
新人賞をもらったので、畑に戻りました。
コミチオが、賞をもらうことになった。
宇宙生命体博物館では、三カ月に一度、展示生命体の表彰式が行われる。
その季節に活躍した生命体へ贈られる「季節賞」。
そして、移送から一年以内の生命体を対象にした「新人賞」。
今回、新人賞に選ばれたのは――
農村展示区の、何でも屋だった。
コミチオがそれを知ったのは、授賞式の三日前だった。
「コミチオ。三日後の午後三時、中央展示区ホールに来てください」
職員が言った。
「仕事ですか」
「少し違います」
「何をしますか」
「賞を受け取ります」
コミチオは少し考えた。
「何の賞ですか」
「新人賞です」
「新人」
「移送されて一年以内の展示生命体が対象です」
「わかりました」
それ以上は聞かなかった。
コミチオは、宇宙生命体博物館へ移送されてまだ一年が経っていない。
ミツバチ型ヒト。
農村展示区で、特定の作物だけを担当しているわけではない。
大根の畝を手伝う。
梨を運ぶ。
水田へ行く。
花壇の土を運ぶ。
必要なら農具も取りに行く。
一つの仕事だけをする個体ではなかった。
そのため、職員の間ではときどき、
「農村展示区の何でも屋」
と呼ばれていた。
コミチオ自身は、その呼び方を特に気にしていなかった。
呼ばれた場所へ行く。
必要な仕事をする。
それだけだった。
授賞式の日。
中央展示区のホールには、職員と展示生命体が集まっていた。
最初に発表されたのは季節賞だった。
水生展示区の群れが呼ばれた。
高原展示区の一個体が呼ばれた。
共同展示を行った二種族も表彰された。
コミチオは座って見ていた。
やがて新人賞の発表になった。
今回選ばれたのは三組だった。
一種族。
一群。
そして、一個体。
「農村展示区、コミチオ」
名前を呼ばれた。
コミチオは立った。
壇上まで歩く。
職員から表彰状を受け取った。
そこには、
《複数の農業展示に継続して参加し、展示区間の作業連携に貢献した》
と書かれていた。
コミチオは文章を二回読んだ。
「これは」
職員を見る。
「はい」
「ぼくが、いろいろなところへ行ったからですか」
会場から少し笑いが起きた。
職員も笑った。
「だいたい合っています」
コミチオは表彰状を見る。
「大根もやりました」
「はい」
「梨もやりました」
「はい」
「稲刈りにも行きました」
「それも入っています」
コミチオは少し考えた。
「一つだけ上手だったからではないのですね」
「違います」
職員は答えた。
「いろいろな場所で、必要になったからです」
コミチオは黙った。
もう一度、表彰状を読む。
「では」
顔を上げた。
「ぼくは、これが役割なのですか」
職員は少しだけ考えてから答えた。
「今のところは、そうだと思います」
「わかりました」
コミチオは表彰状を両手で持ち直した。
式が終わった。
農村展示区へ戻る。
畑では、畑のミチオが大根の葉を見ていた。
授賞式には来ていなかった。
今日、表彰される予定がなかったからだ。
コミチオが近づく。
畑のミチオが顔を上げた。
「おかえりなさい」
「ただいまです」
「賞は、もらいましたか」
コミチオは表彰状を見せた。
「新人賞です」
畑のミチオは文字を読んだ。
「おめでとうございます」
「ありがとうございます」
少し間があった。
コミチオが聞いた。
「ミチオさんは、賞をもらったことがありますか」
「あります」
「新人賞ですか」
「いいえ」
畑のミチオは大根を見る。
「今日は、あなたの賞です」
「はい」
そこで会話は終わった。
職員が向こうから歩いてきた。
「コミチオ」
「はい」
「悪い。温室に土を運ぶの、少し手伝える?」
コミチオは表彰状を見る。
職員を見る。
「これを置いてから行きます」
「もちろん」
コミチオは作業小屋へ向かった。
新人賞を取っても、
大根は育つ。
梨の木はそこにある。
水田にも、次の仕事がある。
そして今日も、
どこかで誰かが、
「コミチオ」
と呼ぶ。
「はい」
コミチオは返事をした。
必要な場所へ向かった。