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そして今はゴールドが似合う



    私の結婚指輪は歪んでいる。

    きれいな丸ではなく、楕円形。

    ドラッグストアの品出しで曲がってしまった。

    プラチナの指輪が、こんなに簡単に歪むなんて思わなかった。

    今は引き出しの一番奥に入っている。

    小さな袋に、夫からもらったアクセサリーと一緒に。

    使わない物として。



    結婚したのは2000年6月4日。

    ミレニアム婚だった。

    当時の私は結婚指輪に少しこだわりがあった。

    ブルーダイヤが入ったプラチナの指輪。

    青は誠実。

    ダイヤモンドは永遠。

    そんな説明を聞いて、その指輪を選んだ。

    当然のように、夫も毎日つけると思っていたら、

    「仕事の邪魔になるから」

    と言った。

    休みの日は?と聞くと

    「つけたり外したりすると失くす」

    と言った。

    結局、数回しかつけなかった。


    指輪が曲がった日を私は覚えている。

    あの日は珍しく結婚指輪をつけて仕事に行った。

    帰宅して、指輪を外そうとした時だった。

    あれ?

    抜けない。

    なんとか外してみたら楕円形になっていた。

    「やばい、曲がった」

    思わず娘に見せた。

    娘も、

    「え、本当に曲がってる」

    と驚いていた。



    指輪が曲がった時、夫に冗談ぽく言ってみた。

    「新しいの買ってよー」

    夫は微妙な顔。

    私はその顔を見て、

    あー、買ってくれないやつだ。

    と思った。



    ある時、本当に修理しようと思った。

    買った店に持って行けばいい。

    私は二十年以上、

    4℃で買ったと思い込んでいた。

    店員さんに見せると、

    「こちらは4℃の商品ではありません」

    と言われた。

    えっ。

    結婚指輪はピンキーアンドダイアンだった。

    二十年以上勘違いしていた。



    調べたら店はもうなかった。

    「私、修理してくれるところを探してみるね」

    そう言ったまま、そのままになった。

    急いで直す理由もなかった。

    指輪はまた引き出しの奥に戻った。



    結婚した頃の物は少しずつ減っていった。

    数年前、私は結婚式の誓約書を捨てた。

    息子に部屋を譲るために荷物整理をしていた時だった。

    押し入れの奥から出てきた誓約書を見て、

    「これも要らないな」

    と他の不用品と一緒に捨てた。



    夫が無職になった今年の初め、久しぶりに指輪を手に取った。

    誓約書は捨てた。

    今の私は、4年後に卒婚するつもりでいる。

    それでも指輪だけは残っている。

    修理もしない。

    歪んだまま。

    傷ついたまま。

    引き出しの一番奥の方に入れたまま。


    結婚した日の刻印は今も残っている。

    ブルーダイヤも残っている。


    私の指の節は太くなった。

    そして今はゴールドが似合う。


    これでいい。