
眠らない街の探偵
🍊第64回 3つのお題(世界ノスタルジー)
🎈お題①:「雨のベーカー街」
🐾お題②:「午前二時の馬車」
⏳お題③:「街灯の下の黒ねこ」
お題④イラストから空想した世界を書いて下さい。
眠らない街の探偵
ロンドンの街は眠らない。
雨のベーカー街に、アーサーは帰ってきた。

迎えたのは、黒猫のノワール。
お腹が空いていたのか、ひどく機嫌が悪い。
今にも噛みつきそうだ。
午前二時。
一台の馬車がとまった。
コン、コン。
ドアをノックする音がする。
依頼人の登場だ。
アーサーは表紙革の手帳を取り出し、メモを取った。
依頼は、
行方不明になった娘を探してほしいというものだった。
だが、アーサーはすぐに男の違和感に気づいた。
馬車で来るには、身なりがよくない。
話し言葉もたどたどしい。
探しているのは、この男の娘ではない。
おそらく、雇い主の娘だ。
アーサーには、そこまで察しがついていた。
娘には家を出ていく理由がない。
だとすれば、金銭目的の誘拐か。
警察に知らせれば娘の命はない。
だから私のところへ来た――。
アーサーはそう踏んだ。
「お時間は早い方がよいでしょう。
二十四時間あれば大丈夫です。
必ず手がかりを見つけましょう」
依頼人は何度も何度も頭を下げ、
馬車で帰っていった。
「まずは寝て、それから考えよう」
いや――。
アーサーにはもう、
誰が犯人なのかわかっていた。
朝になっても、
黒猫のノワールはまだ眠っていた。
アーサーは新聞を買いに、
朝の市場へ出かけた。
新聞を開く。
そこで見つけたのは、
――「探しています」
という一つの記事だった。
「ビンゴ」
アーサーは行きつけのパン屋で軽く朝食をとると、
ある場所へ向かった。
そこにいたのは――
一人の年頃の娘だった。
さて。
どう話の筋書きを組み立てようか。
きっかり二十四時間後。
午前二時。
再び馬車がとまった。

降りてきたのは、
恰幅のいい男と、昨夜の依頼人。
アーサーは二人を部屋へ通した。
「これから、信じられない話をします」
二人は顔を見合わせた。
信じられない話。
しかし、それは紛れもない真実だった。
犯人はいったい誰なのか。
そして――
すべてを仕組んだ者は誰なのか。
その頃。
街灯の下を一匹の黒猫が横切った。
ノワールは振り返ることもなく、
眠らない街の霧の中へ
静かに消えていった。
