
イギリス文学と私
最近出会った久しぶりに背中がゾクゾクするほど面白い小説の話をしようと思います。
『ペンギンにさよならをいう方法』という本です。
ベストセラーなので、ご存じの方も多いと思います。
近年、色々な小説を読んでもなんか楽しいとは思えなくてエッセイばかり読んでました。
何となく気になって丸善で購入したこの本を読み始めてゾクゾクしたので、裏表紙を確認したら作者はイギリスの人。
すごく納得しました。
私は若い時からイギリス文学が大好きです。
結婚前はブロンテ姉妹にはまって、「嵐が丘」や「ジェーン・エア」を何度も何度も読みました。
特に嵐が丘を書いたエミリー・ブロンテには、とても感銘を受けて彼女の生涯を調べまくっていた事もあります。
私は国文学科卒ですが、私の大学には英文学をやれるゼミがなかった事が悔やまれます。
彼女の文学で今有名なものは嵐が丘だけですが、詩の才能はさらにすごくて私は彼女の詩のすごさに驚いた事があります。
それは、彼女が20代前半で書いたと言われるもので、30歳で亡くなっているので確かに20代で書かれたであろうその詩は、その年齢で書いたというには衝撃的なものでした。
同じ20代で読んだ私にとって、理解したというにはまだ少し無理があったと思うくらいで、ただその時は“衝撃を受けた”、というくらいのものだったのかもしれません。その衝撃となった源の詩がこれです。
The Old Stoic (老いたるストア派)
Emily Bronte (1818-1848)
Riches I hold in light esteem
And Love I laugh to scorn
And lust of Fame was but a dream
That vanished with the morn--
私は富や財産をあまり重んじない
恋愛も嘲笑し軽蔑する
そして名声への欲望は夢でしかなかった
朝露と共にたちまち消えてしまうようなものだった
And if I pray, the only prayer
That moves my lips for me
Is--"Leave the heart that now I bear
And give me liberty."
もしも私が今祈るとすれば
口に出る唯一の祈りは
「今のままのこの心をそっとしておいて
ただ、私に自由を下さい」という言葉だ
Yea, as my swift days near their goal
'Tis all that I implore
Through life and death, a chainless soul
with courage to endure!
どうやら、私の束の間の人生も終わりが近いようだ
私が求めるのはただひとつ
足枷のないこの私の魂が、勇気をもって
生に耐え、死に耐えるということだ。
(日本語はあくまで私訳です。)
この詩を読んでわかるように彼女の書いた「嵐が丘」は凄まじいともいうような深みと凄みのある物語です。
本を読み始めた10代の頃に、こんな苦味のある濃いエスプレッソのような本にハマったのは私にとって運が良かったのか悪かったのかよくわかりませんが。
その後、イギリス文学の出会いはハリーポッターでした。
その頃結婚したてで映画館で働いていてハリーポッターの1話目の話題で持ちきりだった頃に、映画館の同僚に本の方が面白いからぜひ読んでと言われて、文字通りはまりました。
イギリス文学には、重厚感があります。
まるで古いお屋敷の重い木の扉のように。
それでいて、現実世界で味わえないような世界へ連れて行かれるのに、出てくる登場人物はとっても生々しく人間味溢れています。
善良な人の中にも醜さが、悪人の中にも善良さが見えたりして、それが醍醐味だったりします。
その後、ジェーンオースティンにもハマり、ひととおり読みました。
そして、今『ペンギンにさよならをいう方法』です。
私は、イギリス文学の中だけではないのですが欧米の文学や映画に出てくる辛辣なおばあさまが好きです。
愛すべき憎まれ者
そんなおばあさまが出てくるとワクワクします。
『ハリーポッター』のマクゴナガル先生
『風とともに去りぬ』のフォンティーヌ家のおばあさま
『赤毛のアン』のダイアナのミセスバリーおばあさま。(正確にはダイアナの大叔母さま)
そして、この『ペンギンにさよならをいう方法』の主人公のヴェロニカです。
イギリス文学は物語も秀逸ですが、なにより人物の色味が濃い。
そして、家系や世間の常識を背景に見せつつも、そこに縛られない魂が描かれていて、そこがまた面白い。
この本には続きもあるそうで、寝不足の日が続きそうと思いつつ、久々にエスプレッソ級の美味しい物語に出会えて嬉しくてたまらない今日この頃です。