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犬と行き先──サツマは、今日も沼を目指している

    我が家の散歩は大きく2つに分かれる。

    沼に行くか、
    沼に行かないか。

    我が家の近くには、調節池があって、
    その周囲をぐるりと歩けるようになっている。
    1周1.5キロのほどよい距離なので、
    ウォーキングからランニング、犬散歩まで、
    人が集まる、よい散歩道だ。

    そこを、我々は「沼」と呼んでいる。

    朝、沼に行けば、たいていワンコに会える。
    そして、サツマにとってそれ以上に大事なのは、
    おやつをくれる人に会えること。

    6、7時台はこの人、
    8、9時台はこの人、
    あの人は7時前後、あの人は8時前後と、
    時間差で複数いらっしゃるので、
    朝のサツマは、基本的に「沼」一択だ。

    一方、飼い主の心境は、もうちょっと複雑。

    まず、時間のない日は、沼は避けたい。
    サツマが右に匂いを嗅ぎ、左に匂いを嗅ぎ、
    おやつをもらいに走り……なんてしていると、
    なんだかんだで1周回って帰ってくるのに1時間はかかる。

    さらに、食いしん坊のサツマは太りやすい。
    だから、今はダイエットというときには
    朝の沼からはちょっと遠ざかけたい。
    だって、あの子、
    「散歩というより朝ビュッフェでは?」と
    言いたくなるほど、いただいてしまうから。

    というわけで、朝、マンションを出ると、
    静かな綱引きが繰り広げられる。

    沼に行こうと綱(リード)を引っ張るサツマ。
    沼を回避して住宅街に進もうと綱(リード)を引っ張る飼い主。

    最終的には、おやつを見せて、沼行きを回避する。

    ( はじめから、そう言ってくれればいいのに )

    といっても、まだ油断ならない。
    沼に行く道順は、ほかにもあるのだ。
    そのことをサツマはちゃんと知っている。
    たとえ、マンションを出た直後に、
    サツマが折れたとしても、
    あの子はまだあきらめてはいない。
    じゃあ、こっちに曲がって、あの階段を下りよう、と
    沼へと続く別ルートを狙う。

    ときには、住宅街をぐるりと回って、マンション前に戻ってきたときに、
    「やっぱり、これから行きません?」と、
    沼へと続く坂道のほうに重心を寄せながら、
    小首をかしげ、上目遣いで視線を送ってくることも。

    かと思えば、途中までは「絶対、沼!」とズンズン歩いていたのに、
    道路でクンクン臭いを嗅いでいるうちにどうでもよくなったのか、
    ほかに楽しいことが見つかったのか、
    しっぽをご機嫌に躍らせながら、
    全然違う道をスンスン進んでいくこともある。

    そんなサツマを見ていると、
    人生みたいだなーと思う。

    最初から目的地に行けなくても、
    あとから行けることもあるだろうし、
    全然違う道を歩いているうちに、
    そっちのほうが楽しくなることもある。
    たしかに、そういうものよね、と。

    とはいえ、散歩が終わってマンション前に戻ってからの、
    「やっぱり沼へ」は、断固拒否させていただきたい。
    どんなにかわいいお顔をしても、ね。

    ( えー、朝はまだ終わっていないよ? )

     
     
    犬と人生のエッセイ|サツマと歩く観察記録 日々の小さな気づきを、サツマと一緒に。 チワックスのサツマと、飼い主のたじこ(と、たじ夫)の1匹と2人暮らし。「犬のフリ見て我が振り直せ」をモットーに、散歩しながら考えたことを綴っています。 ゆるりと更新中。

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