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ラムネ瓶の向こうの青空

    片桐 みかん

    🍊第63回 3つのお題(昭和ノスタルジー)
    🎈お題①:「ラムネ瓶の向こうの青空」
    🐾お題②:「チャルメラが聞こえる夜」
    ⏳お題③:「原っぱの土管」

    お題④イラストから空想した世界を書いて下さい。

    ラムネ瓶の向こうの青空



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    イラスト:ChatGPT

    僕らは、夕暮れになるまで空き地で遊んだ。

    原っぱに置かれた大きな土管は、僕らの秘密基地だった。

    ある日も、僕らはいつものように空き地で遊んでいた。

    「なぁ、知ってるか?」

    「なんや、急にかしこまって」

    「転校生が来るらしいで」

    「そんなん、珍しいことやないやろ」

    「ちゃう、ちゃう。もうな、めちゃくちゃかわいいらしい」

    「ほんまかいな」

    そんなことをわいわい言いながら、僕らは日が暮れるまで遊んだ。

    次の日。

    教室に転校生がやってきた。

    花柄のワンピースを着た、髪の長い女の子。

    その子を見た瞬間、

    僕はノックアウトされた。

    そして、他の男子も数名、ノックアウトされた。

    しかも、その子が僕の隣の席に座った。

    ちらっと横顔を見る。

    ドキドキする。

    また、ちらっと見る。

    目が合いそうになって、慌てて前を向く。

    授業なんて、ほとんど頭に入らなかった。

    放課後。

    僕らは原っぱの土管の中に集まっていた。

    「あの子、めちゃくちゃかわいいな」

    「ああ、もうメロメロや」

    「俺、何も考えられへん」

    いつもなら走り回って遊んでいる僕らが、その日は土管の中で放心状態。

    すると、

    「ねぇ、あたいも仲間にしてくれん?」

    みんな一斉に振り向いた。

    あの子が立っていた。

    学校で着ていた花柄のワンピースじゃない。

    短パンに白いTシャツ。

    でも、顔はかわいいまんま。

    「あ、ああ。もちろんや」

    僕の声は、思いっきり上ずった。

    「喉乾いたな。だれかラムネおごって」

    思っていたのと、なんか違う。

    もっとおしとやかな子だと思っていた。

    でも、そんなぶっきらぼうな話し方も、僕らはすぐに好きになった。

    近所の駄菓子屋へ走って、みんなでラムネを買った。

    あの子がラムネの瓶を空にかざした。

    「ねぇ、知ってる? こうやって見るとね、ラムネ瓶の向こうの青空が素敵やねん」

    僕らも同じように、ラムネ瓶を空へ向けた。

    「なんや、空が歪んでるで」

    みんなで笑った。


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    イラスト:ChatGPT

    それから、あの子も僕らの仲間になった。

    毎日、夕暮れまで一緒に遊んだ。

    しかも、あの子はスポーツ万能だった。

    僕らが飛び越えられない土管の上を、軽々と飛び越えてしまう。

    「おおー!」

    みんなが声を上げる。

    僕はそれどころじゃなかった。

    夕暮れの光の中で、長い髪をなびかせて笑っているあの子を見るだけで、胸がドキドキした。

    声をかけられたら、心臓が止まりそうになった。

    「ばいばい、またね!」

    夕暮れになると、みんなそれぞれの家へ帰っていった。

    その夜。

    僕は窓から夜空を眺めながら、あの子のことを考えていた。

    遠くから、チャルメラの音が聞こえてきた。

    いつもなら、

    「ラーメンや!」

    と飛び出していくのに、その日はチャルメラの音さえ耳に入らない。

    頭の中は、あの子でいっぱいだった。

    その時――

    頭を、バーン!

    「痛っ!」

    「何ぼーっとしてるんや。恋でもしてるんか? チャルメラ食べにいくぞ」

    お父さんだった。

    鋭い。

    お父さんには、わかるんかな。

    チャルメラの音を追いかけながら、僕はお父さんに聞いてみた。

    「なぁ、お父さん」

    「なんや」

    「お父さんも、好きな子おった?」

    「おるに決まってるやろ」

    「その子に告白したん?」

    「……出来んかった」

    「なんで?」

    「そうやなぁ。なんでやろなぁ」

    お父さんは少し笑った。

    「お前、好きな子できたんか?」

    「そ、そんなん、いないです」

    「おかしいで」

    「何がおかしいねん」

    お父さんが笑う。

    僕も笑った。

    夜の町に、チャルメラの音が響いていた。

    お父さんにも、僕と同じくらいの頃があったんや。

    どんな女の子だったんだろう。

    どんな恋だったんだろう。

    僕はラーメンを食べながら、

    いつか、お父さんの昔の恋の話を聞いてみたい。

    そんなことを思った。

    チャルメラが聞こえる夜だった。

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    イラスト:ChatGPT


     
     
     
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