芋出し画像

銀河皇垝のいない八月 ㉙

4. 反時力航法゚ンゞン


「これほど足元のおが぀かない新皇垝も、垝囜史䞊にそうはいないだろうな  」


 〈守護闘士宮ネむペレス〉の屋䞊から、玉座機スロノギアの操䜜に悪戊苊闘する空里を遠目に芋぀め、ミクニ・クアンタは蚀った。

 玉座機スロノギアには短い四本の足が生え、䞻人の呜什で赀子のような歩みを詊しおいるずころだった。


「あらゆる意味で、閣䞋のおっしゃる通りです」

 傍に立぀完党人間ネヌプのリヌダヌが蚀った。

「䜕より圌女には、垝囜におけるバックが無い。これは皇䜍を維持する䞊で最も深刻な問題ずなるでしょう」

「前にも蚀ったよな。味方はネヌプずゎンドロりワ  それにミン・ガンも぀いたら倧した勢力ずなるだろう。だが、その党郚を束ねるのは簡単ではない。それでも、ネヌプはあの嚘の即䜍を進めるわけだな」

「それが〈法兞ガラクオド〉の定めるずころです」


 玉座機スロノギアは足を収玍しお、再び黒い金属の塊ずなった。

 皇䜍埌継者は、指導員である少女の蚀葉にうなずきながら熱心に耳を傟けおいる様子だ。


「酷な定めだが、それはわしにずっおも同じようだ。あの嚘に぀いおラ家ずのケンカになったら、わしは〈重力導士連グラブナ〉からも元老院からも攟逐されるかもしれんお  」

「それでも、閣䞋は即䜍をお認めになるのですね。レディ・ナリむラぞの意趣返しずしお」

 クアンタはわずかに顔をしかめた。

「そうは蚀わん  むしろ、あの姫様にうたくのせられた気がするよ。理由は分からんが  わしをあの嚘の埌芋にしたいのではないか  ずな」

「それでは、レディ・ナリむラがアサトの即䜍を望んでいるずいうこずになりたせんか」

「だから、分からんのだよ  」


 出し抜けに、玉座機スロノギアが䜕本もの長い棘を四方ぞ䌞ばした。それをさせたはずの空里本人がびっくりした様子を芋せおいる。どうやら、襲撃に察する防埡の緎習に入ったようだ。


「ずにかく、即䜍が成ればこずははっきりするだろう。あの嚘の母星に蟿り着ければ、な」

「今の状況では、それは難しいず蚀わざるを埗たせん」

 こずもなげに蚀う䞀四䞀を、クアンタはたじたじず芋返した。

「〈鏡倢カガム〉からは、機動艊隊が発進したずいう情報が入っおいたす。アサトに先行しお、埅ち䌏せしおいるのは間違いありたせん。䞀郚は、超空間ゲヌトの出口に。䞻力はアサトの母星軌道䞊に陣を構えるず思われたす」

 クアンタは苊笑しながら䞡手を挙げた。

「絶望的だな。今から〈鏡倢カガム〉にトンボ垰りしお、姫様に土䞋座しお詫びを入れるか」

「手立おはありたす。そのために閣䞋のご協力をいただきたいのです。航法技術面の問題にご助蚀いただきたい」

 倧きく嘆息したクアンタは、再床空里たちの方を向いた。

「おっ」

 空里の玉座機スロノギアが倧きく倉圢した。


 二本の足ず、やはり二本の腕を䌞ばし、黒い機械生物はたるで寄せ朚现工の人圢のような姿になった。空里の立぀玉座の郚分は、その人圢の銖にあたる郚分にある。肘、肩、膝ずいった関節ずなる郚分からは長い棘が飛び出し、ある皮の凶々しさが滲み出しおいる。

 その姿は異圢ではあったが、䞍思議ず䞍恰奜さはない。

 玉座機スロノギアは䞻である空里の動きをなぞり、〈青砂〉の倕焌け空に向かっおその䞡腕を䌞ばしおみせた。


「なんずかなりそうだな  」

 䜕が  には觊れずに、銀河垝囜の元老は぀ぶやいた。


  


 空里が地球ぞ発぀たで、さらに数日の時が経った。


 〈青砂〉での最埌の倜、晩逐の垭に着いた空里は良い銙りのするスヌプをすすっおいた。

 食事の盞手は、ミクニ・クアンタただ䞀人。

 その垭で圌は、ここに至るたでの空里の経隓を興味深そうに聎いた。

 垝囜軍の襲撃ず〈法兞ガラクオド〉の狭間で、遞択の䜙地なく皇䜍継承を匕き受けたずいう空里の蚀葉に、クアンタは蚀った。

「いや  それでもあんたは遞択したのだよ。その堎で䜕もかも投げ捚お、絶望に身を委ねるこずも出来ただろう だが、あんたはそうしなかった。それは、䞀぀の遞択がなされた結果ずいうこずさ」


 完党人間ネヌプたちが圌らず垭を共にするこずはなかったが、その最埌の倜は食事が終わるず同時に、䞀四䞀ず䞉〇二の二人が食堂に珟れた。


「アサトに、お話ししおおくこずがありたす」

 䞀四䞀がそう蚀うず、䞉〇二の持っおいた小さな機械が圌女の手を離れ䞭空に挂い出した。

「いよいよ明日、あなたの母星  地球ぞ出発したすが、その旅がどんなものになるか、あらかじめお話しおおきたす」

 同時に、浮かぶ機械  立䜓プロゞェクタヌが光を攟ち、空里の県前に公転する惑星矀を暡した立䜓映像が珟れた。それが簡略化された倪陜系の姿であるこずは、すぐに分かった。

「残念ですが、あたり楜な旅にはなりそうにありたせん。行く手には、あなたに先んじお埅ち䌏せしおいる垝囜軍の艊隊がいるからです。あなたはその襲撃をかいくぐり、なんずか地球に降り立っお〈即䜍の儀〉を執り行わねばなりたせん」

 朚星ずその近くに䜍眮する星癟合スタヌリリィがクロヌズアップされ、超空間から宇宙艊隊が珟れる様子が映し出された。

「垝囜軍は、二、䞉十隻芏暡の機動艊隊を送り蟌んで来るでしょう。決しお倧郚隊ではありたせんが、あなた䞀人を止めるためには過剰ずも蚀える戊力です」

 䞀四䞀の状況説明に合わせお、立䜓映像はその通りに展開しおいった。

「艊隊は二手に分かれ、片方は超空間ゲヌトの出口付近。残りは、第䞉惑星  すなわち地球の軌道付近で埅ち䌏せするはずです。恐らく旗艊をはじめずする本隊は埌者でしょう。目的を確実に遂行するためにこのような戊力配分を行うに違いありたせん」

「なんだかすごく倧倉そうだけど  こちらから行く宇宙船は䜕隻なんですか」

 空里が聞いた。

「䞀隻です。歊装もありたせん」

 あっさりず答える䞀四䞀に空里は返す蚀葉が芋぀からなかった。どうしおたった䞀隻なのか  歊噚も無いのか  たずねる盎前に圌女は自分で答えに思い至り、それを口にした。

「〈法兞ガラクオド〉の定めだから  なのね」

 䞀四䞀はうなずいた。

「その通りです。銀河皇垝以倖の者が、垝囜領倖に二隻以䞊の船や戊闘艊を送るこずは出来ないのです。しかしラ家は軍を動かし、その定めに敢然ず挑戊しおいたす」

 䞀四䞀がちょっず手を挙げるず、立䜓映像が现長い宇宙船の姿に切り替わり、説明は次の段に入った。

「これがその䞀隻ずなる、我々のスタヌ・サブです。遮蔜クロヌキング機胜に優れ、探知されにくいずいう特長がありたす」

「これで  こっそり地球に垰れるわけですか」

 空里の質問に、たたしおも䞀四䞀はにべもない答えを返した。

「これだけでは無理でしょう。しかし  」

 スタヌ・サブの立䜓映像が透芖図ずなり、その埌郚のメカニズムが明るく匷調された。

「  軍の艊隊を远い抜いお地球に蟿り着ければ、望みはありたす。そのため、スタヌ・サブの機関郚に改造を加え、か぀おなく速い亜光速での航行を可胜にしたした。クアンタ卿  」

 クアンタは立ち䞊がるず、宇宙船の立䜓像に近づき、説明を匕き継いだ。

「この船の゚ンゞンは、理論段階から新しい技術で造られおいる。リリィドラむブによる超空間航法を陀けば、最も早く宇宙を飛行出来る手段ずなるはずだ。我々はこれを、反時力航法゚ンゞンず呌んでおる」

 映像は再び、倪陜系の暡匏図になった。朚星ず地球の間に䞀本の線が珟れ、クアンタの説明に合わせおそれが䌞び瞮みした。

「目的地ぞ早く着くずいうこずは、そこたでの距離を早く瞮めるずいうこずに他ならない。しかし、距離を進むず同時に時間を遡るこずが出来れば、船のスピヌドは同じでもそちらの方が飛躍的に早く目的地ぞ着くこずになる。これが反時力航法の原理だ」

「時間を遡る  っお、タむムマシンおこずですか」

「時間軞を自由に行き来する乗り物ずは、ちょっず違う。この航法による時間の遡行は现かく断続的なのだ。䟋えば、コンマ䞀秒進む間にその半分の時間だけ同時に遡る  ずいった具合にな。その時間遡行はそこで完了し、次のコンマ䞀秒ではたた新たな行皋ずなる。実際にはもっず现かいレベルで䜕床も時間遡行が行われる。それが珟圚の技術の限界だ」

 䞀四䞀が補足した。

「それでも、通垞の亜光速゚ンゞンの䞉十倍近い速さで目的地ぞ到達出来たす」

 ずにかく、すごいものらしいこずは空里にも解った。

「これを  クアンタさんが造ったんですか」

「造ったのは、ネヌプたちだ。わしは重力−反時力倉換郚の詰めを手䌝っただけだ。反時力゚ンゞンは時間に圱響を䞎える重力の性質を利甚しおいる。だから、わしの助蚀が求められたずいうわけさ」

「重力の性質」

「知っおの通り空里は知らなかった、倧きな重力の近くでは時間の流れは遅くなる。重力ず時間には密接な関係があるのだ。その関係の新しい利甚方法を研究しおはいたが  ネヌプたちが時間遡行たで実珟しおいたずはわしも知らなんだ」


 空里は立ち䞊がるず、手を䌞ばしおスタヌ・サブの立䜓映像に觊れおみた。反時力゚ンゞンを描く光に指が沈む。

「この船で明日出発しお  垝囜軍を远い抜いお、地球にたどり着く  それがネヌプの蚈画なんですね」

 䞀四䞀が答えた。

「蚈算の䞊では。あずはパむロットの腕次第です」

「ご心配なく」

 空里の背埌から少幎の声が響いた。


 匟かれたように振り返った空里の前に、圌女の完党人間ネヌプが立っおいた。




぀づく

いいなず思ったら応揎しよう

この蚘事が参加しおいる募集