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【生成AIがつくるガクチカと、その人らしさ】

    先日、JR環状線の車内でこんな中吊り広告を見かけました。


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    「4つの質問に答えるだけで、あなただけのガクチカの下書きを生成」
    ガクチカとは、「学生時代に力を入れたこと」の略です。

    生成AIを使って、自分の経験を整理したり、文章を分かりやすくしたりすること自体は、決して悪いことではありません。

    むしろ、自分の考えを言語化する支援としては非常に有効だと思います。
    ただ、この広告を見て少し気になったことがあります。

    それは、
    「ガクチカを書くこと」が目的になり、
    「自分自身を振り返ること」が手段になってしまわないか


    ということです。

    本来、ガクチカは文章の上手さを競うものではありません。

    学生時代に何を経験し、
    何に悩み、
    何を考え、
    そこから何を学んだのか。
    その過程を通して、自分自身を理解するための作業でもあります。

    ところが生成AIは、とても優秀です。
    限られた情報からでも、それらしい文章を短時間で作ってくれます。

    その結果、
    「考えなくても、それなりの文章ができてしまう」
    という状況が生まれます。

    ここで少し視点を変えてみます。
    もし私が企業の採用担当者だったらどう感じるでしょうか。

    おそらく、
    「これは困ったな」
    と思うはずです。

    なぜなら、エントリーシートの文章が似てくる可能性が高いからです。

    挑戦した。
    学んだ。
    成長した。
    チームワークを大切にした。

    もちろん内容は違います。

    しかし構成や表現は、どうしても似通ってきます。

    結果として、

    応募者は
    タイパを重視しながら短時間で応募書類を作成できるようになり、

    採用担当者は
    「その人らしさ」を読み取ることが以前にも増して難しくなる。

    そんな皮肉な状況が生まれるかもしれません。

    これまで採用担当者は、

    ・どんな経験をしたのか
    ・何を学んだのか
    ・どのように考えたのか

    をエントリーシートから読み取ろうとしてきました。

    もちろん、
    もともと文章だけで人を見極めることには限界があります。

    それでも、

    言葉の選び方
    エピソードの切り取り方
    失敗の捉え方
    などから、

    その人らしさの一端を感じ取ることはできました。

    しかし生成AIが普及すると、
    文章の質は一定水準まで簡単に引き上げられます。

    すると、

    「うまく書けていること」
    と
    「その人らしいこと」

    が一致しなくなります。

    採用担当者は、
    文章の完成度ではなく、
    その背景にある経験や価値観をどう見極めるか。
    これまで以上に問われることになるでしょう。

    一方で学生側にも問いがあります。
    生成AIは、
    それらしい答えを作ることが得意です。
    今のAIなら、
    挑戦したこと
    困難を乗り越えたこと
    チームで協力したこと
    そこから学んだこと
    そうしたストーリーをきれいに整理できます。

    しかし、
    その文章を読んだときに、
    「確かにまとまっているけれど、本当に自分はそう考えていただろうか」
    という違和感を持てるでしょうか。

    あるいは、
    「うまく書けているからこれでいい」
    と思ってしまうでしょうか。

    これからの就職活動では、
    学生は自分自身を言葉にする力が、

    企業はその人らしさを見抜く力が、

    これまで以上に求められるのかもしれません。

    【問い】


    生成AIによって、
    文章は以前より上手に書けるようになりました。

    では、
    私たちは何を見て、
    何を伝えようとしているのでしょうか。

    学生は、
    「自分らしさ」を本当に言葉にできているでしょうか。

    企業は、
    整った文章の向こう側にある
    「その人らしさ」を見ようとしているでしょうか。

    生成AIが一般的な正解をつくれる時代だからこそ、
    学生にも企業にも、
    「何か違う」
    という小さな違和感を見過ごさない力が求められているように感じます。


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