鬼と暮らしたおばあさん
🍊第62回 3つのお題(日本むかし話)
🎈お題①:「鬼と暮らしたおばあさん」
🐾お題②:「大蛇を守る一本桜」
⏳お題③:「夜になると鳴る鐘」
お題④イラストから空想した世界を書いて下さい。
第1話 鬼と暮らしたおばあさん
昔々、ある村に、いつもいじめられている身体の大きな鬼がおったそうじゃ。
身体は大きく、力も強かったが、たいそう気の小さな鬼でな。
村の子どもたちからも、からかわれておった。
ある日のこと、鬼はいつものように、食べ物を恵んでもらおうと村へやってきた。
村人たちは鬼の力が強いのをいいことに、重い荷物を運ばせたり、畑を耕させたりした。
ところが、一日中こき使ったあげく、鬼に渡したのは小さなおにぎり一つだけ。
給金など、もらえなんだ。
鬼は小さなおにぎりを握りしめ、とぼとぼと山へ帰ろうとした。
すると、村はずれの小さな家に住んでいるおばあさんが声をかけた。
「なんじゃ。えらくしょんぼりしておるのう。ちょいと手伝ってほしいことがあるんじゃが、ええかのう」
鬼は立ち止まった。
「なんでも手伝います」
おばあさんは、畑で採れた野菜を家まで運んでほしいと言った。
鬼にとっては朝飯前じゃ。
あっという間に全部の野菜を運び終えた。
「では、おいらはこれで」
鬼が帰ろうとすると、
「ちょっと待ちなされ」
おばあさんが大きなおにぎりを持ってきた。
焼いた魚まで添えてある。
「ほれ。たくさん食べるんじゃ」
鬼は大きなおにぎりを見つめた。
こんなに優しくしてもらったことなど、一度もなかった。
「う、うう……」
鬼は嬉しくて、大きな声をあげて泣いてしまった。
おばあさんは笑った。
「おまえさんさえよければ、今夜ここに泊まってくれんかのう」
「おいらを泊めてくれるんですか?」
「ああ。用心棒じゃ」
鬼は慌てて首を振った。
「おいらは弱いだで。用心棒になんかならんだ」
「ええから、ええから。そこにおるだけでええ」
その晩、鬼はおばあさんの家に泊まった。
ところが、その夜。
村に盗賊が現れた。
村の家々から金や食べ物を奪っていったが、おばあさんの家までやって来た盗賊たちは、家の中にいる大きな鬼を見るなり、腰を抜かして逃げていった。
その夜、難を逃れたのは、おばあさんの家だけだったそうじゃ。
「ほれ。立派な用心棒じゃったろう」

おばあさんが笑うと、鬼も照れくさそうに笑ったそうじゃ。
第2話 大蛇が守る一本桜
村の奥深くに、それはそれは大きな一本桜があった。
その桜には、巨大な大蛇が住みついておった。
大蛇は一本桜をぐるりと取り囲むようにして、昼も夜も桜を守っていた。
村には、その一本桜にまつわる悲しい言い伝えがあった。
昔、この村に、たいそう仲の良い若い男と女がおったそうじゃ。
二人は互いを心から想い合っていた。
ところが男は一人息子。
女も一人娘。
どちらにも、親が決めた結婚相手がおった。
二人の仲を許してもらえるはずもない。
そこで二人は、村を出て駆け落ちすることにした。
じゃが、すぐに見つかってしまった。
男も女も、それぞれの家から一歩も外へ出られぬようになった。
もう二度と会えない。
その悲しみからか、二人はやがて病に伏せるようになった。
そして不思議なことに、同じ日の、同じ刻に息を引き取ったそうじゃ。
その夜のこと。
村の奥にある一本桜の下に、大きな大蛇が現れた。
大蛇は桜の木に身体を巻きつけ、それから一歩も離れようとはしなかった。
村人たちは言った。
「あの大蛇は、亡くなった若者たちの想いを守っておるのかもしれん」
それから村人たちは、大蛇の守る一本桜を、二人の若者の魂が宿る場所として大切にするようになったそうじゃ。

第3話 夜になると鳴る鐘
その村には、もう一つ不思議なものがあった。
夜になると、誰もいないのに鳴る鐘じゃ。
決まった時刻になると、
ゴーン……。
ゴーン……。
必ず二回だけ鳴る。
なぜ鐘が鳴るのか、村人は誰も知らなかった。
ある日のこと。
鬼が仕事を終え、おばあさんの家へ帰る途中、その鐘のそばを通りかかった。
すると、
「お願いがございます」
どこからか声が聞こえた。
鬼は後ろを振り返った。
誰もおらん。
「気のせいだで」
そう言って歩き出そうとすると、
「お願いがございます」
今度は、はっきり聞こえた。
声は鐘の方から聞こえてくる。
鬼が恐る恐る鐘に近づくと、再び声がした。
「この鐘を鳴らしてください」
「おいらが?」
「百八回、鳴らしてほしいのです」
鬼には、何のことかさっぱり分からなかった。
じゃが、その声から、とても一生懸命な想いが伝わってきた。
「わかっただ。おいらが鳴らす」
鬼は鐘を鳴らし始めた。
ゴーン……。
ゴーン……。
静かな村に、鐘の音が響き渡った。
十回。
二十回。
五十回。
鬼の額から汗が流れた。
それでも鬼はやめなかった。
八十回。
百回。
そして——
百八回。
ゴォォォーン……。
最後の鐘の音が、夜空いっぱいに響き渡った。
すると鐘は、長い役目を終えたかのように、ゆっくりと地面へ落ちた。
その頃。
村の奥にある一本桜では、大蛇が静かに身体をほどいていた。
大蛇は一度だけ夜空を見上げると、どこかへ姿を消した。
そして翌朝。
長い間、美しい花を咲かせ続けていた一本桜も、静かに枯れておった。
村人たちは、ようやく気づいた。
毎晩二回鳴っていた鐘は、会うことのできなかった二人の若者の声だったのではないか。
百八回の鐘の音によって、
二人の魂はようやく悲しみから解き放たれ、そろって天へ召されたのじゃろう。
村人たちは鐘のあった場所に小さな祠を建て、若者たちの魂を供養したそうじゃ。
そして鬼は——。
それからも、おばあさんと仲良く暮らした。
「おまえさんは、ほんに優しい鬼じゃのう」
おばあさんがそう言うと、
「おいらは弱い鬼だで」
鬼はいつも照れながら答えたそうじゃ。
じゃが、村人たちはもう知っておった。
本当に強いということは、
誰かを怖がらせることではない。
誰かの悲しみに気づき、
そのために力を使えることなのだと。
それからその村には、
長い長い平和な日々が続いたそうじゃ。
めでたし、めでたし。

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