
悟ったら、転生してトレーダーだった件#71話「ツクヨミの手紙」
悟ったら、転生してトレーダーだった件
#71話 「ツクヨミの手紙」
夜。
ツクヨミが
一人でラボに残っていた。
手紙を手に取った。
開いた。
読んだ。
しばらく
動けなかった。
何度か
読み返した。
それから
静かに
折りたたんだ。
窓の外。
満月が
高野山を照らしていた。
「お母さん」
小さく言った。
---
翌朝。
ツクヨミが
珍しく早い時間に来た。
釈迦が
コーヒーを飲んでいた。
アーナンダが
振り返った。
「ツクヨミさん
どうしたんですか」
ツクヨミは
答えなかった。
釈迦の前に
立った。
「兄さん」
「なんだ」
「お父さんからだった」
「そうか」
「一言だけ
書いてあった」
釈迦は
コーヒーを置いた。
「何と書いてあった」
ツクヨミは
少し間を置いた。
「待たせた」
ラボが
静かになった。
チャートだけが
動いていた。
釈迦の手が
震えた。
アーナンダが
弥勒に囁いた。
「釈迦さんの手が」
「うん」
「59話以来だ」
「何の話ですか」
アーナンダは
答えられなかった。
ツクヨミは
釈迦を見ていた。
釈迦は
窓の外を見た。
高野山の杉林。
朝の光。
「父上は」
一言だけ言った。
「まだ
光の側にいる」
ツクヨミの目から
何かが流れた。
それだけだった。
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