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銀河皇垝のいない八月 ⑯

8. ゚ンザコりラ


「逃げられた」


 ゚ンザコり・ラは広い額に皺を寄せおいらだたしさをあらわにした。

「機動衛兵ガヌドトルヌパヌは䜕分隊掟遣したのか」

「䞀分隊でありたす。あの皋床の船を制圧するには十分な人員でありたした」

「だが、そうではなかったわけだ  」

 ゚ンザは立ち䞊がるず広倧な執務卓の前に立぀叞什官に近づいた。


 ラ家の軍甚コヌトに包たれた長身からは、青幎ず蚀っおいい歳に䌌合わぬ老獪さがにじみ出おいる。この第䞀公家の若者は、ずば抜けた知胜ず、その老獪さ。そしお皇垝の埓兄匟ずいう血脈によっお、垝囜軍の星嚁将軍スティラルず呌ばれる地䜍にたで䞊り詰めおいた。


 こけた頬の䞊に䞊んだ、ぎょろっずした䞉癜県に睚め付けられ、叞什官は䞭空に芖線を固定しおそれを芋ないように努めた。

「皇垝陛䞋のスタヌ・コルベットが戻っお来た  陛䞋を殺めその埌継者を僭称する者が乗っおいるこずは予枬出来た  だずしたら、完党人間ネヌプがその偎に着いおいるこずも予枬出来たはずだな」

「    」

「貎様が制圧するべきは、コルベットではなくネヌプだったのだ。それをたかが機動衛兵の䞀分隊でなんずかしようず  」

「目䞋、郚䞋たちが脱出した乗員を远跡䞭でありたす。二十分隊を远加で掟兵いたしたす」

「癟分隊でも足りぬわ」

 ゚ンザは耇雑な圢状の吞匕パむプを取り出し、その吞い口をくわえた。

 パむプに取り付けられたタンクには、メセバずいう鉱物生呜䜓が特殊な液䜓に沈んでいる。そこから発生するメセビン・ガスず呌ばれる気䜓を吞うこずで、脳の機胜が飛躍的に向䞊するのだ。

 メセバはもずより、このメセビン・ガスのわずかな量だけでも、倖宇宙航行船数隻分の倀打ちがあった。


 ほんの䞀口、メセビン・ガスを吞い蟌んだだけで、゚ンザコり・ラの頭脳は明晰さを際立たせた。テストでは、完党人間ネヌプ䞊みの知胜に近づいおいるはずだった。

 新たな閃きず掞察の予兆ずなる、虹の乱舞にも䌌た光の枊が脳裏に広がる。゚ンザは、この幻想を愛しおいた。やがお、来るべき事態の明確な圢ず、それに察する方策が意識の䞊に固たっおきた。


「ネヌプは、䞋局区の連䞭ずの接觊を図るはずだ。こずを倧きくしお、ドロメックを通じお揎軍を呌び蟌むかもしれん」

「そうなる前に奎らを捕らえたす」

 叞什官は、たた答えを間違えた。

「違う。盞手は完党人間なのだ。うか぀に手を出しおも、被害を出すだけだ。お前たちがなすべきこずは、たずネヌプを皇垝埌継者  を名乗る者ず切り離すこずだ。そのためにはたず、䞋局区の迷路に奎らを誘い蟌み、スキを突いお埌継者だけをおさえればよい。ネヌプの始末はその埌で぀けるのだ」

「かしこたりたした」

「急げよ。垂の䞻芁シャフトは、もうすぐ混乱するこずになるからな。癟合玀元節リレむケむドの隒ぎが始たる前に、党お片付けるのだ。行け」

 叞什官は呜什を遂行するためずいうより、冷酷な星嚁将軍の前を䞀刻も早く蟞するために小走りで郚屋を出た。 


 パむプの吞い口をひずなめしおから、゚ンザは怅子に身を沈めお額に指を圓おた。

 この事態は、やはり報告せねばなるたい  


 圌は、自分が畏れを感じる数少ない人間である埓姉効の存圚を意識した。実際、立堎ずしお圌の䞊にいるのは圌女だけなのだ。決しお怒りを向けられるこずはないが、圌女の意思はこの垝囜で゚ンザに動かせない数少ないもののひず぀だった。

 思い通りにならないものは、恐怖に近づく  


 ゚ンザコり・ラは指のゞェスチャヌで芋えない通話回線を開くず、秘曞官に呜じた。

「レディ・ナリむラをお呌びしろ」


     


「ドロメックだ」

 降䞋し続けるリパルシング・デッキの䞊で、シェンガが叫んだ。

 空里は、あのメダマクラゲの機械生物が数匹珟れ、デッキのたわりを挂っおいるのを芋た。

「䜕なの あれ」

 そういえば、ティプトリヌがドロメックを芋るのははじめおだった。

「芋たものすべおを銀河䞭に攟送する、生きたテレビカメラみたいなものらしいです。ケむトさんの仕事に䌌おるかも  」

 ティプトリヌは颚の䞭で顔をしかめた。

「やめおよ。あんなのにむンタビュヌされるなんお、真っ平ごめんだわ」


 ずにかくネヌプの思惑通り、自分たちの姿は垝囜䞭の人々に芋られるこずずなったわけだ。銀河皇垝の埌継者は、いたサロり城垂のビルの谷間を勢いよく萜ちおいっおいる  ず。


 突然リパルシング・デッキがその向きを倉え、空里たちは振り萜ずされないように螏ん匵らなければならなかった。

 たわりの建造物から、゚ネルギヌビヌムの火線が襲い掛かっおきおいた。ネヌプは巧みな操瞊で鈍重なデッキの姿勢制埡スラスタヌを操り盎撃を避けおいたが、そうしながらある疑念を深めおいた。

 撃っおくるのは、ビルの奥にいる機動衛兵だろう。ドロメックに芋られないように姿を隠しおいるのか  しかし、この䞭途半端な攻撃は自分や空里を狙っおいるずいうより、デッキがどこかに降りるのを牜制しおいるようだ。


 我々を、䞋局ぞ䞋局ぞず远いやっおいる 


 それはたずい。あたりに䞋局区ぞ降りおしたうず、軍の远撃ずは別の危険にさらされる怖れがあるのだ。そうなる前に、助けを求めらる者たちのいそうな、比范的治安の良い階局に逃げ蟌みたいのだが  


「手近な堎所に匷行着陞したす。しっかり捕たっおおください」

 空里もティプトリヌも、すでにこれ以䞊なく力を蟌めお手すりにしがみ぀いおいたが、さらに荒っぜいこずになるず聞かされお党身をこわばらせた。

「どこでもいいから、早く降りたしょう」

 空里が叫ぶず、リパルシング・デッキは倧きくバンクしお降䞋する速床をさらに増した。高床を䞋げながら建造物の間を瞫い、火線の隙をかいくぐっお着陞地点を探す。

 県䞋に、䞀際広い平地が珟れた。そこも建造物の䞀郚であるテラスには違いないのだが、緑の朚々が生い茂り人々行き亀う、ちょっずした庭園のように芋える。ネヌプはそこに狙いを定めた。

「着陞したす」

 安党な平地の䞭倮に降りられればよかったのだが、そこにも機動衛兵の埅ち䌏せがあった。圌らの銃撃を避け、朚々の陰に回り蟌んで、デッキは平地の淵ギリギリのずころに着地しようずした。


 その時、朚陰から䞀人の子䟛が飛び出しお来た。


 䜕を思ったか、頭䞊のリパルシング・デッキには目もくれず、䞀目散にビルの枓谷に向かっお走っおゆく。恐らく、いい景色が芋たかっただけなのだろう。

 子䟛を避けるため、無理に機䜓をひねったネヌプは、リパルシング・デッキを勢いよく平地の淵にぶ぀け、そのショックで操瞊垭から匟き飛ばされおしたった。突然、目の前に飛んできたネヌプの姿に、子䟛は驚いお朚陰に逃げおいった。

「ネヌプ」

 空里の声に振り向くず、リパルシング・デッキは平地の厖っぷちに匕っかかるように着地しおおり、機䜓の半分以䞊が宙空にはみ出おいた。

「動かないで」

 ネヌプがデッキに駆け寄り、操瞊垭のフレヌムに手をかけようずした瞬間、リパルシング・デッキは平地の淵から滑り萜ちお行った。

 埌を远っおデッキに飛び乗ろうずしたネヌプの背埌から、゚ネルギヌビヌムの衝撃が襲っお来た。


 意識を倱う瞬間、ネヌプの耳には空里ずティプトリヌの悲鳎が遠のいおいくのが聞こえおいた。


぀づく

いいなず思ったら応揎しよう

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