緑茶のカフェイン
夜、眠れなかった。
思えば就寝前にちびちびと飲んでいた緑茶のカフェインが原因だと思う。
眠れなかったので、私は布団の中で妄想していた。
ここは地上18階、彼の分譲マンションの一室だ。
ここに火を放って、私は18階から飛び降りるのだ。
ベランダに出て、手すりの上に立つ。ひんやりとした手すりの温度が足裏から伝わってくる。
下を見下ろす。すぅーっと冷えるような感覚が身体を通り抜ける。
地面の植え込みがあんなに小さく見える。
そして飛ぶ。
風を全身に受けて私は空を飛ぶ。季節は4月下旬。心地いい風が全身に吹き付ける。
あっ
そう思ったときには地面があって、私の意識はそこで消える。
18階じゃ短いだろうか。最上階まで行ってから飛んだ方がもっと楽しめるかもしれない。
飛び降りる前に私は何を思うのだろう。飛び降りるか悩んだりするだろうか。
考えるためにもやっぱり手すりの上に立ってみるのがいいと思う。下を見下ろして、死を感じるのだ。
それはダメ。
全然だめだ。きっとそんなとこじゃ落ち着いて考えられないから。
だから飛ぶ前に部屋にノートを残そうと思う。
書きたいことはなんだろう。私はもう十分に生きたから、何もいらない気がする。
違う違う。
私は彼を困らせたいわけじゃない。だから、火を付けるのはなし。代わりに、GOOD LUCK!って残したい。そうしたら、すごく爽やかな気持ちで飛び立てると思うから。それだけあればもう何も悔いはない気がする。
間違いはないよ。
私はどうしようもなく自由になるために飛びたいし、そこに彼を困らせたい意志はない。彼の幸福を願う私の気持ちは本当なんだから。
6畳の一室、私に割り当てられた部屋の物は全部彼に譲る。彼は困るかもしれないけどそんなことは知らない。私は自由になるから。
別に彼は全然困らないかもしれない。私の物をただ売り払ってお金にする。それか私が死んだことを自分のせいかもと思ったりするのだろうか。
そうじゃない、多分それよりも悪態をつくと思う。それくらいは共感できる。でもどちらにしてもそのころ私はもういないの。
迷惑料を払った方がいいかなって思ったけど、面倒だからいいかな。
飛ぶのはきっと夜がいい。昼だと誰かに気づかれるかもしれないから。本当は眺めのいい明るい時間がいい気もするんだけど。
やっぱり最後の時間は一人で過ごしたいから。
明け方。カフェインが薄れてきたのか眠くなってきた。
そうしてまた一日が始まる。