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「市街化区域」に「農用地区域」が存在しない理由と実務上の重要ポイント

    #創作大賞2026
    #ビジネス部門 「35条書面のトリビア」全記事

    都市計画と農業振興地域の交差点:
    〜土地利用調整の基本法「国土利用計画法」から紐解く行政法規の仕組み〜

    不動産実務や行政書士の業務 (特に農地転用や35条書面作成) に関わる中で、「都市計画区域」と「農業振興地域」の関係性に頭を悩ませたことはありませんか?

    例えば、実務でよく遭遇する疑問として「市街化区域の中に農用地区域 (いわゆる青地) は存在するのだろうか?」というものがあります。

    結論から申し上げますと、「市街化区域の中に農用地区域は存在しません」。これは、単にそういう決まりだからというわけではなく、日本の土地利用をコントロールする「上位法」の仕組みが関係しています。

    今回は、各法律がバラバラに運用されて矛盾が生じるのを防いでいる「国土利用計画法」の調整メカニズムを、私の経験をもとに解説した上で、実務で絶対に外せない農地転用手続き (農振除外など) の注意点について、体系的に整理して解説します。

    1.なぜ土地利用の法律は複雑なのか?(個別規制法の限界)

    日本の土地利用は、実は様々な法律によって個別に規制されています。代表的なものを挙げるだけでも、以下のように目的の異なる法律が存在します。

    都市計画法:  計画的な街づくりを進め、都市化をコントロールする法律
    農業振興地域の整備に関する法律(農振法):  優良な農地を確保・保護し、農業の振興を図る法律
    森林法:  森林の保護や林業の発展を図る法律
    自然公園法:  優れた自然の風景地を保護する法律

    これらの法律は、それぞれの省庁や目的ごとに「個別」に運用されています。しかし、これらが全くバラバラに指定・運用されてしまうとどうなるでしょうか?

    ある土地に対して、都市計画法が「ここは市街地を広げて都市化を進める区域だ」と指定する一方で、農振法が「ここは重要な農地だから絶対に守る区域だ」と指定してしまうような、相反する矛盾 (重複) が生じるおそれがあります。これでは現場が混乱してしまいます。

    2.矛盾を防ぐ最高意思決定機関:「国土利用計画法」の仕組み

    こうした個別法の矛盾を防ぎ、日本全国の土地で整合性のとれた利用図るための「基本法 (最高の上位計画) 」として機能しているのが、「国土利用計画法」です。

    国土利用計画法では、都道府県知事が最高方針となる「土地利用基本計画」を策定し、県内の土地を以下の「5つの地域」に明確に区分して総合調整を行っています。

    都市地域:  主に都市計画法の対象となる区域
    農業地域:  主に農振法の対象となる区域
    森林地域:  森林法の対象となる区域
    自然公園地域:  自然公園法の対象となる区域
    自然環境保全地域:  自然環境保全法の対象となる区域

    【重要】重複部分の総合的な土地利用調整

    5つの地域は境界線などで重なることがあります。例えば、「都市地域(市街地を広げたい)」と「農業地域 (優良農地を残したい) 」が重複するケースです。

    このような場合、国土利用計画法の土地利用基本計画において、「重複する地域については、どちらの目的を優先するのか」「どのように調和を図るのか」という総合的な調整があらかじめ行われます。市町村や各担当部署が勝手に決めるのではなく、都道府県レベルで一本化された指針が示されるのです。

    この基本計画は個別法の上位計画であるため、市町村が都市計画区域を広げたり、農業振興地域を指定・除外したりする際には、必ずこの計画に適合させなければなりません。

    3.都市計画区域と農業振興地域の関係(整理表)

    この上位法による調整の結果、実務でよく見る「都市計画区域」と「農業振興地域」の関係は、以下のようにすっきりと整理されます。

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    表を見てわかる通り、「市街化区域」の中に「農用地区域 (青地) 」は存在しません。市街化区域は「優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」であるため、農業を強力に保護する農用地区域とは目的が完全に矛盾します。

    そのため、上位計画の調整によって、市街化区域に指定される段階で農用地区域からは外されることになります。

    4.実務で泣かないための「農振除外」と「農地転用」のステップ

    不動産取引や開発実務において、対象地が「農用地区域 (青地) 」に含まれている農地を転用・売買したい場合は、非常に高いハードルが待ち受けています。

    実務上、最も重要な2段階手続き
    農用地区域内の農地を転用する場合、いきなり農地法第4条や第5条の「農地転用許可申請」を出すことはできません。以下の順番を厳守する必要があります。

    ステップ1: 農振除外(青地から白地への変更)
    その土地を農用地区域から外してもらう手続きです。受付時期が年に数回しかなく、要件が極めて厳しいため、完了までに半年から1年以上かかるケースもザラにあります。

    ステップ2: 農地転用許可申請(4条・5条)
    農振除外が正式に完了して初めて、農地転用の許可申請に進むことができます。

    もし農振除外の手続きを失念、あるいは不許可になった場合、どれだけ素晴らしい建築計画があっても農地転用は100%不可能です。売買契約や融資の特約条項にも直結する部分ですので、細心の注意を払ってください。

    5.宅建実務・行政書士実務への応用 (35条書面の作成に向けて)

    宅地建物取引業法における「重要事項説明 (35条書面) 」を作成する際には、これらの法令に基づく制限を正確に調査し、記載する必要があります。

    「都市計画区域内だから安心」と思い込まず、必ず物件が存在する市町村の農業委員会や担当部署 (農林課など) で、「農業振興地域内か」「農用地区域(青地) に含まれているか」の確認 (いわゆる農振台帳の確認) を行ってください。

    市街化調整区域や非線引き区域の農地を扱う場合は、この確認を怠ると重大な調査ミス (重説違反) に繋がりかねません。

    まとめ

    都市計画区域 (街づくり) と農業振興地域 (農業の保護) という、一見すると相反する目的を持つ区域の境界や重複の調整は、各市町村がその場のノリで決めているわけではありません。

    最高位にある「国土利用計画法」という確固たる枠組みの中で、都道府県レベルでの総合的な土地利用調整として高度に管理されています。

    「市街化区域には農用地区域は存在しない」という基本原則と、調整区域等での「農振除外」という高いハードル。

    この2つのポイントを仕組みから理解しておくことで、実務でのトラブルを未然に防ぎ、顧客に対して説得力のある説明ができるようになるはずです。

    日々の調査業務の参考にしていただければ幸いです。

     
     
    土地行政と民間実務で40年。傘寿の今も現役で重説チェックを行う実務の守り人。宅建士・行政書士・測量士補等の視点で、重説トラブルを防ぎ成約へ導きます。4.3万人閲覧の実績。愛称はsansuke。現場の知恵を次世代へ贈ります。※発信内容は個人の見解です。最新法令を確認ください。

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