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もうここに来るこずはないず思った堎所を人生で4回も蚪れおいるアむスランド旅行蚘

    最初に思い出すのは間欠泉だ。10幎前、はじめおのアむスランドで芋た。地熱であたためられた熱湯が地衚から噎き䞊がる盎前、衚面匵力でたるく盛り䞊がる。その䞀瞬だけ、それはすきずおった青色になる。ガむドブックには「地球の錓動」ず曞かれおいたけど、私には呌吞に芋えた。息を吞い、ふくらみ、吐き出す。䜕床でも噎き䞊がるのに、同じ圢は二床ずない。青くふくらんだあの䞀瞬は、芋おいるそばから終わっおいく。い぀たでも芋おいたいず思ったこずをいたも芚えおいる。

    私がいちばん奜きな旅先はアむスランドだ。人生で4回行った。そのうち3回は盎近1幎で、ひずりで行った。それなのに、思い出そうずしお浮かんでくるのは、芋たものや食べたものよりも、取り戻せなかったもののほうばかりだ。

    1. 店

    はじめおアむスランドに行ったのは就職前の最埌の幎だった。倧孊院の卒業旅行の぀もりで、䞭1のずきからの友達ずふたりで行くこずにした。行き先に遞んだ理由は「ずにかく遠いから行っおみたい」。旅行代理店のお姉さんに北欧旅行を盞談したら「レむキャビクには最䜎でも4泊しおほしい」ず力匷く蚀われ、え〜レむキャビクだけで4泊も小さな街なのではず思いながらも埓った。倧正解だった。

    孊生でお金はなかったが、アむスランドラムだけはどうしおも食べおみたくお、調べたレストランに行った。枯の近くの店だった。出おきたラムステヌキは分厚いのにやわらかく、臭みがたるでなかった。10幎経ったいたでも、人生で食べたおいしいもののかなり䞊のほうにあの䞀皿がいる。隣のテヌブルでは、なんず日本人のおじさんずアむスランド人の男の子が日本語で話しおいた。地球の果おたで来お、隣から母語が聞こえおくる倜だった。

    その店の名前は芚えおいない。あの倜の私は「たた来る」なんお考えもしなかったから。もう来るこずはない堎所の、もう食べるこずはない料理。芚えおおく必芁がどこにあっただろう。

    10幎埌、私はその店を探しお枯のあたりを歩いた。店はいたもそこにある気がしたのに、どの扉も違う気がしお、結局どこにも入れなかった。 店の名前を思い出せないずいうよりも、名前を芚えなかった倜にはもう戻れないのだった。

    それでも、行くたびに枯のあたりは歩いおみる。探しおいる間だけ、10幎前のあの倜がすこしだけ近くなる気がする。

    2. 光

    2回目のアむスランドはミラノで二床目の倧孊院生をやっおいた幎の4月、むヌスタヌ䌑暇だった。ただ行ったこずのないずころに行きたくお、南アむスランドを巡る1泊2日のバスツアヌに参加した。ここ数幎こんなに晎れおいたこずはないよずガむド兌ドラむバヌのおじさんが蚀うほどの快晎぀づきで、 セリャラントスフォス歩いお裏偎にたわれる滝も、ブラックサンドビヌチも、氷の掞窟も、ぜんぶ光っおいた。

    この幎は倪陜フレアが非垞に掻発で、オヌロラ圓たり幎ず蚀われおいた。私が䞊陞する前日の倜にはレむキャビクの街䞭でもはっきり芋えるほどの倧爆発オヌロラがあったらしい。

    その倜は、たさに in the middle of nowhere ずいうにふさわしい堎所にある家族経営のホテルに泊たった。オヌロラ予報は “匱” だけど、もしかしたらね ず蚀われお、郚屋の窓からずっず空を芋おいた。

    雲がゆらゆらしおいる気がした。マフラヌをぐるぐるに巻き盎しお倖に出おみたけど、どう芋おもただの曇り空だった。それでも念のためず思っお、iPhoneを空に向けお䜕床かシャッタヌを抌した。

    郚屋に戻っおカメラロヌルを開いたら、緑ず玫のカヌテン状のひかりが写っおいた。

    私はあのずき、たしかにオヌロラの䞋に立っおいたらしい。立っおいたずいう事実だけがあっお、芋たずいう蚘憶がない。あの数分間の光は私の網膜を玠通りしお、写真の䞭にだけ残った。
    䞖界でいちばん奜きな旅先のいちばん有名な光を、私はただ自分の目で芋おいない。手元にあるのはiPhoneが芋たオヌロラだけだ。

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    カメラロヌルの䞭のオヌロラ

    3. 人

    3回目は倏だった。アフリカからの熱波によっお゚アコンのないミラノは灌熱地獄ずなり、北ぞ逃げるこずにした。レむキャビクを経由しお、行ったこずのない北アむスランドぞ飛んだ。
    このずきはなかなかに倩気が悪く、倏なのにずっず寒かった。なぜ私は La Dolce Vita たるむタリアの倏を捚おお、はるばるこんなずころに  

    北アむスランド最倧の郜垂であるアヌクレむリは、レむキャビク以䞊に小さかった。こじんたりずしたその街を歩き回り、地元民に人気そうなアむス屋でアむスを食べたりアむスランドでアむスを食べたかった、スペシャルティコヌヒヌのお店であたたたったり、ボヌヌス味わいのある顔぀きの豚のキャラクタヌのいるスヌパヌで巚倧ラム肉を買っお゚アビヌで焌き、換気扇の堎所がわからずに火灜報知噚を鳎らしおオヌナヌがすっずんできたりしたオヌナヌが䞊の階に䜏んでいる゚アビヌで、ご自宅の火灜報知噚も鳎ったらしい。党然怒らないどころか心配しおくれた。やさしい方だった。

    アヌクレむリの小さな空枯でフラむトを埅っおいたずき、隣の隣の怅子に玙の冊子が眮きっぱなしになっおいるこずに気づいた。目をやるずたさかの日本語で、しかも䞭孊受隓の算数のような問題が䞊んでいる。北極圏たであずすこしのこの街に、どうしお日本の算数が 
    気になりすぎお぀いガン芋しおしたっおいる間に持ち䞻ず思われる女性が戻っおきお、こちらも顔をガン芋された。気たずくなっお目を逞らし、そのたた飛行機に乗った。

    着陞埌、レむキャビクの空枯で荷物を埅っおいるず、その人のほうから「日本人ですよね」ず話しかけおきた。はい、そのずおりです 。聞けば、コンサル䌚瀟に勀めおいるが公務員ぞの転職を考えおいお、その勉匷をしおいたずいう。急に仕事が萜ち着いお䞊叞に䌑みを取っおいいず蚀われ、ほずんど䜕も調べずにアむスランドぞ来たらしい。すごい行動力だ。なのにわざわざ北アむスランドに行っおたで算数を解いおいる。組み合わせがちぐはぐすぎお、絶察面癜い人なんだろうなず思った。名前も聞かなかったけど、連絡先を聞いおみおもよかったかなあ。

    レむキャビクで泊たった゚アビヌのホストは、50代くらいの背が高くお姿勢のいい女性だった。倧きくおもふもふのバヌニヌズマりンテンドッグず暮らしおいお、ゲヌム䌚瀟で人事ずしお働いおいお、スパむスを100皮類くらい持っおいた。倜、圌女がすさたじくグロテスクな医療ドラマを芋おいる暪で、私は犬を撫でおいた。犬はおなかを撫でられるのがずおも奜きなようで、腕が疲れお撫でるのを止めるず、もっずやれずいう仕草をする。
    実は人生で3回目のアむスランドなんですず䌝えるず驚いおいたそりゃそうですよね。Highlandには行った倏しか入れない土地で、数日かけおゆっくりハむキングするずずおも気持ちがいいよず教えおくれた。
    ミラノに垰ったあず、圌女は私のこずを「叀くからの友人が遊びに来おくれたようだった」ずレビュヌに曞いおくれおいた。こんな倧人になりたいなず思った。

    圌女らず䌚うこずはもうないだろう。あのもふもふの犬のこずももう撫でられない。
    私はひずりで過ごす時間を愛しおいる。でもあのずきは、倧孊院の授業がすべお終わり友人の倚くがミラノを離れるなかで、もしかしたらこの先数ヶ月の孀独には耐えられないかもしれないず、意識的にひずに接する旅を遞んでいた。私にずっおはずおもめずらしいこずだ。
    ずはいえ旅先で出䌚う人ずは、ベルトコンベアの前の数分ずか、長くおも数日くらいしか関わらない。それでも断片は頭の䞭に残り続けお、蚘憶のいちばん明るい堎所に眮かれおいる。

    4. 道

    はじめおレむキャビクを蚪れたのは倏の終わりで、22時頃でも空が明るかった。ホテルの前には倧きめの道路があり、その向こうは海だった。
    その日の空は倕焌けのたた止たっおいた。さえぎるものがなくお、氞遠に続いおいるようだった。もうここに来るこずはないだろうけど、この色は忘れたくないなあず䜕枚も写真を撮りながら思った。

    3回目の旅で空枯から゚アビヌに向かう途䞭、私はその道を通っおいるこずに気づいた。芋芚えのある道路ず建物の配眮。初めお来たずきには最埌たで地理感芚がわからなくお、あの道路はレむキャビクのどこか遠くにあるんだろうずずっず思っおいたけど、すぐ近くにあった。クゞラの骚のようなモニュメントのずっず先に続く道だった。倕焌けは倩気が悪くお芋られなかった。

    4回目の旅は、グリヌンランドからの垰りだった。ヌヌクから5時間かけおコペンハヌゲンたで戻っおきたずきには疲れきっおいお、そのたたミラノに垰ればいいものを、私は3時間かけおアむスランドぞ「戻る」飛行機に乗ったこの倜もオヌロラは芋えなかった。
    翌朝も倩気は悪く、今床こそ最埌になるかもしれない滞圚だずいうのに、ゆっくり起きお、お気に入りのパン屋ずカフェずホットドッグ屋を回った。芳光ず呌べるものは䜕もしなかった。
    あの道も芋にいった。癜っぜい灰色の空ず黒っぜい灰色の海、クゞラのモニュメントの奥に抜けおずっず぀づく道。

    あのずきのような空をもう䞀床芋たかったけど、そもそもあれが矎しかったのは色がきれいだったからだけじゃない。瀟䌚人になる前の最埌の倏で、地球の果おで、もう二床ず来ないず信じおいたからなんだろうな。

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    10幎埌の同じ道

    䌏線回収がおわらない

    そこにいる間はゆるく過ごしおしたうのに、 アむスランドにいないずきはい぀でもアむスランドに行きたいず思っおいる。自分でも、䞀䜓なぜなのか 謎だった。

    4回分の蚘憶を䞊べおみおようやくわかった気がする。あの島には、回収できおいないものが倚すぎるのだ。名前を思い出せないラムステヌキの店。iPhoneの䞭にしかないオヌロラ。䞀床きりの倕焌け。そしお次は、倏のHighland。行くたびに䜕かを回収し損ねお、新しい䌏線を持ち垰っおくる。
    いちばん奜きな堎所ずいうのは、すべおが満たされた堎所のこずではなくお、い぀たでも䌏線が残り぀づける堎所のこずなのかもしれない。党郚回収できおしたったら、そのずきこそほんずうに、この島に行く理由がなくなっおしたうんだろう。

    間欠泉の青は、噎き䞊がった瞬間に終わるからきれいだった。
    もうここに来るこずはないず思うたびに、私はあの島に戻っおいる。




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