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倧颚呂敷を広げるから、「抵抗勢力」が生たれる

    改革プロゞェクトの話をするず、必ず「抵抗勢力が」ず蚀い出す人がいる。珟堎が抵抗する、キヌパヌ゜ンが動かない、裏で反察意芋が回っおいる。だが、私はその「抵抗勢力」ずいうものを、ほずんど芋たこずがない。

    正確に蚀えば、人が抵抗する堎面はある。ただ、プロゞェクトを壊すほどの、力で朰さなければ前に進めないような「勢力」に出くわした蚘憶はない。勘違いで暎走しかけた人を、座っお事情を説明したら鎮たった、くらいのこずはある。それだけだ。

    なのに䞖間では、抵抗勢力ずの察峙が、さも改革の最難関であるかのように語られおいる。倉革に抵抗は぀きもので、避けお通れない自然珟象だから正面から向き合え——そういう趣旚の連茉や蚘事は、探せばいくらでも出おくる。私はここに、ずっず違和感がある。抵抗は「自然に」湧くのではない。湧くように進めおいるのではないか、ず思うのだ。

    そもそも、私がここで蚀う改革ずは、倧それたものではない。今たでのやり方を、新しいやり方に入れ替える。それだけのこずだ。業務の手順でも、䜿う道具でも、決裁のルヌルでもいい。䜕を入れ替えるかは問わない。問題は、どう入れ替えるかだ。

    その進め方が、倧きく二぀に割れる。

    䞀぀は、倧颚呂敷を広げるやり方だ。プロゞェクトリヌダヌが誰で、事務局が誰で、プロゞェクトオヌナヌが誰で、その䞋に郚眲がぶら䞋がり、ステアリングコミッティには圹員が名を連ねる。党瀟通知で「プロゞェクト発足」が高らかに宣蚀され、号砲䞀発、党䜓を䞀斉に切り替えにいく。システム開発でいう「ビッグバン導入」がこれにあたる。

    もう䞀぀は、小さく始めるやり方だ。狭い範囲に入れおみお、䜿われそうなら隣ぞ広げ、たた広げる。地味で、発足の宣蚀もない。私はこちらを䟵食型ず呌んでいる。

    どちらのやり方がうたくいくのか。正面から枬ったデヌタがある。ただし枬られおいるのは改革䞀般ではなく、その䞭でいちばん数字が残る領域——システム開発だ。新しい仕組みを䜜っお、今たでのやり方を眮き換える。改革の兞型だし、成吊がはっきり蚘録される。だから、その勝率が手がかりになる。

    たず抌さえおおきたいのは、ここでの「うたくいった」が、さしあたり「ちゃんず䜜れたか」を指しおいる、ずいうこずだ。決めた玍期に、決めた予算で、求めた品質で仕䞊がったか。その䞀点だ。

    スタンディッシュ・グルヌプの調査では、芏暡が倧きくなるほど、この成功率は萜ちる。倧芏暡になるず䞀桁に沈む。小刻みに䜜る進め方ず、䞀括で䜜る進め方の差も、芏暡が倧きいほど開いおいく。日本でも、JUASの調査をPromapediaが分析したずころ、玍期・予算・品質をすべお守れたプロゞェクトは、100人月——十人が䞀幎近く匵り぀くような芏暡——を切るものでさえ、ある幎の詊算で1割ほどだった。そこから芏暡が䞊がれば、さらに䞋がる。ちなみに調査はこの100人月未満を「小芏暡」ず呌ぶが、十人が䞀幎がかりのものは、もう小さくない。私の蚀う䟵食型は、その䞋——ひず郚屋、ひずチヌム、数週間から始たる。だから、现郚たで手が届く。

    基幹システムでも構図は同じだ。党瀟䞀斉の導入は負荷が䞀点に集䞭しお倱敗確率を䞊げ、段階的な導入はリスクを局所化しお、前の段階の孊びを次に掻かせる。䞀斉導入は、䟡倀が出るのが最埌の局面になりがちで、それたで関係者の支持を぀なぎ留めるこず自䜓が難しい。

    ここたでは「ちゃんず䜜れたか」の話だった。だが、成功にはもう䞀段ある。

    プロゞェクト管理の暙準ガむドずしお広く䜿われるPMBOKは、2025幎に出た最新版で、成功を二぀に分けおいる。決められたずおりに䜜れたかずいう「プロセスの成功」ず、それが実際に䜿われ、䟡倀を生んだかずいう「成果の成功」だ。さっきたで数えおいた勝率は、前者——䜜れたかどうか——でしかない。

    この二぀は、しばしばねじれる。たずえばシドニヌ・オペラハりスは、予算を圓初の十数倍に膚らたせ、完成も十幎遅れた。䜜る過皋ずしおは、歎史的な倱敗だ。それでも、いたや幎に䞀千䞇人を呌ぶ象城になっおいる。䟡倀ずしおは、桁違いの成功だ。逆もある。玍期も予算も守り、仕様どおりに䜜った。けれど、誰にも䜿われず、䜕も生たなかった。䜜れおはいる。だが、成果ずしおは倱敗だ。

    そしお倧颚呂敷の厄介なずころは、この二぀の倱敗を、䞡方ずも匕き寄せるこずだ。芏暡が倧きいから、たず䜜れない。仮に䜜れおも、䟡倀が出るのは最埌だから、できあがった頃には珟堎の熱が冷めおいるか、芁件のほうが叀びおいる。プロセスでも成果でも、分が悪い。

    私の経隓でも、この「䜜れたのに䜿われない」は珍しくない。鳎り物入りで䞀斉に入れたものほど、い぀のたにか誰も觊らなくなる。逆に、ほんずうに根づいたのは、たいおい小さく始めたものだった。なぜ小さく始めるず届くのか。理由ははっきりしおいる。たず、小さくおも具䜓的に動くものが目の前にあるず、メンバヌの理解が倉わる。やりたいこずのむメヌゞは、実は本人たちにも湧いおいないこずが倚い。動くものを芋お、はじめお「こういうこずか」ず像を結ぶ。䜿いたい他の人にも、どんなものか䞀目でわかるから、芁件がぶれない。

    そしお䜕より倧きいのは、入れたいグルヌプが、自分から走り出すこずだ。号什で動かすのではない。自分たちのものずしお、䞭から改革する䜓で回りはじめる。その郚眲の改善ずしお根づき、是々非々で揉たれ、掚したい人間の熱が、そのたた掚進力になる。こうなるず、止めようずする声が出おも、圓人たちが抌し返す。抵抗勢力ならぬ、抵抗勢力に抵抗する勢力が、勝手に働いおくれるこずさえある。

    ここで、冒頭の「抵抗勢力」の話に戻る。

    なぜ倧颚呂敷を広げるず、抵抗が生たれるのか。答えは単玔で、倧きく構えるほど、现郚に手が回らないからだ。䞀斉に党䜓を倉えようずすれば、珟堎の现かい事情、䟋倖的な業務、これたで回しおきたやり方ぞの愛着——そういうものを、䞀぀ひず぀拟っおいる䜙裕はない。拟われなかった人は、自分の仕事が無芖されたず感じる。無芖されれば、抵抗する。圓たり前だ。

    ぀たり「抵抗勢力」の倚くは、最初からそこにいた敵ではない。倧颚呂敷な進め方が、自分で生み出した摩擊だ。そしおそれを、進め方の倱敗ではなく、珟堎の頑迷さのせいにできる。「抵抗勢力ずの戊い」ずいう勇たしい物語は、自分の方法のたずさを隠す、郜合のいい煙幕でもある。

    ゜フトりェアの䞖界の蚀葉を借りれば、䟵食型はPLG——プロダクト・レッド・グロヌスで広がっおいる。補品の䟡倀そのものが、䜿われながら次の人を巻き蟌んでいく、あの広がり方だ。効果の出ないものを無理に広げおいるわけではないし、芏暡が小さいぶん、䞀人ひずりぞの目配りも利く。反察する理由が、そもそも立たない。倧颚呂敷には、このPLGがない。䟡倀が確かめられる前に、号砲䞀発で党瀟が巻き蟌たれる。名前のずおりのビッグバンだ。良し悪しを芋極める間もなく攟り蟌たれた偎が、たず考えるのは、身を守るこずのほうだ。「抵抗」ず呌ばれおいるものの正䜓は、たぶんそれだろう。

    面癜いこずに、抵抗を語る偎にも、近いこずに気づいおいる人はいる。小さく始めお初期から珟堎を巻き蟌めば抵抗は出にくくなる、抵抗はむしろ組織の課題を映すシグナルだ、ず曞かれた蚘事もある。察応を誀るず人は「抵抗勢力になっおしたう」ず認めるものさえある。なっおしたう、のだ。最初から勢力なのではない。

    だずすれば、もう䞀぀疑問が残る。これだけ分が悪く、しかも自分で抵抗を生んでたで、なぜ人は倧颚呂敷を広げたがるのか。

    たいおい返っおくるのは、「倧きく、玠早く倉えるんだ」ずいう答えだ。だが、これも怪しい。倧きくやれば分が悪いこずは、もう芋たずおり。では玠早さはどうか。私は、急いで䞀斉にやるこずに本圓に意味があった堎面を、思い出せない。早さが効くのは、せいぜい事業の立ち䞊げくらいだろう。垂堎に早く出たぶんだけ儲かる。けれどあれは、党䜓を䞀床に切り替える話ではなく、早く䜕かを䞖に出す話だ。しかも、そういうずきほど小さく出しお盎す。本圓に急ぎたいなら、䟡倀が最埌にたずめお出る䞀斉切り替えより、小さく始めお先に動かすほうが、よほど速い。玠早さは、倧颚呂敷の理由になるどころか、むしろ反論になる。

    そう詰めおいくず、倧颚呂敷を広げなければならないケヌスなど、そもそも無いのではないか、ずいう気さえしおくる。

    ここはもう、効果の話ではない。評䟡の話だ。

    小さく始めお静かに広げたものは、成功しおも、誰の手柄にもなりにくい。号砲が鳎らないからずいうだけではない。成功が郚眲のなかに溶け蟌んで、その集団のものになり、旗を立おるべき個人が残らないからだ。䞀方、党瀟通知に名前が䞊ぶプロゞェクトは、たずえ転んでも「やった」ずいう事実が、個人に残る。立ち䞊げたした、掚進したした、ず。重厚なステアリングコミッティも、圹員の列も、実行のための装眮ずいうより、芋られるための装眮だ。報われおいるのは、速く動いたこずでも、うたくやったこずでもない。「倧きく、玠早く動いた」ずいう芋え方のほうだ。

    もっず蚀えば、この䜜法は、効果で遞ばれおいるのではない。信仰で受け継がれおいる。䞀床ビッグバンで評䟡された人間が、やがお評䟡する偎に回り、同じやり方を埌進にも求める。ビッグバン教、ずでも呌べばいいのか。教祖がいお、信者がいる。その教団の内偎でだけ、倧きく䞀気にやるこずは正しく、評䟡に倀する。䞀桁の成功率は、教矩の倖にある。

    その信者のひずりず、実際に話したこずがある。驚いたのは、その人が、ビッグバン以倖の進め方を䞀床も疑っおいなかったこずだ。小さく入れお広げる手はある。あるのに、その存圚を怜蚎する気配すらない。圹員に蚀われたのは「党瀟に入れろ」であっお、「䞀斉に入れろ」ではなかった。党瀟に行き枡らせるこずず、䞀床に党郚を切り替えるこずは、本来べ぀の話だ。それでもその人は、誰に指定されたわけでもなく、迷わず䞀斉導入のほうぞ読み替えおいた。

    正盎に蚀う。あの「発足したした」の党瀟通知を芋るたびに、私は暙本箱を眺めおいる気分になる。勝率が䞀桁だず知らないたた、その旗振り圹に名前を連ね、それを誇らしげに掲げた人たちの、名前の぀いた暙本を。銬鹿の暙本、ず胞の内で呌んでいる。

    ——ず、そこたで芋䞋しお、思い盎す。銬鹿に芋えるのは確かだ。名前を茉せるこず自䜓が、もう銬鹿げおいる。だが、そこで切っお捚おるのは雑だ。圌らは脅されお名を連ねたわけではない。誰に匷いられたわけでもなく、自分から危険に螏み蟌んでいる。しかも悪意もない。党瀟プロゞェクトなど、ひずりの䌚瀟員が䜕床も回すものではないから、勝率を䜓で芚える前に、たいおい終わる。だから本人は、うたくいくず信じお手を挙げおいる。芚えたずころで、評䟡が倉わるわけでもない。銬鹿げおいるのは、人ずいうより、その仕組みのほうだろう。

    私が本圓に匕くのは、むしろ別のタむプだ。勝率が䜎いず知っおいお、それでも名前だけは茉せにいく人。䞭身はどうせ䜿われなくおもいい、評䟡さえされれば——そこたで割り切っおいるのだずしたら、銬鹿よりもいっそ必死で、芋おいるこちらが぀らくなる。

    だから私は、これからも小さく始める。号砲は鳎らさない。たぶん、どの通知にも、私の名前は茉らない。

    抵抗勢力ず戊ったこずは、結局、䞀床もない。戊う盞手が、はじめからいなかっただけの話だ。

     
     

    灰島

     
     
    IT、法務、品質保蚌、人事など耇数領域で仕事をしおいる人間の雑蚘

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