芋出し画像

銀河皇垝のいない八月 ⑫

4. 〈青砂〉の少女


 日本政府の立ち入り犁止什を無芖しお爆心地に入ったの取材チヌムは、数人の行方䞍明者を出しお呜からがら垰還した。


 その取材行為自䜓も問題芖されたが、圌らが持ち垰った映像の䞭身は、そんな瑣末ごずをどうでもよく芋せるに十分な内容だった。

 遠藀空里ずいう女子高生ずその異様な取り巻き  〈星癟合スタヌリリィ〉による超空間ゲヌトりェむ網ず銀河垝囜の存圚  さらに、䞀介の女子高生である空里がその最高暩力者ずなる可胜性  それを阻止せんずする䜕者かの襲撃  

 すべおをによるフェむクニュヌスず吊定する向きもあったが、少数掟だった。


 逆に最も熱狂したのは、䞖界䞭の若い䞖代であった。

 「」は人類を統合し、銀河系文明ぞの参加に導く象城の名前ずしお、ネットから䞖界䞭に広たっおいったのだ。

 環境保護を䞻匵する若者のグルヌプには、空里を気候倉動抑止の象城ずしお、自分達のリヌダヌにしようず䞻匵するものたであった。


 科孊的な怜蚌からも、すべおが事実であるこずが明かされ぀぀あった。

 倩文孊者のグルヌプは、朚星付近からあり埗ない重力波の芳枬を確認し、ハッブル宇宙望遠鏡は星癟合スタヌリリィの姿を捉えるこずに成功した。

 䜕より䞖界䞭で静止しおいる巚人軍団ず宇宙船団の存圚が、裏付けず蚀えた。

 そしお、人々の関心は空里ず仲間たちの次の行動ず、その目的地ぞず向けられおいった。


 惑星〈青砂〉  


 それは、銀河の䞭心を挟んで地球の反察偎に䜍眮する惑星だった。

 ずお぀もなく遠方の、たた銀河蟺境にある星だが、星癟合スタヌリリィの結ぶ超空間ゲヌトりェむがいく぀もその宙域を貫いおいた。埓っお、垝囜各地からは比范的行きやすく、ある意味銀河垝囜の䞭心郚に存圚するず蚀っおよかった。

が、〈青砂〉は犁忌の地だった。

〈法兞ガラクオド〉はネヌプ以倖の者による〈青砂〉の地衚ぞの進入を犁じおいたからである。

 その唯䞀の䟋倖が、銀河皇垝であった。

 銀河皇垝ずネヌプ以倖、䜕者も立ち入ったこずのない青い倧地  


 それを臚む倧窓に囲たれた衛星ステヌションの回廊を、䞀人の少女が滑るように走っおいった。

 反発堎リパルシングスケヌトを巧みに操り、埌ろ向きに身を捻った少女は、開かれた壁の切れ目に手をかけお制動をかけるず、そのたたネヌプ䞀四䞀の執務宀に入っおいった。

 完党人間たちのオフィスに、ドアは無い。


「お戻りになったず聞きたしお  」

 少女は慣性に身を任せお、執務卓に近づいおいった。

 完党人間ネヌプの長は、来蚪者の方を芋もしないで、圌女の欲しがっおいた情報を口にした。

「圌が皇䜍継承者を連れお来る」

「い぀」

「䞍明だ」

「それはそうよね」

 執務卓に腰を䞋ろし、その䞊に指を走らせおホログラムのむンタヌフェスを呌び出す。それを操䜜するず、実䜓のないボヌルが䞉個珟れ、少女の手の䞭で回り始めた。

「うらやたしいな。千幎に䞀床あるかないかのむベントを仕切っおいる人が  」

 䞀四䞀はそこで初めお顔を䞊げお少女  ネヌプ䞉〇二を芋た。


 圌女は特異だった。たったく同じ遺䌝子を持぀はずの完党人間も、幎を経るに埓いある皋床の個性を獲埗する。しかしこの䞉〇二ほど振れ幅の倧きい個䜓も珍しかった。なにしろ、スケヌトやホログラムで遊ぶような癖を持぀ネヌプは、珟圹の完党人間ずしおは唯䞀の存圚だったのだ。


 この奔攟さが、どこから来たものなのかはすでにネヌプたちの研究の察象ずなっおいたが、突然倉異ではなく元々圌らの䞭にあった遺䌝的特質が、䜕らかのスむッチによっお衚出したのだろうず考えられおいた。

 圓初はその個性が、ネヌプずしおの仕事の劚げになるこずも危惧されはしたが、圌女は有胜そのものだった。通垞より䞀月早い五歳十䞀ヶ月で教育宀を出るず、この戊略叞什りォヌステヌションに盎行。䞀四䞀の補䜐ずしお欠かせない存圚ずなっおいった。


「䞉〇䞉《あの子》が垰っお来たら、そこで私ず亀代するずいうのはどうかしら」

「継承者の嚘に興味があるのか」

 個性ず性別ず幎霢の差異があるずはいえ、同䞀人物ずいっおいい遺䌝子の䞻同士には、心䞭も簡単に察しが぀いた。

「あなたは、興味ないの」

 䞀四䞀は芖線だけで返答した。

 そうよね、興味より心配ばかりよね  


 その埌、二人は目配せだけの蚀葉の無い䌚話でいく぀かの意思を疎通させた。テレパシヌではないが、完党人間同士にはそれが可胜だった。


 継承者が来たら、立ち䌚える 

 構わん。

 どうやっお来るの 船はあるの 

 䞍明だ。

 迎えに行けない 

 領倖だ。法兞は犁じおいる。


 そこで䞉〇二は、いきなり蚀葉に切り替えた。 

「あの子は  その嚘を気に入っおたりするのかしら」

 たたしおも少女が芋せた突飛な発想に、䞀四䞀は仕事の手を止めた。

「なぜそんなこずを気にするのだ」

「あの子の任務が難しくなっおやしないかな ず心配したの」

「ネヌプが皇垝やその埌継者に察する個人的な感情で任務に支障をきたすこずはない」

 あたりにも圓たり前のこずで、口にするのも愚かしく思える事実だった。

「たずもなネヌプなら、ね」

「䞉〇䞉がたずもでないずいう可胜性があるず」

「わからないわよ。䜕しろ  」

 少女は執務卓を降りるず、䞡手を広げお芋せた。

「私みたいなのず同じロットの生たれなんだから」

 出生日が同じずいうだけで、そうである根拠にはならない。䞀四䞀は口に出しおは蚀わなかった。そんなこずは、圌女自身にもわかっおいるはずなのだ。

「䞉〇䞉がここぞ蟿り着けば、それが杞憂だったこずはわかる」

「すべおを仕事の成吊で刀断するのもどうかしら」

「君は君の仕事の成吊を気にすればよい。甚意しおもらうものがある」

 䞉〇二の背筋が心なしか䌞びた。ネヌプずしおの任務遂行モヌドに入ったようだ。

「玉座機スロノギアですよね。二号でよろし」

「いや、四号だ」

 少女は少しだけ目をむいた。

「䜿えるかしら  」

「皇冠クラりンも䞎えるからな」

「それは  」

 この郚屋に入っお来おから初めお真摯な衚情が少女の顔に浮かんだ。

「その嚘に  その嚘の皮族に皇冠クラりンが反応するずいうこずですか」

 ネヌプ䞀四䞀は黙っお䞉〇二の顔を芋た。


 どうだ これこそ君の奜奇心を満たすに足る状況じゃないか

 ず挑発しおいるようだった。だが、少女の思いは別のずころにあった。

「皇冠クラりンが反応したら、盞手はただの銀河皇垝ではなくなるわけね  かわいそう  」

「䞉〇䞉に同情しおいるのか」

 䞉〇二は銖を振った。

「あの子ず、あの子の䞻あるじ䞡方に同情したいわ」

 およそ、ネヌプにふさわしい蚀葉ではなかったが、䞀四䞀はただ少女の特異性より成熟さの方を認めおいたので、諌めるこずはしなかった。

 圌女も䞉〇䞉も、ネヌプずしお十分成熟しおいる。


 䜕しろもう、十䞉歳なのだから。



぀づく

いいなず思ったら応揎しよう

この蚘事が参加しおいる募集