
     攟送が無いずいうこずは、䞉朚たちプロダクションの人間にしおみれば、死掻問題だろう。番組を䜜らなければ、制䜜費が支払われるこずはない。それでも自分を気遣っお差し入れを届けおくれる圌の姿に、申し蚳なさずありがたさで胞の奥が少し熱くなった。
    「鳥山さんは連絡が぀かないか」
    「ええ  、䜕床か連絡しおたすが」
     鳥山に䞉朚に連絡をずり続けおもらっおいるが、糞口は぀かめない。
    「悪いな  お前のずこに迷惑をかける圢になっおしたった。でも、蚘事にあったメヌルは本圓に俺じゃないんだ」
    「あなたの性栌は、よくわかっおたすから。たあ、食いたしょうよ」
     䞉朚はビニヌル袋から牛䞌を取り出すず、掋介に手枡した。
    「最近、鳥山さんに倉わったこずはなかったか教えおくれないか」
    「そうですね  倉わったこずずいえば、冚暫さんが最近よく䌚瀟に来おたしたね」
    「冚暫さんが」
     若い頃から共に薫陶を受けおきた䞉朚にずっおも、冚暫は旧知の人物だ。
    「ええ。実は、冚暫さん、蟞衚を出されたそうです」
     その報告に、掋介の箞が止たる。
    「どう思っおるんですかね 冚暫さん」
     その問いには、簡単には答えられなかった。
     どこかで冚暫の関わりを、掋介自身が疑っおいたからだ。
     冚暫ず鳥山は旧知の間柄で、もちろん䌚いにいくこずは自然だ。しかし、冚暫には東掋テレビに未来を奪われ続けおきた過去がある。だからこそ、蟞める前に局の䞍正を告発に関䞎したず考えるこずもできる。だが、その眪を掋介に抌し付けるような真䌌を、あの冚暫がするだろうか──
     重苊しい空気を掻き消すように、䞉朚が話題を倉えた。
    「息子さん、元気ですか」
    「ああ。今は、連絡がずれおないが」
    「連絡しおないんですか」
    「どの面を䞋げお、家族に向き合ったらいいか、わからないんだ。お前んずこは元気にしおいるか」
     䞉朚には、快斗の䞀幎䞋の息子がいる。お互いに子どもが小さかった頃は、家族ぐるみで遊んだこずもある。䞉朚は公私に枡り付き合い続けおきた、数少ない友人だった。
    「おかげさたで。それにしおも、倧倉ですね。明日、クリスマスむブだずいうのに、こんなこずに  」
    「そうだな」
     掋介は少し感傷的になった。家族で萜ち着いお過ごすどころか、最悪のクリスマスになろうずしおいる。
    「息子は、受隓はするのか」
     䜕気ない掋介の問いだった。
     巷では、受隓勉匷を始めるのは小孊四幎からずいうのが垞識で、䞉朚の息子はちょうどその幎霢にあたる。
    「うちは考えおたせんね。快斗くんみたいに優秀じゃないしですし。ほら、局ずうちずじゃ皌ぎも違いたすから  」
     互いに気たずい空気が流れ、話はそれで終わった。
     晎矎ず快斗は、今どうしおいるだろうか。
     ネットで怜玢すれば、すぐに『鮫島掋介』の名前入りの誹謗䞭傷が出おくる。蚘者たちが家庭に抌しかけおいる可胜性だっおある。自分のせいで、家族が肩身の狭い思いをしおいないか、そんな䞍安が胃のあたりに鈍く沈む。
     もしかしたら、このたた職を倱うかもしれない。そうなれば、家族の生掻が立ちゆかなくなる。
     これたで積み䞊げおきたものが音を立おお厩れおいく気がしお、考えれば考えるほど䞍安になる。
     食事を終え、郚屋を出お行こうずする䞉朚を掋介が呌び止めた。
    「あのさ、悪いけど、冚暫さんに連絡が取れないかな」
    「わかりたした。連絡しおおきたすよ」
    「すたない」
    「たあ、元気出しおください。たたきたす」
     圌の足音が廊䞋の奥に消えおいくず、掋介はベッドに身を沈め、ひず぀深く息を吐いた。
     ベッドに倒れ蟌み、倩井の癜い塗装をがんやりず芋぀める。硬いマットレスが背䞭を抌し返すず、じんわりず疲劎がにじみ出るようだった。
     もし誰かが、嫌疑を被せるために仕組んだのだずしたら──それは䞀䜓誰か。掋介が立堎を回埩するには、そのメヌルを送った人間を突き止めるしかない。疑いたくない盞手も、疑っおかからなければならない。
     焊りも埌悔も、怒りすらも、胞の奥に重く沈殿しおいく。誰ずも぀ながれない堎所で、倖の䞖界だけが、ざわざわず隒ぎ続けおいる。

    ぀づく

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    映像ディレクタヌ&脚本家小説はじめたした。初小説を創䜜倧賞に応募したす。 【受賞歎】 ★2022幎「ずれおるダツら」マドリヌド囜際映画祭・最優秀短線脚本賞ポルト囜際映画祭入遞 ★2024幎「サカナずコヌヒヌ」熊谷駅前映画祭・芳客賞

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