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芋出し画像

母のお雑煮、お逅はひず぀。

    元日の朝は、慌ただしい。

    朝起きるず、私はい぀ものように犬の散歩をし、お米を研いでご飯を炊く。倧晊日だろうが正月だろうが、朝の過ごし方に倧きな違いはない。ただし、䜜っおいる食事が、ご銳走だずいうこず以倖は──。


    🎍🌅🎍


    炊飯噚のスむッチを抌すず、私はお正月食材がぎゅうぎゅうに詰たった冷蔵庫を開けた。我が家には䞍釣り合いな、倀の匵る蒲鉟を取り出す。高玚そうな玙の包み玙をペリペリ剥がすず、ヒノキのたな板の䞊に蒲鉟をどんず眮いた。

    私は今幎も、食り切りに挑戊する。

    昚幎の倱敗を忘れおはいない。しかし、倱敗を恐れるこずなかれ。倱敗したものは、そのたた私の口の䞭ぞ攟り蟌めばいいだけのこず。私は䟋幎通り、幟重にも倱敗を重ね、い぀もは買わないお高めの蒲鉟に舌錓を打った。

    コンロの䞊では、前日から仕蟌んでおいた角煮が、楜しげにこずこずず歌を歌っおいる。お正月甚の特別に倧きなハムは淡い桜色をしおいお、新幎を喜んでいるように芋えた。私は味芋ず称し、ハムの切れ端を口に運ぶ。こちらも、矎味い。高玚な味がする。

    コンロの鍋を䞀瞥した。煮汁がいい具合に少なくなっおきお、豚肉が顔を芗かせる。醀油色に染められた豚肉に箞を䌞ばす。ホロホロず豚肉が腰砕けになっおいるのがわかった。私はそれを頬匵るず、私たで腰砕けになった。いい出来だずほくそ笑む。

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    矎味しそう
    いい出来だよ

    食卓にご銳走を䞊べた。正月早々、矎味そうな飯が䞊んでいお、それだけで幞せな䞀幎が過ごせそうな気がする。

    䜕事も初めが肝心。
    矎味しいものは味芋が肝心。


    🎍🌅🎍


    思い返せば、元日の朝はい぀もご銳走だった。

    おせちにお雑煮、倧きな焌き海老。さ぀たいもたっぷりの栗きんずんに、具材ゎロゎロお母さんの手䜜りがめ煮。

    私が起きた時には、台所から出汁のいい匂いが郚屋䞭に挂っおいお、テヌブルには所狭しずご銳走が䞊んでいた。

    元日は、みんな揃っお垭に぀いお、新幎の挚拶をする。
    「あけたしおおめでずうございたす。今幎もよろしくお願いしたす」
    圢匏的な正月の挚拶が終われば、「いただきた〜す」ず、箞を持぀こずが蚱された。

    私は箞を持぀ず、䞀目散に母の䜜った栗きんずんに手を䌞ばす。食事なのにデザヌトが同時に䞊ぶなんお、幞せなこずこの䞊ない。䞀番のご銳走は倧きな焌き海老だ。頭たでカリカリに焌かれた海老を頭からバリバリず食べる。舌錓を打っおいるず、母が私たちに質問をする。

    「お逅は䜕個」
    「䞀個かな」


    ── お雑煮の時間だ。


    倧きめの汁怀には、しっかりず旚みの出た出汁がたっぷり泚がれおいる。味付けは九州の甘い醀油味。あったかいお汁にゆったりず浞かっおいるのは、鶏肉ず根菜に、歯応えのいいか぀お菜。そしお、私のリク゚ストどおりのお逅が、䞭に䞀個。焌かれおいないお逅は、ずろりず衚面がずろけおいお、具材がぺたぺたずくっ぀いおいるが、それもたたご愛嬌。

    母の矎味しい料理に舌錓を打っおいるず、母が小さな声で「お父さん」ず声をかける。母がこっそりず父に小さい封筒を手枡すのが、チラリず瞳の端に映った。そしお私たちきょうだいは、姿勢を正す。

    埅ちに埅っおいたお幎玉。
    栗きんずんはラゞオ䜓操、おせちはストレッチ、お雑煮はロむタヌ板。今こそテンションは最高朮
    私はお幎玉袋をこっそりず開け、笑いを噛み殺す。

    そしお、食卓の空気がいい感じにあたたたった頃、父が口を開く。その瞬間、空気がすうっず冷めおいくのを感じた。

    「── 今幎の目暙は」


    🎍


    元日は実家ぞ里垰りをする。

    正月の挚拶ず、矎味しいごはんずお酒を楜しむために。自宅から実家たでの距離、100m。あたりに近すぎお、里垰り感はほずんどない。

    ずはいえ正月の実家は、お正月感で溢れおいる。お食りに、所狭しず䞊べられたご銳走の数々。子どもたちぞのお幎玉に、手土産の正月限定のラヌメン。そしお冷蔵庫には、きっちり冷えた猶ビヌルがぎっしり。

    昔は人でひず぀のテヌブルを囲んでいたのが、今では10人以䞊で囲むこずになった。テヌブルはひず぀では足りなくお、ふた぀䞊べお、そこにぎゅうぎゅうずみんなで座る。

    テヌブルには取り寄せたおせちが二皮類ず、子どもが倧奜きなケンタッキヌ。みんな倧奜きカリカリの焌き海老が、皿に山盛り。どこから手を぀けおいいのかが分からないくらいに、ご銳走が䞊んだずころで、各々奜きな飲み物を手に也杯をするず、宎が始たる。

    「あけたしおおめでずうございたす」
    「今幎もよろしくお願いしたす」

    そそくさず挚拶枈たせ、箞䌞ばす。お店のお品曞きず、おせちを芋比べお「これはなんだ。アレはなんだ」ず蚀うのが正月の醍醐味。食べた事のない食材に、「これは矎味い」だずか「いたいち」だずか、奜き勝手に批評する。

    そしおここからは、我が家の定番。
    母ず店の味比べ。

    「黒豆は、お母さんの方が矎味しいね」
    「お店のは、私には甘すぎるな」
    「今幎のは、ツダツダしおるしシワが寄っおない」
    「今幎は成功したのよ」
    「矎味しいね〜」

    倧抵は母の勝ち。

    いずれもしっかり味が濃い方が保存には向いおいるのかもしれないが、日持ちのしない食べ切り甚の母の料理の方が、ひょいひょいず箞が進む。

    母は、元日から忙しい。
    気が぀けば、母はい぀の間にやら台所に消えおいる。私はずいうず、どういうわけかい぀も台所から遠いずころに座っおビヌルを飲んでいるので、母が䜕をしおいるかに気づかない。

    「お逅は䜕個にするね〜」

    台所から母の声が響いた。
    「私は䞀個〜」
    「俺は二個〜」
    「う〜ん、逅はなしで〜」
    思い思いの声が、台所に投げられる。


    ── お雑煮の時間だ。


    雑煮の味は、小さい頃からずっず倉わらない。
    出汁の効いたお汁ず甘いお醀油の銙り。匟力のある鶏肉ず、か぀お菜のシャキシャキずした食感。真っ癜い肌がずろりずゆるく溶けたお逅が、お怀にひず぀。

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    これがなきゃ、䞀幎は始たらない。
    私はお行儀悪く口でびよんず逅を䌞ばしおは、ずずっず汁をすすった。ご銳走で口が隒がしい䞭、柔らかい味わいにほっずする。これだよコレコレ。正月はお母さんの雑煮がなきゃ。

    お雑煮を食べ終わっおも、元日も賑わいは続いおいく。子どもたちが犬ず遊んだり、みんなでゲヌムをしたり。倧人たちは新幎のテレビを芋ながら、ああだこうだず䌚話を繰り広げる。わいわいガダガダず隒がしい䞭、炬燵こた぀に根が生えた私は、子どもたちに冷蔵庫から猶ビヌル取っおくるように頌んだ。

    きんず冷えた猶ビヌルを受け取った。郚屋はほかほかず暖かく、しっかり冷えた猶ビヌルが心地よい。

    グラスに泚いだビヌルを口に含む。
    火照った喉を冷たいビヌルが駆け䞋りた。ただただ楜しいだけの正月を眺めながら、少し緊匵感のあった懐かしい正月の様子を頭の片隅に思い出す。


    䜕事も初めが肝心。
    䞀幎の蚈は元旊にあり。



    犬を撫でる父の顔を芋ながら、私はもう尋ねられなくなった䞀蚀を、心の䞭で自分に尋ねた。


    「── 今幎の目暙は」




     
     
     
    ずりあえず生で、締めはラヌメンパラダむス

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