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アマノ文筆クラブ「シカゴで一か八か」

    アマノ文筆クラブの企画参加作品


    俺は懸命に働いて貯めた金を、だまし取られた。

    もう、生きる気力もない。
    このままシカゴの街で野垂れ死にするしかないのか。

    いや、まだ生きている。

    「シカゴで一か八か」

    人生の一発勝負だ。
    そのあと野垂れ死にしたってかまわない。

    そう思った瞬間、俺の中に今までにない力が湧いてきた。

    無一文になった俺は、住み込みの仕事を探した。
    俺の取り柄は、三か国語を流暢に話せること。
    日本語、英語、そしてフランス語。

    住み込みのバイト先は、案外すぐに見つかった。
    バーの皿洗いだった。

    店主は俺をこき使うつもりだったらしい。

    ところが、ある出来事をきっかけに、俺は店主の付き人になった。

    店内で起きた痴話げんか。
    店主は二人の話している言葉がわからず、困り果てていた。

    俺はさりげなく二人に声をかけた。

    しばらくすると二人は落ち着き、代金まで上乗せして帰っていった。

    それ以来、店主は俺に皿洗いをさせなくなった。
    カウンターに立たせ、客の相手を任せるようになった。

    そんなある夜――。

    いつも賑わう店内に、ピンと張り詰めた空気が流れた。

    付き人を連れた美しい女性が入ってきた。

    顔はよく見えない。
    それでも、美しいことだけはその雰囲気でわかった。

    俺は注文の品を、女性のテーブルへ運んだ。

    一瞬だけ、目が合った。

    深いエメラルドの瞳が、俺を一瞬で打ち抜いた。

    女性の周りをSPが取り囲み、店内の音楽さえ消された。

    ほんの数分の滞在。

    それなのに俺には、その時間が一生分の長さに感じられた。

    やがて女性はSPを連れ、店を出ていった。

    再び音楽が流れ、いつもの賑やかな店に戻った。

    けれど、俺の心だけは戻らなかった。

    さざ波のように、いつまでも揺れていた。

    何もかも失った俺だったが、やがて店主に重宝され、いくつかの店を任されるようになった。

    「シカゴで一か八か」

    やってよかったと思うぜ。

    人間、死ぬ気で臨めば、なんとかなるもんだ。

    ただ――

    俺の心には、今もあの女が住み着いている。

    深いエメラルドの瞳が俺の心をかき乱し、
    血の涙を流している。

    ※この物語はフィクションです。


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    イラスト:ChatGPT

    アマノ文筆クラブのお題に書かせて頂きました。
    お題をありがとうございます。


     
     
    ✨ごあいさつ ようこそ、片桐みかんの世界へ。 日々のひらめきを即興で物語や詩にしています。 ここで出会った言葉が、あなたの心に小さな灯りをともせますように。

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